2010/09/29

マーケティング論。で?


『わたしたち消費』鈴木謙介
[19/165]Library
Amazon ★★★
K-amazon ★★

かなりの大昔。大学で「マスコミ論」を聴講したときに思った、「現実と離れているなあ」という印象が甦る。「大衆」から「分衆・少衆」へ、「みんなと同じもの」から「自分だけのもの」を通して「自分たち『だけ』のもの」へ。理論はわかる。身の回りを見ても、「他人と違った個性を出したい」から「一部のコミュニティに限られた話題で盛り上がる=ウチワウケ」への流れ、って確かにあると思う。で、どうするか、だ。たまに(特にカミさんから)「本ばかり読んで実際に役にたつの?」というスルドイ指摘をうけるが、本書を読んだ印象からすると、この質問に対して「そうですね、すみません」と答えざるをえない。
ところどころ実例が入っているので多少緩和されてはいるが、正直読みにくかった。マクロ的な視点も必要な場面はあるんだろうけれど、どうも苦手。「電通」っぽいアプローチ、既にタイトルにも表れているけれども、大衆だろうが分衆だろうが、つまりは一人のお客様、消費者である。消費者を知る、ってことがポイントなわけで、電通さんのアンケートで「○○が何%、これらを○○層と捉える」というところに若干の抵抗感。
インターネットの普及により、「これからはネットだ!」と「無責任に」叫んでいた時代から、今は「知恵」が無い限りは成功しない、つまりネット=ツールという主張がよく聞こえてくる。これは確かにそう思う。その流れを前提にしている本書からは、何がしかのヒントを得たいと考えていたが...途中何度挫折しそうになったか...という状態だった。大枠としての考え方は「共感」というレベルで得られたと思う。本書の言葉からは、
「お客様は神様です」から「お客様は私たちの仲間です」という姿勢の切り替えが、企業が消費者に示すべきメッセージとなる
という点は言葉にして明確だった。「ユルイ」つながりが今の消費者傾向だというのは既に実感、ただし、排他的な「ウチワウケ」は、快くないし広がらないし、それを対象と考えること自体がどうもすっきりしない。
曖昧だった「読後感」であるが、著者が本書の冒頭でチクリと批判している三浦展氏が、逆にAmazonのレビューで「仕返し」をしているのを目にして、なんだか後味が悪い。

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2010/09/28

読みやすい。さすが「感性マーケティング」


『人間力の科学』小阪裕司②
[18/164]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★

『文蔵』なる"月間文庫"に連載されていたコラムの集大成版。『文蔵』...知らない。月間文庫なる分野が存在していることも知らなかった...感性マーケティングの著者の本。以前に去年の10月に著者の本は読んだ。それこそ「超有名な」方だけど、意外に前回読んだ本の内容は記憶がない。苦手な「再編集」版ではあるが、読むやすかった。ひとつひとつのコラムがそれほど長くなく短くなく。その辺は「感性」での経験値かもしれない。タイトルから想像はつかなかったけれど、大学教授などの論文と、ビジネス現場の「融合」がひとつのテーマだったように思う。ところどころ著者の「おちゃめな」一面が描かれていたりして、読み物としては面白い。この本には、所謂「答え」がないので、それを期待すると肩透かしかもしれないけど、「なんとなく」のヒントはちりばめられているように思う。「個人レベルの無形資産」や「オリジナリティを生み出す力」などなど。直接的に「じゃあ、今日から」というものは少ないけれど、「意識」を変えるきっかけにはなりそうだ。ここで生まれた意識と実際の場での困難さ、これにいつも戸惑うんだけどね。でもひとつきっかけにしないと、ね。
自己表現するときに、「よく見せる」ことだけでも「卑下する」だけでもダメで、「よく見せる」を60%にすれば好感度アップ!みたいな箇所もあった。学者先生の実験結果らしい。60%にする努力をすることは、なんとなく本末転倒の感じがするけど、「どちらも極端はダメ」というのは感覚的にもわかるし、注意すべきところかもしれない。
ひとつ気にいったフレーズが。これからの時代、「匠」として仕事に向かう態度が不可欠である、と説いている章。「匠」の技=技芸のポイントとしての次の言葉;
「技芸のものづくりでは、製品には『用の美』が求められる」
用の美とは「日々の暮らしに役立つために親切につくられ、よく働き、ながく保つもの」であり、「このようなものにはおのずから美が宿る」
これって特に「製品=物理的なモノ」に限らず、サービスだったり、支援する精神であったり、思う気持ちであったりしてもいいと思う。すなわち、考え方の中心にこれを置くことが大事であって、それは「美」くしいことだということ。ここでも出てきたのは、「人から応援してもらうよりも、人を応援することのほうが楽しい」類の、利他的な考え方。もう、マイブーム。

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2010/09/27

伝わってくるものはある。あるけど...


『出来ない理由に興味はない』蔵元二郎
[17/163]BookOff
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★

ベンチャー経営層に特化した人材会社を立ち上げた著者。すみません、その会社のお名前は知りませんでした。「起業」というテーマに対しては、著者は「日本を元気にするために」という明確な目的を掲げ、その「手段」としての人材会社だという。「これをしたいから」という理由ではなく、その先にあるものを見据えての起業。ある意味これまで読んできた「同様の」本とは異なる。スタイルは非常に前向きで熱く、刺激を受けるポイントもある。が、どうしても自分の「先入観」が邪魔するのか、「この人は誰?どれほどの実績なの?」という邪念が覆いかぶさってしまい、素直になれない自分がいたりする。聞けばその会社はその分野では日本でトップだという。その市場を知らない、接していない自分にその(素直に受け入れられない)要因があることは間違いないのだが...
「今(与えられている)仕事ができてから次を考える」(将来起業したいのでこの会社で勉強したい、という入社志望者に対して)というのは、多少なりとも現実味があり、自分の周りでもそういう考え方の人がいる。「慎重」なのか「変化を恐れる」のか。もちろん一刀両断に決められる話ではないが、自分もどちらかといえばそういう行動をとるタイプかもしれない。結果として「現状維持」という事態になることがやっぱり多いんだけどね。だから「目的」を見据えて行動せねばならぬ。というのは大事なポイントだと思う。
そしてまた出てきた最近のキーワード;
「相手を幸せにすることによってのみ、真に幸せになれる」
意識が高まっているから、なのか、ンとによく目にするようになった。これって自分に与えられた環境であり、「指令」なんだと思う。これを具体的に考える。実行に移す。でも慎重に。
本筋とは若干異なるところかもしれないが、「今自分があるのは多くの人の努力の結晶であり、歴史上でも今の環境を作ってきた人たちに感謝をする必要がある。歴史=特に近代史=を学ぶことは大事」という一節がある。これってなんだか新鮮。確かに。「感謝」の気持ちもそうだし、自分一人じゃない、自分に与えられた使命(大げさだけど)の再確認も含めて、「必須」だと思う。行動。
...というように箇所箇所で結構クる部分も多いのだけど、どうしても「誰?」が邪魔してしまうんだよなあ。イケナい癖だよね。まずこれを克服せねば、だなあ。

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2010/09/25

勢いがあるなあ。自信も。


『すぐ動く人は知っている』竹村尚子
[16/162]bk1
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★

世界のファンドマネージャートップ20に選ばれた。スタンダード&プアーズから表彰された...「はじめに」からご自身のきらびやかな経歴の披露、いわば「自慢」が続く。まずい、と思ったねー。この手の自信家さんの本は、もちろん努力された結果だとは思うけど、あまりおおっぴらに「自分で」紹介しちゃうのは好きではない。最後まで読めるかなあ...って3ページめくらいで不安に思う。その後は(「自慢」は薄まってくる)自信の経歴、というか性格によって、「これはこうあるべし!」というスタイルが続く。
「人と同じことをしない」「不言実行をかっこいいと思わない」「オンリーワンを目指さない」...アタシはこうやってきた。で成功してる。だからこうなのよ!という調子だ。
これはもう...と思いきや、いつのまにか引き込まれてしまっていた。「そうそう!」「あーいいねえ、その言葉」「それは違うと思うなあ。でもそういう考え方があるんだね」...多分、著者が書かれていることのウラに強い思いがあるんだろう。それが伝わってくる。けして流れるような文調ではないけれどその分、嘘のない率直な思いが伝わってくるんだろうと思う。例えば「失敗しても反省なんかしない」っていうのがあるけど、これって字面だけ見ると「?」だけど、反省するくらいなら先に動くべし、つまり何のための「失敗」なのか、失敗で終わらせることじゃなくて、成功へのイチ通過点とみて「反省」じゃなくて先に進むバネにする、みたいな内容だったりする。著者もいうけど、失敗は「やらなかったこと」である、と。これが結論だよね。
なにより響いたのは、「他人を幸せにできる人がいちばん幸せな人になる」というクダリ。最近実はこの意味を含むフレーズが急激に身の回りに増えてきている。引き寄せているのか、「気づく」ようになったのかは分からないけど、最近、直近の「キーワード」だ。これも「自信家」の(失礼)著者から言われると、余計に真実味を増して、説得力があったりする。
最初の「自慢話」があった分、かわからないけど、著者の「思い」が全面的にでていて、読後感はよい本ですね。きっと実際に話をするともっとパワフルで周りを「幸せに」できる人なんだろうなあ、って思う。



2010/09/24

「読み物」として秀逸


『おまけより割引してほしい』徳田賢二
[15/161]BookOff
Amazon ★★★
K-amazon ★★★★

通販事業をやっていて、企画の反響から「そう思ってるんだろうな」と思えるのが、まさに本書のタイトル。これを「感覚」から「理由づけ」したのが本書の内容。[値ごろ感=価値/費用]という「公式」をベースに、値ごろ感をあげるには、
①費用を下げる②価値をあげる③費用と価値のバランスを整える
これを実践している事例、考え方の説明、それらが綴られている。非常に面白い。特に①における「費用」という概念に、実際の金銭だけではなく、時間コストを加味しているところが明快に入ってくる理由だろう。例として何度か出てきたのは、「近くのコンビニ」「遠くのアウトレット」。コンビニで買うような「低額商品」の場合、あまりにそれにかける「時間コスト」がかかりすぎると「損失」のリスクを感じるので、時間コストがかからない近くのコンビニで買う、という「論理」。所謂「経済学」が数値上の理論であって、心理や行動という点が加味されていない「非現実的」なものであり、人間の行動は、経済学理論上には動かない、ということがあるけれども、それを「穴埋め」する経済行動学観点の理論としては、「あり」なんだと思う。
本書には、それらと合わせて「衝動買い」の行動心理にも触れられており、「身近な行動経済学」としては、(その入門としては)とても読みやすい。「実感」できる読み物である。現実的には、消費者は既にここに挙げられている「行動学」から既にさらに進化しており、①(割引)と②(価値)の両方を求め、③(バランス)については、売り手側のテクニックを「お見通し」というレベルまで達していると思われる。売り手はつまり③(バランス)について「テクニック」ではなく、あくまで②(価値)をベースにした③のバランスが必要であると思われる。それは当然に「プロ」としてのメッセージ力、(「だます」という意味ではなく)テクニックが必要で、それらを考える、実行する前提として本書を理解することは意義があることだと思われる。
読んでいて「実感」がある、と書いたが、若干ながら、「で?」という感じがしないでもない。やっぱりどこか「学問的」な匂いが消えていないから、なのだろう。直接的に実践に結び付けれられるものは少ないけれど、今後すべきことを考える前提としての「情報」というレベルで見れば、十分価値あり。何にしても読んでいて身近に感じられる(消費者としても、売り手としても)のがよいですねー。

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2010/09/22

シンプルな「マインド」設定指南


『イタい人にならない自分☆発信力』原村和子
[14/160]bk1
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★

冒頭読んで、自分が「イタい人」であることを自覚...「ならない」ために何ができるのか...という観点で読む進めたが、全体としては「イタい」ことについてはあまり触れられず、内容的にはわりと「ありふれた」感じがしないでもない。ないが、ロジックやテクニック論ではなく、シンプルに「マインド」を説いているところが却って心地よい。たまに「診断チャート」みたいなものは出てくるけれども、「自分を見つめる」「自分のなれる最高の自分を目指す」「それに向かって努力邁進する」という、至って素朴なフローである。著者も繰り返し述べられているけれど、実行する、目指すとことに向かって一歩踏み出す、これが最も重要なことであって、その一つの手段として「発信」ということがある、という理解。
ちょっと前に『ウェブを炎上させるイタい人たち』という本を読んで(「イタい」というのは一般的な用語なのか?)、発信する人=何か勘違いしてんじゃないの?という論調で、それはそれで痛快であり、理解可能なことであったが、一方本書のいう「手段」としての発信、その先にあるものを求めての「発信」も、それはそれ、意味をもつものだと思う。本書で触れられているように(或いはコーチとしての著者のやりかた?)発信をすることによって、批判を含む評価をもらう、それらを受け入れることで自分が磨かれる、というのは字面的には十分に理解できる。ただ、素直に受け入れる意識が足りないと(自覚あり)、批判に対して攻撃反応したり、或いは批判を受け入れないよう自分に閉じこもったりする傾向もある。要は「その先」に何があるか、何を見ているか、というのがポイントだろう。それを見つけて「表」に出して、それに「思い」を載せること、一貫して「思い」続けること。それがポイントなんだって、気づかされた。
ビジネス書を読んでいると、多くこのようなことが書かれているが、「自分を見つめる」ことを実践していないことに、いまさらながら気づく。著者の提唱する、自分の「キャッチフレーズ」はちょっと抵抗があるが、シンプルな言葉でいえば
「夢」
これを見つける、見つめ直すことは重要だと思う。少なくとも自分の中にはあるはずで、それに囲いを作って覆ってしまっているのかもしれない。最近は以前のように本を読んだ先から、その本に書いてあったことを(ちょっとだけ)着手してみる、ということも滞っているなあ、と実感。少しずつ、だけど変わっていかなくちゃ。そんな気にしてもらいました。なんとなく「コーチング」って好きではないんだけど、そういう先入観、壁もいけないんだな、と。



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2010/09/21

「小さな」気づきあり。実行がポイント。


『脳に悪い7つの習慣』林成之
[13/159]BookOff
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★

タイトルを見る限りはネガティブなイメージもあるが、内容は至って「前向き」。「悪い習慣を止めて、良くしていきましょう!」というポジティブな考え方の提案。「効率最重視でよいのか」とか「興味・関心が第一段階」といったどこかで聞いた話が多いのは事実で、この本で初めて!目からウロコ!は正直無い。無いけど、(これは著者の経歴などによる説得力、人間的な魅力だと思うけど)なんかできそうな、やってみようと思ってしまうような「何か」がある。その道の権威だけあって、「脳の働き」というか「性格」を、客観的に見て、「こういうやりかただったら脳を『使える』」といったサジェスチョンが多いことも一因かもしれない。
同じく「脳」を研究されている茂木先生の本もおもしろい。この本もおもしろい。自分でも気づかなかったけれど「脳」については、興味があるのかも。医学的なこと(A10神経群とか海馬とかの名称も含む)は、覚える気もないし、興味がないけど、たとえば「だいたい終わったあ」と思ってしまうと、脳が「終了モード」になってしまって、その後の効率が目に見えて落ちてくる、とか、それなりの経験から「そうか...」と思い当たることも少なくない。「脳の仕組みを理解して」という科学的アプローチは、ベースの知識にとどめておくとして、本書で得られた「ヒント」は活かしていきたい。これですべて解決!ではないけれど、前向きに考えることができるヒントは数多く存在するはず。
具体的には(些細なことかもしれないけど。また、既に「知識」としてあるはずかもしれなけが)
・「嫌だ」「疲れた」と愚痴を言う
・常に効率を考えている
・言われたことをコツコツやる
これらの「悪い」習慣は、意識的に変えてみよう。特に3つ目の「コツコツ」。これは逆説的な意味合いも含んでいると思われるが、
→達成めざして、一気にやりきる
→主体性をもって、取り組む
ことの大事さを説いている部分。コツコツやること自体が悪いわけではないが、どこかの時点で「ダラダラ」に化学変化するリスクもある、ということだと理解。これ、意識してみよう。
ベストセラーになるだけあって、読む価値は十分にあり。必ずしもベストセラー=(自分にとっての)良書ではないことは経験済みだけど、その意味では「あたり」でした。

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2010/09/19

淡々と...コラム的にはイケてるが。


『あなたは、なぜ「自分に似た人」を探すのか』宮城美幸
[12/158]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★

一昔まえ(になってしまうのか...)には、「個性」「他人と違うポイント」「私だけ」というのがポイントだったと思う。消費者としての自分でも(まだ)そんな気でいたのだが、もはやそれから時代は流れて「共通性探し」「共感・共有を超えて共振へ」という流れだという。事例として、東京マラソン、東国原知事、日本ハム・ロッテの強さ...をあげている。まったく知らない他人との間で「共通項」を見出して、それが「共振」することで大きな盛り上がりになる、それが政治や社会を動かすことにもなる...という見解である。
非常に「電通」っぽい。個人的に電通さんになんの感情もない(そんな地位レベルではない)のだが、すごく冷静で、包括的で、表面的で、「これで結論」的な、「こっち側な解釈をひとことで言い表したい」、そんなイメージ。確かにそうだよなあ、社会が変わっているなあ、言われてみればそうだね。というのがある一方で、ムリヤリまとめてないのかなあ、あげられた事例はそうだけど違うこともあるでしょ、それは解釈の違いだよねー、ということもあり。まあ、個人的には「今の時代」を総括するような必要もないし、単なるコラムとして読み物として楽しめばいいかな、と。本来はここにまとめられている「社会の動き」からマーケットの変化を捉えて、これからのビジネスの展開を考えていく、ということが理想的なんでしょうけど、そんなことは図書館で借りた本だけで進めるものではないしね。やっぱり「読み物」で十分です。
そういう観点からすると、「共振」というイメージはある程度同意。そしてそこで「共」にしているもの、つまりそのグループを結び付けているものが「薄い」=薄い関係性というのも同意です。故に難しいんだろうね。20年前に学んだ「メディア論」の中にあった、オピニオンリーダーとか、あるいはインフルエンサーとかは最近だけど、これももはや「図式」が変わってきている(突出した一人が発信するケースよりも、発信する複数が互いに振れるケースのほうが...とか)んだろう。何より大事なのは、実践の場で、そういうことを「肌感覚」で捉えられるかどうか、だと思う。「そんな世の中になってきている」という感覚があれば「共振」という言葉を知らなくたって問題ない。



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2010/09/17

前向きな「人間学」がある


『となりのクレーマー』関根眞一②
[11/157]Library
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★★

苦情、クレーム...正直「ネガティブ」なイメージがぬぐえない。苦情処理のプロである著者が、百貨店時代、その後の歯科業界、学校関連での「クレーム対応」を実例を交えながら紹介。一部「対応策」も掲載してもらっているが、それは「マインド」としてアタマに入れておくべきことで、「マニュアル」ではない。著者の主張もそうだと思う。自分たちの事業にお金を払ってくれる「お客様」を相手に商売をしている限り、苦情はなくならない。それを避けて通るのか、それを糧にする、と考えるのか。少し前に著者の別の本を読んで、あきらかに自分の中で考え方が変わってきている。「クレームは宝の山」という言葉自体はアタマに合ったけれど、ここが一番大事かも、という意識は芽生えつつある(広告よりもDMよりも、という意味で)。
本書に挙げられている事例をどう読むのか。「他社でもあるんだなあ」とヒトゴトにするのか、「自分に置き換えてみて」できない..とあきらめるのか、(当初は当然に)苦しいのを承知の上でなお且つ意味を見出して取り組むのか。大きく変わってくるだろう。もちろん「実行」ありきではあるが。著者のレベルまで達するのは相当な努力と「何か」が必要だろうと思う。「お客様の立場になって」という表面的な字面は理解できるとしても、本当にそこまで達するのは、「プロ」である著者でも2年かかった、という話。そうそう簡単なもんじゃない、と決意が必要だろう。著者の本は(まだ2冊しか読んでいないけれど)偽りやカッコツケではなく、著者がクレーム対応の「プロ」であることを感じさせる。前向きである。人間が好き、とか、クレームを言う人の背景を考える度量、余裕がるとか、テクニック的なものではなく、内面的なものが前述の「何か」なのだろうと思う。
クレーマーだって、もしかしたら逆の立場に立つ場面もあるかもしれない。そういった意味では「人間学」といういことになるけれども、著者のこれまで実践してきた活動は「人間学」なんて表現ではカバーできないかもしれない。久しぶりに本を読んだだけで「プロ」を感じている。極めている人はやっぱり何か違う。
クレーム対応の極意は「経験」だと著者がいうように、やはり「マニュアル」は存在しないと思う。ただ「経験」を漫然と受け入れているのでは進歩はないのだろう。クレーム対応だけではないよね。「経験」を活かさないともったいない。活かす場所は自分で作る。これまでしてきた仕事だっておんなじだ。「活かせる経験」をしていない、ってことは、「合格点」の仕事をしていない、ってこと。ちょっと「クレーム」から離れてそんなことまで考えは及んだ。

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2010/09/16

過ぎたるは...


『凛とした人、卑しい人』山崎武也
[10/156]Library
Amazon
K-amazon ★★★

拝金主義、ご都合主義、自分中心主義にあふれた現代社会。その中で自分はそれに染まっていいのか?「凛とした」人になるためには、自分の「正しい」価値観、判断基準の元、ちっちゃな「正しいこと」を改めて見直して実行していこうよ...というのが主たるテーマ。だと思う。金を必要以上に稼ぐことが幸せなの?媚びる行為をしてまで出世することは本当に大事なことなの?...といったことをひとつひとつ「正しいのはこうすること」と説いていく内容。そのひとつひとつは「正しい」と思う。自分と意見が異なる点はいくつかあったけれども、概ね「そうだよね」的なコラムが多い。だから、なのかもしれないけど、ちょっと「単調」に感じてしまうのと、そこまで「清廉潔白」でいいのか?って思ったりもする(これ自体が「卑しい」のかもしれないけど)。適者生存のセオリーでいえば、「地球温暖化」だった、もしかしたら温暖化に適したものに変化していくかもしれない、なんて結構「コロンブスのたまご」的な主張もあった一方で、若干「昔からの」価値観が根底にあるという印象を受け、周りが変わっていくなかで「適者生存」、時代、世界、環境にあった生き方、考え方も否定できないのかなあっておいう思いもある。「凛とした」の定義も変わってくるかもしれないよね。自分も「古い」部類なので、直接的には否定ではなく、肯定なんだけど、少しだけ違和感もあったりするところも少なくない。
あと、「無料」とか「○○放題」にうかつに乗るな!という主張がなんどかあった。これは確かにそう思う。ただ、その理由が「商人はずるがしこく、だます手法を心得ているから」なんていう直接的な表現であったことは「?」。確かに「マイナス」をするのはあり得ないけど、正当な商いをする人も多い、というか圧倒的に多いだろうし、それに価値観を感じている(価値、ではなくて感覚的なものも含めて)消費者だっている。なによりも「商人」だって、そこから得た金を以て「消費者」になるわけだから、そこを真っ二つに切り分ける必要はないだろう。
という感じでプラスマイナスあり。失礼ながら著者ご自身のことをあまり知らないのだけれども、どんな方なのだろう。「成人君主」ではあるまい。「人間味」ある方だと思うんだけどね。

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2010/09/14

よくわからん...


『人を助けるとはどういうことか』エドガー・H・シャイン
[9/155]bk1
Amazon ★★★★
K-amazon ★★


何が書いてあるのか、さっぱりわからん...もともとが悪いのか、訳が悪いのか、自分の能力が原因なのか。原題Helping=支援を行うにあたり、支援する側(支援者)と支援される側(クライアント)との関係性の中で、支援者がどうあるべきか、どう関係作りをしていくべきかを説いていく...という内容...だと思う。よくいえば「学術的」、悪く言えば「学術的に見えるような難しい文調」というところだが、自分には内容はさっぱり理解できず、ストレートにアタマに入ってくる箇所はほとんどなかった。
「支援」を依頼する側はその時点で、位置づけがさがる(ワンダウン)ので、支援する側は誠意、敬意を以て支援に当たらなければならない。そうだね。ただ、これを「支援学」のような見方をしてもテクニックで解決することではないし、当然に支援者がかつて、あるいは今も「クライアント」でもあるわけだから、そこから自分で「策」を見出していかなきゃ、この本を読んでも得るところはないんじゃないかと思う。確かに自分では支援したつもりでも、相手にとって支援になったのか、余計なお世話なのか、またはその結果すらわからないことはある。ある、というか日常茶飯事だ。それを解決するヒントが(もしかしたら)見つかるのかな、って思ったけど、結果として「本を読んだところで見つかるようなものではない」というのがわかった。著者がいうように「信頼関係」が基礎にあること。これなくしては、「専門家」「医者」「プロセスコンサルティング」という本書に書かれているレベルには進めない。進んじゃいけない。それだけのこと。
あとがき(30ページもあるんだけど...)で、「本書をどんな人に読んでほしいか」という件があったのも、ちょっといただけない。結論として「どのような人にも」ということになっているんだけど、あとがきに書くようなことではないよね。
『反社会学講座』を読んだばかりなので余計そう思うのかもしれないけど、「社会学」っていったい何?っていう思いがより強くなるばかり。
高い本だったので、残念。「難しい」本はやっぱり避けようと思った。

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2010/09/13

すごい人だ。でも自分には...


『もったいない主義』小山薫堂
[8/154]BookOff
Amazon ★★★★
K-amazon ★★

あの「おくりびと」の脚本を書いた人...プラス大学教授、そしてかつての「料理の達人」を企画して...こんなにすごい人とはしらなかった...多種多才、そしてアイデアに優れ、「企画」の出にくい自分にはあこがれ...って流れがきれいなんだけど、どうも読んでいてもハラに落ちなかった。こちらの「環境」のせいもあるかもしれないが、どうも「多芸」を誇り(当然なんだけど)、こういう発想ですごい人になりましょー、よりも、すごいでしょ?っていうのが感じられてしまった。
確かに、断水のときにこれに怒りをぶつけるのではなく、改めて「水が出る」ありがたさを感じる、とか、新しい企画をするときに、一面的ではなくて、多面的に企画を考える(いろいろな分野を併せてひとつの企画を立てる)等、「そういう発想はすごいね!」という箇所はなくはない。不景気だから逆にチャンス!という考え方は前向きで学ぶところも多い。でも...どうも「自画自賛」的なイメージがあるんだよなあ。こういう発想ができるようになるために、こういうことをしてみよう、とかそういうのが少ない。そのソリューションは「興味」「関心」なんだろうけどさ。こう(いう発想ができるように)なりたい、っていうよりも、「この人すげー。でも自分とは違うなあ」って思うところでとどまってしまう。これはいったい...?
「人を喜ばせる」ことが原点になっている、というのは意識したいところ。ところどころ、そういう「素直にプラスに思える」点を拾って、集めてみる。そうやって読むべし。

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2010/09/10

強烈!強烈すぎかも....


『ウェブを炎上させるイタい人たち』中川淳一郎②
[7/153]bk1
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K-amazon ★★★

前に読んだ『ウェブはバカと暇人のもの』は痛快!だった。「ネット=万能」という考えを真正面からブッたぎる内容で、かなりスカッとしたことを覚えている。「これからはウェブだ!」「時代に乗り遅れるな!」という極めて表面的な標語を掲げて「参入」する企業がいかに多いか。「ウェブが素晴らしい」という表現はけして間違ってはいないが、「素晴らしい」のはウェブ自体ではなくて、それを使いこなす人である。だった「ツール」だもん。という内容で、つまり「ウェブ=万能説」を唱えるひと、それをキャッチフレーズにすり寄ってくるベンダーや代理店、こういう環境に包まれる身としては、拍手喝さいだった...
同じ著者の同じ主張の本。多少いやな予感はしていたけれども、その内容はほぼ同一であり、当然に「1冊目」から受けた衝撃は得られず。多少表現に「トゲ」が増幅しているような気も...こういう「続編」は、結局前の「よい印象」も薄れてしまいかねないような気もしますね。もちろん、この本が初めて、の読者も多いのだろうから、自分勝手には評することはできないけれども。
書いてあることは、痛快です。「自分から発信する」機能としてのブログ等についても、Twitterをはじめとする「コミュニケーション」ツールについても、著者が言わんとすることは理解。それを「コミュニケーション」と呼べるのかどうか、とか、簡単に「匿名」の元で会話することの危険性、必要性のなさ、そんなことを書かれている。
そうそう、そう思います。自分がこれを書いているのは「発信したいっ」という動機よりも、「記録」的な意味合いが強い。だって「書評」なんて書けるわけがないし(書いているつもりもない)、これはただの「感想文」です。でもね。開始してから1年半。これだけ「継続」できていることについては多少なりとも自信につながるものはあるんですね。「ブログを1年半」じゃなくて「感想文を1年半」ということについて。もちろん多くはないけれど、紹介した関係者から「読みましたよ」って声をかけてくれれば、素直にうれしい。それと見ず知らずの人が入ってきてくれている「数の動き」をみることも、これもうれしい。Twitterで言葉をかけてもらうのもやっぱりうれしい。そのレベル。自分は「素晴らしく」ないから、そのレベル。
言葉が厳しいけれど、逆説的に、著者がWebを「ツールとして」活用すること自体に否定的ではなく、要は「使い方」であることを説いていることはなんとなくわかる。でも多少きついかな。言っていることは「そのとおり!」と思うし、「本質」も見え隠れするけれど、後味の悪さが残る。少し残念。

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2010/09/09

クセになりそうな...


『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ②
[6/152]bk1
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★★

面白い。タイトルにあるように「社会学」を斬る、というよりも、世間で(国やマスメディアが主張する)言われている「常識」が、はたして本当なの?ということを、「隠された」データをも駆使して、問題提起する。少子化問題、犯罪の低年齢化、年金問題...これらについて言われている「問題点」は本当にそこにあるのか?「情報操作」とまでは言わないけど、本質的にはどこに問題があるのか。そしてそれを解決するためには、実はこういう切り口が...ということを著者自身の、ある意味「一方的な毒舌」で斬る。素直な、シンプルな、それでいて本質的な、実は建設的な意見だったりする。そして今一般的に(「上」の方から)出てきている「解決案」は、それによってはたして誰が恩恵を受けるのか。著者はメリットは「一部の人」と考え、「それ、違うでしょ?」という観点からモノをみていく。痛快。まさに痛快。
特に年金問題については結構なスペースを割いた提案。「裕福なお年寄りは(年金をあげずに)自分で生きていったもらいましょ」とかは、ある意味、誰かが言いたいけど言えない、そんなことだ。他にも、メラビアンの法則(人のコミュニケーションに果たす役割は、見た目が55%声が37%、話の内容は7%)を正面から信じていいの?だって必ず「言葉による話」がベースにあるでしょ?っていう「あたりまえ」を突く。そりゃそうなんだよね。シンプルに考えると、本質にいきつく、というか本質に「戻る」んだろう。
著者が、どこの国の人か知らない。でもそんなこととは無関係に、おもしろい。そこに本質があるし。小気味いい、という言葉が当てはまるかもしれない。そしてなにより文体や比喩(皮肉?)表現が絶妙。このテンポのよさ、「社会学」の本を読みながら笑いがこみ上げる、ってそう簡単なことではないよね。完全に引き込まれている、ってことの証かと。
「次」も読んでみたい。まだこの本を読み終わる前にそんな気持ちになった。読んでいて面白い。そして、読後に自分で「考える」きっかけもある。そんな本、そうそう出会えない。

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意外な一面。でも...


『脳はもっと遊んでくれる』茂木健一郎②
[5/151]BookOff
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K-amazon ★★★

最近見てないけど、まだやってるのかな「アハ体験」でおなじみ、茂木先生の本。脳科学者として「脳」を起点とした本を多く出されていて、前に読んだ本については、「意外な」読みやすさだったことを記憶している。「科学者」にありがちな、専門分野の第一人者にありがちな、「専門性」に偏った書き方ではなく。この本は、週刊誌に連載されていたものをベースにまとめられたもの。買うときに著者で選んでしまったが、自分にとって苦手分野の、「連載まとめ」であった。
つけられたタイトルが、やっぱり「脳」であり、少々「営業的」な気がしないでもない。だって、本の内容は、「脳」というより、「気づき」ベースの著者のエッセーに近い。科学者でありながら(これが偏見なのだけれど)、文章は面白い。実は音楽に造詣が深いことや、野球の話題、幼いころのプロレスの話題。自分とは年齢からしても、ほぼ「同世代」に近いのだが、生きてきた環境はそれほど離れていないことを感じ、親近感を抱く。ところどころに「脳」というキーワードが出てくるが、これはなくても十分通用するんでは?と思った。「脳」というキーワードが著者のアイデンテティを示すのか、はたまた営業戦略なのかわからないけど、「書き手」としても十分「イケる」内容だと感じる。だから逆に「脳」からもっと離れてもよかったのかもしれない。内容的にはおもしろかったもん。まあ、コラムの集大成なので、前後のつながりにかけているところはこの本の評価ではないから。でもやっぱり200ページが細切れで編集されているのは、それを一息に読むのは、けっこうきつい。
研修者、教授という分野ではなく、キャスター(NHKの番組は見たことがないけど)や、テレビ出演、執筆...想像に絶する忙しさ、なんだろうけど、なんとなくそれは自分から言わない(書かない)方がいいのかなあっていう点。確かにその通りなんだけど、「忙しくて...」と書かれるとちょっとヒいてしまう。個人的な感覚なのかもしれないけど。

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2010/09/04

タイトルには惹かれる


『続ける力』伊藤真
[4/150]BookOff
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「変わる、変える」というのが、ある意味「中毒」のようになって、少しでも行き詰ると「変える」ことを考える...なんとなくそんなマインドになってしまっている。先日メンターとしていろいろと助言いただく方に、「変えない努力も必要」ということをいただき、ハッとしたことがあった。
まさに「続ける」ことがかなり重要であることは自覚しつつあり、ある意味「変える」「(新たに)始める」ことよりも努力と熱意が必要なことなのだろうと思う。それゆえ、一部のテクニックとしてのTIPも本書には期待したところ。テクニック論があまりよくないんじゃないかっていう考えも一方ではあるけれども、「継続」というキーワードは自分にとって「新しい」ことだったりするんで...
著者は、「カリスマ塾長」として、司法試験の受験指導を10年以上「継続」されている。そして「継続」して試験に挑戦する受験生をこころから応援していることは、本書を読んでいく中でも感じられる。自分にとって司法試験は関心の無い分野だけれども、何年もこれについて勉強されている方が多い、というのは一般常識としては理解しているし、それを「継続」するモチベーションや執念、これは尊敬に値すると思っている(自分もかつて税理士を目指し勉強したが、2年で挫折したので、本心からそう思う)。本書の内容はその試験や、勉強法が主題であるかもしれないけれども、今自分の周りにある細かいことにも置き換えて考えることは十分できる。チーム全体の情報共有の方法だとか、大きな軸となるべき方針だとか、すべてはそうなんだよね。付け焼刃的に(見える)施策を開始しても、継続しようとしなければ、単純にスポットで終了してしまう。「継続」が前提であれば、失敗なら失敗からその施策を検証できる。ここは著者が説くように「全体の俯瞰」が大事になってくるんだろう。司法試験受験指導においても、「試験に合格した後」をイメージさせるのが大事だという。これって当たり前のように見えるけど、日々仕事をしていると見失いがちで、見失うことは容易なんだね。所謂「目的と手段」ってやつだけどさ。常に意識、注意していないとすぐに飛んでいく。自分も周りも含めて意識を高めよう。今さら、かもしれないけど、今だから、実行する。
どちらかといえば、本書の内容はテクニック、方法論よりも、精神論だろうと思う。でも、今の自分には(読む)タイミングが合っていると、前向きにとらえたい。内容はどうこうよりも、何か自分で(仕事以外で)始めてみようかな、っていう気になっちゃったもん。もちろん司法試験は選択肢にははいらないけど。

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面白い!食わず嫌いだった


『ぼくが最後のクレーマー』関根眞一
[3/149]Library
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著者のお名前はよく目にするのだけど、なんとなく「クレーム」という言葉に拒否反応があって、これまで避けてきた。最近、EC通販であっても「お客様対応」ということにもっと力を注ぐべし、という考え方を持ちはじめ、「クレーム」も含めての「お客様との接点」というところの情報として期待しながら読み始めた。
著者が属する(属していた)百貨店という、ある意味「クレーム」と(イメージ的に)結びつきやすい業界だけではなく、歯科業界という「顧客サービス」という言葉と少々結びつけにくい業界も含めて、クレーム対応(お客様対応)の大切さ、一部クレームへの対応テクニック(事例)ということで紹介されている。かつての「需要>供給」という社会の図式は、あきらかに「需要<供給」という形に逆転している。これによって何がおきているかといえば、以前は「めんどくさいクレーム客は排除すればよい」という考え方が(正しいかどうかはさておき)通ったけれども、今は「クレームのお客様を含めて一人ひとりを大事にしていく」ということが必要になっているわけだ。これは現場にいる身としても毎日実感しているところ。また、この需給バランスの中で、需要、つまりお客様側は(情報化社会も相まって)かなり「賢く」なっている。クレームをいう背景も変わってきているし、「進化」している。これに対して共有、つまり企業側はどうなのか。以前と変わらずに「排除」ベースで考えているところは、おそらく少なくない。これではサバイバル不可能となるのは目に見えているね。
自分としてはそういった「危機感」を少なからずもっている(つもりだ)。ただ、自分が持っているだけではなく、直接お客様対応する担当者は当然としても、直接はかかわらないスタッフもその気持ちを持たなければ(「排除」の気持ちを少しでも残していると)、どこかにほころびが出てしまうものだと考える。広告の表現からなにからなにまで徹底できているか?まだ途上。その前に「意識」を変えなければならない、という、「今時点では」お粗末な状況なのかもしれない。けど、やっぱりここを変えないと。本来みんな持っているはずの意識だから。だって自分たちだって「消費者」だからね。
そんなことを意識させる、考えさせられる内容だった。事例紹介が多く、わかりやすかったけれど、著者がいうように「対応マニュアル」を作って効率化することではないし、やっぱり「意識」の問題だと思う。そうゆう意識を持たせてもらって、よかったと思う。著者の別の本『となりのクレーマー』(多分こちらの方が「有名」なんだろう)も読んでみたい。もちろん本を読むことだけでは何もしないのと一緒。特にお客様とのコミュニケーションにおいては。「実行」ですね。


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「硬派」もたまにはいいね


『いい仕事の仕方』江口克彦
[2/148]Library
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「仕事の仕方」についての本をそれなりの数、読んできているが、気がつけば本質を離れて「一部のパートのノウハウ」について書かれている本を選んでいる傾向がある。時間管理とか、ほめ方、とか。本書は松下幸之助さんの元で20年以上直接の指導を受けてきた著者が説く、「仕事とは!」という至言。細かなノウハウがないわけではないけれども、どちらかといえば、「一所懸命、徹底して仕事に取り組みなさい!」という印象をうける。それはそれで、小手先のテクニック的な内容よりも直接的に響くものはある。本の紹介には「仕事の教科書」とあるが、まさに「教科書」という表現がマッチしている。
ここから何を捉え、何を考え、実行していくか。それがポイントなのだろう。仕事に対して真剣に取り組む、自分の能力を上げる、未来から今を見る大局観、確かな信頼と成果、人生の喜びを得るために。考えてみればすべての「ノウハウ本」を読む前の、基本であり前提である。「そんなこと言うまでもないこと」...だろうか?はたして自分に「基本」はあるのか?恥ずかしながら、そんなことを今更ながらに読んで感じた。「今」携わっている仕事、課題、やりたくないこと、押し付けられていることも含めて、これらはすべて未来の自分、自分の人生のためにあるもの。これを避けて通ってどうする!という至極シンプルな、けれども「当たり前」のことを教えてもらったのかもしれない。たまに「原点」に戻らないとだめだね。テクニックに頼ろうとする。「楽」だから。「たのしい」「らく」。これらはけして悪いことではないと思う。「楽しい」と思える仕事をするのがもちろんいい。要は「楽しい」という言葉の概念、深み、ということだろう。
一番響いたのは、これも極めて「当たり前」のことなんだけど、「正しい」ことを熱意と努力をもって誠実に取り組む、という点。著者は、これを「美学」と表現する。
「仕事に対する美学を持つ。仕事を通じて社会に貢献するという意識を持って取り組めば、自然「美学」が生まれる」
と説く。「正し」くすべきは仕事だけではない。自分も人間として「正し」くあるべきなのだ。
シンプル。でも力強いし、指針になるよね。

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読み物。ですね


『なぜデパ地下には人が集まるのか』川島蓉子
[1/147]Library
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K-amazon ★★

「デパ地下」という言葉が出てきたのはいつだったのだろう。それにあまり関係が(関心も)ない自分にとっても「一般名詞」化されつつある。本書は、「市場のトレンドを読む」ことを生業にされている著者が、その「謎」に迫った内容。食の専門家ではないが、消費という場をウォッチし続けてきた視点から...と著者は触れているが、所謂「マーケティング」の本ではない、という印象。「デパ地下」はどうあるべきか、その魅力はなんなのか、ということについて、著者の視点から「評」を下されているが、「一消費者」目線から、という点に偏っているようだ。党是に「マーケティング」の主役は消費者であるから、これ自体がいい悪い、ということではないけれど、「ビジネス書」の棚に収める本ではないですね。
大手(デパートはそもそも「大手」か...)含めて、「再編」の波にさらされている百貨店業界。自分の小さな頃からは(名称は残りつつも)「業界地図」が大きく変化している。そんな中で「地下」が元気なのは、時代の流れと、業界自体のマーケティングが生み出したもの、なんだろうと思う。「ビジネス本」ではないので触れられてはいないけれども、「悪い」時に、すべてダメだあ、と思うのか、全体を見たときに力を注ぐ箇所を見つけていくのか、これは百貨店業界、小売業界だけの話ではない。「モノを売る」という世界にいる自分としては「デパ地下」の発想自体はすごく魅力的に思える。この本を読む前も後も変わらずに。
子供のころは「西武デパートに行く」ことがうれしかったなあ。サザエさんの中にでてくるように。今の子供はどう思っているんだろう。以前ほどは「特別」ではなくなっているのは事実だろう。「敷居が高い」というイメージは引き続きあるものの、本書の中でもふれられていたが、「市場(いちば)」のプチ体験的な、一歩近づいた施策の方が、ひきつけているような感じがする。非日常(以前のデパート、或いは1階2階の婦人服等)なのか日常(デパ地下等)なのか。興味を引いたのは、「フロアごとの断片的な売り方」ではなくて、「縦割り」のマーケティング。たとえば、ワインとチーズ(地下の別の店)と、ワイングラス、食器(上階)などの組み合わせ。やっぱり「ライフスタイルを提案する」ということがキーワードになりそうね。

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