『経営はロマンだ』小倉昌男
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「クロネコヤマトの宅急便」を生み出した経営者の伝記。いまや当たり前のレベルになっているが、そういえば小さい頃に「小口個配送」というものはこれほど一般的ではなかった気がする。近々では「オカミ」に対抗する、というイメージが強い同社だがその発想から、実現、試行錯誤の上での成功、さらなる進化、社会的なインフラとしての認知...この過程では相当のハードな経歴があったことを改めて、というか初めて目の当たりにした。自分の仕事上、同社を利用させてもらっているが、考えてみればこれは著者はじめ同社の気の遠くなるような努力がその根底にあった、と思うと感慨深いものがある。
これまであるものを超える勇気、本来はここがそうであるべきなのだが「ユーザー志向」という発想とは程遠い官製事業に対する抵抗。
経営者としての哲学を感じられるし、社会インフラを作り上げた、その根底が、「自分の身内の衣服を送ろうとしたときの不便さ」に端を発している、といった根本的な利用者志向は、その徹底振りに感服する。口では「ユーザー志向」といっている自分たちが、いかにまだまだレベルが低いか(実行力、真剣さ、という側面で)思い知らされた。
本書は、日経新聞の「私の履歴書」のまとめ、ということなので、著者の生い立ちなどが、宅配事業の立ち上げと同じレベルで書かれている(連載モノのまとめ、だからしかたないけど)ため、全体として読み物としては抑揚がいまひとつないのと、やはりこれも「まとめ」の弊害か、「あとがき」がその直前に書かれていた福祉事業のことに関することのみ、というジレンマはあった(自分だけかもしれないけど)。個別の方法論的なものはもちろんないのでそういう面での参考にはなりにくいけど、刺激は十分すぎるほど受ける。やっぱり何かを成し遂げた方は、その真剣さ、執着心、もっといえば「頑固さ」が違う。まだ自分は甘いな、と思い知らされる。
「利益とは目的ではなく、収入から経費を引いた結果である。一生懸命いい仕事をしてその結果、ご褒美として利益が出る。利益が出ることで事業が長続きする。目的と手段を取り違えてはいけない。」
本質です。
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