- いいわけ劇場 (講談社文庫)
- 発売日: 2005/03/15
『いいわけ劇場』群ようこ
[18/153]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
わかっちゃいるけどやめられないこと。今日だけはいいじゃん、っていう緩みが引き起こすマイナス。ハラが気になるけれどやめられない柿ピー。続けなきゃいけないんだけど、雨が降るかもしれないと自分に「できない理由」をつけて断続的になるジョギング。翌朝苦しくなるのは分かっているのについ言ってしまう「もう一杯だけ」。人間の弱さと、庶民から抜け出せない才覚。でも本人は後悔よりもその場のハッピーを受け入れてしまう...
どこにでもあることではないでしょうか。もちろん「極めた」方たちには、レベルの低さを指摘されても反論できませんけれども...それを乗り越えた人が「一流」に近付くのであって、時間が経つと自分の無力さに呆然としたり...
「こだわり」という言葉は、いい意味でも悪い意味でもあります。ある程度「こだわり」を持って物事に当たる人の方が魅力的だったりする。だけれども、それが過剰になって、周りが見えなくなるほどになると...外側から見ると「滑稽」に映ったり、「イタイ」感じがしたりもします。
食べること、に執着し、その瞬間に幸せを感じる人たち。当然ながら「見た目」に「結果」が出てきてしまうが、瞬間の幸せには抗えない。その人たちは不幸なのか?いや、幸せなのだろうと思う。
借金してまでも、お金を貸してくれる人たちを騙してまでも「買い物」を止められない人たち。借金が膨らむこと、大事な人たちが離れていくから不幸なのか?いや、本人は買い物の瞬間は幸せを感いているのだ。
生きていく上で、他人との関わりなしには進んで行けない。でも、自分が幸せを感じる瞬間は大事にしたい。ガマンできない、ガマンしたくない。そんな人間の弱さ、誰にだってあると思う。
「それじゃあいけない」と本人だって思うんだけど、次の瞬間には、「弱さ」に勝てない自分もいる。そういう人たちを傍目から見て、さげすんで笑う人だって、同じことをしているかもしれない。
「人生」が詰まっている小説です。ダメな人間を見て笑うだけじゃなくて、自分の弱さと重なってしまうから、自虐的に「笑い」も生じます。自分に「いいわけ」をして正当化する...ビジネス本なら真っ先に否定される要素だけれども、それが人間だったりもします。
ただ、「盲目的に」なってしまってはいけないんだなあと思う。それこそ「他人があって生きている」自分です。自分の所作が他人にどう映るか、自分とは違う他人のことを少しでも思いやる心はやっぱり必要。
くすり笑いながらも人生を考えさせられた修作でした。初「群ようこ」でしたが、読むうちに引き込まれるストーリー展開に、クギヅケになりました。
【ことば】ヒステリックに彼女はまくしたてた。(これも砂糖のせいだ)この症状は自然食の本で読んだことがある。彼女の性格も自分の力で直せるかもしれない。
過剰なまでに食品の添加物にこだわる彼。ファミリーレストランにいっても何も食べられない。「君のことを思って」自然食だけを進める彼には、彼女の気持ちを思いやる余裕がないようだ。この『無添加少年』は、本書の中でも最高に笑えるストーリー。
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