2012/01/16

理解しにくい「違和感」が残る...

僕の明日を照らして
僕の明日を照らして
  • 発売日: 2010/02/10

『僕の明日を照らして』瀬尾まいこ⑥
[9]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

義理の父から虐待を受ける中学生。いわゆる「DV」という言葉から受けるイメージとはかなり異なる世界観が描かれていて、「古い」タイプの自分には違和感がぬぐい去れない。

虐待する側、される側に、「憎悪」を感情はない。そして、受ける側=中学生は、真正面から、この事態を解決する道を探る。虐待する側=父親と一緒になって、だ。カルシウムの摂取とか、子どもなりの策ではあるが、むしろ、暴力をするってしまう義父のために、努力しているのだ。
どこかしかるべき機関や、教師、そもそも母親にも「虐待」の事実を伏せて、義父の「回復」に尽力する。血縁関係がなくとも、それ以上の「愛」があるような感じさえする。

DVというかなり深刻な問題がテーマとしてあり、大人の精神の在り方(普段は子どもに優しい歯医者さんだったりする)や、虐待の現実に気づかない母親、誰にもそれを言うことのできない子ども(この場合は、むしろ「敢えて」言わない、というスタンスを取っているが)。
「重い」テーマを、重すぎず軽すぎず、瀬尾さんの独特の世界観で描いているので、不快感はない。が、違和感は残る。現実との距離感だったり、いまどきの中学生の実態であったり。
そもそも、何故にこのテーマなのか、著者が伝えたかったことは何なのか、つかみきれませんでした。

この問題に前向きに取り組む中学生の成長は、なんとなく伝わってきます。同級生への接し方、他の大人との距離の取り方、家庭での「負の経験」を、プラスに変えるような行動、考え方が培われていく姿が見てとれます。
が、問題のある大人側の描写がほぼありません。これが意図的なのかはわかりませんが、本来は、その(突然「キレル」)原因や、自ら改善に取り組もうとするようなものがあってもいいのかも。ストーリーが複雑になる可能性はありますが、現実問題としては、その「元を断つ」ことが重要になってきますよね。


実際の「今の」中学生が読んだらどう感じるのだろう。自分は、「キレル義父」の立場でしか読めなかったけれど。読む人によって、或いは読む人の環境によって、大きく変わる物語なのかもしれません。

これまで読んだ瀬尾さんの本とは、かなり色が異なる本です。個人的には、「いつもの」瀬尾ワールドがいいなあ、と思う。虐待、という話題と瀬尾さんのイメージは、やっぱり「違和感」ですねー。


【ことば】...終わりはちゃんとやってきて、新しい光をつれてきてくれる。止まない雨はないなんて言葉、信用してなかった。だけど、心がすとんとクリアになるのがわかった。

「虐待」から抜け出した時の感情だけれど、この言葉だけ抜き出して考えるとどんな場面でも通用する。ひとつ「区切り」をつけて「次」に向かうことも、必要な時がある。「次」がもっともっとよくなればいい。これまでの苦しみは「次」のためにあった、と思えるくらいに。

僕の明日を照らして

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続 活字中毒日記

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