2012/07/12

理解はできますが...距離感はある

たかが英語!
たかが英語!
  • 発売日: 2012/06/28

『たかが英語!』三木谷浩史②
[9/124]
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

社内の公用語を英語に、という楽天の取り組みが話題になっています。「外」から見れば、興味のある人もヒトゴトの人も。三木谷社長とはもちろん面識はありませんが、楽天さんとはお付き合いのある自分としては、「ヒトゴトながら興味がある」という感じです。

著者の言うところの「英語化」は、社内での会議、文書等をすべて英語にする、というもの。そもそも英語圏において情報発信がなされるケースの多い業界でもあること、何よりも楽天という日本発のサービスが今後「世界」を舞台に活動することへのメリットをあげています。

縮小するであろう日本の市場を飛び出し、世界を意識する。既に、海外企業の買収、提携を進めている楽天のアクティビティを見ても、そのスピード感や拡大のスケール、「英語化」することでますます広がっていくのでしょう。

そんな展開のために、トップが英断した「社内英語化」は、本書を読む限りでは、トップ主導で行われているようです。当然にいろいろ障壁はあったと思われますが、トップが先頭を切って自ら信じて発信し、実践する姿に、役員、従業員も意識が変わっていることと思われます。普段お話するような楽天の社員の方は、当然日本語なので、対するこちらとしてはあまり意識しませんけれど...

個人的には、母国語あっての英語だと思っています。自分だって流暢に話せるわけではありませんが、子どもに対しても、「まずは日本語を」という方針でいます。著者が言うように、英語が話せることが最終目標ではなく、あくまでコミュニケーションツールであり「たかが英語」なんですね。
コミュニケーションを取るには当然に「話題」がなければなりません。言語は別にしても「伝えたいことがある。それを適格に伝えられる」というテクニックを持たなければ、英語も日本語もありません。

あまりいい話ではありませんが、本書の中で紹介されている「社員の声」を見ても、また通常接する社員の方の話しを聞いても、「伝えたいメッセージ」が日本語としてできているか、微妙な点があるのは事実なんですね。この問題と英語化は無関係なのかもしれませんが、この取り組みについて若干の違和感があるとすれば、そのあたりなんです。

社長のリーダーシップはまさに感銘をうけるものであり、信念を貫いて(信念不抜)突き進む姿には力強さと信じるに足る尊敬の念を感じます。ただ、本書の「社内英語化」プロジェクトの「理由づけ」という内容が、誰に対してのメッセージなのか、今一つつかめなかった点はあります。
楽天という企業が海外市場で戦うために今必要なプロジェクトであり、社員の英語習熟度のKPI(指標)を見える化する、という手法も、経営的には有効な手段なのだと思います。ただ、著者自身は思っていることだと思いますが、本書の中には「英語を学習、習得することによる社員の人間としての成長、その結果としての企業の成長」という流れが見えにくい。

「さすが楽天!」と思いつつも、「今はヒトゴト」という意識が抜けないし、それはそれで「今は」いいのかもしれませんが...社長が意欲持って進んでいくように、数年後には「やっぱり楽天!」となっているのでしょうね。

【ことば】思春期以前にバイリンガルになるということは、コンピュータ用語で言うとデュアルCPUを持つようなイメージだ。

小学校での英語授業開始に対しての著者の意見。「始める時期」に関しては諸説あるので、あくまで意見としては受け入れますが、置き換えがコンピュータなのは「いかにも」という感じで、(僭越ながら)ほほえましい...

たかが英語!


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