2012/01/11

もしや「対象外」か?とも思えるほどの清らかさが。


『コンビニたそがれ堂 星に願いを』村山早紀
[5]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

少女、若い男性、年配の男性。それぞれが経験する「別れ」。そして未来へ歩いて行く姿。それまでの「過去」がけして捨てたもんじゃない、自分なりに幸せな生き方をしてきた、と気づく。過去を振り切るのではなく、それは「今」の自分を作り上げたものであるし、未来に向けて進んでいくための時間。

「コンビニたそがれ堂」は、「今」困ったことが起きた人に「必要なもの」を提供するお店です。一見、「欲しいもの」ではなかったりするかもしれないけれど、それが自分の力になる、背中を押してくれるきっかけを与えてくれる。日常に現れる不思議な世界ですが、それを受け入れる登場人物たちの純粋さと、生きることの素晴らしさを再確認するストーリーに、心あたたまります。

そのコンビニは「信じる者にしか見えない」、ハダカノオウサマ的な存在ですが、本当にそれを欲している人の前だけに現れます。そこに損得勘定はなく、純粋に「ヒトとして」の気持ちがあれば、目の前に現れてくれるようです。そして、そこでは、自分が忘れていた何か、に気づかせてくれます。それは、「過去」の出来事だったりしますが、その過去と「今」がつながっていることを気づかせてくれるんですね。

ともすれば、「今」だけを考えることがあります。あるいは「過去は捨てて」という人もいます。ですが、今の自分があるのは、過去があったから。過去に行動したこと、思ったこと、これらがつながって、重なって、今があるんだよね。


「今」も、一瞬後には「過去」になってしまう。今を大切に生きること、過去を大事にすること。未来へ「夢」を持つこと。生きていくための「基本」的なことですが、大人になると忘れてしまうことがありますね。

物語では、コンビニたそがれ堂があらわれて、忘れていた何かを思い出させてくれますが、現実の世界でも、そんな「コンビニ」があるのかもしれない。それに気づいていないだけで。何がきっかけになるか分からないよね。

丁寧なストーリー展開と、あたたかい登場人物。「幸せ」って何か、を考えるきっかけをもらった気もします。もちろん自分だって、最期には過去を「よかった」と考えたいと思う。それには「今」を気持ちよく生きることしかない。
「星に願いを」過去を大事に、未来に向かった歩いて行く人に向けた言葉として、大切にしたい。


【ことば】世界には、まだまだ不思議なことがたくさんある...それはみんな見えないだけで、ふりかえればきっと、子どもの頃空想したとおりに、そこにある。消えたりはしていない。


そうなんだよね。「ない」と決め込んでいるから、ふりかえらないだけ。子供の頃に信じていたことは嘘じゃないんだ。そういう場面になったら、少しだけ振り向いてみよう。きっと何かが見つかる。そして前を向いて歩いて行けるんだ。

コンビニたそがれ堂 星に願いを (ポプラ文庫ピュアフル)



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