2011/05/31

努力と向上心。「プロ」意識が加われば...

察知力 (幻冬舎新書)
察知力 (幻冬舎新書)
  • 発売日: 2008/05
『察知力』中村俊輔
[19/103]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

出始めの頃から知っている「俊輔」の本。特別サッカーに詳しいわけではないが(にわか「代表ファン」です)、彼の出現と、日本代表への注目度はその軌跡が重なるような気がする。そして「強くなっていく」過程においても中村選手の登場と重なります。日本代表での話ではなく、イタリア、スコットランドでの海外挑戦の話、挫折を伴った(そしてその後の中村俊輔を作り上げた)中学時代の話、これが中心です。
他の選手と比べても、体が大きいわけではないし、カズやゴン、ヒデのような存在感があるわけでもない。けれど、間違いなく中心選手である。そんな著者の位置づけが、書かれているご自身の性格と非常にマッチします。自分を高めることに常に主眼を置いている、厳しい環境に自らを置くことでいろいろな「引き出し」を備える、サッカー(がうまくなること)のことだけを考える、等々。タイトルの「察知力」というのは、(彼が考えた言葉かわからないけど)単に「空気を読む」ことではなく、その場その場で求められるものに対応できるように、常に準備を怠らない、ということ。自分の得意な分野のみならず、その周辺(サッカーでいえばポジションになる)についても十分にこなせるようなスキルを身につける、ということ。ともすれば、「監督のスタイルに合わせたサッカー」ということで、日和見的なとらわれ方もされてしまうが、本人はまったくそんなつもりはないようだ。敢えていえば、「自分のこと」を常に考えている。これも「いい意味」でとらえれば、自分が成長する=日本サッカーが世界に発信できるような位置に上ることができる、ということ。
派手さはないけれども、こういう「真摯に」考える人がいることは日本サッカーに関してプラスになると確信する。無責任なファンとしては、「プロなんだからもう少し『花』があっても...」という気にもなるが...前に読んだ遠藤選手もしかり、30歳という年齢がもはやベテランになる世界。厳しいですねー。中村選手は、その中で自分の「役割」の変化、ということも意識している。この年代のサッカー選手が、同年代のサラリーマンと比べて「しっかりしてるわあ」とオジサン的に思ってしまうのは、こういう環境も手伝っているようですね。もひとつオジサン的に言えるのは、(この本に書かれていないだけだろは思うけれど)著者が「サッカーの世界」だけを見ていることがちょっと気になる。将来指導者を目指す中村俊輔であればこそ、違う世界の「一流」も体感しておく必要があると思います。それが「引き出し」になるでしょうから...ひとつのことに打ち込むのは大事、そしてそれが前提ではあるけれども、その世界をちょっと外から見てみる=他の世界に触れることも大事なんだなあ。

【ことば】今の自分にできることを、手を抜くことなくやった、という実感を持てる毎日を過ごすこと。簡単そうに見えて、これが難しい。

真実。まずは「実感を持てる」まで、手を抜くことなく毎日やることですね。これが起点ですべてにつながるね。何年も練習を積み重ねて、さらに進化する中村俊輔の言葉だけに、重いです。

察知力 (幻冬舎新書)

2011/05/30

浅田次郎さんの「幅」を感じます。



『すべての人生について』浅田次郎②
[18/102]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

直木賞作家の、というよりも、個人的には『天国までの百マイル』で、人目を憚らず大泣きした思い出のある作家さんです。その著者の「対談集」。作家によっては、その作品の世界だけを知っていた方がよいケースもありますが、ある程度浅田さんの「素」の部分が出たこの本は、浅田さんの「世界」を損なうものではなく、より個人的な魅力が増すものであるようです。
その著作は、中国史実から、時代モノ、現代モノ、長編、短編にわたりますが、どの分野においても著者の知識、研究に取り組む姿勢は「プロ」そのもので、従来存在する作品を否定するわけではないのですが、独自の調査から独自の色づけがなされたものが世に出てきます。浅田作品をそれほど読んでいるわけではなく、もっぱら短編が多いのですが、自分としては苦手な、中国モノ、新撰組モノも、読んでみたい、という動機付けにもなりました。対談の中で「浅田さんの作品は「人」が軸になっている」という指摘がありましたが、それゆえに面白いと感じるのだろうと。キャラクターがたってる、とか、わかったようなことを言うつもりもありませんが、確かに登場してくる人物が「生きている」感じは伝わってきます。読んでいる自分のアタマの中で、その人物が動き出すような...(って、そんなに「分かっている」わけではありません)。
この本のような「対談集」って、結構読みづらい、というのが従来の自分の先入観です。それこそ、「言葉が生きていない」というか、伝わってくることが少ない、というか...でもこの本はそういうネガティブなイメージは少ない。浅田さんの「率直な」あるいは(創造に対する)「熱っぽさ」が伝わってきます。また、いろいろな分野の第一人者と「話せる」というのも、かっこいーですね。相手は小説家だけではなく、歌舞伎や、政治家とも「対等」であるのが素敵です。どの世界も、その分野で第一人者になる方は、「一流は一流を求める」ということなのでしょう。その領域に少しでも近づきたいもので...
対談の中では触れられていませんが、その作品を「創造」するための努力は惜しまない方なのでしょう。カタカナでいえば、「リサーチ」「デザイン」云々といったところでしょうが、そのベースとして「興味」があるはず。それをアウトプットする場としての「小説」に、プロとしてのエッセンスを付加していく、その工程は、まさに「プロフェッショナル」を感じます。幼少のころの家庭環境なども、その「味」を出すのに一役買っているようです。すべての経験を配合して料理に活かす。これが肝。

【ことば】...ありがたいことには、人生に無駄な努力はないのである。

実は手間のかかる「対談」に対しての、著者の「意思」である。こう思えて、そして実行する、中途半端な行動はしない。「プロ」を感じます。

すべての人生について (幻冬舎文庫)

2011/05/27

「すごい!」のはどの部分だったのだろう...

『すごい!自己啓発』岡崎太郎
[17/101]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆


実際に現場でパフォーマンスを出した経験のある通販コンサルの本。その世界では「すごい!」人みたい。(通販という意味で)同じ業界にいるけれども、あまり意識したことはありません。通販成功に関する著書もいくつか出されていらっしゃるようですが、その内容がどのようなものかはわかりません。この本は「通販」ではなくて、タイトルに示されているように「自己啓発」です。
・40歳からでも遅くない
・会社組織に縛られた生き方でよいのか
・「最悪の最悪」を想定したうえでチャレンジすればよい
等々、コンサルタントっぽい内容になっています。年功序列が崩れた現代における「働き方」、それに伴って、「自分」をどのように方向付けするか。現代の、そしてこれからの、働き方、生き方に対する提言。
が、残念ながら私自身の読解力が低レベルであることで、著者が何を一番言いたいのか、よくわかりませんでした。深読みできませんでした。「40歳では遅すぎる...そんなことは絶対ない」と、勇気づけれれるお言葉をいただいていますが、「年功序列が崩れた今は、35歳でピークに持っていくべし」みたいなことも...「最悪の最悪を想定」、たとえば「会社を辞める」という選択肢を持っていれば、「会社に残る」前提で考える場合よりも、柔軟な発想が生まれる...そうなのかなあ。確かに「腹は据わる」と思うけど、自暴自棄にならないような精神を持つことがポイントではないかなあ。そんな精神を持っている人は敢えて「会社を辞める」選択肢を意識する必要もないような...60歳引退以降のことを考えての「資産運用」の箇所も不明だった。んー、故に貯金しましょう、ってことかな。
「会社を辞める」選択肢を持つことは、同時に「会社を辞めない」選択肢をも持つことだと理解する。「枠」があると自由なアクティビティに制限が入る、というのは確かにあるけれども、会社を辞めたって「枠」は存在するわけで、縛りの中でどうパフォーマンスを出すか、それから枠のそもそもの意味、というのを見つける、そんな流れだと思いますよ。自分自身の位置づけ、立ち位置を明確にして、(大げさにいえば)「この世に生を受けた意味、それに対する貢献」というイメージを持てば、すなわち「自己啓発」ではないかな、って。「すご」くはないかもしれないけど、環境とうまくバランスを取るのも能力だし、生き方だし、自己啓発にもつながる。はず。

【ことば】...幸せっていうのは、自分と他者の間、または社会に対して心が開いている状態...

「ハッピー」を中国語では、「開心」と書くそうです。なんか深みのある言葉ですよね。ちなみに「アンハッピー」は「閉心」。心を開いてすべての事物に接すること。「挨拶」にもつながる感じですね。

すごい!自己啓発---「夢」をバージョンアップしろ!

2011/05/26

ホントはそうではないんだろうけれど...表面的で残念な

『スピード・ブランディング』鳥居祐一
[16/100]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

最近聞くようになった、「自分ブランド」。そのブランド構築のために、何をしていきましょうか...という点に関する指南。自分より年上の著者であることに驚きだが、ブログ、メールマガジン、このあたりの「情報発信ツール」から入って、セミナー開催、出版へ続く。ロジック(?)としては、読み手に有効な情報発信を継続すれば、そして「特定分野」に絞って「専門家」化していけば、より有効な情報が入ってくる、より有効な人脈が築ける、そして出版すれば、その本は「あなたのブランド向上のために働く営業マン!」となる。う~ん、確かにそうかもしれないけれど、メールマガジンはできれば週1回配信しましょう、とか細かなテクニックは紹介されるけれども、その「中身」をどうやって高めていくのか、という点が少々乏しい。もちろん大事なのは内容であることには触れられているけれど、一番大事なのは、内容の高め方と継続性ですよね。そして、「自分ブランドを高める」ために発信するんじゃなくて、ホントに有益な情報を、惜しみなく、そしてホントに相手(あるいは読者)のためになること「だけ」を思って発信すること、なんじゃないかなあ。(メルマガ)読者を増やすために、プロフィールはこう書きましょう、とか、ちょっと視点が違うみたい。著者はそれで「自分ブランド」が高まっているのだから、方法としては間違っていない、けれど、ブログでの「写真」の使い方、とか、若干「ブランド」のバリューが下がってしまうんではないだろうか...っていう気もします。
自bんのUSP(=自分が持っている独自の強み)を見つけることが大事。これは同意。そのために、これまでの経験の棚卸をする。これも同意。が、「自分の体験したストーリーは、それをアウトプットすることでキャッシュ化することができる」と結ばれてしまうと、興ざめです...著者ご自身は、「内容の充実」を最優先において活動していらっしゃると思うのですが、そこを垣間見ることができませんでした。残念なり。
この「読書感想文」は、自分の言葉で、誰に干渉を受けるわけでもなく、続けています。多少は「読んでいただいている方々に向けて」という意識を持たなきゃいけないんだけど、素直な自分の感想を読んでいただく(ありがとうございます!)ことで、「こんな考えをする人もいるんだなあ」くらいに思っていただければ、と思ってます。だから「ウソ偽り宣伝広告なし」で書いていきます、これからも。それを継続していくことで、結果的に「自分ブランド」が(ちっちゃくても)できれば、うれしいです。でも、それを目的にアウトプットすることはしませんねー。

【ことば】本名や顔写真を出せるかどうかが、ある意味、ブランド人になれるかなれないかの成否といっても過言ではありません。

発信ツールとして「ブログ」を実施するときの心得です。少しドキッとしました。そして考えています。出すか...まあ、大勢に影響はないと思うけれど...(検討中)

スピード・ブランディング―普通の人がブランドを確立し、成功を加速させる

2011/05/25

来た!「本質」がすべてあますところなくここにある

『自助論』サミュエル・スマイルズ
[15/99]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★★

成功のための原則-注意力、勤勉、正確さ、手際のよさ、時間厳守、迅速さ。この「原則」を貫く努力、誠実さ、実行力。基本、この「原則」を拡張して説かれている内容。現代のすべてのビジネス書は、この本に集約される、といっても過言ではない。が、実はまったくの逆で、この本は(なんと!)1858年に書かれている。そうです、すべてのビジネス書はここから始まっている、といった方が正しいのかもしれません。当時はまだ有り余る力を持っていたイギリスが舞台ですが、うわべの金銭的な繁栄や、ましてやテクニック的なものは一切ありません。一番グサッときたのは、「人からどう見られるか」という心配は、自分が正しいことをしている、という信念があれば、気にする必要もない、ということ。もっと言えば、ヒトの目が気なるようでは、まだ自分を極めていない、ということ。
すべて「本質」が書かれているようです。常に注意力を持って事物に取り組めば、意外な場面でヒントを得られる可能性も高まる、とか、自分の使命に燃える、とか、事案の大切さ、お金は大事だけれども知恵はそれに勝る、人生の師、友との出会いを大切にする...150年前の本です。その時に比べればイギリスもそうだし、日本も世界もずいぶん変わってきています。ビジネスのスタイルも同様。でも。でも、そこで働く人間としての本質は何も変わらないんだなあ、という感動。貫くものを持つこと、正しいことを誠実に実行すること、自分で吸収する意識を持って取り組めば(仮に時間はかかっても)自分のモノになること、その「達成」のためには忍耐強く信じることを続けること。すべてが突き刺さる、と言っても過言ではありません。今の自分に欠けているところ、以前は持っていても忘れかけていたものが、見つかります。イギリスという国の違い、書かれた時代のための事例の古いところ、「繰り返し」が多くて少し読みにくいところはありますが、社会に生きる、もっといえばこの世に生を受けた人間として、プラスになるポイントが多数見つかります。
訳者のあとがきで、「若い人に読んでもらいたい。一方でやや年とった人にも読んでもらいたい。」とあります。「やや」の部類に入る自分ですが、自分のことももちろん、「若い」人の成長にも寄与したいと心から思った。誠実に生きること。「誠」の文字を、両親から名前に入れてもらった自分として、この文字に恥じない自分でいたい。

【ことば】品性を堕落させるくらいなら全財産を失うほうがまだましである。なぜなら、品性はそれ自体がすぐれた財産だから...

ヒトとして何が一番大事なものか、というのを考えさせられる。もちろん「財産」も大事だけどね。目的ではない。これもそうだけど、心にとめておくべきフレーズがヤマほど出てきます。読むときは「付箋」を用意することをお勧めします。

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫

2011/05/24

人生を考えます。「今」が大事に思います。


『大切なひとのためにできること』清宮礼子
[14/98]R+
Amazon
K-amazon ★★★★☆

数々の賞を受賞した映画「おくりびと」。その宣伝担当者が語る、父親の「がん」との戦い。知らされた時から別れの時まで、ご自身の気持ちを、率直に表した内容です。
父と娘。自分の環境に当てはめてしまいました。著者のお父さんは、告知がなされて以後、どんな気持ちで「戦い」に挑んだのだろう。何かが見えてしまっている環境の中で、家族に迷惑をかけない、とかそんな気持ちと、実際に行動を起こされたことが記されています。著者のお気持ちの「やるせなさ」も痛いほど伝わってきますが、当人はどのようなお気持ちだったのでしょうか...自分がもしもそうなったらどうなるんだろう。自暴自棄になってしまうのか、ただ衰弱していくのか。想像だにできませんが、著者の家族のように、自分にも大切な家族がいます。その思いが断たれようとしている「先」に対する不安に勝てるのでしょうか...
仕事も大変な時期だったと思います。映画の宣伝担当がどのような時間の流れ方なのか分かりませんが、「定時」のOLさんとはまた違うことでしょう。持って行きようのない気持ちを抱えたまま、仕事にも支障がでないような生活をし、「支えること」「愛すること」そして「伝えること」に、著者は気付き、実行していったようです。苦しいのは当人。その姿に支えられて、周りもできうる限りのことをした、そんな時間だったような気がします。
でも、父親としては、そんな境遇になっても娘が心配だし、娘に苦労はさせたくないような言動も見られました。これ、分かります。軽く「分かります」なんて言えないとは思うけれど、でもどんな状態になったとしても、親子は親子。何よりも愛すべき存在であることには変わりないんですね。だから(かなり僭越な言い方ですけれど)、おとうさんが動けなくなってしまったときでも、娘さんはおとうさんに支えられていたんですよ、きっと。著者はそれがわかっていると思います。だからきっといい「親」になれるでしょうね。そしてそれが「親孝行」なんじゃないですかね...
残り時間が少ない中、伝えたいことがいっぱいあるのに、面と向かうと言葉がでてこない。そんな著者の言葉がありました。でもね、それは伝わってると思いますよ。親にはわかるんです。
「がん」という病気、それが進行して、そして...こんな話を読むの初めて、でした。なんとなく拒絶している自分がいます。でも、(別にその病気に限らず)「ゴール」は考えなければいけない時期には来ているのかもしれません。その時に「後悔」したくない。だから「今」を生きる。そりゃ、残念に思う気持ちは湧き出てくるでしょう。でも、変えられない過去を素敵に彩ることは、「今」からでもできる。だから真剣に生きる。今、この時を大事に。

【ことば】その瞬間、家族全員で、「お父さん、ありがとう!!...」父の心に届くように、力一杯伝えました。

きれいなことばです。おとうさんもうれしいはず。そして心からこう言える家族も、素敵です。

大切なひとのためにできること がんと闘った家族の物語

2011/05/23

まだ「実社会」との距離が大きいようです。

『こんなに使える経済学』大竹文雄②
[13/97]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

そういえば、「経済学部」の出身です。当時は「行動経済学」なんて言葉、知らなかったかな(学んでいないだけかもしれないけど)。人間は「最適化」を求めて合理的に行動する、という前提で組み立てられている「経済学」は実態が感じられず、「学問のための学問」にすぎない、故につまらない、故に勉強する気が起こらない...という「言い訳」に使っていた気がする...反省。そんな中から出てきた「行動経済学」は、ヒトは必ずしも合理的な判断だけをするわけではない、ということ。社会人になって、「価格」という評価軸の元、競合他社に比べて必ずしも「勝てる」価格ではない商品を売るためにどうしたらよいか...見せ方だったり、おまけだったり、サービスだったり...を考えてきているが、これがまさしく「行動経済学」であり、合理性のみを対象にするという前提では、生きられない企業が大多数であるんだね。つまりは「学問」なんて意識をしなくても、その意味合いは実社会の中で、考えていかなくてはならないこと、だったりする。20年近く社会の中でいると、そもそもの「経済学」に対して、ほとんど興味がなくなるのだけれども、「行動経済学」だって、まだまだ距離を感じる。というか知らなくてもいい世界だったりする。
この本でも経済学者のセンセたちが、日常のいろいろな場面で「経済学」的な見方をしていて、「ほら、経済学は身近でしょ」ということを訴えているけれども、現実に社会で行動している人間からすると、まだまだまだまだ遠い存在である。実態を経験したうえで、「これを経済学的にみると」こうである、という考え方には、「面白い」と感じるところも少なくはないけれども、「学問」から発して、実社会でどうする、という逆の流れは起きにくいんじゃないかな...数字の見方、視点の角度とか、世間ではこう言われているけれど実はこういう側面もあるよ、というのは重要だと思う。その「考え方」の発想の元になるように学ぶのは「あり」です。が、「経済学では」という切り口で、わかりにくい「論評」だと、結局「後付け」になってしまうし、「ひとごと」感が満々としていて、どうも「近くない」んですよねー。
あと、これが気になるんだけども、どうも「難しく」言おう、という気が強いんじゃないかと思う。難しいことをシンプルに、というのが「学者」の方々の使命だと思いますよ。だって、学者さんの間だけで完結するものではないでしょうから。本を出すんだったら、それを第一に考慮してほしいなあ。本を選ぶのだって、知名度などで「合理的に」選択するだけではない、のですからね。

【ことば】...すべての議論は、インセンティブと効率性という観点から世の中を見るという経済学の思考方法が用いられている...

おっしゃる通りなのでしょうけれども...この考え方は「経済学」に近いですよね。結構ヒトは「情」で動いたりするものであって。「合わせて何%が云々」ということよりも「Aさんはこうこう」というミクロ的なものが実は求められていますね、今の社会では。

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)

2011/05/22

主人公を誰ととらえるかで変わってくる

星守る犬
星守る犬
  • 発売日: 2009/07/07
『星守る犬』村上たかし
[12/96]rakuten
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

星守る犬=決して手に入らない星を物欲しげにずっと眺めている犬。タイトルからして「感動モノ」であることが窺える。「犬」が主人公であることは、つまり献身的なことがキーポイントになっていたり、という想像の枠を、正直超えていない内容かもしれない。けれど、多くの人がこれだけ読んでいる事実は、どこかに何かがある、あるいは考えさせる何かがあるはずだ...もう1回読んでみる。
登場人物は、会社からはリストラされ、嫁さんからは離婚を言い渡される中年男性。それらの出来事とからむように登場してきた捨て犬。「二人」のお話である。限りあるお金、限りある時間。そして限りある命を携えて、旅に出る。ある意味、目的地のない旅へ。「星守る犬」...手に入らないものを眺めつつ...家庭やこれまで生きてきた環境が崩れつつある中で、「お父さん」は犬のハッピーに「正直」に語ります。これは何か身につまされる部分もあり、仕事や家庭、けして無意味に考えているわけではなく、むしろ当然に「家庭」「幸せ」のために働き続けているけれど、仕事以外の場で、どうふるまったらよいのかわからない、そんな不器用な中年男。本音を語れるのはハッピーしかいない、という悲しくも、情けなくもある人生。ハッピーがいるだけ幸せなのかもしれません。「おとうさん」はその後、ハッピーと二人きりになりますが、その時にも、会社や家庭に対して、過去の「幸せ」に対して、何か文句をいうことなく、ハッピーとの「今」を大事にしています。でも、同じ年代の自分として、勝手に「おとうさん」と重ねてしまうと、ものすごく「つらい」時間だと思うのですね。ハッピーとの時間を過ごしながら、でも過去のことを否定することもできない。振り返って「あの時こうすれば」ということの無意味さも知っている。奥様のこと、娘さんのこと。口にしないのは、忘れることができたから、ではない。それはたとえ今はすでに形としてなくなっていても、「おとうさん」の人生の一部であるのだから。
犬の献身さをとらえるのか、おとうさんの哀愁に目を向けるのか。自分は、「重なる」部分から「おとうさん」ベースで読みました。幼少のころにそばにいた犬のことも思いだします。
「星守る」=手の届かない星、それを眺めることは、無駄ではないですよね。

【ことば】望んでも望んでもかなわないから望み続ける...人は皆生きていくかぎり...「星守る犬」だ。

慣用句としては「手に入らないものを求める人」。それが人間、それが人生。手に入らないものを求めることは、無駄な行為ではない、前に進むために必要なことだ。

星守る犬

2011/05/20

「時代の流れ」を意識するかどうか、流されるか

『キュレーションの時代』佐々木俊尚②
[11/95]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

話題になっている本。「カタカナ」氾濫の読みにくい類か...という懸念もあったけど、意外にも(?)すんなり読み終えた。まずタイトルになっている単語からして難解。「キュレーション」=情報の洪水の中から、自らの価値観、世界観で取捨選択し、そこに意味を付加して、共有する。これでもわかりませんね。その世界の第一人者らしく、インターネット、特にソーシャルメディアの広がりと、情報の伝播の流れ、という点で書かれています。これまでのように、限られた発信者から限られた情報が与えられるのではなく、誰もが発信者足り得る、そして、「マス」の概念ではなく、「自分の価値観、世界観」から見いだせる「軸」をもってつながりが広がっていく。言葉が適当かわからないけれど「オタク」的な意味あいだと思う。マス広告、マス消費からネットでの「新しい広告、情報のありかた」へ。時代が変化していく中で、この意識を持つモノが、ビジネス社会で生き抜く、ということかな。この本においては、時代が、消費が変化してきてますよ、「機能」で選ぶ時代から「記号」で選ぶ(持っていることがステイタスという意味)時代、そして「つながり」で選ぶ、そんな変化が生じてます、という「事実」を紹介しており、「で、どうすべき」ということには触れられていません。もちろんそれは自ら置かれた立場で考えるべきことであるしね。だからこの本を読んだ今の時点は「現状把握」ということ。これから先、どう考えるか、がポイントですね。
「キュレーション」なのかどうかは不明ですが、「つながり」を求めるというのは何となくわかる。「マス広告の終焉」というのも分かる。情報の流れが変わってきている実感もある。それは消費者としても発信者としても。たぶん、外からみたら(あるいは後年になって振り返ったら)「急激な」変化なんだろう。 でもそのど真ん中にいると、意識しないかぎり流される。アタリマエになるんだよね。で、たとえば「広告」を考える時には、「古い」テクニックを相変わらず使ったり...実際多いんですね、こういうこと。意識する必要はありますね。時代の流れを。でも、「消費者」としては、無意識で流れに身をゆだねたい。そんなジレンマも。

【ことば】...この商品はどう演出してくれるのか。その消費を介して、私たちはどんな世界とつながり、どんな人たちとつながるのか。

「つながり」消費という概念。わかったようなわかっていないよな、もやもやしてます、まだ。「広告」という概念を、もう一度考えるタイミングでもあるようです。いや、これも「わかったような、わかってないような」...

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

2011/05/18

こういう存在が必要なんだね

『信頼する力』遠藤保仁
[10/94]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

Wカップ、アジアカップ...「にわか」サッカーファンらしく、日本代表戦(だけ)は熱く応援しています。そんな表面的なサポーター(とはいえませんね。単なる応援団です)故、著者の名前は知っているけれども、役割とか、普段どのチームに属しているのかすら知りませんでした...日本代表のキャプテンではないけど、キャプテンが退いた時に「腕章」を受け取る髪が長い人、くらいの認識でした。
ただ、PK、FKなどの技術はすごいなあって思うこともあり(そのほかのスキルは素人にはわからない)、重要な位置を担っているんだろうな、とは思っている。この著作を読んですんなりイメージが結びついたんだけど、カズやゴンのようなタイプではないが、自分のスキルを高めようと真摯にサッカーに向かい合い、そのプレーを以て他人を引っ張るタイプ、とお見受けします。実はその方が大変だけれども、本質的な意味でチームを引っ張り、若手の見本になるタイプなんだよね、こういうのって。やろうと思ってできることではなく、「真摯に」その分野で前向きでいつづけること、これが最重要何だと思う。選手としてみれば、プレッシャーが最大級にかかるような場面でも、落ち着いてプレーをしている。見ているこちらのほうが(勝手に)焦っているだけで、彼(ら)はもちろん目の前の局面に集中する。そんな姿をかっこいいと思うのだった。積み上げてきた経験、そして積み上げてきた自信。これが人間を大きく見せる、それが見ているだけで感じられる場面。
タイトルにあるように、本書のベースは、キープレーヤーとしての著者が、属するチームの長である代表監督に対して、「信頼」することの重要性を説く。これはWカップで、戦前の予想を上回る結果を出したから、ということでもないだろう(本が出たのは「結果」によるものだと思うが)。個人として、ではなくチームのキーパーソンとして、チームが監督を中心にまとまるかどうか、これが「戦う」集団として備えるべき最重要ポイントだということが伝わってくる。
一人称を「俺」と表記し、他の選手を愛称で表現するなどは、出版側の意図なのか分からないけど、30歳の大人としては、多少違和感。サッカーの現場感を表すテクニックのように思えるが、そんなテクニックは不要ですね。遠藤選手ご本人は、もっと人間としてしっかりした方だと思いますが、そこが多少「少年っぽい」イメージになってしまっているような気もします。本当はタイトルにあるような「信頼が大事」ということがメインテーマだと思いますが、「Wカップについて思うこと」というイメージが強くなってしまっている感があります。
30歳...自分の「その時」と比較したら、段違いに「かっこいい」ね。新らしい代表では最年長ということ。過酷なスポーツであることを思い知らされる。そして「最年長」の遠藤選手には、「追加される役割」がでてくるようになる。ご本人も自覚されているようだ(そこが素晴らしいです)。応援します!

【ことば】...他人からの評価はまったく気にしない。人の目を気にするより、大事なことは、自分を信じて、プレーに集中することだ。

まったくもって。ただ、これを言いきって前に進むには、「自分の中に」信念、指針、目的を持つことが前提だと思う。ぶれない何か、を。それがあれば他人の目は気にならない。

信頼する力 ジャパン躍進の真実と課題 (角川oneテーマ21)

2011/05/16

名作コピーに必要なもの...「思い」ではないでしょうか

『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』鈴木康之
[9/93]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

マス広告を中心に、レスポンスではなくブランディングに近いものですが、秀逸なコピーをその生まれた背景などを披露、そこから「書き方」を学ぶ内容です。著者自身も有名なコピーライターさんで(すみません、知りませんでした...)タイトルからすると「テクニック」的なものを想像しがちですが、基本的には、「数」をこなす中で洗練されて(して)いく、という泥臭い手法です。
でも、真実だと思う。文才がある人であっても、急にアイデアが生まれてくるわけではないし、その商品、サービスだけではなく、その周辺の知識があって初めて生まれてくるものがある。自分はコピーを書く仕事をしていない(できない)けれども、「広告」の周辺にはずーっといる。主にレスポンス広告だけれども、本質は変わらないはず。コピーライターは「プロ」として、その商品、サービスを扱っている会社の「外」にいながらも、その対象を心から信じる、愛することによって生まれてくる、そんなものを「よいコピー」というのだろうと思う。「外」にできて「内」にできないはずがないし、「内」はライティングの技術はなくとも、それこそ「プロ」として、世界一「思い」をもっていなければならないよね。消費者として馴染みのあるコピーの例をたどりながら、そんなことを考えていた。「思い」を持つのは大事、そして「いいコピー」を「いい」と思える感覚も大事だと思う。幸いにして、「かっこいいなあ」「いいなあ」という感受性は失っていない(と思う)。それを生かして「アウトプット」していかなきゃ、ね。
単純だけど、本質的なこと。書くもの、ではなくて、読んでもらうこと。これって大事だし、アタリマエなんだけど、忘れていること、あるよね。伝えるべきメッセージが「こちら(企業)」本位になっていないだろうか。本当に伝えたいことを熱意をもって表現できているだろうか。本書はテクニック的なことはあまり説かれていません。さすが超一流のコピーライターだけに、「読ませる」文章は、どんどんと読み進めることができ、そして...自分にもできるんじゃないか、って思ってしまってます。「思い」さえあれば...
あとは「練習」ですね。この「感想文」ももう少し うまくならないといけないね。「練習」ではないけれども、「読んでいただく」ことを考えねば。読んでいただいている皆様、感謝申し上げます。拙い文書、申し訳ない。うまくなりますので、今しばらくおつきあいくださいませ。

【ことば】本人が楽しんでいないと、読み手にそれが伝わりません...料理する人自身がいちばん美味しいと思うから、ご馳走になる人も美味しいと舌鼓を打つ。

うわっ、 すごいです。その通りです。「ごまかし」は通用しませんね、何事も。意識して意識を持つようにします。

名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方 (日経ビジネス文庫)

2011/05/14

学生向け?社会人が読んだ方がいい

知識だけあるバカになるな!
知識だけあるバカになるな!
  • 発売日: 2008/02/09
『知識だけあるバカになるな!』仲正昌樹
[8/92]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

大学の先生が、現代の大学生の「レベル」を目の当たりにして、「どうあるべきか」を説く本。人文系の学問を始めるにあたって、基礎教養として見つけるべきものを指南しています。
・「疑うこと」が大事、でも、その後自分を高めるための「疑い方」でないと、知識を得ようとする行動につながるような「疑い方」をすべし。
・「そんなことは知っている」と口にする際に、「本当に知っているのか」と認識を正しくすべし。「知っているつもり」がいちばんよろしくない。
・自分の言葉で教養を身につける。特定の学問だけ、ではなく広く基礎知識=教養を身につけておくことは非常に大事
等々、「学問」を始める学生に、何が大事なことなのか、というのを書かれているけれど、おそらく、学生時に読むよりも、社会人経験をしえ振り返って読んだ方が、身につくようなことが多い、と思う。自分が学生の時は正直それほど「知識欲」がなかったから、かもしれないけど、当時に読んでもあまり「当事者」としての意識が持てなかったんじゃないかな...(それではいけないんだけどね)。けして過去を後悔する気持ちから、ではなくて(後悔したって「あの頃」をやり直せるわけではない)「今だから」修正できることもあるんだよねー。それは積んできた経験とか、その結果の今の環境とかによるんだけど。当然「学ぶのに『遅すぎる』ことはない」わけだし、人文系の学問でも、社会の中での仕事でも同じことなんだよね。仕事だって、そのベースはコミュニケーションなわけで、「人文系」だしね。
特に、「知っているつもり」とか「知っているふり」を戒める箇所は、常に意識をしてなきゃいけないと思った。「知らない」ことへの不安からそうなる、と著者は指摘するが、まさにその通りで、「知らない」ことを認識することの重要性を再確認。「知らない」と自覚して「知りたい」につなげればいい。
もう1点、「教養」=基礎的な素養の重要性。学生対象としては「専門の学問を学ぶには、その前提としての基礎教養を身につけること」ということだけど、これも「専門の学問」に限らない。すべての事項い言えること。自分の分野以外でも広く「基礎知識」を持っていてマイナスはない、というよりも、幅広い教養を持つことが専門分野の知識を広げることにつながるんだよね。これも実感できます。
...「大学生のときに読んでおけば...」というレビューも見かけますが、むしろ社会人で読むほうが実感も得られるし、その後に活かすことができる。社会人だって常に勉強するべき「学生」だからね。

【ことば】こうした「分かっているつもり」病は...ブログなどで、他人が書いた本について否定的な“書評”をしている人には、そういう傾向の人が多い...

...反省です。

知識だけあるバカになるな!

2011/05/12

「漢字は楽しい」ねえ...「文字学」はまあまあ、だけど

白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい
白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい
  • 発売日: 2006/12/18
『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』小山鉄郎
[7/91]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

これでも結構「漢字好き」である。今はいろいろゴタゴタしてますが、「漢検」もわりと初期のころに受験したりして。その「成り立ち」を知ると余計に興味がわく、という感覚はよく実感できます。漢字は好きだし、本も好きなんだけど、「漢字のうんちく」系の本は、どうも苦手。1冊の中にいろいろ盛り込んでいるものが多くて、本全体の「ストーリー」が見いだせないせいかなあ、なんて思っている。
そんな気持ちを持ち続けている中で、久々の「漢字本」です。その道の権威である白川先生の「文字学」ですが、それをわかりやすく説明してくれる内容。
「右」と「左」
「手」に関する漢字
「道」になぜ「首」がついているのか(これって以前テレビで武田鉄也がなんか言っていたような...)
などなど、面白い「成り立ち」がつづられています。基本形、というか、シンプルな漢字の「歴史」を知る方が面白いですね。それに編や旁がついて難しい(=画数が多い)漢字になると、「あーそーなんだ」くらいの感覚になってしまいますが、「右」の「口」部分が、顔にある「くち」ではなく、祝詞を入れる箱である、なんてエピソードはかなり印象に残ります。
これらを知って漢字を覚える、というよりは、理由もしらずに覚えた漢字が「実は...」という振り返り型のほうがより興味がわきますねー。読み物としては面白い。
ただ、図らずも「白川文字学の体系を知るためには~」と著者が記しているように、白川先生の「学問」的な要素も見え隠れします。「こじつけ」とはいいませんが、多少無理があるような「省略」した説明も散見されます。対象とする漢字の数を多くするよりは、シンプルな漢字を深堀りした方が面白いのかもしれない。「文字学」を習得する、のではなくて、漢字の面白さを得たい、というピュアな動機ですので、ね。

【ことば】漢字の説明をする白川さんの姿が楽しく躍動していたのです。

先生は、本当に「楽しんで」研究されていたのでしょうね。また、それを他の人に丁寧に説明される姿が想起されます。それだけ打ち込めるもの、欲しいなあ。

白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい

2011/05/11

こんな会社があることを誇りに、刺激にしよう

日本でいちばん大切にしたい会社
日本でいちばん大切にしたい会社
  • 発売日: 2008/03/21
『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本光司②
[6/90]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

すでに読んだ方から「いいよお~」って言われている本。以前に『世界一誇りにしたい会社』っていう本を読んでいるんだけど、こっちが原点。いわゆる「ビジネス」とくに「経営」に関する本でよく言われている「社員満足」とか、コンサルのセンセがいうと「キレイごと」にしか聞こえないけれど、実際に、ホントにそういう気持ちで動いている会社があることに驚愕する。
障害者を雇用し続ける、困っている人たち一人ひとりへの商品を作る、創業時の思いを持ち続ける...口で言うほど簡単ではないことを「続けて」いる会社がここにある。著者が冒頭であげている「社員の幸せ」というのは、以前自分でも共感したけれども、この気持ちを持ち続けることだけでも難しいのが現実だったりする。本を読んで共感しても、結局目先の数字、これにとらわれてしまう自分がいる。
恥ずかしいですね。自分の価値がどこにあるのか、自分はどのようにして生をうけた社会に何を返していくのか。経営者としての経験はないけれども、年齢的にも「自分がどう」ということから「周りの人がどう」というところに視点が変わりつつあるのは自覚できる。が、足りないね。だって実践している会社が実際にあるんだから。
地域貢献や、社会貢献、これらを本気で考えること、そしてなによりもキーワードは「継続」だと強く感じる。創業時にはそれぞれの社長が「本気」だったはず。それを「続ける」ことができるかどうか。自分に足りないものが見つかる。「売上は後からついてくる」って(それこそ)キレイごとを言うことは簡単。その姿勢を貫くことが難しい。難しいけれども、その高い壁を越えなければ、本当の「価値」が生まれてこない。
会社って...働くって...という根本的なことに対して、根本的な姿勢を問いなおすことのきっかけを与えてくれる本です。書いていないけれど、創業者、社長は、誰よりも先頭に立って、想像を絶するような「努力」をしてきているんだろう。その努力ができるのは...「愛」ですね。社員に対して。社会に対して。これなくしては歩けない。

【ことば】お客様の喜ぶ姿を自分の目で確かめるのが、私たちの最大のモチベーションです。

あたりまえのように聞こえるけど、本質。そもそも「お客様の姿」を見失っている時がないですか?自分に問いかけてみる。

日本でいちばん大切にしたい会社

2011/05/09

固い...真実を「わかりやすく」も哲学だろうと思ったり。

『道徳を問いなおす』河野哲也
[5/89]bk1
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

昭和初期の哲学者、和辻哲郎氏曰く「日本人には公共心がない。公共空間で出会う他者には無関心であり、権威、権力者に対して忍従的な態度を示す」...これが、時代が進化(変化)した現代において、何か変わってきているのか、よくなってきているのか...という問題提起。昭和初期の時代環境は経験できないけれども、少なくとも現代における「同様の」空気は感じるし、自分のその中の一人であることに違いはない。著者は、「道徳」の定義として、これらをクリアするという目的のもと、「(本質的な)民主主義」や「哲学という教育」を説く。
その内容は、まさに「哲学」的であって、自分のような凡人が理解できる範囲を超えている...難しいんですね、読むのが苦痛になるほど。個人的な考えとしても、おそらく著者の主張するところとそう変わらないと思われるし、子を持つ親としての「教育」にも関心は低くない。ので、同意できるところはあるんです。ただ、同意「できる事柄を言っているんだろうなあ」というレベルにとどまってしまう。自分の読解力の低レベルがもたらすことではあるけれども、著者のいう「正しいこと」に変えていく、そのことを実現するためには、凡人でも同意、理解できるようにせねばならんのでは?
いろいろな哲学的な観点、民主主義のありかた、等々について研究者の論点や、これまで議論を重ねてきたことを披歴いただいて、このポイントが(少なくとも)「その世界」では、長期にわたり「研究対象」であったことはわかる。あとは「実行」がかなわない理由や、実現のための手法を考えていくことでしょう。「あとがき」に、
「実際に日本でカリキュラムをどのように組み立てるかに関する詳細な検討は、本書の射程の外である」
と書かれているが、多少「哲学者としての哲学の立ち位置を示す理想論」という印象が残る。教育現場で「道徳」を変えていくことが目的ではない。昭和初期以来の「無関心」をどう乗り越えるか、という点こそ重要であるはず。観点をもう少し広く とって考えていきたいね。

【ことば】議論の参加者は...そこで合意や同意に至るかどうかよりも、いままで語られなかった価値やニーズが表明されることがはるかに大切である

これは学校教育におけることだけではなく、「会議のありかた」という社会人にも適用されるべきもの。「日本人は苦手」と言われるディベートも含めての話。ここは大事なポイントだし、実際の場で変えることのできるところでもある。

道徳を問いなおす リベラリズムと教育のゆくえ (ちくま新書)

2011/05/06

いい「年齢の重ね方」です

気にするな (新潮新書)
気にするな (新潮新書)
  • 発売日: 2010/06
『気にするな』弘兼憲史
[4/88]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

「島耕作」でおなじみ、一時期はテレビでもコメントしていたなあ。でも実は「島耕作」って読んだことはない。著者のご自身の人生観、仕事に対する姿勢、人生訓...等々が書かれています。予想通り、「島耕作」中心で、代表的な作品を書くにいたった経緯が中心で、これにご自身の生き方を重ねた内容になっています。
著者自身は、幼少のころに夢見た(そして一度あきらめた)「漫画」という分野で人生を固めた方。ただそこには、還暦をすぎた今でも続く「仕事中毒」的な側面が見えます。本書の内容から、それを「苦痛」ととらえることなく、いつまでも「創作意欲」を絶やさずに、前に進んでいる感じ。ご自身が言っているように、その世界は、老いも若きも同じ土俵で戦っているため、年齢を重ねたから楽ができる、っていう世界でもないみたい。もっとも著者自身が「楽をしたい」とは毛頭思っていないようですが。
人生観としては、個人的に同意できるところが多いです。
不公平を嘆く前に、仕事にまい進すべし。
長期的な夢も大事だけれども、手の届く目標設定が大事。
誰かのせいにするよりは「自己責任」の意識を持つべし。
等々。現実社会を生きる上で、あまりに「夢」を追うのはよろしくない、と説いているが、実際に「動いている」社会での生き方には合致します。一方で「夢<現実」的な側面が強すぎるところは、「少しだけ夢を見たい...」という(甘い)考えを持っているのが自分ですけれども...でもこれも必要だと思うんだよね。「現実的」でもいいけれど、「夢」も大事だと強く思っているので。
いずれにしても「仕事大好き」は素晴らしいことです。「好き」がよい波を呼んでいるでしょうね。還暦すぎても現役。しかも苦にならず。素敵な生き方です。
「ある程度」著者自身の反映でもある「島耕作」であるそうですが、この本を読んでいてその「作品」を読みたい、という気持ちにはならなかった。この本の、「著者の自画像」で十分かと。「説教じみてる」という批評もありますが、自分はあまり気にならなかった。それよりはむしろ、この本を通じて著者が何を言いたかったのか-自叙伝なのか、メッセージなのか-が分かりにくかったかなあ。読み手の都合で判断していいのかもしれないけども。


【ことば】経験をしたこと、見聞きしたことは何でも余すところなく使える...考え方ひとつで、どんな経験でも使える。捨てるところはないのです。

そうなんです。すべての出来事が「今の自分」を作っている、と考えれば、人生に無駄はありません。逆にいえば、(たとえ「今」は無駄だと思われても)いろいろな経験をすることはプラスになる。短期的に考えてばかりでは、よくないよねえ。

気にするな (新潮新書)

2011/05/05

何の本なのかわからなくなりました

『売り方は類人猿が知っている』ルディー和子
[3/87]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

思わせぶりなタイトル...大枠の論調は、「人類の「前」の時代から脳科学的に変わらない部分が人間にはあって、文化的のレベルが上がっても、人間の根本は変わっていない」ということです。「売り方」というキーフレーズが付与されているので、「じゃあ、その『人間』に売るための手法は?」というコラムを期待しておりました。最初は脳に関する科学的な見地。そして...それで終止してしまって、肝心の(と自分勝手に思っていた)マーケティングとの絡みはあまり見つかりません。
「行動経済学」すなわち、経済的なメリットのみを軸として行動する人間=経済学を突き抜けた、経済xサイエンスといった分野についての説明が続きます。が、そこで上限に到達してしまったようで、「行動経済学から見た場合に今の消費は...」という客観的な事実は連なっていますが、「で?」という言葉が、読み進めていく中で何度出てきてしまったか...脳のどこの部分が活発になるか、なんて、サイエンスはどうでもいい。そんな「仮説」を元にしたときに、じゃあ、これからの社会でどうしていきましょうか、っていう提案がほしかったなあ。「それは読者にお任せ」でもいいんだけど...私はこう思うっ..ていう著者の「思い」みたいなものが見当たらなかったんだ。見つかれなかった自分の読み方が悪いのかもしれないけれど。「ブランド育成には、売上の上下に一喜一憂せずに、マーケティング投資を継続するべし」的な、本質的なフレーズもあります。ありますが、この手のものは「類人猿」に教えてもらう必要はありませんよね。
本の概要(裏表紙)には「まったく新しい消費額の読み物」とありますが、8:2で「脳科学」の読みモノです。逆、せめて5:5くらいだったら、かなり面白いと思いますね。切り口は面白いし、「いくらテクノロジーが発展しても、類人猿から続く『人間』の本質は、こーゆーのを求めている」っていう内容だったらうれしいんだけどね(そういう期待だった...)。

【ことば】進化の歴史の過程で変わったことに注目するのではなく、変わらなかったことに焦点を置くと...自信を持って決断を下すことができます。

いい言葉です。まさにこういうことを求めていました。残念なのはこの言葉がでてきたのが最終ページであることです。

売り方は類人猿が知っている(日経プレミアシリーズ)

2011/05/02

シンプルだけど奥深いもの、みつかります

仕事で成長し続ける52の法則
仕事で成長し続ける52の法則
  • 発売日: 2011/05/03
『仕事で成長し続ける52の法則』和田裕美③
[2/86]
Amazon
K-amazon ★★★★☆

和田裕美さんといえば、「英会話教材」のイメージが強い(というかそれしかない...)けど、特別な才能、というよりは現場で前向きに取り組み「続ける」ことで成功をなし得た方、という印象が強い。故にこのタイトルにあるような「ハウツー」はちょっと違和感があったが...読んでみてハラに落ちる。よくもわるくも「ハウツー」ではない。「法則」とあるけれども、著者ご自身がこれまでやってこられた「姿勢」のようなものが書いてある「だけ」。「だけ」ではあるけれども、いわゆるコンサル先生の書くものとは全く異なり、現場の空気が満ち満ちていて、結局は「やるしかない」ということが伝わってくる。
「効率的ではなくとも、動いてみること」
「相手を好きになること」
「地位が人を育てること」
まさに「現場」ですね。奥ゆかしく「自分はスペシャルな人間ではない」的な表現をされているが、失礼ながら、おそらくそれほど器用な方ではないのだろう。けれども、著者自身の指針である「陽転思考」、つまりは、物事を二つの側面から見る、ということを貫いている姿勢こそが成功の秘訣だろうと思う。タイトルに「成功」ではなく「成長」とあるのも著者らしいかも。「成長」こそが「成功」につながる、つながらなくとも「成長」は大事なポイントであるし。「成功」を求めても駄目で、また「成長」の前提としては、「変化」「行動」が必要であることも、この本から読みとれる。
著者自身が「働いている自分が好きだ」ということを言っているけれども、おそらくは「ニンベン」を取った「動いている...」が好きなのだろう。まずは「動くこと」が大事なのは、どこでも書かれていることだけど、実際にそうしてきている著者が言う言葉には重みがある。
本、映画など「私を成長に導いた7つのアイテム」は、勝間さんっぽくて、あまり参考にならないけれど...「陽転コミュニケーション」は興味津津。有料メルマガ(?)に登録してみよっかなあ。
正直、「この本で初めて知った!」ということはないけれども、同じ言葉でも「伝わる」かどうかが大事であることを実感。本質的なことをわかりやすく「伝える」ということは、別にビジネス書に限らず、まさに「本質」だよねー。

【ことば】とにかく仕事を詰め込めるだけ詰め込んで、なんとかこなす...

「時間管理」の法則。メモのテクニックなどではなく、「チカラワザ」できました。ここだけ抜き出すと、「何も買った本でいうことじゃ...」という気持ちにもなりがちですが、これは「本質」なんです。制限があったり、テクニックがないと、そこから生み出されるものがありますからね。こういうコラム、好きですねー

仕事で成長し続ける52の法則

2011/05/01

消費行動を「分析」したところで、「幸福」とは無関係

『幸福の方程式』山田昌弘・電通チームハピネス
[1/85]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

パラサイトシングル、婚活...「家族社会学」者として独自の切り口、視点を持つ著者...と思いきや、ほとんどが「電通チームハピネス」による本でした。山田先生はわずかだけで、つまりは「電通の本」です。最初からチェックしておかなかった自分の責任によるものですが、広告代理店の本など読む価値はありません。家族消費から社会貢献...云々言われても、所詮広告代理店ですから、なんのための「マーケティング」なのか、っていったら、つまり広告と広告主、そのパフォーマンスのため、つまり「銭」のためです。
このタイトルはまさに「売るため」であって、図書館で借りた自分は「セーフ」でしたね...山田さんを担いで、最初と最後の項だけ担当してもらう...という手法もどうなんでしょ?「人として」いいんですかね?
確かに、情報も商品もサービスも「飽和」しつつある中で、さらに人口減少すなわち市場規模が拡張しない時代、「しあわせ」をどこに、求めていくか、というのは消費者としても、また生産者としても無視はできない。でもこればっかりは、本から得られる情報が解決策にはなり得ないと思う。マーケットに実在している中で、その中で「変化の風」を感じること、これ以外にないんですよ、きっと。優秀な方々が活字にしたところで...なにか意味をなすのかな?「ペンタゴンモデル」って言われても、業界の話をしても、意味がありません。別の方向にアタマを使ったほうがよさそうだよ。


【ことば】自分の内側、社会、周りの人々との間につながりをつけることが幸福を生み出すスタイルです。

なんとなくは理解できますが、「だから?」で終わる主張ですよね。本書ではこの続きに『人々は...つばがりを...維持することにお金をかけ...』とあります。余計なお世話、ですよねー

幸福の方程式 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書 44)

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