2011/02/03

感動です。まさに「人知を超えた何か」がそこにある

『はやぶさ、そうまでして君は』川口淳一郎
[3/21]bk1
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★★


地球から3億キロ離れた小惑星への「旅」、それだけでロマンなのに、その惑星の砂を持って地球に帰ってくる-これほど「夢」を見させてくれるストーリーは他にはない。実は、千葉市のプラネタリウムでそのストーリーを2回見た。1回目はもちろんだけど、2回目も(ほぼ同じもの)感動がまったく薄れなかった。構成やナレーションもあるけれど、「はやぶさ」が単なる機械とは思えなくて、最後地球に「帰って」くる時に、大気圏突入時に燃え尽きてしまう...というのがなんだかやるせない気持ちにすらなった。
この本は、その「はやぶさ」プロジェクトのリーダー、はやぶさの「生みの親」の書いた本。構想からは20年近く。途中歓喜と落胆を繰り返し、絶望したときもありながら、「帰ってきた」はやぶさ。もちろん本を読んだり、プラネタリウムを見たりしただけの「観客」である私の比ではない「感動」を、著者が誰にでもわかりやすい言葉で語りかけてくれる。
タイトルもそうだし、その書き方も、けしてスマートではない。けれど、この「成功」を次世代に伝えたい、という気持ち、それから、片時も忘れなかった「はやぶさ」への思い、そんな「熱」が伝わってくる内容である。ホントに伝わってくるんだよ。不思議なくらいに。
もちろん技術的なことは前提として、著者が繰り返していた、「プロジェクトチーム全員の思い」が、はやぶさを帰還するまでに至らせた、というのは本当のことだと思う。人知を超えた何か...偶然の出来事が数々の危機を救い、通常考えられない状況の中、はやぶさは任務を完遂した。日本の宇宙技術や、「彼」が持ち帰った、小惑星の物質の今後の研究等、科学的な功績は限りなく大きい。けれど、このプロジェクトリーダーは、最後にはむしろ、「息子」同然のはやぶさの帰り、これを一番に願っていたのではないだろうか...そんな気もしてくる。できることはすべてやりつくして、それでももどかしくて「神頼み」をするシーン。これって、感動的です。「機械」ではない、「身内」なんだよね。
税金の投入なんで失敗できない、或いはNASAがそうであるように、リスクのある(リターンの見込みの小さい)プロジェクトはカットする、そんな方向に世の中が進んでいるけれど、著者が言いたいことのひとつに、これに対する「夢を持てるようなプロジェクトがないといけない」というのは、はやぶさが教えてくれたひとつである。成功したから言えることなのかもしれないけど、あまりに「短期的なリターン」に偏ってしまうと、窮屈な生き方になってしまうよね。会社だってそうだ。
トラブルに見舞われて、60億キロも飛び続けたはやぶさ。最後にその生涯を終える直前に移した地球の写真を見て涙するのも不思議ではない。「夢」。その実現にむけての努力。ひとつになるチームワーク。理屈ではない感動がここにある。

はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

0 件のコメント:

コメントを投稿

Twitter