2012/08/26

ここにもドラマはあった。

チーム
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  • 発売日: 2008/10/17

『チーム』堂場瞬一
[16/151]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

母校での「箱根出場」が叶わなかった大学駅伝チーム。ひとり突出した選手がいても必ずしも勝てないのが駅伝の駅伝たる所以だったりするし、「チーム」スポーツとしての魅力でもある。
予選会に出場した選手たち。自分自身は素晴らしいタイムで満足のいく結果を出した。が大学の本戦出場はならなかった。箱根駅伝は、もうひとつ「出場」の枠がある。それが「学連選抜」というカタチ。予選会で落ちたチームの中から、「個人として」力のある選手を集めた「寄せ集め」としての出場である。

実際の箱根観戦では、「学連選抜」の存在はもちろん知ってはいたが、特別な思いで見ていたことが正直、ない。母校の応援、という以外に大きく楽しむポイントは少ない、と思っていた(タスキが繋がらなかったり、けがを乗り越えたりという「ドラマ」は興味を引くこともあるが)。
その「ドラマ」のポイントは、「同じ大学でチームとして厳しい練習を乗り越え、伝統を背負い、関係者の期待を胸に」というところだ。日本人の弱いところだったりもする。

それゆえに「学連選抜」に思いを寄せることはない。本書のストーリーで、実際に「選抜」された選手たちにも違和感、動揺はある。ベテラン監督を擁し、適格なキャプテンを任命する。が、最後まで「まとまり」に欠けるチームから脱することができない。個々人の能力は高いものがありながら、「チーム競技」としての要件を満たせないのだ。

必至で努力してきた大学の仲間が出場できずに打ちひしがれている中で、個人として出場することがよいのか。次年度以降に繋がることのない「選抜」チームで何を目標にすればよいのか、など、個人のタイム目標や満足度を満たす以外のモチベーションアップ、維持が困難であるのだ。

最後までまとまりきれないチームで、どのようなパフォーマンスを出すのか、天才ランナーはどのように走るのか、そしてキャプテンであるアンカー走者の結果は...
ラストの「10区」の走り、その約50ページは、まさに本当に「手に汗握」るほど、のめり込みました。箱根駅伝から最も遠い時期の8月に読んだにも関わらず、まるでライブで見ているような生々しさ、臨場感、興奮。
来年正月の駅伝で、たのしみが増えた気もします。

困難を乗り越え、自身の挫折感を克服して、彼らが目指すもの、到達したものは...順位だけではなく、もっと大切なものも手にしたようです。それは、「ゴール」を目指して一歩一歩進んでいく、という駅伝の、或いは人生の「本質」を、確かにとらえたから、なのだと思います。
個人競技であり、団体競技である駅伝は、やはり「ドラマ」を内包しています。

【ことば】あの日...俺は様々なものを失い、逆にもっと多くのものを手に入れた。一番大きかったのが、走り続けようという気持ちだ。そのためなら何でもできる。

手を抜かずにやってきたことであれば、結果がどうであれ、何かを得られるはずだ。栄光と挫折を経験したからこそ、強くなれる。そしてもっとも大切なもの、失ってはならないものに気づくはずだ。

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私の読書録
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