- 沖で待つ
- 発売日: 2006/02/23
『沖で待つ』絲山秋子②
[12/127]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆
住宅メーカーに就職した同期の男女。恋愛とも友情ともちょっと違う「同期」の連帯感のようなものが、その片方の死をもっても続いていく。
芥川賞受賞作。短いので1時間もあれば読めちゃいます。主人公の女性は、就職し福岡へ配属。同期の男性「太っちゃん」とのつきあいを深めます。ただこの関係は恋愛までは昇華せず、あくまでも同期生、困ったときに頼みごとのできる、信頼関係が結ばれます。
太っちゃんは、福岡の職場の先輩と結婚。結婚生活はなにかと「秘密」が生じるもので、同期生とある約束をします。「どちらかが死んだら」という条件のもとでの約束。そんな非現実的と思われた約束がなされるときが、意外にも早く訪れてしまう。
生きている方は、それを果たすべく行動する。それは「同期」という線で結ばれた固い信頼関係からでしょうか。女性主人公の目線で語られるためそれには触れていませんが、そこには「恋愛」に到達する一歩手前の感情があったようにも感じられます。あるいは男女の性差を越えた「友情」なのか。その間にある関係のようです。
仕事に関する描写は、少しだけ背景的に描かれますが、中心はこの男女にかかる日常のエピソード。太っちゃんが「いいひと」すぎる気もしますが、本人の不慮の事故以外にドラマチックな展開はありません。淡々と、それぞれの仕事、生活が展開され、仲間とのかかわりが続きます。
どちらかといえば、同時掲載の『勤労感謝の日』の方が、刺激的。エキセントリックな主人公(女性)の価値観、生きざまが前面にでていて、痛快でした。歯切れのよい言動、行動。でも少しだけ垣間見れる寂しさ。
勢いのある「勤労感謝の日」と、ゆっくりと昔話でもたどるような感じの「沖で待つ」。
どちらも「日常」を描いた作品ではあり、読後には同じような感想になるのですが、アプローチが異なる、というだけのことかな。
【ことば】半年たてば誰かが転勤し、まら誰かがやって来る...どこが最後かなんてわからない。一つの場所に一年しかいないかもしれないし、十年いるかもしれない。でもそれが生きた組織だと思っていたのです。
今目の前で起こっていることは、もしかしたら「人生最後」かもしれない。でも生きていけば、「最後」の場面なんてたくさんでてくるし、取り立てて意識する必要もない。できることは、目の前のことに一所懸命になること、一所懸命に「楽しむ」ことだ。
沖で待つ
>> 本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<
のっかとの若年性書評
多趣味が趣味♪
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