- オロロ畑でつかまえて
- 発売日: 1998/01/05
『オロロ畑でつかまえて』荻原浩
[6/213]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
「日本一の田舎」牛穴村の青年団が、町おこしのために奔走する物語。東京(都会)の洗練された広告代理店の「実情」と、村の素朴な「青年」たちの必死さと、その中で作り上げられる町おこしストーリーは...
かなり笑えます。「田舎者」と「都会人」のギャップで、というわけではなく、随所にユーモアがちりばめられています。飽きない。感動させる話と同じくらいに、笑わせる話、って難しいと思うのだけれど、スベることなく、テンポよく、タイミングよく、ハマってきます。
明日も知れないような弱小広告代理店の、社長、ディレクター、デザイナーは、それぞれ個性豊かな集団。そして村側はもっと個性的な集団。彼らのマッチしているようなしてないような微妙なバランスが絶妙に描かれ、そして町おこしプロジェクトが進んでいく。
その内容はけして「セオリー」ではなく、やや「グレー」な内容なのだが、そこに尽力する関係者の思いもあり、一旦の「成功」を生みます。実はその「成功」の内容はあまり詳細ではなく、そこに至るまでの「人間」が主に書かれていて、あくまでも主人公は村の代理店の「人間」であり、彼らの「心情」です。必死さ故にやや脱線気味になりますが、進んでしまったものは基に戻れない、というか。
「多分、このまま成功のままではいかないだろうな...」と思わせておいて、最後は...オチがある、というか、最後の最後は、「ToBeContinue」的なエンディング。最終的には誰が「勝ち」を得るのか、勝利の神様は存在するのか...余韻を持って終わる演出もニクイ感じ。
田舎の素朴さと対照的に、都会の汚さ、が誇張されていますが、物語を盛り上げる上では、このあたりの演出も「妙」です。とにかく楽しい。読んでいて楽しい。先が気になる、というよりは、読むこと自体の楽しさをもらえるエンターテイメント。
著者の本を読むのは初めてですが、「次」も読んでみたい。十分にそう思わせる時間でした。
【ことば】...名もないプロダクションが八社競合のプレゼンを勝ち抜くには、どんあ方法であれ、まず目立たなくては話にならない。
その業界に籍を置いていた著者ならではのプレゼン場面。「出来レース」的なコンペで、弱小プロダクションが取った策は...このディレクターは「できる」タイプなのだ。仕事はできて、人間的な面では...含みを持たせながら最後に暴かれたその正体は...ここがまた笑えます。
オロロ畑でつかまえて
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