2012/08/31

シンプルに「笑う」ための本としてもOK

必笑小咄のテクニック (集英社新書)
必笑小咄のテクニック (集英社新書)
  • 発売日: 2005/12/16

『必笑小咄のテクニック』米原万里
[19/154]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

ロシア語通訳としても名高い著者だけに、「ロシアもの」が多いけれど、「小咄」をうまく「使える」ようになるテクニック集。「練習問題」もある。「例文」と、そこに含まれている「なぜ面白いのか」の分析、それを使いこなすためのTIP。

ギリギリのきわどさ、つまり「死」とか「戦争」とか、極限状態、すなわち「笑い」とは対極にあるようなことを敢えて、ネタにすることによる笑い。誰か個人への誹謗中傷というよりは、時の権力者である人を対象にすることで、いわば「権力の象徴」としての権力者への皮肉が、抑え込まれた民衆のうっせきされた気分を解き放してくれる...

とか、いろいろと「分析」はありますが、小咄の例文も数多く、そちらを単純に「読んで笑う」という読み方でも十分に楽しめます。たかが小咄、されど小咄、「うまいなあ」と思えるような秀逸なものが並びます。

最近では効かなくなったけれど「アメリカンジョーク」という言葉がありました。「おしゃれ」な感じがする言葉です。ここにあげられている「例」も、多くが「洋モノ」ですが、「和モノ」も含めて「おしゃれ」感が漂います。さらには少し「知的」なものも感じます。「オヤジギャグ」という言葉で表される「サムい」しゃれや、表情しぐさなどの「動的」なものとも異なる、少し「上」の感じがするのです。

これを自分で使いこなそうとしてもそれは大変です。本書に書かれた「テクニック」を駆使してもそうそうできるものではありません。おそらくは、「天性」のセンスも必要なのでしょう。そして「情報」を広く蓄積していることが重要かと。
著者も指摘しているように、短い文の中で完結させるためには、「時と場所、相手」を選びます。「その時」がいつ来るかもわかりません。その「タイミング」が到来したら、「自然に」口からスラスラと出るようにするためには、場の流れの読み方も必要ですし、その場に応じた調整をするアレンジ力も必要。なによりも必須なのは、より多くのアウトプットができるためには、相応のインプットが必須でることでしょう。

「ウィット」に富んだ小咄を披露できるのは、「面白い」だけではなく「アタマの回転が速い」と思われるメリットがあります。テクニックを擁するよりもまずは、持っている話題を広げること。
...といった「活用法」も浮かびますが、ホントに単純に「笑う」ためだけに本書を読むのもいいかと。本書に掲載された小咄をそのまま使う機会はめったにないでしょうけれど、洗練された小咄を読んで、「面白い」と思える感覚、それをまず養うのも大事かと。
笑えます。この世界観、楽しめますよ。

【ことば】本というものは、読む者の精神にさまざまな刺激を与え、さまざまな感情を呼び起こす...その中で私が最も高く評価するのが、笑いだ。

「お笑い芸人」で長くトップレベルを保っている人は、やはりアタマが良い人だと思う。人を笑わせる、というのはかなり困難な行為だから。さらに「活字」で笑いを起こすのは困難だと思う。必要なものは何なのか?テクニックだけではなく、世界観やこだわり、そして自らが「楽しい」かどうか...

必笑小咄のテクニック (集英社新書)


>>本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<



おっちゃん書房
本屋猫八

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