2012/05/26

本読みの、味のある「文学の読み方」エッセイ

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
  • 発売日: 2011/11/23

『第2図書係補佐』又吉直樹
[18/94]bk1
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この本のことを朝日新聞の書評コーナーで眼にするまでは、著者が「本好き」だということを知りませんでした。もっというとピースというお笑いコンビのこともそれほど知っていたわけではありません。が、「読書」という共通のキーワードを感じたことで、俄然興味が湧いてきたのも事実です。
著者の関心分野は「文学」であり、多少自分にとっては「敷居の高い」フールドではある。そんな「高尚な」分野の書評を若手お笑い芸人が...という「単純な」イメージで読み始めたが、いやいやそんなレベルのものではなかった。そもそもは、若手が登場する劇場に置くフリーペーパーのいちコラムとして書かれているものだという。対象は「文学」であるが、その内容は、「又吉の過去」である。ひとつのコラムのうち8割は「又吉ごと」であるのだ。小学校から中学、食えない時代、女性とは無縁の日々...彼のこれまでの人生がそこにある。その「自分ごと」と純文学をつなげるのは、ほんの数行だったりするんだけど、ほんの一キーワードだけだったりするんだけど、そこにムリヤリ感はないんですね。
おそらく、又吉青年がその本を読んで、ふとアタマによぎった自分の過去、現在、未来、そんなものを文字としてアウトプットしているからなんだろう。文学の世界に浸ってそこから想起される自分のこと、それを書いているのだから、そこに「ムリヤリ」が生じることはないのだね。
1冊につきそれほど文章量の多い紹介コラムではない。しかもその文学については直接的に触れていない。感じたままを自分の言葉で表すのだ。だけど、すんなり入ってきて、そしてその本を読みたくなるのだ。
これはすごい力。
その作品のパワーはもちろんあるけれども、そのパワーを一度浴びた著者が表現する世界。そこから感じられるメッセージ。既に紹介されたうちの何冊も、「次に読みたいリスト」に入れました。
そして曲がりなりにも「読書記録」をつけ続ける身としては、(公開している以上)「誰かが読んでくれるかもしれない」意識をそれなりにもって、「感じたまま」をメッセージとして残す、そんなアウトプットをしていきたいと、改めて思った。
けしてよい文章でなくとも(本書がそうである、というわけではない)、感じたもの、伝えたいもの、それがにじみ出るようなものでありたい。
そして何よりも「本を読む」ことの楽しさ、深さ、そんな基本を再度認識させてもらった。「読む」というより「感じる」こと。文学をもっと読んでみよう、感じてみたい。

【ことば】スケールの大きな男になりたいが、今日も僕は独りでししゃもを温め食べている。

スケールの大きな小説の読後に、著者が感じたことと、起こした行動。こういう「日常感」が随所にでてきます。けして頭でっかちではない。自然に文学の世界を感じている著者の、本との接し方が表れていますね。表現にも味があるでしょ。この「味」はいろんな本の世界に触れている人でないとできないのかも。

【ことば】本当のところはカフカに聞いてみないと解らないが、改めて小説は自分の感覚で正直に読んでいいのだなと思った。

まさにその通りなんだろう。書評に踊らされる必要はないし、その書評と同じように感じる必要もない。感じた通りでいいのだ。感じるために、本の世界に入ることが第一歩、ですね。


第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)



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思考だだ漏れノート
本を読む女。改訂版

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