2011/12/04

B層を動かなさければ本書のメッセージが届かない...矛盾


『ゲーテの警告』適菜収
[3/210]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

日本を今の状態にしたのは「誰」なのか...改革に賛同する傾向のある、IQの低い層(これを「B層」と称する)が主因でありと主張する。そして彼ら「B層」に迎合する政治をする政治家が日本を駄目にする。逆にいえば、そのような政治家しか生み出さない「B層」主流の社会への警告...「ゲーテ」の時代と酷似した現代の構造、ここでゲーテの言葉が生きる...という内容。

マスコミ報道に流されやすい「B層」、比較的IQが低い、とされているが、相対的にIQが高い層(=A層)にコントロールされる、という。A層には、政治家、大学教授、財界、マスメディア等が入ってくるのだろう。B層をいかにうまく「活用するか」がA層の力量であり、A層の生きる術である...

って、なんとなくわかったようなわかんないような感じだったけれど、後半は、民主党政権の非難の繰り返し、だけ。確かにほめられた政権ではないし、リーダー(首相)の力量が合格点に達していないのは事実でしょうけれども、タイトルの「ゲーテ」も存在しなくなり、批判一辺倒。これには閉口です。熱が入りすぎるあまり「死んでしまえばいい」的な発言もでたりして...

民主主義の限界とか、自分のアタマで「考える」ことをしなくなってしまた「B層」の存在、そしてそれを利用するだけの「A層」による支配、コントロール。これでは日本は滅びてしまう...さて、それを本書によって突き付けられた読者はどの対処しましょうかね...ゲーテの警告を待つまでもなく、たとえ「B層」であっても、危機は感じてはいるんです。そこからどう行動するのか、あるいは見限るのか、変えるのか、あきらめるのか、そんなレベルのことを考えなければならない。

そもそも「なるようになる」と考えている人は「B層」ではないし、むしろそちらの「考え方」の方が幸せであるのかもしれません。が、やはり、私たち「B層」は考えなければならないのであって、この本を読んで考えるべきは、そこの部分(のみ)。A層が提示してくれる「考え方」を受け入れずに「自分で」考えることだ。
 
ただ、B層がすなわち「悪い」ということは言えないかと思う。B層が主流であることは、社会がいい方向で成長、成熟した結果であり、ここから予想される「悪い未来」については「修正」をかければいいだけの話であるから。この本の出版だって、B層に支えられている。著者が本書を通じてメッセージを届けたい「ターゲット」も、おそらくB層ではないのかな。ちょっとアイロニックだけど。

解決策が提示されているわけではなく、現在の「病状」を、ネガティブにネガティブに伝えてあるだけの本なので、ここからどうするか、っていうのは読み手次第。本書だけでは当然に解決しない問題です。こういう考え方も...というレベルであまり重くとらえないことが肝要。B層に属する身としては、ね。

【ことば】われわれはみな。われわれ以前に存在していた人たち、およびわれわれとともに存在している人たちからも受け入れ、学ぶべきなのだ。

「独創性」にこだわり、ともすれば勘違いしそうな場面は少なくないだろう。オリジナルは最初からゼロから創出されるわけではなく(そういうケースも皆無ではないだろうが)、これまでの「歴史」から、生み出されてくるものだ。芸術や物質などカタチあるものについても、サービスや考え方など、カタチのないものも。

ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体 (講談社プラスアルファ新書)


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