2010/06/13

先入観、切り口を変えるヒント


『ずるい!?』青木高夫
[10/92]bk1
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★

長野オリンピックで日本が団体優勝した後に実施された「欧米有利と思われる」ルール変更、日米貿易における「アメリカ優位の」関税調整による貿易摩擦...まずはそういった「ルール変更」に対して、「ずるい」と感じること自体は、「普通の感情」だと説明。そして目を視点を直接的なところから一歩引いて、それら「ルール変更がホントに日本にとって不利なのか」という視点での検証、さらに「ルール変更によってメリットを得た企業(あるいは国)がその後も持続的に成功しているのか」という検証まで。つまり目に見える範囲で「ルール変更」に対して感情的にとやかくいう段階を超えて、ことの本質まで見抜く、という、文調自体は平易で読みやすいものでありながら、こりゃけっこう「深い」本なんではないかな、っていう気がする。
日米の乗用車に関する項目の中で、一時期の「圧力」により日本車が輸出制限されたが、その間にアメリカBIG3は回復したのか?「圧力」がなくても「実力」で勝負しようと考えていたのかどうか。直近のサブプライムにより、結果「破綻」に陥ったBIG3の姿を見るにつけ、「ルール変更」は一時的には戦略的に行われるかもしれないけど、それを生かすも殺すも...結局他の企業戦略と変わらないってことかも。逆に「制限」が厳しくなった中、現地生産へのシフトや、それだけでなく、「実際に運転する」顧客をベースに戦略を組みなおした日本企業、日本車は「圧力」を耐えた上で「勝ち」に結びつけた。「制限」の中で考えていくことはすなわち「成長」をもたらす、というようなくだりがあったが、これには同感。「いつでも」ではなく「期限までに」という枠がないと実行に移さない環境は目の前にいくらでもある(自分もそれに近い)。ある程度の「枠」はあったほうがよいし、それが「ルール」であるのかもしれない。そして「ルール」については、ただ盲目的にそれを遵守する、というよりは、ルールの根底にある理由、それを考えたい。与えられたものをやっているだけでは成長しない...そんなフレーズはよく耳にするけれど、こと「ルール」については疑いを持たずに守る、ということが他の選択肢がないような状態が大半ではないかな。天邪鬼である自分もそんな疑いはもっていなかった。国際舞台で活躍する著者だからこその視点かもしれないけど、これは目の前のビジネスでも十分生かせる。
いっきに読める分量だし、本全体を通しての「勢い」も。読後も気持ちのよい本ですね。


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