- 卵の緒 (新潮文庫)
- 発売日: 2007/06
[6/46]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
自分は「捨て子」だと思っている小学生が主役。母親との対話の中で、本当の「つながり」って何であるのか、何であるべきなのか、ってのを探していきます。冒頭から「捨て子」なる、けして軽くない単語が出てきますが、著者独自の「洗練された」会話が続く中では、一般的にその言葉からイメージするような「暗い」ものは一切ありません。そこが現実離れ、と捉えるか、受け入れるか、で「読後の感想」は決まってしまうと思われますが、自分にとっては、この距離感、すなわち「非現実的でありながら、現実の世界と少しだけ接点があるようなないような」という感じが心地よいんですね。必ずしも自分の環境に当てはめる必要はない。けれども気づいたら重ね合わせているパートもあって...引き込まれてしまいます。「世界観」とまでは言えないけれども、独自の「何か」を持っている作家さんのような気がします。この「心地よい距離感」は男性だから、なのかもしれないけれど...あまりに「ドラマ」的な会話、ただ主人公の「心の動き」はまさしく「現実的」であったりする。世間的に「一般的ではない」環境の「家族」であるのだが(そうでなければ小説の題材にはなるまい)、本質的な「家族」を考える上では、その「一般的ではない」ことが何ら支障にはならない。やっぱり「家族」っていいよね、って、教訓めいたものではなく、優しい気持ちになって、ココロカラそう思える読後感が待っている、そんなイメージです。
表題作よりも併記されたものの方が長いのですが、同じ「テーマ」であるので、そこに違和感はありません。登場人物と設定された「環境」が異なるだけで、向かっているところは一緒です。こんな「関係」になりたいとは思うけど、こんな関係に(無理やり)しようとは思わない。肯定も否定もなく、素直に「楽しめる」内容で、著者の別作品も、やっぱり読んでみたい。「あたたかい」気持ちになれるのは、とてもいいことだと思う。
卵の緒 (新潮文庫)
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