2011/02/20

外国向けの逆輸入、故にわかりやすさもわかりにくさも

現代語訳 武士道 (ちくま新書)
現代語訳 武士道 (ちくま新書)
  • 発売日: 2010/08/06
『現代語訳 武士道』新渡戸稲造
[16/34]BookOff
Amazon
K-amazon ★★★

最近になってから、ですね、「論語」「学問のすすめ」そして「武士道」。長く読み続けられている「古典」が一番安心できる、っていうか...「テクニックだけではどうにもこうにも光を見出しにくい」というところにいくと結局「古典」=普遍に戻ってくるのは世の常、なのかもしれない。
「戻る」という言葉をつかったけど、実は『武士道』は初めて読む引用されているものを見ることが多かったのだが、「オリジナル」は初、です。幕末から明治維新を生きた人たちは、今からみても、本当にドラマチックな時代を生き抜いたんだと思う。幕府という絶対的なものが壊れる瞬間はもちろん言葉にならないくらい「激動」なんだろうけれど、明治も後半になるとまるで現在のような「課題」がでてきているようだ。すなわち「政治の腐敗、権利の集中、レベルの低下」...わずか30年から40年間の出来事である。武士が中心だった時代から「無血革命」を経ていっきに近代化した、この時代。ものすごく「動いて」いたんだろうなあ。
本書は、(本当の意味で)海外に向けて「開国」した日本、日本人を、より理解してもらう目的で、外国人向けに書かれた書である。それを和訳して、さらに現代語訳して...遠い道のりを経て、今ここに読める時代を素敵に思います。すごいよね、こういう機会をつかむかつかまないか。これって意外に大きい(大きくなる)んではないかなあって思ったりも。
そういう「生い立ち」なので、武士とは何ぞや、武士の精神とは?という直接的なものではなくて、日本論、日本人論ですね。もしかしたら当時、外国人が描いていた「日本の謎」に対して、「こういう背景があるからです」という答えであるような本ですね。それゆえ、「現代」というある意味、当時の人からしたら「外国人」を越えるような存在である自分たちにも読みやすい部分はあります。けれど、著者は相当の博学ですので、そもそもシェイクスピアや、その他「古典」の基礎を知らないと、その引用の意味がわからないので難しくなってしまう。自分がまさにそれですが...
金では動かない(むしろ避けるべきものという意識)、義、仁、忠義、武士のあるべき姿、それがその後の日本人に与えた影響、今のタイミングからみても「理解できる」点と、それから「今は当てはまらない」という点があると思う。けれど、自分たち日本人の、昔の(つい最近、かもしれないが)「考え方」を知っておくのは、それはそれ、必要だと思いますね。それに合わせる合わせないは別として。最低限自分の国のことを知る。でないと「インターナショナル」とはいえないですよね。ベースを知らずしてその上にはいけない。

現代語訳 武士道 (ちくま新書)

0 件のコメント:

コメントを投稿

Twitter