2012/05/02

「企画」はそれを立てることが目標ではない


『売れる企画の作り方』竹内謙礼
[2/78]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

インターネットでの通販に関わっている人ならだれでも知っている「成田ゆめ牧場」の成功例。自分も楽天市場の表彰などで目にしたことはある。その発展に携わっていた著者の「企画」作りノウハウの本なので、飛びつかないわけにはいかない。何せ「うまいなあ」と思わせる企画が多かったのだ。本書にも紹介されていたが、梅雨時の集客のための「降水確率に応じた入場料割引」や、「穴掘り大会」などなど。
本書はどちらかといえば「実用書」的に書かれているが、最もササッたのは、「企画のための企画になっていませんか?」という忠告である。そもそも何のための企画であるのか、集客なのか販売なのか、それを見失いがちだ、という注意喚起である。販売会社で企画を立てるのは、いずれの場合も、そのお店の活性化、最終的には「売上」であることは間違いない。そこにいたるプロセスの中で「集客」や「認知」という過程も発生するが、その先のどこに目が向いているか、それがブレると企画の意味がなくなってしまう。
そして著者が繰り返し書かれていたのは、「実行力」ということだ。いい企画を設計しても、シガラミや社内調整、費用などの要因から「実行」に至らないケースがかなり多いという。要はここが肝心であって、仮に失敗に終わることがあったとしても「実行」あるべし、というのが最重要。そして、これも大事な点が「継続」である。単発の企画を繰り返して費用対効果が合う合わないを論じることが多い。自分の環境に照らしてもその通りだ。継続的に、そして多角的に企画を設計することが重要であると繰り返される。
実は先日著者のセミナーを初めて聴いた。40分の短い時間であったけれども、一瞬でトリコになってしまった。本書ではあまり触れられていないが、肝心なのはやはり「実行」なのだと痛感。簡単に楽に企画を成功させる、という考えでは(仮に単発的に運がよかったとしても)本質的な意味での成功にはたどり着けない。徹底して繰り返す、成功するまで繰り返す、努力する、時間をかける、といった「汗」の部分がないと成功しないのだ。そして企画の成功確率をあげるには、環境(の変化)だったり、直接的ではないフィールドの知識だったりするのだと思う。幅広い知識、興味関心をもって柔軟な発想ができないと、狭い世界の中だけで完結するようなことはない、といっていいと思う。
現在は経営コンサルもやられている著者であるが、「現場」の経験を持っているだけに言葉には真実味が増す。そして真剣さが伝わってくる。同じ世界に足場を置く者として、いいところは盗みたいし、「こうなりたい」と思う。それには「実行」「継続」を、より意識していく必要がある。意識するのは「効率」ではない。
ネット通販のみならず商売に携わる者にとっては、本書に書かれていることを「まんま」実行するだけではなく、本書に書かれている極意を見出すようにしたい。プレスリリースなどの実用的なアドバイスもあるけれども、企画の「本質」を間違わなければ、正しい方向に進めるはず。

【ことば】皮肉なことに、不便な世の中を便利にしようと考えた商品企画が、逆に人間の本能でもある方向感覚を衰退させる原因になってしまっているのである。

カーナビに慣れてしまって、地図を使う能力が衰えてしまっていることに、気付く瞬間があります。カーナビ、方向感覚だけではなく、デジタルに慣れすぎ、頼りすぎになってしまうのもプラスマイナスがあります。過渡期に生きた自分たち世代は、「生まれたときからデジタル世界」の次世代に、この感覚を伝えていかねばなりません。

お客がドカンとやって来る売れる企画の作り方


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