2010/12/30

この手の「時事モノ」は...

『知らないと恥をかく世界の大問題』池上彰⑤
[19/226]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

最近になって、よ~く見かける池上さんの本。本屋でもテレビでも、新聞でも。これまでに読んだ池上さんの本とは違って、この本は「ニュースを理解するための基礎知識」的な内容。特に「国際」ニュースを理解するための知識として、その背景、歴史、それらを池上さんの「わかりやすい」解説でおしえてくれる本である。「売れっ子」の理由は、わかりやすい解説がもちろんベースになっていると思われるが、この本も、「国際問題」という難解な、自分にとっても苦手な分野の解説を分かりやすく説明してくれる。一度読んでおくのは必要かもしれない。読んだあとからニュースの見方が変わる!...とまでは正直言えないけれども、最初っからの「拒否反応」は少なくとも回避できそうだ。
けれど、どうもこの手の内容の本は、「タイムリー」な情報が(より)有効であって、活字になった後に当然に情勢が変わることがありうるので、「ふるい」情報になることが多々あるかと思う。また、背景や歴史レベルを超えて、自分の考え方や予想を記すと、本が出た後に逆の結果になる場合も当然ありうる話で、本にするにはリスクが高い。けど、「背景」だけの本は、内容的につまらない(教科書っぽくなりがち)。この本がつまらない、とかではないんだけど、これまで読んだ本に比べると「淡々」という印象があるのは、そういう理由があるんだろうね。だから、こういう時事内容が中心の場合は、もっと即時性の高いメディア(テレビ、新聞、週刊誌など)のほうがいいね。特に池上さんの場合は、テレビで解説を見たほうが、ずーっといいと思う。
この「感想文」を書いている後ろで、ちょうど池上さんの番組をやっている。年末年始、特番もありそうだよね。多分、見ます。だって面白いですからー。

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)

さすが!「現実性」満載!!

『社長が知らない秘密の仕組み』橋本陽輔
[18/225]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

通販業界にいる限り、その存在を気にせずにはいられないのが「やずや」である。そのストーリーや会社のカラー等が、取り扱いの商材を超えて耳に入ってくる。同じ通販である。伸び切れない会社と、リーディング企業と、何が違うのか...というのは、苦戦が続く中で常に考えていることでもある。しかしながら探してみると「やずや」関係の書籍って、あんまりないんだよねー。やっと見つけたのがこの本なんだけど、そのサクセスストーリーとかそういう類ではなく、その現場で実際に行われている手法を、限りなく現実的に記してある。
結構細かい。もちろん、これを読んで自分の会社にそのまま当てはめれば「やずや」になれるわけではないけれども、正直読んだあとは、試してみたい気持ちでいっぱいになる。これほどの「実用書」はないんでないかな。「顧客ポートフォリオ理論」と呼ばれる、手法について細かく書かれている。この本の監修として名を連ねておられる西野氏が「開発」したもの、ということだが、これを一冊の本として世に出す。これを許容する姿勢、そのものが素敵だと思う。これによって自社が再興した、ともあれば、敢えて世に紹介する必要もないわけだが...お会いしたことはないが、度々お名前は耳にする西野氏の、人間の大きさ、通販「業界」の成長に対する思い、すばらしい方だと思う。こうなりたい、そんな気持ちにさえなる。
先にも書いたが、これを「流用」すれば数値があがるわけでもない。でも、この「仕組み」には、考え、思い、そんな「基本的な」(でも出来ていない)ものが詰まっている。機械的な「仕組み」ではない。それは確かだ。それゆえに、「機械的な仕組み」に限界を感じている自分には、より魅力的に映るんだろう。これは手元においておきたい本である。この「仕組み」を徹底して、その本質に至るまで身につけたい。そうすれば何かが変わる、気がする。

社長が知らない 秘密の仕組み 業種・商品関係なし! 絶対に結果が出る「黄金の法則」

2010/12/28

より「折れそう」になってしまう...

『心が折れそうなビジネスマンが読む本』中森勇人
[17/224]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

著者自身の体験を元に書かれた本であるので、臨場感、現実感が伝わってくる。「折れそうな」事態にある(と思っていた)タイミングで読むには最適!と思っていたが、どこかで「元気づけてくれる」内容を期待していた。が、本書の内容は、「折れてしまってからどうするか」「折れる直前でどうするか」という方が強くて、まだそこまでいっていない自分を認識。最近よく目にする「うつ」について書かれた本で、著者自身も仕事、家庭での「出来事」をきっかけにして、その病と闘っている、「現役」の人である。それだけに、なんちゃらカウンセラーの書いた本とは違う。もちろん「折れない」ためにどうすべきか、というのが主題ではあるので、多少なりとも参考にはなるけれども、それよりも「なったら怖いわあ」という恐怖感の方が残ってしまった...
「対策」としては、予兆を感じ取って、がんばらない、無理しない、休む、といったことが挙げられているが、 おそらくそれ以外に方法はないんだろうね。でも、そうでない状態で「頑張らない、無理しない」というのも、この世に生を受けて社会に還元すべき「大人」として、疑問がないわけではない。要は「節度、バランス」なんだろうけれども。
 一生懸命、まじめな人ほど陥りやすい...よく言われていることではあるけれども、これだって「じゃあ手を抜くべきなのか」と(極論で)考えると、どうも...ただ、ひとつ明らかに言えるのは、「幸せって何?」という究極の人生観と、気付かないかもしれないけれども周りで支えてくれている人のありがたさ。大事なものだよね。仕事よりも人間関係よりも大事だ。これを見失わなければきっと「バランス」はとれるはず。
 自分もようやく、「大事なもの」に気がついた。もちろん仕事をしていれば、生きていればいろいろある。我慢すべきところ。無理しなきゃいけない場面。でも、自分は何をもって「幸せ」なのか。自分を押し殺すことが「大人」であることなのか(そうじゃないだろう)。ようやく「見えて」きたかも、だ。

心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)

2010/12/27

「マエフリ」が長すぎた

『「WHY型思考」が仕事を変える』細谷功③
[16/223]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

「地頭」シリーズを読んでからもう1年半...かなり「面白い」本で、『いつか読みなおす』リストに入っているんだが、今回のは少々疑問符が...「WHAT型」つまり、云われたことをマンマこなすタイプが重宝される時代から、「WHY型」つまり、自ら考えることによって自分も含めた「成長」を促進するタイプへ、時代が移り変わっていると。確かに実体験でも新たに出される本でも、その傾向は間違いないだろう。その「WHY型」は、どのような思考タイプなのか、なぜ「WHY型」なのか、という「説明」が長い。その必要性もわかるし、そうでなければこれから生き残れないし、というのは自覚として既に持っている者にとっては、「説明」よりも、どうやったらそうなるのか、どう考えていくべきなのか、という流れが欲しかったかな...一方で「WHAT型」の職種もあるし、そういう局面だってまったく無意味なわけではない。これは著者も言っていることだけれども、そのバランスをとることが最大、必要なことなんだろうと思う。若干方向性が「今の(これまでの)教育体制」にまで飛躍してしまい、論旨が広くなりすぎているような気がする。必要なことだし、根源はそこなのかもしれないけれど、なんとなく「コンサル」的な発想であり、ビジネス現場で「今日からどのようにしていこうか」というレベルの者には(当面)不要かもしれない事項も少なくない。
WHY型思考=「なぜなぜくん」、WHAT型思考=「そのままくん」、と冒頭でキャラ付けをしたけれども、それが展開されることはなく...全体に抑揚のない、同じことの繰り返し、という感じです。それだけ著者が主張したいことが「一本」なのかもしれませんが、読んだ後に「さて、どうしよう?」となってしまう。そこを「考える」ことが大事なのはわかっているんだけど...

「WHY型思考」が仕事を変える (PHPビジネス新書)

2010/12/25

「いい老人」になる秘訣ですね

人生の軌道修正 (新潮新書)
人生の軌道修正 (新潮新書)
  • 発売日: 2009/04
『人生の軌道修正』和田秀樹④
[15/222]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

トシをとるってどうなることなんだろう?もちろんトシをとった自分はわかるわけがないので周りを見て想像するだけだが...多分、自分が小学生の頃に、「大人になったらどうなるんだろう?」って想像したのと変わらないんだろうな。でもなってみると意外に「変わっていない」自分がいたり。もちろん体力的な変化はあるし、さらに「老い」に向かっていけば、明確な「現象」も自覚せざるをえないだろう。けれども、これって今考えてもしょうがないところもあって、あんまり「変わらない」かもしれないし、自分は自分だし。ってラクに考えるしかないよね。
すごくいいタイトルだと思う。特に自分くらいの年齢に達するとおそらく誰もが一度は考えるようになるポイントではないかと思う。これまでやってきたことの振り返り。これから進む道の見え方。周りの環境の変化。肉体的、精神的な変化。諸々、少し「引いて」観ることができるようになって、それが自分を見つめなおすきっかけになったりして。考えるんですよ、この時期。思春期や青春期のようにね。そんなに「希望的」ではない分、表に出にくいけど、でも真剣なんですよ、オヤジなりに。
という意味でタイトルの「ビビッド」度合いに比べると、その内容は今ひとつインパクトに欠ける印象が。著者自身最後に言っているように「あちこち脱線する」のが読みにくいし、小見出しについてもまるで広告宣伝のようにインパクト勝負で内容がついていなかったり。そんな中で、自分なりに「読んだ」のは、
年取ったって、普通の人間。無理せず、期待せず。自由に楽しく。
というおおらかさ、かな。自分らしさ、っていうのかな。ところどころ、例えば「インプットをしたらアウトプットすべし」とか、なんか唐突な「ノウハウ本」的な箇所もあったけれど、本質は「気楽に行こうよ」的なところではないかと...著者のホントに言いたいモノとは違うかもしれないけど、結構自分にとっては「いい」ポイントではないかと前向きに捉えているんで、まあ、そういうことでいいんではないかなあ。深く考えて悩んじゃうよりはいいよね。

人生の軌道修正 (新潮新書)

2010/12/22

「不思議な算数」はなかったけど...

『「とりあえず、生!」が儲かる理由』江間正和
[14/221]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆


昼は店舗コンサル&夜は店のマスターという、「実践」コンサルの書いた、飲食店の「謎」解き。...50の質問に答える形で進んでいく内容。自分の今の環境(そしておそらく将来も)では、「お店」を出すことはないとしても、ECサイトという、言ってみれば「お店」を運営する立場としては、興味関心はある。そこに信念的なものであってもヒントが見つけられればいい。直接的ではない、こういう類の内容からの方が、何か見つかる可能性はあるんだよね、意外に。
さて、店を持つためにはいくらくらい必要なのか、その心構えは?等々、シンプルな「Q」に対して、著者が「A」を「コンサル」していく流れである。副題にあるような「飲食店の不思議な算数」は、どこにもなかったけれども(「あたりまえの」算数はあった)、誘客の考え方=直接的に効果を見込めるだけでいいのか?、とか、費用の考え方=必要なものに使う。不要なものに使わない、とか、当たり前だけれども、苦しくなると、目が曇るとつい見失いがちなものはあった。これらはリアルの飲食店も、一緒だなあ、って。オーナーとしての気構えとか、責任感とか、そのあたりが(奥ゆかしくも)あまり出てこなかったけれども、実はそのあたりをもっと知りたかったな...という消化不良はある。そして「トイレが詰まったときにクラシアンは安い」的な、それこそ「不思議な算数」ではないところもいくつかあったりしたが...このあたりは「本当に現場にいる」現実感、ということなのかな。
もしも本気で飲食店を出すことを考えている人には多分不足だろう。ちょっと引いた(余裕のある)立場から読めば、「軽い読み物」としては読み切れる。タイトル(特に副題)に惹かれてしまうと、(自分のように)「えっ?」となる可能性が。

「とりあえず、生!」が儲かる理由 飲食店の「不思議な算数」2 (セオリーBOOKS)

2010/12/21

読むだけでトシとった気になります

頭がいい人の45歳からの習慣術 (KAWADE夢新書)
頭がいい人の45歳からの習慣術 (KAWADE夢新書)
  • 発売日: 2004/08/24

『頭がいい人の45歳からの習慣術』小泉十三
[13/220]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

タイトルが「濃い」ねえ。こんなタイトルの本を手にするようになってしまったんだねえ...って感傷に浸るわけでもなく、前向きな気持ちで読み始める。気にしてみれば、この年代向けの「悩むよねえ、この年頃は」というテーマの本が多い。本書はどちらからといえば、「ライト」な、あまり深堀りしない感じの本ではあるが、なんとなく「ほのぼの」してしまって、「悩み」に対するソリューションというよりは、「同調」という感じ。それはそれ、特に読後感が悪いわけでもなく、一方ではそれほど印象に残るでもなく。
来るべき「老い」に向かい、どのようなスタンスをとるのか、何かをし始めるのに年齢は関係ない、とはいえ、この年代で始めるべきものはやっぱりあるだろう。ある意味「ラストチャンス」ともいえるこの年代に、何を考えるのか、何を始めるのか、或いは始めないのか。タイトルに掲げれた「年齢」にはまだ数年の猶予はあるものの、やっぱりそういうことを考え始める年頃なんだ。これまで突っ走れたものが、ふと立ち止まると見えてくるものはある。ここで後ろを振り向かないこと。これが一番大事なんだろうな、って思う。本書ではそのような「前を向け!」という表現はなかったものの、「無理せずに、あせらずに、等身大の自分で、これまで作り上げてきた自分のままに、一歩一歩、歩いていこう」というようにメッセージを受け取った。これは結構ポイントだったりする。「基礎編」なんだろうけれど、重要な点も含まれているような...
ただ、どうも、多分このテーマで本を書くとそうなってしまうんだろうけれど、「老い」が前面に出てしまって、「自分もこの領域に足を...」という感じが伝わってきてしまうことは否めず。この空気を受け入れてしまうのか、まだまだ、と(とりあえず)反発しておくか...「自分」を見つめ直す。いいタイミングなんだろうね。

頭がいい人の45歳からの習慣術 (KAWADE夢新書)

2010/12/19

表面的な言葉も、表面的な本も...

ワークライフ“アンバランス”の仕事力
ワークライフ“アンバランス”の仕事力
  • 発売日: 2008/11/19

『ワークライフ”アンバランス”の仕事力』田島弓子
[12/219]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「ワークライフバランス」その根本にある考え方、つまり何のために仕事をするのか、それが手段になっていませんか?ホントにそれでいいのか?とか、これ自体にはすごく共感する。が、このフレーズが今ひとつ根付いていないのは、時間的なイメージがつきまとい、「現実的にはサービス残業していて、「バランス」どころじゃねーよ」的な場面が多いから、なのだろうと思う。「時間的に」バランスをとれている人はおそらく、仕事をができない人だろう、大方の場合は。だから「時間」に焦点を当てるのではなく、仮に時間的には「アンバランス」でも、「ワークライフバランス」が取れている人はいるだろう。そしてそれがこの言葉の本質だ、本質のはずである。
個人的にはそういう考えをしてきているし、そうであるべきだと思っていて、本書のタイトルにあるような、(ある意味での)アンバランスはあってしかるべきだと思う。だって、「時間を忘れるほどのめりこむ時期」って、絶対に必要なんだと思う。将来的な何かの為に、というわけではなく、その瞬間、その目の前の「仕事」に集中すること、これ自体がすっごく大事であって、その意味ではその「結果」は「最も大事な」事項ではない。仮に失敗したとしても、その次の成功へのプロセスと考えられ、むしろその結果を出すための時間、集中力、努力、それがチカラになるはず。
実は(こんな自分でもそう考えてしまうくらい)この(タイトルの言葉である)「ワークライフバランス」は捉え方が難しい。故にこの本にはある種「期待」したのであるが、どうも著者自信のかなり深い経験の割にはいまひとつ薄いんだよなあ。考え方には共感できるんだけど、文字にするとどうしてこう軽くなってしまうんだろうなあ。著者が本書を以って伝えたい対象が、「若い人」のようにも思える(明確には書かれていないが)。「若い人」は、この言葉を知らなくていい。時間も何もかも「仕事」に集中すればよい。そんな「オヤジ」の考え方が身にしみてしまったから、書かれた内容にギャップを感じるんだろうか。

2010/12/17

興味深い話だが、「かゆいところに」手が...


『ヒット商品が教えてくれる 人の「ホンネ」をつかむ技術』並木裕太
[11/218]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

商品開発、マーケティング...これらのヒントにするために実施するアンケート、インタビュー。「調査」と言われているモノにどれくらいの価値が見出せるか、そこに本当の意味での「ヒント」はあるのか?見いだせているのか?つまりはその調査結果が「ホンネ」なのか「建前」なのか、それを見抜くことが必要になってくる。回答から、その前提となった心理を見いだせるのかどうか。そもそも「表面的な」調査をする意味を吟味する必要に迫られる。
勢いが鈍ってきたとき、数字が想定と乖離してきたとき、どうしても「市場調査」に頼りがちだ。そこになんらかの糸口を見つけたくなる。例えば「この年代の女性はこういう傾向にある」。その結果がどう自分の目の前の課題に役立つのか、どう活かすのか。結果を活用することが本質であり、そこには「目」が必要になってくる。その結果に全面的に頼ってしまっては、何も変わらない。
そんな「問題意識」は既に頭にこびりついている。「鵜呑み」するほどに短絡ではないつもりだ。そこでこの本に書かれているような、「建前」と「ホンネ」という考え方には非常に共鳴する部分がある。つまりはヒントにすべきは「ホンネ」であって、その「ホンネ」を引き出せる、或いは「ホンネ」を手繰り寄せることができるような調査でなければならない。ヒット商品がその「ホンネ」からヒントを得てそこから考え抜かれている(単に「考えられてる」ではない)ことの事例がいくつか。それはそれ、「ヒット」を生み出すのは当然に「抜く」ことが大事なんだろう。そんな簡単なことではないからこそ、「ヒット」商品であるわけで。
著者は「心のレントゲン」という表現を使って、その「ホンネ」を見抜くマーケティング手法を活用している。それは本質であることには間違いない。けれども、本の冒頭部分で「心のレントゲン」の使い方を教えます、っていう件であったにも関わらず、書かれている内容は、「レントゲンの結果」のみであって、タイトルにある「技術」についてはまったく触れられていない。つまりそれらが本当に「ホンネ」であるのか、それが疑わしくもなってしまう。というのは書かれていることが「結果」しかないから。
すべて、ではなくとも、「レントゲン」を使うための「技術」にあたるもの、もしくはその「ヒント」があれば、と思う。結局、結果だけの記載では、「技術」ではないわけで、そういう「考え方」を指南してくれているにすぎない。「考え方」は既に持っている自分としては消化不良、なんだな。1000円前後でそんなヒントが得られる、と思ってしまうのが間違いなのかもしれないけれど、さ。

ヒット商品が教えてくれる 人の「ホンネ」をつかむ技術 (講談社プラスアルファ新書)

2010/12/15

生き方...簡単にはいかないね

おとなの進路教室。
おとなの進路教室。
  • 発売日: 2007/03/16

『おとなの進路教室。』山田ズーニー
[10/217]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

直前に読んだ本『大人のための文章教室』とタイトルが似ているのは単なる偶然。それが「読みやすかった」のに対して、この本は冒頭から著者自身が「さらさら文章ではありません」という布石を打たれていた、そのままの印象です。
生き方。働き方。今の自分にはまさに「タイミング」ではあるのですが...著者自身が会社員を自ら離れ、悩みながら今の自分を見つけた、そんなご経験を元に、生き方、働き方を綴られています。書かれている以上に葛藤はあったはずだし、自分を見失いがちな時もあったことだと思います。それを乗り越えたからこそ、今がある...そういう読み方をすべきなのでしょう。が。ヒネクレ度合いが高まっている自分は、「今の自分」、乗り越えた自分の像が、この本の中からは見いだせなかった。苦しい経験をされてきたのは伝わりましたが、それを経て今、どうあるのか、というのが、非常に抽象的でわかりにくい、そんな印象が強い。まさに「文章教室」で言われていた、「伝わる文章」になっているかどうか。不安定な自分には、行間を読んだり、深読みしたり、というのは苦手でございます。もう少し「さらさら読める」ものであればよかったなあって思いますね。
自分を見つめ直す。それには何歳であろうと関係ない。本当に自分の立っている(べき)場所はどこにあるのか。そんなことを考えた。そういう(小さな)きっかけは与えてもらった。「場所」「夢」「他者」「金」...キーワードとしては残るものは少なくないです。ただ、この「重い」読後感がなんとかならないかなあ、と。

おとなの進路教室。

2010/12/14

「本質」だなあ。さすがです。

大人のための文章教室 (講談社現代新書)
大人のための文章教室 (講談社現代新書)
  • 発売日: 2004/10/19

『大人のための文章教室』清水義範
[9/216]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

ずーっと前、著者の小説を片っ端から読んでいた時期があった。「ひねり」と「知性」が感じられて、一方では「軽い」と捉えられがちだけど、自分にとってもあっていて、読んでいて楽しかった思いがある。いつのまにか「小説」の類を読まなくなって離れてしまったが...
本書は、著者が(特にビジネスマン対象に)「文書の書き方」を教える内容。それも「ひねり」があるし、よくあるハウツーや名文の引用ではない。そこに著者自身の経験則や、「伝える」技術もあって、「軽く」読めるのだけれども、本意がキチンと伝わってくるのはさすが。誰かに読んでもらう、という意志のもとに書かないと上達しない、とか、そもそもまず「読まない」と書けない、とか。楽してテクニックだけをかいつまんで文章が上達するわけはないのであって、やっぱり「引き出し」を多くしておくことが大事だし、著者の「パスティーシュ」と呼ばれる所以はやはり、その(模倣される)作家の文書を、好きでたくさん読んでいる、ということが前提になっている。そりゃそうだわなあ。でもそれをやらないでテクニックで済まそうと思ってしまうことがないか?当然そんな表面的なものは仮に一時的に「あたった」としても、薄っぺらいんだよね。だからこそ著者の書くモノに「知性」を感じて「読みたい」気分になるんだろう。
現状では「書く」ことは生業ではないけれども、この「感想文」にしたって、やっぱり「誰かに読んでもらう」ことを念頭に上達しなけりゃいけないんだよね。そりゃ「うまく」なりたい。伝えたい。引き出しを増やすのとアウトプットすること、改めて考えて、惰性でいかないよう意識します。

大人のための文章教室 (講談社現代新書)

2010/12/12

(勝手に)期待した方向ではないけれども..



『ビジネスで一番、大切なこと』ヤンミ・ムン
[8/215]Rakuten
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

積読が多くて、原則「先入先出」で読んでいるせいもあって、「今話題の」本をその(話題の)タイミングで読むことってあんまりない。この本はそういう「稀な」タイミングで読んでみたが...なんとなくこれまで自分が読んできた流れとしては、「ビジネスに大切なのは、テクニック「だけ」ではなく、考え方や、本質的な「思い」も含めて」という漠然としたイメージを持ちつつあり、「数字」の限界を感じつつもある中で、どのように自分を、自分が携わる価値、言い換えれば、主役=顧客を根本とする構造の中で自分はどの位置にいるのか、いるべきなのか、その上で「大切なこと」とはいったいなんだろう?...という複雑な(自分で「複雑」にしている傾向はあるけれど)中でこの本、このタイトルに期待すべきは...
ちょうど「真ん中」といったところでしょうか。所謂マーケティングのセオリーはもちろん知識としてあるという前提の上で、「脱」「超」セオリーの手法が抜け出して成功している事例がある。これまでのセオリー「だけ」を追い求めている企業は、「差別化」しようとして「同質化」している、これによって「ブランド」というメッセージが顧客には受け入れられなくなっている...
確かに、アップル、AIBO、MINIクーパーのマーケティングに代表される成功事例は、これまでのセオリーで成功しているのではない。それを超えた「感性」により近づいた手法だろうと思う。けれどこれらの手法をとっている企業だって何万とあるはずで、この手法をとったからすなわち成功というわけではない。そういうところを考えると、従来型でも、超セオリー型でも成功も失敗もあるわけで、この分類そのものの意味があるのかどうか...やっぱり「複雑」だなあ。
そこは「教授」なので、どうしてもテクニック論に偏る。それがいいのかどうか、悩む今の自分にとってはそこで解決策を見つけられるはずがないんだろうなあ。今近寄りたいのはむしろ「心理学」「行動学」であって、「統計学」ではないのだ。だからこの本は読む側のステイタスによるものかと..肯定も否定もできないが、異なるスタイタスになって読み返すことはあるかと思う。

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

2010/12/10

大事なポイントがあるにはある

選び抜く力 (角川oneテーマ21)
選び抜く力 (角川oneテーマ21)
  • 発売日: 2009/03/10

『選び抜く力』伊藤真②
[7/214]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

メディアでも見かける司法試験対策の塾先生。自分はその試験を目指したことがないので、表面的な「難しさ」しかしらないけれども、相当な難関であることは間違いないだろう。その先生が教える「勉強法」。といってもテクニックではなく、「考え方」を示唆してくれる。巷にあふれる「ハウツー」の中から自分にあったものをどう選ぶのか。どれが正解とは著者はいわないけれど、その選ぶ基準を教えてくれる。一言でいえば「自分にあったもの」というのがその答え。う~ん、深いんだか、結論の見出せない内容なのか、よくわからないけれども、「考え方」自体には共感できる。周りに踊らされて飛びつくよりも「継続」できるものが結果的にはよい、という、一方からみれば「あたりまえ」ではあるんだけど...
けれども少なくとも「結果」を出している、出し続けている先生の示唆である。そして司法試験合格から弁護士、それを捨てて教育の現場に飛び込んだ著者が「続けている」考え方である、ということは、つまり「継続は力なり」というものの正しさを伝えているなによりの証左であることはまちがいない。
さて、自分に置き換える。勉強することはその先に何があるのか、記憶することが目標ではもちろんないわけで、その先の到達点のために勉強をする、そのやり方を考える、その際に「到達点」を見失わない...正当であって進むフローではあるけれど、その流れの中にいると見失うことが多い。それを回避する「チェックポイント」のようなものが欲しい。「到達度」の実感なのかな。本を読むこともやはりその先にあるものが見えないと、「惰性」になってしまうよね。ただけしてマイナスにはならない、そんな思いでつづけているんだけれども。
司法試験という(自分からすれば)遠い世界の話かもしれないけれども、「勉強」という軸で考えた場合に、「近い」存在として実感できる本です。「継続」。これはこれからのテーマのひとつだわね...

選び抜く力 (角川oneテーマ21)

2010/12/09

各論はよくわかった。全体像が...

なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]
なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]
  • 発売日: 2006/12/16

『なぜ勉強するのか?』鈴木光司
[6/213]Libary
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

そう、あの『リング』の著者である。読み始めるまでは「その人」であることに気づかなかったけれど...もうどれくらい前になるか、(映画化の前に)『リング』を読んで、印象的で面白かったイメージが残る(「コワイ」という印象よりも強い)。著者が「子育て」「教育」に造詣が深いことはこれを読むまで知らなかった。
「勉強」について、いまさらながら関心が高い自分としては(実行力が高いかどうかは置いておく)、「なぜ」というテーマは非常に興味深い。自分本位な考え方ですが。この本の内容としては、「こども」が対象になっており直接的には、その「自分本位」のワタクシ向きではないけれども、まさにその対象「こども」を持つ親としてのワタクシには興味深い内容である。要は「手段と目的」論がここでも出てくる、という感じ。勉強する先にあるものは何であるのか。よく持ち出される例として「微分積分」や、「年表のゴロ合わせ」など、実生活で役に立つのかどうか。断片的に公式を覚える、年号を覚える、これは「テクニック」であって目的ではない。全体をグリップするなかで公式、年号は必要になってくる。それがあるかないかで「広がり」が違うんだよね。なんとなくだけどそんな感覚はある。あるんだけれど、その感覚が身に着いたのはやはり大人になってからであって、「現場」時代にはそんなことを考える環境ではなくテクニックを身につけるのでせいいっぱい。「せいいっぱい」だったのか、教えてくれるひとがいなかったのか、それは今さら「解析」するつもりはないけれども。故に、次世代に「意味」を伝えていくことはやはり重要なんだと気づかされる。
なにより「昔はよかった」発言の全面否定は興味深い。これが「こども」たちの厭世感を醸成してしまっている可能性が高い、という説。たしかに「よくはなかった」昔を改善するために社会は変わってきているはずで、昔のいい面と今の悪い(悪く思ってしまう)面を断片的に比べるのは、前記した「年表のゴロ合わせ」と一緒で本質的な意味ではないし、前向きな環境ではないね。確かにそうだ。
そして「競争社会を煽る」ことの意味についてもいいことを言っている。「世の中にでれば競争なんだから」というのも事実かどうか。そう、社会人として生きるためには、著者のいうように「協力社会」であるべきなんだよね。競争ももちろんあるけれども、競争に打ち勝つには「協力」が必要。絶対に必要なんだ。
さすが「モノカキ」のプロ、要所は非常に分かりやすく響くモノはある。けれどもなんとなく全体として「薄い」感じを持ってしまうのはどうしてなんだろう...わかりやすくする「テクニック」として使用している事例があまりに広範囲にわたっていて散漫な感じがするから、かなあ。

なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]

2010/12/07

くるしい...が難解の中にも光は...

悩むチカラ ほんとうのプラス思考 (PHP新書)
悩むチカラ ほんとうのプラス思考 (PHP新書)
  • 発売日: 2005/06/16

『悩むチカラ』伊藤友宣
[5/212]Library
Amazon ★★☆☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

悩むチカラ-ほんとうのプラス思考...副題も含めて「今」の自分が引き寄せられるタイトル。図書館の棚で「出会った」が、AMAZONレビューでは「読みにくい」類が並ぶ。はたして...言われるほどの難解さではないものの、著者の真意が伝わってこない、確かに読み解きにくい文章だった。長い。とにかく一つの文章が長いんですね。んで、肝心の「悩むチカラ」がなんであるのか、「ほんとうのプラス思考」をどのように自らの力としていくのか、そこがわからずじまい。もちろん著者自身には、多種多様な人間と接した経験や、哲学的な素養、ご自身の幼少時代のご経験...これらから「悩むチカラ」が、特に現代の日本には欠けている、必要であるということが根底にあるはずなんだけど、大部分の「凶悪犯罪の加害者の心理」などにページを割いていたり、心酔さえている経営者の言葉に寄ってみたり、少し偏っているみたい。そこから「これが結論」というものが見えにくい。犯罪心理については、個人的には相容れないものがあり、教育環境や社会的なそれが一因である、というのはどうも腑に落ちない。そんな環境下であっても自分を見失わない人間が大多数なわけで、どうにもこうにも「本人の責」である、それだけだと考えているので。それはそれとして、「悩」んでいる今の自分にヒントになるものは残念ながら少なかった。1点、直接的には書かれていなかったけれども、「幸せって何?」という、これまた「今の悩み」に対しては、「経済資本」に対する「文化資本」という言葉を以て、「文化資本」すなわち「健全な知情意を堅持し得る」ことが一つの要素である、と捉えた(この解釈が著者の主張と合致しているかは定かではない)。哲学表現で難解だったが「自分のため」と「他者のため」の二つを持つことでその先に進める、というのも「幸せ」の条件だと捉える(「正」「反」「合」の考えかた)。ところどころ、こういう本質的なところは見えたりする。けれども、読み手がそれを「深読み」する必要に迫られるのは、とにかく疲れますわ。
主旨からはまったく外れるが、著者自身の体験をもって「食べ物の好き嫌い」と「他者に対する好き嫌い」が合致する、こんな点もわりと「そうそう」という感覚だったり...これは完全に傍流ですけれども。

悩むチカラ ほんとうのプラス思考 (PHP新書)

2010/12/06

この人はいったい誰なんだろう?

テレビは見てはいけない (PHP新書)
テレビは見てはいけない (PHP新書)
  • 発売日: 2009/09/16

『テレビは見てはいけない』苫米地英人
[4/211]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

電車内広告でよく新刊の広告を見る苫米地さん、これまで読んだことがなくて、「1冊くらいは...」という気持ちから選んだ本である。タイトルにあるが、内容としてはもっと大きく「メディアに左右されてはならない」「メディアは偏った考えである」ということであり、つまりは「メディアリテラシー」を身につけないと大変なことになるよ、というメッセージと受け取った。
が、それ以上でもそれ以下でもない。テレビをはじめとするメディアが一方的な考えである、と主張すること自体も、ある意味「一方的」ではある。フラットな考えを持つためにはやはり両社の意見、考え方を身につけた上で、「見抜く」ことが必要だろう。インターネットの情報についてはほとんど触れられていないけれども、特にこれについては「見抜く」ことが大事で、多少なりとも多くの人が「懐疑的な」見方をしていることと思う。テレビも同様、ということにすぎない。感覚的にも取り入れやすいことで、新しい発見ではない。主張が強いので、著者自身が「洗脳」しようとしているように(穿った)見方をしてしまう。「テレビはダメ」といっているが、じゃあどのように「使う」のか、という点もなく、自分がかかわっている「メディア」が正しい、という主張にすり変わる。なんとなく「宣伝」っぽい。
それにしても、脳の研究者であり、著者であり、新興宗教の信仰者を脱洗脳したとか(これ、知りませんでした)、媒体を持っているとか、芸能プロダクションを持っているとか、なんでも「持っている」人である。どんな人なんだろう?あまりに「なんでも」という感じで、「本業」が何であるのかつかめない。誰?

テレビは見てはいけない (PHP新書)

2010/12/04

納得!でも...

外国語を身につけるための日本語レッスン
発売日: 2003/09
posted with Socialtunes at 2010/12/04

『外国語を身につけるための日本語レッスン』三森ゆりか
[3/210]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

英単語を知っていても外国人と話しができない...それは「言語技術」の未熟さにあった!という著者の持論。外国では普通に思考回路にあるような順序だて、考え方といった「技術」が日本の教育におけるそれと異なるため、日本語の「曖昧さ」を残したままでは外国人との会話がつながっていかない。つまりは、外国人と話をするためには、まずは母国語(日本語)で外国語の「言語技術」を身につけるべし!という内容です。それには「主語の明確化」「対話するための『問答』」「説明の技術」これらを学びましょう...なんかすごくしっくりきます。自分は今現在外国語を習うとか外国人と話をする環境にはないのだが、ニュアンスとして言わんとされていることは分かる気がする。つまり文化、教育的な背景、環境の違いが「対話」のズレを生み出すといったこと。確かにここを理解すれば、いや理解しないと「文法が間違ったって伝わるのさ」という、よく言われているようなフレーズは成り立たないだろう。「伝わる」ためには、考え方や伝わり方、すなわち「技術」を習得せねばならんのだからね。
実際にトレーニングしたり、異なる背景を持つ外国人と「対話」をする機会はそうそう自分の周りには発生しないと思われるが、まずは「日本語」でその技術を習得する、という考え方には同意です。良くも悪くも「表面化しない一歩深いところ」を読み取ることが日本語における対話の特徴だと思うが、「言語技術」の習得(あるいはトレーニング過程において)によって、日本語の「よさ」というのも再認識できそうだ。「主語を必ずつける」というのは日本語の「会話」としては違和感だけれどもまずは「意識」が考え方を変える。逆のパターン「外国人が日本語の背景、環境を知ろうとする」ことがほとんどないように思えるのが不思議だしシャクではあるけれども、コミュニケーション手段としての「英語」にはかなわないもんなあ。
全体通して、書かれている内容は興味深い。けれども「言語」を専門にされている方の本は、理屈っぽくて読むのに疲れるんだよね。そもそもそんなことを行っていたら「言語技術」が身につかないんだろうけどさ。でも本1冊どこにも「エンターテイメント」が無いのも困りものですね。だって、英語って「ユーモア」が大事でしょ。


外国語を身につけるための日本語レッスン

2010/12/03

「古田」らしさが見られない...

「優柔決断」のすすめ (PHP新書)
発売日: 2009/10/16
posted with Socialtunes at 2010/12/03

『「優柔決断」のすすめ』古田敦也
[2/209]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

野球がうまいひとはアタマのよさも必要。=アタマがよいアスリートはかっこいい。そんなイメージを世に出した先駆者的な人。現役時代をほぼ全期間しっている自分にとっては、それまでの「一流」プロ野球選手の像を変えた人でもある。また「キャッチャー」というポジションに光を当てたことでもある。従来の「地味」なイメージを覆した...派手さはないかもしれないけれどもある意味「革新的」なパフォーマンスを見せてくれた著者だけに、その著書も相当...と思っていたけれども、内容として特に斬新な切り口はない。それはそれで「当たり前のことをいかに真剣にやれるか」ということがポイントなのかもしれないけれども、タイトルから伺いしれるような「広い視野を以て、柔軟に受け入れるインプット体制と、その場でアウトプットできる意識」というところからの広がりは、ない。もちろん、それが十分できる、継続的に成長できる人はそう多くはないので、著者が成功した証でもあるのだとは思う。
自分の勝手な見方ではあるけれども、選手として、野村監督、若松監督という指揮官の元でプレイしたときの古田選手時代と、かなりの話題を以て登場した「プレイングマネージャー」時代とを比較すると、やはり選手時代の方が魅力的であった。それはそれ「兼任」がいかにハードか、を示したものであるのかもしれないけれども、もしかしたら選手時代にはあまり感じなかったような「制約」が課されていたのかもしれない。与えられた環境の中でできることはすべて出し切る、というスタンスの著者であるからこそ、「監督」としてもう少し長くその姿をみたかった気もする。長い期間でみればおそらくなんらかの「結果」を出してくれただろうと思う。少し残念。
印象に残ったのは、選手時代に師事した二人の監督の「マネジメントの違い」の箇所。それぞれトップダウン型、コミュニケーション型、と違いはあれど、それぞれ「結果」を出された素晴らしいマネージャーであり、時代も環境も彼らを呼んでいたのだろうし、そのマネージャーの元、現場のリーダーとして支えた著者の功績ももちろん大きい。その経験があるだけに、もう一度球界に戻ってきてほしい。そんな一野球ファンとしての思いはある。この本はそこまでのもの。若干「遠目」から見る見方や、無理やりにビジネスに結び付けようとしている箇所もあり、そこが本来のフルタの魅力を減じている要因であるかとも思える。

「優柔決断」のすすめ (PHP新書)

2010/12/02

肩透かし...[>期待値]


『真実の瞬間』ヤン・カールソン
[1/208]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

読むのが遅い...と言われそうなほど「有名な」本だと思う。もう20年前か...経営危機状態だったスカンジナビア航空を救った若い社長、その考え方と実行力。そんな内容で、タイトルのスマートさも含めて期待値は高かったのだが、おそらく読む順番を間違えたのと、組織を活性化させるやりかたについて、結構(もしかしたらこの本をベースにして)書かれた本を読んできているので、あまり斬新なイメージは持てず、「真実の瞬間」に自分は出会うことができなかったようだ。
もちろん、「製品主義」から、「顧客主義」への視点変更、つまり機材を売った買ったではなくて、航空会社は、安全に快適に移動をサポートするサービス業である、ということを少なくないスタッフたちに浸透させていったこと、迅速な対応を求められる現場のスタッフが裁量、決定権をもつような仕組みを作り上げたこと、これらは非常に興味深い。その改革を推し進めた著者のリーダーシップを含め、まさに自分ができていないことである。そうなんだけど、今現在は、自分の方向性が「他人への貢献」という視点に移っていて、会社本位ではなくなりつつあることと、そういった思いと現実でどう対処すべきか、どう進むべきか、っていう深い悩みを抱えているので、この本のような「成功事例」を記載したもの、それ以上深くはないもの、というのはあまり響かない環境である。
なんとなく著者の実像、どんな人であるのか、というのもわかりにくく、もちろん「結果」がすべてを表しているのだとは思うけれども、人物が見えてこないと感情移入もしにくいなあ。自分を取り巻く環境が変わった時にもう一回読む...ことはないですねー。

真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか

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