- 淋しいのはお前だけじゃな
- 発売日: 2003/12/01
『淋しいのはお前だけじゃな』枡野浩一
[10/86]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
俳句、短歌、川柳...限られた言葉数の中で、読む人の想像を掻き立て、深みを感じる我が国の伝統。「制限」があるからこそ、そこに工夫が生まれ、「美学」が成り立っているのかもしれない。
...とわかったようなことを書いたが、その「伝統」「文化」「芸術」の奥深さについては全くの素人です。その昔の人たちが込めた想いや、考え抜いた作品が、今ここで目にすることができる、という点で、その「スケールの大きさ」を感じちゃう、それだけなんですね。芸術のセンスのかけらも持ち合わせていない自分は、ただただその「うまいなあ」感や、「深いなあ」感だけしか感じることができません。
かといって、それを「わかる」ようになろうとは積極的には思っておらず、「すごいなあ」感を得られる感性だけは失わないようにしたいなあ、という程度なのです。
本書は、その「ことば」芸術を実践されている著者の、過ぎ去った過去、苦いも楽しいもあった思い出、それらを存分に込めた作品が並びます。どれがすぐれているのか、とか自分レベルではわかりようがないのですが、どちらかというと短歌と並ぶ「その当時の」思い出をつづった文のほうにノスタルジーを感じました。
けしてうまくいっているばかりではなかった過去、そして現在。これを込めた短歌。自分に重ねる場面もあり、ヒトゴトに感じてしまう場面あり。その背景をつづった文の中に、著者の「人間的な」側面を感じます。
特別なひとではないんだ-そのアウトプットの手法としての短歌は芸術なのですが、著者は等身大の自分の身近に感じられる人間です。「ことば」を扱うのが得意な方、なのですね。
多分これ、また自分が異なる環境にいたり、違う心理状態の時に読んだら、違った感覚を得られるのではないか、そんなことを考えた。それってすなわち「深み」なんだろうと思う。たった31文字の中に込められる人生。それを表現する人、読んで感じる人、考える人。人間って、日本語って面白い。
大きい文字、少ないページ数、短時間で読めるけれど、「ちょっと物足りない」と思えるくらいの分量がまた、「次」を渇望させます。ちょっとこの世界(感)、興味津津なり。
【ことば】振り向いてくれたけれども 「がんばれ」は たぶん自分に言った言葉だ
掲載されていた短歌のうち、最も印象に残ったものを記載しておきます。帰宅途中の公衆電話で話している人が電話の向こうに言った「がんばれ」。電話口の向こうには励まされる環境にある人がいる。そしてその言葉の力強さに、通りがかりの著者も「あたたかい」気持ちになれる。
淋しいのはお前だけじゃな
>> 本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<
存在しない何かへの憧れ
アカネのアノネα
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