2011/04/16

「偏り」が、意外に心地よい。「品格」という言葉が適切かどうかは...

国家の品格 (新潮新書)
国家の品格 (新潮新書)
  • 発売日: 2005/11
『国家の品格』藤原正彦
[12/77]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★★☆

5~6年前の本になるけれども、かなり話題になっていましたよね。どうも「堅そう」で読むのに気が引けていたんですが、なんとなく「日本は、我が国は素敵なんだ!」っていうのを誰かと共有したい気持ちになっているので、読んでみることに。
開いてみれば...まったく「堅い」ということはなく、著者自身が実は数学者であったり、考え方自体が偏っていたり(おそらく自覚された上での「敢えて」書き、だと思われる)、のっけから「意外」な感じでした。先入観、ってやはり邪魔になりますねー。
さて、この本は最初から最後まで終始一貫、著者の「熱い思い」が形を変えて、でも一つのことを言い続けます。すなわち、
論理、合理性偏重の欧米型文明に染まるのではなく、日本がもともと持っている「情緒」や「形」を重んじた文明を貫くべき
ということ。武士道精神の見直しや、論理主義、合理主義の限界など、いろいろと著者の論調が進みますが、すべては前期の「情緒・形」文化を貫く、という主義に集約されていきます。確かに、この本が書かれたのは2005年ですが、この3年後には、著者が「予言」したように、合理主義の「終焉」が見えてくるようになります。リーマンショックですね。そしてそのあと、東日本大震災が起こります。もちろん震災自体は言葉もないほどの痛ましい出来事ですが、復興にむけての日本人の団結には、なにか「もともと日本人が古来より培ってきたもの」が、復興というひとつの共通する目標に向かって、大きなひとつのチカラになってきているような...「情緒」「形」が少しずつ現実化してきているのかもしれません。
著者は若干、「外国=日本以外の国」の否定を以て、日本の相対的価値を上げるような手法も取っていますが、外国がどうであろうと日本のいいものはいい。絶対的な価値ですよね。だって比較なんて意味がないのが文化じゃないですか。そこは少し「偏りすぎ」な「行き過ぎ」感がありますが、概ね、日本のパワーを信じて、発信していこう、という点で、著者の考え方には同意できます。非常に読みやすい本なのは、おそらく「論理的」な展開が優れているから、とうパラドックス的な見方もありますが、そんなのは本質じゃあない。やっぱり、日本に、自国に誇りを持って、文化を発信していくこと、これにつきますね。

【ことば】若い時に感動の涙とともに読むのが何と言っても理想です。情緒や形を育てる主役は読書なのです。

著者は、英語教育、国語教育についても「思い」があるようです。至極ごもっともな話ですが、日本語のできない人に英語を教えても国際人にはなれない。なんか今の教育は「?」だよね、って。読書が大切、っていう上の「ことば」はとても重いポイントです。でも「若い」の解釈次第では何歳から再開してもいいと思う。

国家の品格 (新潮新書)

1 件のコメント:

  1. はじめまして、ペペロンチーノと申します。
    >【ことば】若い時に感動の涙とともに読むのが何と言っても理想です。情緒や形を育てる主役は読書なのです。
    >読書が大切、っていう上の「ことば」はとても重いポイントです。でも「若い」の解釈次第では何歳から再開してもいいと思う。
    まったくその通りだと思います。
    僕の場合、他人のエゲツナサ、ズルサよりも、自分のエゲツナサ、ズルサが身に染みてくる年齢になって、本に書いてあることが身に染みて来ました。だから年齢に応じて得られるものがあると僕も思います。
    よく“自分探しの旅”をする人がいますが、自分を探したかったら読書だと思っています。

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