2012/01/03

これが「純文学」の世界なのか...壁、高いなあ

きみはポラリス
きみはポラリス
  • 発売日: 2007/05

『きみはポラリス』三浦しをん③
[1]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

しをん作品との出会いは、「エッセー」→「長編」→、そして今回の「短編」の順に読んできた。これが正解かどうかは分からないけれども、多分、「初回」が本書だったら、「次」は無かっただろうと思う。ならば、「正解」ということにしておこう。

本書は、「恋愛」をテーマに綴られた短編を集めたもの。女性作家から見る恋愛感が、そもそも異性である自分に「直接」分かるわけはないのだが、それにしても距離を感じました。登場人物に(男女関わらず)感情移入できる箇所は見つからず...

初恋、純愛、結婚、偏愛、信仰...

どれも、「しをん」風な世界に組み込まれています。読み終わって俯瞰してみれば、「さすが」という気もしてきます。個性が強いキャラクター、抑え込まれた感情の表現、抑え込まれた極限で口から出る本音の言葉。
「恋愛がテーマ」ということは、すなわち「人間クサイ」ドラマであるということ。そんなわかりきったことなんだけど、意外に忘れていたことを見つけられたかな。ここでは必ずしもすべてがハッピーエンドではないけれども、当然ながらすべて「人間」あるいは「感情」しか存在しません。これがけして「重すぎ」ないのが著者の力量なんでしょう。ハッピーエンドどころか、「体言止め」のような感じで、「これで終わり?」っていうものも少なくなかったけれど...「純文学」はこういうものなんでしょうかね...

登場人物で「主役」になる確率が高いのは、結婚前で、なんらかの理由で、どこか完ぺきではない男と一緒に住んでいる30前後の女性たち。読者層も同じ層なんだろう。正直、彼女たちの「生態」は皆目わからないけれど、さすがに「ここにでてくる感じとは違うだろう」とは思う。そう考える自体が、中年男性の古びた思考なのかもしれないが、「遠い」距離を感じたのは、まさにその「現実感」にある。得意の想像力を働かせても、距離は縮まらなかった。
それならそれで、「物語」を楽しめればいい。そういう読み方も必要な場面もある。ただ、次のしをんさんの作品は、長編小説にしよう。


【ことば】そうして...見せた笑顔を、私はきっと、ずっと覚えているだろう。もしもいつか、私たちの心が遠く隔てられてしまう日が来ても、この笑顔はいつも私のどこかにあり、花が咲いて散って身をつけるみたいに完璧な調和の中で、私の記憶を磨き続ける...

こう思えることをすなわち「愛」と呼ぶんだろうと思う。対象がもたらす「温かい空間」、そして対象へも同じ気持ちを与えているということへの幸福感。小説の世界の「理想」であり、「架空」のものなのか、現実に存在しうるものなのか、それは自分で確かめるしかない。「ある」と信じて。

きみはポラリス


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かみさまの贈りもの~読書日記~
勝手気ままな日々


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