2011/02/01

フィクションとノンフィクションが見事に融合

『会社がイヤになった』菊入みゆき
[1/19]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

タイトルに、まず、惹きつけられる。内容を前もって見ていなかったが、「年代別の7つのストーリー(小説風)とその解説」という前置きに、少々違和感を感じた状態で読み始める(どうもこの手のは「失敗」が多いので。経験上)。しかししかし...「年代別」ということで、最初は20代が主人公のストーリーだが、ここで既に魅入られた。多少なりとも「過去の自分」に重ねあわせる部分、そして「今」自分のチームにいるこの年代のスタッフのこと。けしてタイトルからイメージする「ネガティブ」なものではなく、「この年代ではありうること、考えがちな方向」を見事に描写しており、それについての「心理学的な」解説アプローチ。「あとがき」で著者自身が書いているように、その短い小説の中で、主人公がひとりあるきしているような、現実感、「あるある」(あったあった)感が出ている。
面白い。
先にも書いたけれども、「今」の自分の年代と異なっても、過去の「その時」と重ねたり、未来の自分を想像したり。読める読める。なんだかんだ、仕事(会社と通勤)にその大部分の時間を取られる「会社人間」を演じている現実の中、その環境とまさに合致したリアル感。おもしろいです。
でもやはり深く読めるのは自分の「今」の年代。「44歳」が主人公のストーリーである。
「40代前半が一番モチベーションの高い時期である」
「人生を時間に例えると 40歳が正午」
身にしみる「解説」も手助けして、20代から60代まで、いっきに読んでしまった。何かを「直接的に」得られる、というものではないにしても、「人生」或いは「生きることと仕事をすること」を考えるきっかけになる。「ヒトとして」どう自分と向き合うのか。実は最も大切なテーマなんだろうけれども、これまでは向き合おうとする気がなかったのかもしれない。でも、考えなきゃ。考えるところから何かが始まる。変わる。
そう。この本のストーリーに登場した人たちは、みな、「変わる」ことを成し遂げた。或いは「変わろうとしている」。そこが、魅力的なんだろう。自分にできないことではない。

会社がイヤになった やる気を取り戻す7つの物語 (光文社新書)

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