2010/09/24

「読み物」として秀逸


『おまけより割引してほしい』徳田賢二
[15/161]BookOff
Amazon ★★★
K-amazon ★★★★

通販事業をやっていて、企画の反響から「そう思ってるんだろうな」と思えるのが、まさに本書のタイトル。これを「感覚」から「理由づけ」したのが本書の内容。[値ごろ感=価値/費用]という「公式」をベースに、値ごろ感をあげるには、
①費用を下げる②価値をあげる③費用と価値のバランスを整える
これを実践している事例、考え方の説明、それらが綴られている。非常に面白い。特に①における「費用」という概念に、実際の金銭だけではなく、時間コストを加味しているところが明快に入ってくる理由だろう。例として何度か出てきたのは、「近くのコンビニ」「遠くのアウトレット」。コンビニで買うような「低額商品」の場合、あまりにそれにかける「時間コスト」がかかりすぎると「損失」のリスクを感じるので、時間コストがかからない近くのコンビニで買う、という「論理」。所謂「経済学」が数値上の理論であって、心理や行動という点が加味されていない「非現実的」なものであり、人間の行動は、経済学理論上には動かない、ということがあるけれども、それを「穴埋め」する経済行動学観点の理論としては、「あり」なんだと思う。
本書には、それらと合わせて「衝動買い」の行動心理にも触れられており、「身近な行動経済学」としては、(その入門としては)とても読みやすい。「実感」できる読み物である。現実的には、消費者は既にここに挙げられている「行動学」から既にさらに進化しており、①(割引)と②(価値)の両方を求め、③(バランス)については、売り手側のテクニックを「お見通し」というレベルまで達していると思われる。売り手はつまり③(バランス)について「テクニック」ではなく、あくまで②(価値)をベースにした③のバランスが必要であると思われる。それは当然に「プロ」としてのメッセージ力、(「だます」という意味ではなく)テクニックが必要で、それらを考える、実行する前提として本書を理解することは意義があることだと思われる。
読んでいて「実感」がある、と書いたが、若干ながら、「で?」という感じがしないでもない。やっぱりどこか「学問的」な匂いが消えていないから、なのだろう。直接的に実践に結び付けれられるものは少ないけれど、今後すべきことを考える前提としての「情報」というレベルで見れば、十分価値あり。何にしても読んでいて身近に感じられる(消費者としても、売り手としても)のがよいですねー。

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