2011/12/02

睡眠時間を削りました。


『チェット、大丈夫か?』サー・クイン
[2/209]
Amazon
K-amazon ★★★★☆

ミステリーを読むのは、多分10年以上ぶり。加えて、苦手な「洋モノ」。360ページを読み切れるか、不安だったが...
「語り手」は探偵のパートナーである「チェット」。犬である。基本的な目線は彼を通じて語られる。腕の立つ探偵バーニー(人間です)だが、経済環境はけしてよろしくない。 そんな時に既知の警察関係から依頼される案件。「犬」のボディガードである。高報酬。乗らない手はないわけだが、チェットの「犬」の本能が故に、一度契約がご破算になってしまう...そこから「事件」は大きく展開していく...
報酬よりも、探偵としての「本能」が、バーニーを動かす。そこに彼自身の「私的な」感情も絡んでくる。事件に登場するのは、金持ち、保安官、そして、「犬」である。舞台は「ドッグショー」だ。その案件に絡むのが、「ドッグショー」とは無縁の「探偵犬」であるところも、ストーリーとして面白い。

複雑な人間関係がキーとなるのだが、 そこに、「犬間関係」も入ってきたり、とにかくコミカルで軽快で読みやすい。ミステリーとしての組み立てがどう、とか、解決に至るストーリーとか、そのあたりの評価は、ミステリーを読まない(読まなくなった)自分には評価しづらいが、チェットという犬を通してみる人間の動き、これは物理的なものも精神的なものも含まれるが、そこが「深い」。犬ならばこうなのにどうして人間はこうも複雑なんだろう?っていうチェットの声はアイロニックであり、イタイところを突いていたりもする。

そんな「犬」の視点で読んでいくと、「悪い奴ら」が自然と分かってくるようだ。そこからどう展開するか、はここでは伏せておきますけれど。敬愛するパートナー(平たく言えば「飼い主」)のバーニーの信頼を得て、そしてバーニーが大好き、探偵稼業が大好き。そんな40kgもあるチェットは、単に「かわいい」だけのキャラクターではない。
 
「事件」とか「解決」とは別のところで楽しめた。読み物としては面白い。読後感も悪くない。プロの探偵犬を自負しているチェットだが、あくまでも「犬」であるところがけして消去されていないのが、微笑を誘う。眠ってしまう、食べ物に弱い、などなど。「笑える」箇所が何度もあるのが、最後まで飽きずに読めた最大の要因だろうと思う。

全体の大きな流れを崩さない範囲内で、「犬なりに」考えを呟くチェットが愛らしい。この「脱線」がちっともジャマではないのだ。原作はもとより、訳者の力によるとことだろうと思う。


シリーズの第2作ということで、続編ももう決まって(出ている?)らしい。まずは、「初回」の彼らの「成果」を、機会があれば読んでみたいと思う。苦手な「洋モノ」でも、そう思ってしまうほど、入り込んでしまいましたね。

【ことば】...滑走路で小さなベーコンビッツめがけて突進したあとの出来事ほど、ぼくを落ち込ませたものはなかった。

依頼主との初対面の場面で、チェットが「おやつ」を横取りしてしまった場面。これで(一旦)契約が破棄される。「本能」がしでかしたことではあるけれども、それで「落ち込む」場面は、「人間的」。チェットのこういう「犬として」「人間のパートナーとして」の両面が、物語を色づけている。ほほえましい、そして魅力的に光る部分だね。

チェット、大丈夫か? (名犬チェットと探偵バーニー2) (名犬チェットと探偵バーニー 2)

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 団塊バカ親父の散歩話

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