2012/07/28

「優し」さに包まれた1冊。

優しい音楽
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  • 発売日: 2005/04

『優しい音楽』瀬尾まいこ⑧
[18/133]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

表題作ほか2編の短編集。不思議な出会いからお互いの理解を深めて改めて知る「出会いの理由」、不倫相手に自分の娘の世話を任せる話し、まさか?の拾い物から始まる生活の変化...
物語の展開が「起承転結」だとすれば、本書の3編は『承』の部分で、意外な展開が設定される、といった感じです。

タイトル作は、見ず知らずの女性から「ひとめぼれ」され、やがて恋人同士になるストーリー。その「ひとめぼれ」の理由と、なかなか女性側の両親に紹介してもらえない理由が一つになります。それは隠すようなことではないけれど、敢えて口に出す必要もないことで...それを乗り越えて繋がる絆、そんな関係を創る主人公たち。

 『タイムラグ』は、夫婦だけで出かける際に、自分の娘の世話を、こともあろうに浮気相手の女性に預ける。そしてその女性が知る事実は...
 
個人的には最も心地よかった『がらくた効果』 。気がつくと「もの」があふれる、そんな癖のある女性が、今回「拾って」きたものは...?そしてその「拾いもの」がもたらした効果は果たして?

広くは「日常の中での非日常」という位置づけでしょうか。どれも「男女関係」が主軸になっているものの、当事者の二人とは違う人の存在で、その二人の関係性が強固になっていく。
女性視点の物語なので、主人公の男性たちは、あまり「色」を持たされていませんが、包容力のある、「大きな」人間で描かれます。これがストーリー全体を「温かく」「優しく」している一因だと思われます。

瀬尾さんの作品の中では、「抑揚」があまりない、平坦なストーリーで、少しだけモノ足りなさも。「温かさ」は、確実にあります。

【ことば】「前の人が到達できなくても、スタートのチャンスがあるし、たすきがなくても、スタートしなくてはいけないのですね...もうだめだとわかっていても、走らないといけない...」

駅伝を見ながら発せられた言葉。繰り上げスタートの悲哀は、すなわち下降気味になったときの人生に当てはめられる。すべてがうまくいかないような気分になる時、それでも前に進まなければならない。先に待っているものがあるから。

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