2012/04/06

軽快であったかい。人間っぽい物語

戸村飯店青春100連発
戸村飯店青春100連発
  • 発売日: 2008/03/20

『戸村飯店青春100連発』瀬尾まいこ⑦
[4/58]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

大阪の中華料理屋「戸村飯店」の息子二人。正反対の性格のように思える二人は、兄の上京で離れ離れ。東京で1人暮らしの兄、大阪で高校卒業後の進路を考える弟。見た目も性格も「似ていない」と自他ともに言われてきた二人は...
会話が大阪弁、それ以外は標準語という構成に最初戸惑ったが、大阪弁が際立ってアタマに入ってきて、次第に心地よくなってくる。いまどき珍しいくらいな「素直」な少年だということが伝わってくる(二人とも)。感情を思い起こす読者(自分)も、その考えが「大阪弁」で考えてしまっていたよ。
主役はその兄弟二人だが、中華料理屋を営む両親、二人の前に現れる女性、友人。誰もみな「温かい」人間なんです。洗練されたかっこよさはないけれども、いわば「昭和」的な不器用さはあるんだけれども、二人をそれぞれの愛情で包む両親の姿は、泣けましたね。それに気付かない二人(高校生くらいの男には気付くはずもない)だけれども、どっかで分かってくるんだろうと思う。
瀬尾さんの小説は「家族」や「家庭」という場所で、「日常」を扱っているものが多い。特別な事件が起きるわけではない。ほんとにどこにでもある「日常」だけれども、本人たちにとっては、大きな人生のポイントになったりするんだろうなあって思うこと。だからこそ「近い」んだよねー。自分は大阪ではないし、兄弟もいないけれど、「架空の小説の世界」とはちょっと違う次元のお話のように感じてしまうのです。
この兄弟を見ているとまさに「青春」を感じます。タイトルに偽り、ありません。もしかしたら自分にもこんなねじれた、それでいてまっすぐな時期があったのだろうか...それを「青春」と呼ぶことができるのならば、まだ捨てるものではないかもしれない。
楽しみ、悩み、そんな中から「本当のこと」を見つける。そんな青春が描かれているこの本は、最初から最後まで清々しい気分で読めます。これから二人がどのように生きていくのか、読後も気になっています。それだけ楽しめました。

【ことば】生まれて初めてほんの少し先が見えた。ようやくほんの少し進む方向がわかった。それなのにどうしてこんなに悲しいのだろうか。どうして爽やかな心地にならないのだろうか。

「別れ」を経て、何かを見つける。それが「大人になる」ということなんだろうか。すべての経験したこと、それが心地よいことでも悲しいことでも、必ずその後につながってくるはずだ。間違ったことは何もない、のだから。

戸村飯店青春100連発


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本読みな暮らし
続 活字中毒日記

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