- 忍びの国
- 発売日: 2008/05
『忍びの国』和田竜
[3/79]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
けして嫌いではないけれどもあまり読まない「歴史もの」であるが、この本は面白かった。「忍者」イメージの「伊賀」の戦を描いた小説だが、その特異性-あくまでも「カネ」のために戦う姿勢-による伊賀者のキャラクターが際立ち、超人的な身体能力よりも、その展開や、対象的に「洗練されている」と思わせられる織田軍(織田信雄)とのコントラスト、超人的な能力を持ちつつも、人間的である日常の描き方、など、小説の世界に引き込まれてしまう場面、多々ありました。
自分のため、私利私欲に生きる伊賀者であり、そのために起こす残忍な場面もありますが、大きな流れとしては、「私利私欲が悪い」とか「ヒトの死を招く戦は無意味」とかいうキレイゴトではなく、その時代にはこういう生き方であった、という史実をデフォルメした小説。 全部が全部史実とは言えないだろうが、あくまでも「昔のこと」として小説として読むと、これほどエキサイティングな読んで興奮を呼ぶ物語も少ないだろうと思わせるものです。司馬、池波の大家と比べるのは意味がないが、圧倒的に異なるのはスピード感であろうと思う。次から次へと展開が変わる、登場してくる人物の心情が非常に「現代的」で引き込まれるのも、そのスピード感によるものと思われます。
実際にここに描かれているように命を落とした者や、家が途絶えたものもあっただろうから、不謹慎な言い方かもしれないが、ひとことで感想を言うなら「エンターテイメント」である。どちらが正義でどちらが悪とは言い切れない戦国時代の戦である。計略あり、裏切りあり、どんでん返しあり、今の感覚ではそもそも感情移入できない時代背景の中、「楽しめる」小説なのだ。もちろんこれをきっかけに「歴史」に色がつくことも無視できない。教科書的な「覚える」歴史よりも、フィクションによる人物を通した時代のありかた、というのを身につけるのも悪くはない。
平成の時代になっても、21世紀になっても、日本人は「歴史もの」が好きであるけれど、シンプルに「読み物」として楽しむのもありだと思います。ここから何かを学ぶ、ということは直接的には少ないけれど、興味関心をもつようになるのは間違いありません。自分の生まれた国だしね、たかだか500年くらい前の話だしね。著者の代表作『のぼうの城』も読んでみたい。
【ことば】自分の身に降りかからねば、他人の不幸が理解できない者がいる。他人がどれほど苦しんでいるのかと、思いもかけない者がいる。
戦に明け暮れる時代にあっても、人間は変わらない。自分の身に起こったことがきっかけで「何か」に気付くことは、むしろ今の時代よりも強烈にあったのかもしれない。見て見ぬふりなんてしていられる時代ではない。現代でそれに気付かない人間は、 自分の価値をさげていることに気づかねばならない。
忍びの国
>> 本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<
日記風雑読書きなぐり
ハムリンの読書
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