2012/05/20

「味わい」出てくる年代にはタマラン物語。

ちょいな人々
ちょいな人々
  • 発売日: 2008/10

『ちょいな人々』荻原浩②
[13/89]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★★

全7編、ちょっと「連続モノ」も含まれますが、どれもが「フツーの人々」の「フツーの生活」の中のヒトコマがテーマとなっています。そこに「哀しさ」「憂い」「イジラしさ」「ほほえましさ」が含まれて、自分の境遇に重ねちゃったりして、喜びとも哀しみともつかない「フッ」という声が漏れちゃいます、何度も何度も。
タイトル作「ちょいな人々」の主人公のオジサン。「クール」なミドルを目指しますが、生真面目さ故に、若者やそれをターゲットとする商売の網に見事にかかってしまう、とか、「差別化」が言われる新規ビジネス参入の世界で、「リアル」を追求したあまりに受け入れられなくなってしまった商品とか。
現代社会で「いい」と思われるモノ、コト、或いは「いい」と宣伝するマスメディアによって乗せられてしまうモノ、コト。表面的なコトバに踊らされる哀しき中年オヤジ、マスメディア的には「古い」カテゴリーに分類されてしまう中年オヤジ、まさに自分の環境に限りなく近いが故、とても身につまされ、そして面白いのであった。
そう、「悲哀」的な意味を(十分に)含んで、だが、面白いのです。おそらく自分と同じような年代、環境のオヤジには共感していただけるものと思います。超リッチな方、年配の方には、「以前」を思い出しながら読んでいただければOK。女性の場合...是非読んでいただいて、オヤジの「哀愁」を感じていただければ、と思います。頑張ってますよ、この世代。上からの圧力と下からの「イタイ」視線。どちらを意識しても中途半端に終わりがちな努力。でも必死でもがいているのです。そしてもがき続けるんです。それが「あたりまえ」の世代だから。そんな「汗」をかいている姿を是非感じていただければ...あ、クサいですかね...
著者が以前や現在、自分と同じような環境だったのかどうかはわかりません。でも、まさに同世代層から発信されるメッセージとして、これ以上のものはない、という作品であるんです。そのメッセージが響くのが、同じ「オヤジ」であることがなんともアイロニックではありますけれど...
大丈夫、きっといつかヒノメ見る日はきますって。古い体質と新しいもの、両方を兼ね備えたハイブリッド世代なんですから。
笑って、アタタカな気分になって、そして前を向ける。そんな気持ちにさせてくれる、応援メッセージが込められた1冊です。つまり、各編のエンディングは...そう「正しい」カタチに進むのだね。


【ことば】治美の会社に関するかぎり、へらへら、俺様、ねちねちのヤツのほうが、男社会では受けがいいようで、むしろ出世している。

目先の損得勘定を最優先し、やらなくちゃいけないことから逃げて、俺様の理屈でごまかし、...そんな人間でも「テクニック」で出世する世の中、社会。確かにそういう側面がないとはいえないが、そんな生き方をして何が楽しいのか...社会が正しい方向に変わるにはまだ時間がかかりそうだから、自分が「変わる」ことからすればいい。


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