2012/04/03

気持ちのよいストーリーです

スコーレNo.4 (光文社文庫)
スコーレNo.4 (光文社文庫)
  • 発売日: 2009/11/10

『スコーレno.4』宮下奈都②
[2/56]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

熱中するような趣味もなく、興味関心も薄く、特技があるわけでもない。ごくフツーの女性が、学生から就職、恋愛、それぞれの時において、何を経験し、どう変わっていくか...そんな時系列ストーリーです。
けして自分に自信がないわけではないのだけれど、できのよい妹がいるために気後れしている自分、その背景から抜け出せず、就職しても自分を出せないでいるが故に、苦痛な日々を過ごす。それを変えるきっかけになったのは...極めて日常なんですね、すべてが。特にこだわりも思い入れもない主人公が、日常を過ごす中できっかけを得て変わっていきます。確実に成長していく様子が見て取れます。
大きくは4章だてで、中学時代、高校時代、就職してすぐ、働く部署が変わってから、という構成。それぞれが独立して描かれていますが、どこかで何かで「つながって」いるんですね。前の章にでてきたエピソードが伏線になっていたり、前の章で経験したトラウマを克服したり、と、非常に考え抜かれた、唸ってしまうような映画を見ているような感覚でした。
おそらく、女性読者は引き込まれると思います。自分はそこまで感情移入できず、少々第三者的な目線で読んでいましたが、「普通の何のとりえもない」主人公が変わっていく姿、というのを見ていくのは、とても心地よいものでした。その時はムダのように思えても、後で必ずつながってくる、ということも得られました。「何のとりえもない」というのは、実は主人公が「気付いていなかった」だけのことなんですね。
最後の方が、「ハッピーエンドになればいいなあ」と主人公を応援したくなるような気持ちにまでなっていましたね。自分と同い年の著者ですから、感動するポイントは「近い」のだろうと勝手に思うことにしました。ストーリーが面白いし、繰り返すけれども「あれとこれがつながっているんだ...」という感覚が妙に心地いいのです。
家族、恋愛、仕事。それぞれの場面で「平凡な(と自分で思っている)」主人公がいきいきと描かれています。「平凡」と「いきいき」が両立しちゃう...不思議ですが、違和感がありません。回り道をしたけれども、自分の大切なものを見つけたのですね。よかったなあー。

【ことば】音楽だとか食べものだとか、そういうものと同じ...わかるかわからないかじゃなくて、好きかどうか。大事なのはそっちです。

骨董品やの主人のことば。無理やりに「わかろう」とすることがすべてではない。人間だもの、「好き」「嫌い」という感情があってしかるべきなのだ。直感は意外に正しい。ただし、この言葉は一度でも「わかろう」と考え抜いた主人だからこそ言えるものであるのだ。軽くない。

スコーレNo.4 (光文社文庫)


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かみさまの贈りもの~読書日記~
今更なんですがの本の話


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