2012/01/12

あくまでも「ツール」であるべき。


『IT断食のすすめ』遠藤功②山本孝昭
[6]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

過剰なIT導入によってもたらされた弊害、その現象は既に「中毒」症状にまで至っており、改善のためには荒療治が必要なまでにも...という「怖い」話です。職場での「1人1台」が当たり前になっており、通信はメール、調査はインターネット、資料はパワーポイント、というのが「普通」の状態になってきました。そこで現れたのは、導入前にさかんに喧伝された「効率化」ではなく、むしろ逆に仕事を増やしていること。しかも「本質ではない」仕事が増えていること。そして、「考える」ことまでITに頼る現象が表出していること。

事例としてあげられている職場の状態は、まさしく「今」をあらわしており、「Ccを入れて報告した、という意識」や、考察のない「きれいな」資料など、ITを使うことで「抜け道」を見つけてしまったかのように、「手段と目的」の境が薄れてしまっている感はある。

それでも、著者が言う「過渡期」世代(入社時はまだ「アナログ」主流であって、その後にIT化されたプロセスをリアルで体験している世代)である自分は、あくまで「道具」である意識は強い。特に「IT」を使った商売であるECをメインに携わっている身として、「ITはツールであり、相手は人間である」という意識は常に忘れてはならない、最も重要なポイントであると認識している。

と言ってはいるが、やはり「メール」での報告や、インターネットからの「借用」による社内資料などは、経験があります、正直。だって「楽」だからね。人間、楽な方に流れてしまいますね、弱いね。けれど(意味のない言い訳になりますが)それが「楽だから」という意識はあるし、インターネット情報をウノミにするようなことはありません。過渡期世代は「いいとこどり」、そういうもんです。

これが「インターネットあたりまえ」世代はどうなんだろう、本書に書かれていることが蔓延しているのだとしたら「コト」だな、と震えました。幸いにして自分の周りには(若くても)そのようなタイプは少なく、むしろ「ITがあるんだから何でもできる」という過剰な思いこみをしている「上」の方が多いような気もします。これはこれで問題ですね。本書にも書かれていたように決済権限を持つ世代が、誤った認識をしているのは、危険です。

今40代前半の「過渡期世代」、Windows95の登場とその後の爆発的な普及の真っただ中にいた世代が、「上」に対しても「次の世代」に対しても、大きな役割を担っているのかもしれません。アナログとデジタルの両フェーズを体験している貴重な世代です。故に、その便利さや、逆に不足している部分も認識できます。「上」からはコミュニケーションの大切さを学び、「次世代」に対しては、アナログとデジタルの最も有効な両立を伝えていく、という使命を担う...

そんなオオゲサなことではなく、自分たちが「本質」と思うことを信じて実行するだけ、ですけれどね。ITがいくら普及したって、物流はトラックですし、サービスの差別化はヒトが行うことによって成り立ちます。ITではモノもココロも送れません。それが「あたりまえ」だと思っているのですが、もしそれがわからない人がいたら、教えてあげる、それだけのことですね。

本書でいう「断食」もあくまで「手段」ですよね。本質は「IT依存から脱却する」ことですから。その本質を理解しないと、或いはしかるべき役割の人が教える(あるいはその人の意識が変わる)ことが、最も大事な肝。「IT依存」に違和感を持つ人はいるはずですから。

個人的には、ITに対する過剰な期待値がテッペンに達して、次のフェーズは、「リアル」「定性」「感情」、つまりアナログに少し回帰するのではないかと考えています。すでにそのような傾向は見えつつあるような気がしています。これに気づくかどうか、そこがこの先の分かれ目でしょうね。

【ことば】...パソコンの操作履歴のチェックをして、業務外利用を減らすなどし、「社員がパソコンで遊んでいる無駄な時間を一掃しパソコン使用のルールを明確にしたことで、生産効率の大幅な改善...」

C電子の有名な社長の言葉らしいですが、言葉通りに受け取れば、これは微妙かと。管理、効率が主に聞こえます。無駄をなくすことがすなわち効率化につながる、とシンプルに見えますが、何が「無駄」であるのか、そこは幅広く理解しないと。ITの本当の「手段としての」使い方をカラダで理解するには、多少の「アソビ」は必要なのではないかと思います。「遊び」ではなく「アソビ=余裕」ということですが。

「IT断食」のすすめ (日経プレミアシリーズ)


  >> 本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<


世界はあなたのもの。
『節道』

0 件のコメント:

コメントを投稿

Twitter