2012/07/11

熱い思い、それを受け取りましょう

挑む力 世界一を獲った富士通の流儀
挑む力 世界一を獲った富士通の流儀
  • 発売日: 2012/07/05

『挑む力』片瀬京子、田島篤
[8/123]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

富士通、という会社から(消費者として)連想するもの...コンピュータ、携帯電話、といったところ。ところが、そんな表面的なレベルではなく、世界的なICTの取り組みや、それらの開発の前提となる企業「文化」があったとは...本書は、「革新」に取り組む富士通の「現場」の方の声、それらを集めたものです。

事業仕訳で話題になったスーパーコンピュータ、東京証券取引所のシステム、はやぶさ、などなど、「知ってる」ところにも、富士通はありました。もちろん、これらは最先端の技術開発がなければ成し遂げられない分野だけれど、本書に登場する「リーダー」の方々から伝わってくるのは、技術よりも「思い」の部分です。

世界最大級の光学赤外線望遠鏡の開発では「世界中の人たちの宇宙への夢に近づくため」、らくらくホンの開発では「使っていただく人たちの使い勝手向上のため」、次世代電子カルテの開発では「医師の業務改善、その先の患者さんたちのため」...
それぞれ「その仕事が何に(誰に)役立つのか」というストーリーで開発されていきます。そしてそれに携わった人たちは、当初は「なんで自分が?」という人も中にはいらっしゃいますが、「(その技術の)あるべき姿」を求めて、社内外を含めた大きな成果に向かっていくのです。

もちろん営利企業ですから、「採算」という面はあるでしょう。特に競合が少なくない業界だと思われますので、会社として取り組む案件かどうか、という視点もあったはずです。そこは富士通という会社の「文化」が後押しをします。
「ともかくやってみろ」というトップの姿勢。これが大勢の社員を擁する大会社でありながらも、現場のリーダーの行動指針として貫かれています。これが「開発」に向かう姿勢を正しい方向に導いているようです。つまり単に「短期的な数字」だけを追わない姿勢。

自分のようなICTの世界とは無縁の人間でも知っているような事例も含め、プロジェクトの立ち上げから結果まで、そこに携わった「人間」を中心に描かれています。なので、「技術」が苦手な人も「理系」を避ける人でも、十二分に読める。
むしろ、具体的な参考になることは少なく、ここに紹介された「現場」の方たちの「思い」を共感できる、という点が本書のポイントだと思われます。

「富士通は大企業だし、予算もあるから...」という思いも、読み始め当初は持っていましたが、次第にその「人間模様」に考えの軸が移ってきました。

富士通さんほどのビッグネームではなくとも、何かのプロジェクトに取り組む「人間」として読むと、共感できる部分、あります。

【ことば】「富士通は、人を幸せにするものを作らないといけないんじゃないでしょうか」...どんな事業にも、社会的な責任が求められると思っていた。

らくらくホンの開発にあたり、開発担当者が、上席に伝えた言葉。こんな思いで開発に携わるチームは、本当によいものを作るだろう。富士通のような大きな企業でこのような思いでプロジェクトを進めている。小さな企業は、よりこの「思い」を地道に愚直にやっていくしかない。

挑む力 世界一を獲った富士通の流儀


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