2012/01/25

面白い!誰でも楽しめる本。

格闘する者に○ (新潮文庫)
格闘する者に○ (新潮文庫)
  • 発売日: 2005/03

『格闘する者に○』三浦しをん④
[16]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

三浦しをんさんのデビュー作。女子大生の就職活動をつづる。実は普通の女子大生ではなく、複雑な環境に置かれた「お嬢様」だったりします。特に強い「将来設計」があるわけでもなく、大学、アルバイト、漫画喫茶に時間を使う毎日...その中で「なんとなく」出版社への希望になっていくんだけど、結果はどうあれ、それだけがメインではないところが、多面的で立体的で面白いです。

政治家の父親、由緒ある家。就職活動に焦りを感じずマイペースを貫く友人。主人公と付き合っている老人。それぞれが個性があり、キャラクターが「立って」いるんだけど、主人公の「就活」という軸は一貫している。それを邪魔しない程度に、「脇」として光っている、というか。

現在の「女性の就職活動」が、どれほど大変なものか、異性でもあり、この時代の学生でもない自分には想像するしかないけれど、いまだに残る「女性蔑視」についても、チクっと触れていたり、「結婚しても働き続ける」という女性の意識が垣間見れたり。とっても「現代的」だと思うのだけれど、「漫画喫茶に通い詰めるほどマンガが好きで、おじいさんとつきあっている」主人公の考え方は、至極まっとうで、実際に或いは想像の中で啖呵を切る場面なんて、「痛快」に感じるほどです。

マイペースなお嬢様ストーリーの一面がある一方で、就職難や、旧態依然とした企業面接、政治家の「裏」の行動、等々、「リアル」な「シビア」な指摘も含まれています。それらがお互いに打ち消しあうことなく、主人公の行動と周りの「脇役」の登場で、心地よい展開で、最期まで一気にいけますね。
 
それぞれのセリフから、行動から、とにかく引き込まれてしまいました。著者の本は4冊目(小説は3冊目)ですが、直木賞受賞作と同じくらい面白い。比較する必要もないけれど、これだけの「作品」を世に出せる才能は、後の受賞も「あたりまえ」のように感じてしまう。

もちろん、その年代の女性も引き込まれると思うし、自分のようにまったく違う世界にいる人間でも十分楽しめます。
 
著者がまだ20代前半の時代に書かれたということなので、自分の周りの出来事と重なる部分もあるのかもしれない。 自分と同じ大学だったとは知らなかったけれど...もっと「しをん作品」を読みたい、と思わせる、いい読書、でした。

【ことば】「たとえ『毎日が夏休み』になっても、自分を信じて生きていこうと思います」

就職活動、「家」の騒動などなど。「日常」と、その枠の外のちょっとした「非日常」を通して、主人公は何かを得たのかもしれません。素直な心、就職面接でも「演技」できないほどの素直な主人公の魅力は、また増幅しました。


格闘する者に○ (新潮文庫)


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