- 人間力を伸ばす珠玉の言葉―箴は鍼なり
- 発売日: 2011/12
『人間力を伸ばす珠玉の言葉』渡部昇一③中山理
[10/217]
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K-amazon ★★★★☆
「言葉」の重みってある。古来の人が言うように、言葉は人間の行動を変える力がある。言葉ひとつで人間関係を、人生を変えてしまうこともある。政治家の「失言」は考慮する価値もないが、ひとつの言葉が生きていく上での指針になることがあるのだ。
ひとつのことに「専門的」になるのが、学者のイメージだが、その「本筋」だけではなく、「周辺」の知識も併せ持つことが、その分野をさらに深める要素になる。何よりもその人本人の厚みが増すのだろう。そういう意味で、「深い」人間性、専門性を持った著者二人。その「言葉」に対する思いはかなり深い。
英文学者でありながら、儒教の言葉を持って「指針」としている中山先生、大家であり今も現役であられる渡部先生、ともに、「漢文」の重要性を説く。論語など、これに感銘を受けている人が多いんだけど、このお二人の知識、読書量は生半可ではなく、対談形式の本書の中で、中国をはじめ「古典」の本、言葉が次々に登場する。
確かに、ひとつひとつはその意味もわかると深い、それこそ指針になるようなものだ。またそれが語られた時代の背景を考えると、また、その「言葉」が現代でも通用するスタンダードであることを考えると、やはりそのあたりの「ほんもの」を知らないことには、いかに読書量を増やしたところで、カタテオチであるのだなあ、と感じる。
そしてお二人に共通するのは、単に本を読んで言葉を知る、という点にとどまらず、そこから「自分ならどうすればいいのか」という流れに持っていっていること。その言葉の意味、意義を理解して、そこから「行動」や「思想」に昇華させているところだ。つまりこれができるできないが、人間としての完成度を左右する、ってこと。当たり前なんだけど、動かないことには何も変わりはしない。
漢文のみならず、ゲーテや渋沢栄一、各分野で幅広く「人間力を高める」言葉が紹介されています。その言葉に感銘を受けるのはその通りなのですが、自分にとっては、そういった言葉がポンポンと次々に出てくる著者たちの姿勢にこそ憧憬です。そこまでいけるかわからないけれど、読書とはそうあるべき、というひとつの「最終形」がそこにありました(もちろんご本人たちにとっては「最終」ではないと思いますが)。
自分にもいくつか「指針」にしている言葉があります。それは本で出会ったものもあるし、非常に近い人からいただいた言葉もあります。どんな言葉が自分に合うかはわかりませんし、どこで出会うかも分かりませんが、出会う機会を増やすことと、それを感じ取るアンテナを常に張っておくことはできます。そしてそれをきっかけに行動に軸を持つことも。
改めて、「ことば」の重みを感じ入りました。
【ことば】心に残る格言は、国境を越え、言語の壁を越えて、人の心から心へと伝達されていくものですね。
ゲーテの言葉「急がず、しかし休まず」は、彼を崇拝するイギリス人へ、そのイギリス人の本を読んだ新渡戸稲造へ伝達されていきます。そして本書で紹介されたことで、著者から読者へつながります。国や言語は形式であって、言葉の持つ意味、意義が大事であることが再認識させられます。
人間力を伸ばす珠玉の言葉―箴は鍼なり
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