2012/05/26

スポーツもの?青春もの?いや、カテゴリー分けは不要です

バッテリー (角川文庫)
バッテリー (角川文庫)
  • 発売日: 2003/12

『バッテリー』あさのあつこ
[17/93]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

中学入学直前の天才野球少年。野球に対してストイックな彼は、「外界」との間に自ら壁を作っている。「壁」というよりは、その天賦の才能を以て上から見下しているようでもある。父親の都合で転校した先にいた、運命的に出会った捕手。彼との「バッテリー」を実現できる夢を持ち、捕手との関わりの中で、天才少年は何かを見つける...
子供視点からの親子の問題、塾や進学などの教育環境の問題。あくまで野球が軸であるが、バッテリーの二人はあくまでも受験戦争の中にいる小学生、中学生であるのだ。だからそのようなテーマがでてくるのは自然。それに対する少年たちの心理がリアルに描かれている印象があります。自分もかつて「少年」だった時期があるわけで(かなり遠いけれど)、すこしばかりのノスタルジーも感じたのだった。
主人公の少年は「天才」とここでも書いたけれど、もちろん天賦の才能はあれど、その後の「努力」が必ずあるはず。ストーリーの中に何度か、毎日欠かしたことのないランニングが出てくるところからも、それは分かるが、「大人」の中にはその「汗」の部分を見ていない人が少なくないようだ。あたかも生まれもった才能「だけ」のように見る人も。一定レベルのワザを身につけた人間は次第にそのように視線の「かわし方」を身につけるのかもしれない。主人公がそうであったように、「遮断」することも一つの手法なのかもしれない。ただ、一番見ていてほしいと、認めてほしいと思っているオトナ=親がそうであると、チトつらいものがあるよね。この場面になると、「強がっていてもまだ中学生」という側面も見えるのだ。そのあたりの「少年の心」がとてもリアル。著者は女性であるが、息子さんがいらっしゃる。そんな中から得た感覚なのであろうか。自分も過去(思いこみ、かもしれないが)、似たようなことがあったなあ、とシミジミしてしまったり。
野球の話しだけれども野球ばかりではない。登場人物が輝いている青春小説。分類なんてあまり意味がないんだなあ、っていう結論でいいのでは、と思います。カバーに記載された紹介文の中にキーワードが。
「~大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が~」
「夢中」になれる小説です。そう、とてもこの本の紹介としてあっている言葉だと思う。ハラニオチル感じです。

【ことば】「...野球って、させてもらうもんじゃなくて、するもんですよ」

 「今まで野球させてやった」という親の発言に対する主人公・巧の答え。親の視点と、子どもの視点のすれ違いがここにあります。親はどこまでいつまで「主導権」を持っているべきなのか。子どもが「自ら選ぶことができる」まで成長することは、親にとってはうれしくも悲しくもあることなんだけどね。

バッテリー (角川文庫)


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徒然本読み梟
日だまりで読書


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