2012/04/08

謎解きでもなく、風刺でもなく


『アコギなのかリッパなのか』畠中恵
[6/60]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

タイトルからは見えにくいですが、元大物政治家・大堂事務所で働く事務員・佐倉聖が降りかかる難問、謎を解く...という内容です。「政治家」に対して一般の多くの人が持っているであろうイメージそのままの「事務所」の世界ですが、世の中の裏表両面の社会を操る「特殊な人種」である政治家であるけれども、実は「頼り」にされている部分や、役に立っている部分もある、っていうことを少しだけ感じさせてくれるストーリーにもなっています(実に「自然に」、実は頼れる人たちかも?って思わせます)。
でてくる「事件」に対する、主人公・聖の「謎解き」については、推理小説におけるそれとは異なります。ヒントを与えられるわけでもなく、読者はほぼそれを解くすべは与えられません。あくまで「読み物」としての謎解きにとどまります。政治家の事務所が舞台で、選挙や陳情、そして「世襲」という、実際の世界では問題点と取り上げられがちな部分を、「当事者側」からの視点で書かれています。我々は一般の目を持っている(と自覚している」事務員・聖の目を通してみますが、一般の生活者との視点のずれを暗に指摘しながらも、そんなに深刻な問題点ではなく、実は政治家もちゃんとしている人はちゃんと仕事をしている、的なまとまり方ですね。「ちゃんとしている」ことを正面から伝えると、イヤラシク、またはウソクサクなりますが、このような「間接的な」伝わり方の方がよいというこですねー。
著者は、時代モノ(妖怪モノ?)で著名な方なようで、現代ものはあまり著作がないようです。自分は時代モノを未読なんですが、これだけを読むと、少々欲求不満な感じです。キャラクターは個性的で魅力はあるのですが(政治家の世界だけに余計に「濃い」場合が多い)、ササッテくるものがない、というか...次は著者の「得意分野」にしてみようか。
読み終えてから、読む前にはよくわからなかったタイトルの意味がほんわかと伝わってくる感じでした。そんな爽やかさは残ります。短時間で読めえうライトな読み物としてはいいかもしれませんね。

【ことば】 誰もが己の利になることを欲している。都合の悪いことを言われると、途端に聞こえなくなる耳を皆もっている。厳しい顔を向けてくる。

政治家が直面する課題。政治家のレベル云々を評論家のごとき批判する一般市民も、「自己都合」で動いているのかもしれない。そんな人たちに、必要なことを伝え、聞くこともする。これが政治家の最も重要な仕事かも。世論に迎合して政権、官僚側の批判するような政治家は、ホンモノではない、てことかもね。

アコギなのかリッパなのか(Jノベル・コレクション)


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キュポラ庵
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