2012/04/13

「続編」はやっぱり...か?

まほろ駅前番外地
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  • 発売日: 2009/10

『まほろ駅前番外地』三浦しをん⑥
[9/63]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

本屋大賞も受賞した三浦しをんさん、輝いてますねー。しをんさんの本は「はずれ」がありません。特に本書は「直木賞受賞作」の続編なのではずすわけがない。しかしながら「続編」は最初を越えることは(めったに)ない、ということもある。
読み進めるにつれ、登場人物の名前、キャラクターに、前作の記憶が蘇ります。「便利屋」稼業の主人公「たち」と、その便利屋に「ただごとならぬ」依頼を持ってくる人たち。前作の登場人物をキレイにシフトさせた物語です。前作に比べて「裏」の部分が少なく、読みやすくなっている代わりに、ハラハラドキドキする場面は少ないような印象ですが、個性豊かな登場人物、さらに個性がパワーアップされた主人公、楽しませてもらいました。
相変わらず「人間描写」が際立っていて、依頼時の不可解さが最後に「つながる」感じがニクイです。本書では、主人公の二人を別の人物に語らせる、というストーリーもあります。この視点の変換がまた面白い。他人から見た主人公像、なんて結構難しいと思われるけれど興味深く読めたのは、著者の視点、筆力がすぐれている証拠。
長編のようでいて、各登場人物がそれぞれ主役を張る短編の連作集でもあります。それぞれがユルくつながっているので、短編集のように細切れの印象はありません。各編が、「人間」の味わいや、「人生の流れ」を描いてエンディングを迎える、という、ホノボノ系なので、ちょっと刺激的に物足りない気もしますが、リズムよく「次」の人物編へつながるストーリーで、先を読みたい、と常に思わせる手法は、「ノッテル」三浦しをん、という感じです。
主人公のひとり、行天の「謎」めいた行動も、新しい「謎」が追加されたようです。そして、もう一人の多田にも、新たな展開が待っているような場面があります。ということは本書の「続編」がまた期待できるかも。待ち遠しい。
おそらく本書を最初に読んでも十分楽しめると思いますが、やはり前作を読んだ後の方が、より他の楽しめるかと思われます。「続編は最初を越える...」は、なんとも微妙なところですが、ほんの少しだけ越えられなかったかなあ、という感じ。ただし、「楽しむ」ポイントがこれまた微妙に異なるので、両方イケることには間違いないです。

【ことば】年を取ると堪え性がなくなると言うが、本当だ。怒りや不安は...まだ抑えることができる。けれど、愛おしいと思う心だけはあふれでてしまう...ひとの心を構成する本質が愛情だからなのか定かではないが。

年齢を重ねたご夫婦が仲睦まじいのはこういう理由だったのか...そこに至るまではもちろん紆余曲折あるんだろうけれど、互いに「時間」を過ごしてきた、乗り越えてきたご褒美として、そのような関係になるんだろうか。怒りは抑えられても愛情は抑えられなくなる、という考え方は、とても「やさしい」考え方だと思います。

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ある休日のティータイム

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