2011/01/31

期待しすぎたかも...内容は「ベーシック」です

『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』小宮一慶⑧
[18]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

小宮さんの本、8冊目。この「力」シリーズも、数字力、発見力、社長力、4冊目だ。昨年後半に読んだ、「社長力」がめちゃ面白くて、自分の中で「小宮ブーム」が再来していた。が...この「解決力」は、表面的にはまさに「今、必要な」ものではあるけれども、他の本に比べて、すこし「大枠」な、「ツール」よりな気がして、「もう既に...(他の本で)」という気持ちが最後まで抜けずに終了。
問題を、本当の意味での解決すべき問題を見つける、解決策を選択する(ここにそれまでの「インプット」が生きてくる!)、実行する、検証する、という流れ。他の「コンサル本」と比べて大きく違うのは、最後の「実行」というところであるけれども、さすがにこのあたりは(考え方の)基礎としてもっているつもりだ。そして、おそらく本書の中でのメインのひとつだと思われるが、「所謂フレームワーク等はツールとして、必要な時に使えるよう、前提知識として持っているべし!」という箇所。これはこれで、できているか、と問われると多少は心もとないけれど、それこそ著者の本を何冊も読んできた自分としては少なからず身についているつもりである。
故に...この本を以て、初めて目にする考え方、というのは、正直見いだせずに。逆に、本文の中で何度も著者の他の本が紹介されている(「詳しくは『何々』参照)のが、ちょっと宣伝っぽく映ってしまって...(そんな方ではないと思うけれども)。
多少なりとも経験を積んで、何かを見失いがちなビジネスマンには、あまりお勧めしません。どちらかといえば、「これから壁に当たる人」に向いているかなあ。書評家っぽくいうとそんな感じです。ビジネスマンが生きる世界は、それこそ、ヒトソレゾレなので、難しいですなあ。

ビジネスマンのための「解決力」養成講座 (ディスカヴァー携書)

2011/01/30

軸がブレないって、気持ちよいねえ

新しい道徳 (ちくまプリマー新書)
新しい道徳 (ちくまプリマー新書)
  • 発売日: 2007/12
『新しい道徳』藤原和博
[17]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

民間初の公立中校長、「よのなか」科が話題に...などなど、その「改革」が目だって伝えられてくる著者だが、その著書をはじめて読んで、けして「話題つくり」の人ではなく、強固な「筋」が通っている、ぶれない「軸」を持っている方だと確信できました。こういう人が教育現場でリーダーとして活動し、いろいろなアイデアを実現していくのは、何かが変化(よいほうに)するきっかけになるであろうと。そしてそれを受け入れた「公の機関」は、その「変化」を起こすのにおそらく障壁は高かったと思われる。「オオヤケ」=保守的で新しいものを拒絶する、というイメージが強いもんですから...
子供たちがこれからでていこうとする社会は、「ひとつの答え」を見つける場所ではない。「マルツケ」が存在しない、解答ページは存在しないのだ。自ら解答を作り出し、またそれが「正答」であることを自ら感じ取ることが必要になる。そこにあるのは「自分たちで考えて納得した答え=納得解」である、著者は説く。○か×か。もちろんそういう「知識」も必要で、それが土台にあって「納得解」を求めるステージに進めるのだから、「義務教育」年齢についてはそういう基礎固めは必要だよね。でも、確かに中学生くらいなるころから「社会」というものへ、その身につけた「基礎」をどうアジャストしていくのか、そういう意識は必要だろう。社会って、「○か×か」なんて問題は出ないからね。
いろいろな考え方をするべきであり、そもそも「いろいろな考え方をする人たちが存在する」ということを理解しなくちゃいけない。著者が提唱する、「親と子、教師と生徒、という『縦』、友達という『横』、それ以外に、直接関係のない地域の人たち=『ナナメ』が必要」というのは言い得ているんじゃないかな(その手法として学校をそのハブとして開放する、というのは全面賛成ではないけれど)。実は「社会」でもその考えって必要だと思う。社会では『縦』が強いと思うけれど、『ナナメ』の人間関係を持っているかどうかって、結構重要だと。これは自分の実感ですけど。
教育についての話が中心の本だけれども、前述のとおり「軸」「筋」が1本通っているので、読んでいて気持ちがよいです。最後までイッキに読める。しかも「正しい」、と思う。「教育」って大変だよね。でもこういう先生だと「真剣」に取り組んでくれるんじゃないかと思う。安心できる。大事な「宝」である子供たちだから。

新しい道徳 (ちくまプリマー新書)

2011/01/28

よかったのは「タイトル」です

持たない贅沢
持たない贅沢
  • 発売日: 2009/07
『持たない贅沢』山崎武也②
[16]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

以前から書店でも気になっていたタイトル。「しあわせって?」がキーワードになっている自分に合っている気がして、期待値高まって読み始める。
タイトル通り、その内容を一言でいえば、「次々とモノを所有することがよいの?」というテーマに対する、「可能な限りモノをもたない=シンプルが一番よいでしょ」というソリューション。これはモノに対してのみならず、「考えること」についても、ひとつのことを集中的に実行した方がよい、とか、「本来は『手段』である「金を稼ぐこと」そのものが目的化してませんか?」とか、すべてに通ずる「生き方」。
シンプルイズベスト
ある意味、(出来ていない分)響く、ささるキーフレーズだ。今、机の上を見渡してもけして「シンプルイズ...」という状態ではない。これが「しあわせって?」とか考えてしまう一因なのだろうか...それもなくはないわなあ。よくわかる。書かれていることは結構「正しい」と思える。けれどもなんでか集中して読めない...なぜ?
こう言ってしまってはいけないのだろうけれど、(人生の)大先輩=30年以上年上の方の助言は、特に活字にすると、どうも「リアル感」に乏しいんだな。自分の環境に置き換えることがすごく難しい。もちろん貴重なアドバイスとして受け入れますが、どうもなんだか...先入観かもしれないけど、「小言」っぽく見えてしまったり、「前にも聞いたよ、それ」という感情が邪魔したり。これこそが「邪念」が多くって、「持たない」状態になっていない、ということなんだろうけれど。
著者は「茶道」にも傾倒されていて、その世界の話には少し興味を持った。けれども、全体の半分くらいが「お茶」の話ってのもどうかと...う~ん、自分はまだレベルが低いのかなあ。

持たない贅沢

2011/01/27

こういう経済「学」なら面白い

『競争と公平感』大竹文雄
[15]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「週刊ダイヤモンド」2010年<ベスト経済書>第1位...知らんかった、評判の本は読まねばっ...という動機付けで読み始め。そういえば「経済学部卒」であった自分だけれども、「経済学」はとっつきにくい。現実の世界との乖離が非常に大きい分野ではないかと感じられれるから。最近は「行動経済学」など、「経済人」という前提から組み直すような「論」が結構でてきているけどね。あと、経済「学」の本は、非常に読むのに苦痛なんだ。なんとなく「読む人に理解しやすく」という観点が抜けてる(最初からないのかも)感じがして。
故、「ベストセラー」で飛びついたものの、「経済書」という帯で表紙を開く時点から少々イヤな予感も。けれども、内容は非常にタイムリーで、例示もわかりやすく、現実的で、スンナリ受け入れられるものでした。格差の問題、市場経済、政府の役割、派遣・外国人労働者...等々、ニュースや新聞では目にするけれども、普段はあまり興味を引かない(見ない、読まない)分野の基礎的な考え方は理解できた気がする。著者の立場としての「提言」も含まれている(その提言内容がいいのか悪いのか、そこまで判断出来るほどには、まだ自分のレベルが追いついていないけれど)。
池上さんほどではないにしても、「経済学」って、こういう考え方だし、本質的にはこういうことのための学問なんだよ、っていうのが「なんとなく」伝わってくる。「なんとなく」だけれども、本を読む前の「受け付けない」レベルからは大躍進だと(自分では)思う。「中公新書の経済書」という、これだけでも高いハードルの本を、イッキに読めてしまったことからも、内容や書き方の素晴らしさは実感できる。
ただ、極めて個人的なレベルですけれども、本を読む=そこから「次」につながるヒントを得る、ということを「成果点」としている自分からすると、その「成果点」が見つけにくい。この本の内容ではなくて、そもそも分野がマッチしていないのだけれども。この分野の本を1冊読み切れた、ということを成果点と捉えます、今は。

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

2011/01/26

リアルで面白いが、現場は大変だろうな...

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
  • 発売日: 2004/03/18
『マネーボール』マイケル・ルイス
[14]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

メジャーリーグ・アスレチックスのGMの「成功秘話」である。資金の無い球団が勝ちあがるために何をしてきたか、という内容だが、所謂「ビジネス書」ではない。野球に関する評価軸を独自のものとする。つまり一般的な打率だの防御率だの、ではなく、ましてや「主観的」な見方ではなく、たとえば「出塁率」に重きを置く、とか。つまりは「アウトにならない確率」が高い打者が有用だという見方を。一般的なメジャーリーグのイメージからは正反対だが、「四球」を選べる眼をもった打者を取る。そういう「客観的な」評価軸をどうやってもつに至ったか、そしてそれを以て成功したのかしないのか(つまり勝ったかどうか)、というのがひとつのストーリー。そしてもう一つが、そういう選手を以下に「効率よく」獲得して、効率よく放出するか、という「ビジネス」の部分。このGMは「チーム構成」という枠のみならずゲームの戦術についても、選手はおろか監督までも締めつける。これがいいのかどうかはわからないが、現実として、結果としてチームは快進撃を続ける。
表面的に数字に表れるものだけではなくて、根本的な本質的な指標を見つけ、それを軸として徹底する、というのは面白い。それに追随する他チームが現れないうちは、このチームの快進撃は続くかもしれない。しかしながら、「テクニック」部分、つまり「本質をもちながら表面に現れていない」埋もれている選手を探して、(ここからです)「安く買って」、数年後の放出時に「高く売る」という内容が、ともすればあまりに「ビジネス」であり、ドライすぎる感じはするね。GMにとっては、これも投資、ゲームであるにすぎない。人間がプレーをする、という点が少し希薄な感じ。そこまで徹底している、ということでもあるんだけど、「日本的」ではないし、野球というゲームを見ている「お金を払う人=観客」がどう見るか、という点が気がかり。「勝てばOK」であれば、NYの球団のように「金」を軸にするのと変わらないとは思うけれども。
それほどのメジャーリーグファンではないし、日本人プレーヤーが所属するか、ユニフォームのデザインが好きか、というレベルの自分としては、スーパースター以外の選手(それも含めて、だけど)と所属球団が結び付かない、という現実にどうも疑問が。出たり入ったり、というのは、どうも自分のような「古い日本人」には抵抗が少なからずあり...
読み物としては非常に面白い。「海の向こう」と考えれば「ヒトゴト」だし。でも、思いついたのは、「岩隈は確かアスレチックスにやられたんじゃ...」ということ...なんとなく合点。

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男

2011/01/21

心理学、難関だな。

『生きづらい時代の幸福論』諸富祥彦
[13]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

タイトルには惹かれるねえー。そう、今の自分のテーマは「幸せ」だったりするんで。内容は、名だたる心理学者9名の「理論」を引用した、「幸福」について。これが難しい。「心理学」ってなぜこんなに理解困難なんだろう?言葉にすると余計にそう思う。「自我」だの、「自分を超えた」だの、イメージとして理解できる(理解した気になれる)ものもあるけれども、実はそのイメージの「像」が定まらない感じ。「精神」「魂」「超越」...いやあ、無理です。かないません。
この本は、その「心理学者」9名に、著者自身の体験や考え方が書かれていて、その著者の部分については、ある程度アタマに入ってきた。それは著者の文章の力だったりするんだけど、大きくは「論」ではなくて、「実例」だからなのだろう。どうも「心理学」という「学問」「理論」になってしまうと、途端に障壁が高くなり、理解しづらい。「翻訳」という制限のせいもあるんだろうとは思うけれども...あと、なんとか「こういうことを言っているんだろう」と消化できたとしても、「で?」という気持ちになることが多いんだよねー。「自己実現欲求」、うん、そうなんだろうねー...で?という流れ。
自分の理解力の無さを棚に上げて、ですけれど、完全に消化不良です。「しあわせ」って、じゃあ、何かを超越するとか、自分を超えるとか、そういうこと?いやいや、そうじゃない。答えは見つからないのかもしれないけれども、少なくともヒント、きっかけを与えて欲しかったんだよね、見つけたかったんだよね。カウンセラーという職業は、おそらく「聞く」ことが重要な要素なんだろうと思う。これを「文字」にすることに多少のムリがあるのかもしれない...

生きづらい時代の幸福論 ――9人の偉大な心理学者の教え (角川oneテーマ21)

2011/01/20

これはすごい。ストレート且つ本質。

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)
学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)
  • 発売日: 2009/02/09
『学問のすすめ 現代語訳』福沢諭吉
[12]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

「原文」は読んだこともないし、正直読もうと思ったこともないが、この「現代語訳」を読んで、「なんで今まで読もうとしなかったのか」と後悔の念が生じるほど衝撃的で感激。原文にどれくらい近いのかまったくわからないけれども、訳がいまの時代にあった素晴らしいものであることに加えて、原文の「本質」をついた内容の秀逸さがもちろん根底にあるのだろうと思う。
明治ヒトケタですよ。これが書かれたのが。今となっては「日本史」の教科書の中のものとしか思えない江戸時代からまだ数年しかたっていない中で、これだけの価値観を持ち、そしてそれを表現している本書に驚きを禁じ得ません。
この時点での「社会的な問題点」を著者が洗い出す。「前時代」の考え方が抜けておらず(それはしょうがないけど)、「御上」と「国民」の関係性が幕府と士農工商との関係のままである。それは違うでしょ。政府は政府の役割を全うし、同時に国民も努力して自分たちを変えていかなきゃいけない。そのために必要なのは「学問」である。西洋の文化を目の前に突きつけられて、それは確かにすばらしいことなんだけど、吟味もせずにただ単に「優れている」という固定観念で受け入れることへの疑問。「御上」の命令をすり抜ける「ぬけみち」ばかり探している国民...それでいいんですか?それで「日本」という国は本当に、本質的に「新しく」なったんですか?という内容。それこそ、「旧態依然」とした空気がまだまだ支配していたと思える時代に、これはかなりの衝撃が走ったんではないでしょうか。
さてこれを現代に置き換えてみる。もちろん「あの時代にこの内容!」的な驚きはあるけれども、現在の環境においても十分に通用する、いや、むしろ、テクニック論に走る「ノウハウツール」に比べてら圧倒的に「本質をつく」内容である。時代背景から「国」という最大のテーマがあり、「個」という概念がまだそれほど生じてはいない点が異なるといえば異なるけれども、「学問」をすることの重要性、そしてそれは何のためか-国の発展ためであり、現代では個人の幸せのためかもしれない。そしてその内容。頭でっかちに情報を詰め込んでそこで終わり、ということであれば、それを「学問」とは呼ばない。それを社会に活かして、個人の力としてアウトプットをして初めて、「学問」である。すごい、本質だよね。
訳のおかげ、という点も含んで、わかりやすい、ストレートな(当時にすれば「大胆な」ということか)表現で、本質を突いてくるその内容は、心に浸透していく。慶応大学は「ライバル」ではあるけれども、この創始者はすごいね。「敵」ながらアッパレ、でございます。
う~ん、くやしいのは、もっと早くに読みたかった、ということ。これは本当に「自分の糧」になりますね。そういった意味でも...今、であっても出会えたことに感謝、です。

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

タイトルに偽りなし。内容は「ぶれて」いません

ぶれない人 (幻冬舎新書)
ぶれない人 (幻冬舎新書)
  • 発売日: 2010/07
『ぶれない人』小宮一慶⑦
[11]BookOff
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

小宮さんの本は面白いなあ。ストレートで伝わってくる。あまりにも伝わってくるので一見「深み」はないように思えるけど、繰り返し「本質」を説くことで、ムズカシー言葉を使わなくても、きっちり伝わってきます。著者自身が何度か書かれているように「100冊本を書く」という「目標」(「目的」ではない)を掲げているが、どの本を読んでも(まだ7/100だけど)そのメインテーマは異なっても、著者の「本当に」云わんとしていることは「ぶれない」のはわかる。
この本の中でも度々触れているけれども、
「よい仕事をする」
「おかねをたくさん得た人がすごいのではなく、いい仕事をした結果おかねを得ることが大事」
というのは、イタイほど心につきささる。一時的に「成功」(ここでは儲かった、という意味)したとしても、長期的に見てそれが何であるのか。「いい仕事をする」具体的には、きちんとお客様を見ている、という仕事をしていく中で、結果的には儲かる。それをまた還元してさらに高みに進む。これを「理想論」と捉える人は、まだ本質がわかっていない、となんだか心中を看破されたような指摘もあった。
もちろん現実的には、「表面的に」ぶれることはあるかもしれない。著者が「例示」していたのは「振り子」であって、たとえぶれたとしても「元」は必ず存在する、ということ。これがないとただ単に「いったりきたり」ということになり、また「上」である者がぶれていると、自分自身のみならずその周りもぶれてきてしまう。必ず「元」=軸となるものが必要で、そこがぶれていてはダメということだ。
なんだかすごく「ささる」。会社人間としても、自分の人生観にしても。「ぶれない人」になるために著者が進めているのが「長く人々に受け入れられていた本を読む」など、勉強を怠らないこと。これも正論。いろいろな角度で物事を見られるようになること。事物をありのまま受け入れられる人間になること。「目的」に向かっては、あらゆる角度の視点を持ち、実行できること。
そして何よりも「目的」をぶらさないこと。まさに正論。「コンサル本」にありがちなテクニックはここにはありません。真に受け入れられる、良書。

ぶれない人 (幻冬舎新書)

2011/01/17

む、難しいです...

少数精鋭の組織論 (幻冬舎新書)
少数精鋭の組織論 (幻冬舎新書)
  • 価格: ¥ 756
  • 発売日: 2007/03
『少数精鋭の組織論』斉須政雄
[10]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

タイトルから(単純に)想定されるような、ビジネス上の組織マネジメントに関するテクニック論はほとんど見られない。著者自身がフレンチレストランを経営、キリモリするにあたって、ご自身のフランスでの修行時代の経緯を踏まえて、その「本質」を語っている内容。
なんというか...「抽象的」なのか、「専門的」なのかわからないけれど、スンナリと頭に入ってこない。おそらく言いたいことは、
「うわべだけの成功を求めてはダメ、直接的に成果につながらなくても時間をかけて成長していくことが大事。」
ということなのではないかと思うが...これも「浅学」な自分の勝手な解釈なのかもしれない。「言葉」が大事であることは折に触れて説いているけれども、その「言葉」が自分には伝わってこない。「行間」を読み説く(「考える」こと)のが、それこそ大事なのだろうけれども。特別に「料理人の世界」のことだけ言っているわけではない、また「少数精鋭の組織」についてだけ語っているわけでもない。それだけに「行間」は、多分たくさん読むべきものがあるのだろう。「哲学」だね。
「突拍子もないアイデアを出すひとは、突拍子もない日常をおくっているわけではない」
とか、結構「ひびく」フレーズは随所にみられる。そんな「言葉」を抜き出すだけでもプラスになるかも(今の自分にはそれくらいしかできなかった)。まっとうな、正直な、そんな生き方をベースにして、でも「満足」してしまっては先に進めない。奇をてらうとか、そういうことではなく、自分の置かれている環境において、その中で見つけられるヒントはある。そんなことを得た、と思われる...
レストランの世界だけに、「新しいアイデアがメニューに載ったときの喜び」みたいな表現があった。これは、「形にする」ということだと認識。これは確かに。これって大事なポイントだね。ところどころ。まだまだ「読書力」がないなあ、って自覚。

少数精鋭の組織論 (幻冬舎新書)

2011/01/16

伝わります。「熱さ」は伝わってきます。

反骨心 (角川oneテーマ21 A 103)
反骨心 (角川oneテーマ21 A 103)
  • 発売日: 2009/08/10
『反骨心』清原和博
[9]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

松井、田口、古田...多分プロ野球選手が書く本を読むのは4人目。清原は同世代、同い年で、高校からプロ入団、引退までイチファンとしてみてきた選手で、思い入れも他に比べても高い選手だ。本人も本書の中で書かれているれども、「天賦の才能」に乗っかったところは少なからずあり、所謂「努力系」のストーリーではない。「天賦の才能」を持ったが故の、若い頃の(ある意味での)おごり、そしてそれに付随しての「周り」とのズレおよびそれに伴う「挫折」、それらの克服...ということが書かれている。
一言で印象を言えば、「不器用」な選手だと思う。もちろんプロの世界で第一人者になる素養は十分もっていたと思うが、それが必ずしも叶わず、すぐ「次」の世代(イチローや松坂世代)が活躍し、そしてその「新しい世代」は、「スマート」というキーワードが似合うような「アスリート」であったことが、清原世代の「終焉」を早めてしまったのかもしれない。それらの世代の台頭後は、ケガとの戦いのみを印象に残し、記録的なものはプロ入団当初のものが最大最高だったりする。
けれども、ね。年に数回しか球場に行かない、あるいはテレビも見ない、という「観客」からすると、グランドでテレビ画面で見たいのは、スマートな若手ではなく、無骨な清原だったりしたわけだ。球場に行って途中で帰ろうと思っても、「清原の打席までは」とどまったりする。記録がどうであれ、「観たい」のだ。これが「プロ」なんだよね。お金払ってそのパフォーマンスを見る。それがイコール「プロフェッショナル」なんだよね。当たり前なんだけど、年俸交渉とかで、数億円を要求している「名前をしらない」選手を見るたび、「プロ」のあり方、っていうのを考えてしまうね。
そういう意味では、もう数えるほどになってしまった「プロ」であり続けたのが、この清原なんだね。そんな「野球バカ」に、本が書けるのか、って、正直読む前はそのクリエイティブに期待はしていなかったんだけど、予想に反して、その「熱さ」が伝わってくる、いい内容でしたよ。熱かった。「器用」な感じはもちろんしませんけど。でも「不器用」がすなわち彼の魅力なんで、それはそれでよかったのかと。
詳しくは書きませんが、「巨人」というチームは、あまりにも「幼稚」だわね。清原はよく耐えたと思う。にわかには信じられないような選手の扱いをする。そんな考えをする人がいる球界では、ジリ貧は避けられないね。清原世代がどのように変えていくのか。それを見ていきたい。彼がその「無骨」を発揮する場面は、まだ終わっていない。

反骨心 (角川oneテーマ21 A 103)

2011/01/14

かなりのカクドで「本質」です

凡人のための仕事プレイ事始め
凡人のための仕事プレイ事始め
  • 価格: ¥ 1,450
  • 発売日: 2010/05/13
『凡人のための仕事プレイ始め』中川淳一郎③
[8]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

振り返ってみると「社会に出て」からもう20年以上経過している。「仕事」って何?って、これまで考えたことはなかったけど、ここ数年、特にこの数カ月、「仕事って?」考えることが多くなった。考えたところで何か「ソリューション」が見つかるわけでもなく、「自然と」次の日の朝は会社に向かっているわけで...不健康だね!考えていることがどの方向に向かっているのか、それが見えないのはとても不健康です...そんな不健康な自分が図書館の棚で出会った本。著者の本は、『ウェブはバカと暇人のもの』で大絶賛し(これまで読んだ本の中でもTOP3に入る!)、『ウェブを炎上させるイタい人たち』で物足りなさを感じ...とこれで3冊目ですが、「バカと暇人」を超えるものではないけれども、かなり痛烈な痛快な内容です。前述した「仕事とは?」の答えとして、明確に「エラい人をもうけさせるため」「金のため」とソリューションを提示し、仕事の仕方としては「怒られないようにする」とこれまた明快。「結局だれでも代替えできる仕事が大半」とか、普段読んでいるハウツー本には出てこない表現だらけですが、実は本当はそうなんだよねー、が多数見つけられる。広告代理店からライターに転身した経緯、これまでに出会った関係者の行動、限りなく「実話」に近い形で、現場、というより「もろ」現場感満載の記述は、それこそ「もろ」の世界で(その世界にしかいない)私たちにとっては、やはり痛快なんですね。「先生」たちが、理想的な組織論だの仕事論だの言っても、現実はこういうことなんだよ、っていうのが「イタ」いほど実感、共感できる。
そこまで表現できるのはすごいし、それが本になることもすごいし、プロのライター故の「読ませる」テクニックも素晴らしい。でも、せっかく読んだ本、それだけでいいのか?っていうのは当然でてくる、気づく点なんだよね。「エライ人をもうけさせるための仕事、これが現実」→じゃあ、その「現実」の中でどうふるまえばいいのだろうか、とかね。
この本では終盤に、著者自身がその「答え」を提示してくれてます。つまりそういう中でも「仕事は素敵なんだよ」って。これはこれでいいのかもしれないけど、前半が「痛快」だった分、終盤が「いいこ」すぎて、なんだか前半の魅力が半減してしまうところもある。であれば、皮肉たっぷりの「現実」を最後まで貫いて、考えるのは読者自身が本を閉じてから、という方がカッコいい感じがするんだけどなあ。ひねくれてるかな。
これまでの「ウェブ」とは少し離れた話題ですが、この著者はやっぱり面白い。魅力的ですね。

凡人のための仕事プレイ事始め

2011/01/13

ゆるい「元気」もらえます。

『サラリーマン合気道』箭内道彦
[7]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「広告屋」の本業の他にもイベントやらMCやら各メディアに露出している(らしい。見たことはない)著者の「クリエイティブ」論。これは広告「的」なクリエイティブに限らず、あらゆる仕事をしていく上でヒントとなるTIPであるように思える。曰く「企画倒れ上等」「ま逆の発想をしてみる」等々。
いわゆるコンサルタントの「仕事論」とは異なり、「現場感覚」があるし、元々の著者の性格も(書かれている限りでは)非常に「一般的」で親近感がわく。そして説いていることも、特に無理な、突拍子もないことではない。「発想を柔軟に」「既成概念にとらわれず」ということであろうと捉えた。
しかしながら、著者は明確には書いていないが、ここにあげられたTIPSは、当然に「当たり前のことを理解している」土台があることを前提にしている。たとえば「思いついたアイデアはメモをせずに、頭の中にとどめる。メモをとると枠にはまる。忘れてしまったらそのレベルのアイデアであった、ということ」というのがあった。これは、「思いついたアイデアはメモしておこう」という「一般的な」ノウハウ本にある考え方へのアンチテーゼであるけれども、おそらく著者は「メモをとる」という経験を経た(少なくとも知識として得ていた)上で、こちらの方が「クリエイティブ」という判断をご自身でされているのであろう。すなわち、何も土台がないところにこの本で紹介されているような「逆説」的なテクニックを用いても、表面的にすぎない、ということ。さりげなく著者も言っているけどね。
タイトルの「合気道」は、つまり「相手の力を利用して最大化する」という意味合い。要はコミュニケーション重視、という姿勢である。これは「ノウハウ本」と一致していることであろう。つまりこれが土台であり、本質である、ということなのだろう。「合気道」というフレーズは、(自分には)正直それほど響くものではなかったけれども、書かれている「表面的な」内容以上のものを感じる箇所は少なくない。仕事は一人ではできない。人生は一人では生きられない。そんな「あたりまえ」のことを見失ってしまうこともある。

サラリーマン合気道―「流される」から遠くに行ける

2011/01/12

ん?これはいったい...

知的生活の方法 (講談社現代新書 436)
知的生活の方法 (講談社現代新書 436)
  • 発売日: 1976/04/23
『知的生活の方法』渡部昇一
[6]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

帯に「不朽の大ベストセラー」とあるように、1976年の刊行以来、多くの人に読み継がれてきている本。改めて今の時代に「知的生活」という言葉の響きが新鮮に、魅力的に映る。タイトルには「方法」とあるが、それは「精神的な」方法、すなわち考え方とか取り組みのことであろうと、事前にイメージを膨らませていた、過ぎていたのかもしれないが...その内容は、どちらかといえばテクニックというか、物理的な「方法」というか...読書の重要性も説いておられるが、蔵書の整理や、そのための家屋の設計まで。それは正直どうでもよいというか...最後には、恋愛、家族にまで話が及び、「知的生活」のためには家族は邪魔、みたいな「テクニック」までご披露いただいて...もしかしたらその時代は、そういう考え方があったのかもしれないけれど、愛する人をもたず、住居も「蔵書」を優先して考え、つまりは「知的生活のための生活」にして、自分の世界で本を読む。これがはたしてなんであろうか?という気持ちになってしまう。これは「時代」による変化なのか、人間のタイプの違いなのかわからないけど、本質的に「知的生活」を実行するのは、あくまでもアウトプットありき、なんだと思うけどなあ。自己の知識を高める、自分が「知的生活」であることに満足感(ゴール)を求めるのは、やはり自分の考えとは違う。違うことは、考える主体である人間が違うのだからあって当たり前の話なんだけど、正直、書庫をどのように配置するか、という住居の間取りを図示されても、当惑するだけだわ。
「身銭を切って本を買う」とか、何度も擦り切れるまで読み返して初めて、本質的な「よさ」がカラダにしみこむ、といったような内容は理解できる。自分も多少なりとも本を読むタイプとして理解可能な範囲である。が、「本」が主体である必要はない。本を自分の中に取り込んで、最終的には(どのような形式であれ)アウトプットできるかどうか。これが「読書術」だと思うけどなあ。甘いのかな。

知的生活の方法 (講談社現代新書 436)

2011/01/09

ん?で、何の本だったのだろうか...

『間の取れる人、間抜けな人』森田雄三
[5]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

一人芝居で知られるイッセー尾形の舞台演出家による「コミュニケーション」論。タイトルから「間の取り方」というテクニック的なところをイメージしていたが、それらしきものは見当たらず。途中は日本人の恋愛論やら(これもコミュニケーションといえば、そうだけれども...)に論が移動して、結局何が主軸なんだかよくわからなかった、というのが率直な感想。
コミュニケーション=人間関係における「間」というものが、言葉と同様に、あるいはそれ以上に大切なファクターであることは、アタマでは理解できる(気がする)けれど、これを文字にする(本にする)と、伝えきれないところはでてくるんだろうなあ。それを「舞台のワークショップ」という具体例で説明しようと試みているようだけれども...自分には(想像力の貧弱さが露呈されてしまうが)現実性が乏しくイメージが結びつかないんだよね。だから「いったい何を言っているんだろうね?」ということになってしまう。イッセー尾形の舞台は面白いと思うけれども、舞台「裏」を見る興味は無いなあ。そういう「裏」を感じさせない彼の舞台は、純粋に楽しんだほうがいいかもね。ただそこには「観る/観られる」という関係性が存在するはずで、オンラインツールをはさんだ「ゆるいつながり」とは違う、それが結構ポイントだったりするんだろうなあ。
「言葉」に表現する、とくに口に出す、というアクションが、あまり得意とはいえない自分だからこそ、こういうタイトルに引かれるんだよね。故に多少なりとも「テクニック」的なものを求めてしまう。やっぱり「コテサキ」は本質ではない、ってことなんだろうなあ。あたりまえだけど、そういう結論。

間の取れる人 間抜けな人 人づき合いが楽になる (祥伝社新書)

2011/01/07

泣けました。自然と。

だいじょうぶ3組
だいじょうぶ3組
  • 発売日: 2010/09/03
『だいじょうぶ3組』乙武洋匡
[4]Rental
Amazon★★★★★
K-amazon ★★★★★

「五体不満足」の著者が、実際の小学校での先生体験を「小説」として描いた本。障害を持ちながら担任となり、5年生の生徒とともに成長していく姿を描き出す。半分フィクション、半分ノンフィクションという前提でありながら、子供たちの「こどもらしさ」と、それを引き出す先生の「一所懸命さ」に胸を打たれる。電車の中で読んでいて、読み続けたくて降りる駅で降りなかった。それほどの「ハイリコミ」でした。目がうるんだよ、何回も。
「フツー」ってなんだろう?「オンリーワン」でいいの?「他の人と違うことって大事」考えてみれば、当たり前のことばかりだが、子供の頃にはわかっていても、大人になってしまうと見失っているものがこれほど多いんだなあ、って実感。5年3組の生徒たちが力を合わせて向かっていく姿に、そして「困っている人がいたら手を差し出す」その姿に、大人になって出来なくなった、或いはやろうと思わなくなった、見ようとしなくなった自分を見つけた。「ヒトとして」当たり前のことが、実は出来ていないことが多い。自分の子供と接しているときに感じることでもあり、改めて自分を見つめ直す機会になる。
「障害を持った」先生が、子供たちと一緒に何かを成し遂げる、という内容だけれども、主人公はあくまでも「子供たち」。それが貫かれているし、にじみ出ている。途中から(早い段階で)先生が「障害者」であることを別になんとも思わなくなっている自分がいる。もちろんこれは「小説」であることもあるので、現実の世界はどうなの?という気がないわけではない。でも、そんなことはどうだっていい。だって、「5年3組のみんな」は輝いている。成長している。それだけでいい。ここから何かをつかみとるんじゃない。この中の子供たちの「いきいき」を感じ取ればいい。そんな本の読み方もあるんだよね。いい本にめぐりあった、感謝。

だいじょうぶ3組

2011/01/06

興味深い。第一に取り組むべき課題

『40歳の教科書』モーニング編集部、朝日新聞社
[3]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

こどもの教育に対しての考え方、今の時代、社会に求められる方向性。どんな人間になってほしいのか。どんな親であるべきなのか。小学校中学年の子供を持つ自分にとって、いよいよ「受験」年代にはいりつつある自分にとって、まさに直面する問題を、いろいろな角度からいろいろな方が持論を述べる。自分にとっては極めて「現実的な」話であり、普段読んでいるビジネス本どころではない切実さを持って読み終えた。
英語教育、中高一貫、仕事と金、失敗と挫折。今まさに、そして近い将来に訪れる「課題」ばかり。振り返ってみれば「教育」を大部分「母親」に任せ、「父親」は相変わらずの遊び相手であった。これではいけない。真剣に向き合わなければいけない、と認識させられた。それだけではなくて、「親と子」という枠を離れても、たとえば、「仕事と金」「失敗と挫折」あたりは、社会人として生きる自分自身にとっても参考になる話。貴重です。ここに掲載されたすべての意見を間にうけるわけではないが、「こういう考え方もある」という情報としては秀逸(冒頭に書かれていたことだが、まさにそう思う)。基本的には、「対子供」という考え方ではなくて、「対人間」という意識でよいと思う。本書の中でもあったけれども、「親と子」という関係は、「同じではないが対等である」という意識はすごく大事だと思う。
どの意見も「これはちがうだろう」というのはなく、自分の意識としてそれほど間違っていない、ということは自認できたが、これからは「意識」だけではなく、「伝える」ことをしなければならない。ちょうど今週末に「入塾試験」を受ける子供。彼女に自分の思っていることを伝えてみようと思う。「子供だからわからない」ではない。「人間として」思いを伝えるよ。だって何よりも大事な大切な存在だからさ。
自分もより強くならなければならない、そんなことを考えさせてくれる本です。子供を持つ方には是非是非読んでもらいたいと思います。

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

2011/01/05

偏り「すぎ」が、逆にここちよく...

無責任のすすめ (ソフトバンク新書)
無責任のすすめ (ソフトバンク新書)
  • 発売日: 2008/02/16
『無責任のすすめ』ひろさちや
[2]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「仏教原理主義者」を自称する著者の「いいたほうだい」本。時の政権与党である自民党をはじめ、国家、教育、マスコミ、その無責任者をぶった切る内容。その内容に偏りが見られるけれども、一般論としても「正しい」主張を繰り広げている箇所は少なくない、それゆえの、「言いたかったことを言ってくれている」痛快さは感じる。ご自身が「宗教家」であるので、「現代の」宗教家に対する批判も展開、正直この部分はよくわからなかったけれども、政治、官僚、企業に対する「責任をとれ!」という主張は、まさに正論。それを指摘しないマスコミの迎合にも矛先を向けて...かなり突っ込んだ論評になっている。ここまで活字に残すのはそれなりの勇気も必要なんだろう、と思えるほど。社会に対してどうこう、という主張をするほどできている人間ではないけれども、でも「もやもや」したものを、代弁してくれているような爽快感はある。
おそらくそれは、一方で「権力」に対する批判(「提言」の方があっているかも)を繰り広げる一方で、自分の人生においては自分で責任を負うべし、という、これまた明確な主張が読んでいる自分に突き刺さるから、なのだろう。家族、仲間。本当に大切なものは何?責任を負うべきものは何?というポイントが明確だ。タイトルにある「無責任」になれ!というのは、あくまで「キャッチコピー」的なもので、責任の所在を明確にせよ、ということの逆説的な表現である。ともすれば日本全体が「無責任」に包まれている中で、本当に責任を負うべき人は、それを全うせよ、という主張であり、それは国家を代表する人も、企業を代表する人も、そして個人も含まれるわけだ。
個人レベルで読めば、「宗教家」だけに、『幸せって何だろう』ということを突き詰める本なのかもしれない。自分が本来的に責任を負う箇所で責任を果たす。それ以外は「無責任」でいる。 大事なところは何?自分で手が出せないところに時間も精神も割くのはなぜ?ならば「無責任」でいることも大事ですよ。そんなことを「読んだ」。勢いのある本なのでイッキに読める。多少感情論っぽいところはあるが、それでも読後はここちよいですよ。

無責任のすすめ (ソフトバンク新書)

2011/01/03

「希望」。いい言葉です。常に持つ必要があります。

希望のつくり方 (岩波新書)
希望のつくり方 (岩波新書)
  • 発売日: 2010/10/21
『希望のつくり方』玄田有史
[1]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★★

「希望」が無くなった...見つけにくい世の中だ...そんな言葉が跋扈している中、新鮮でチカラをくれる内容の本に出会った。少しだけ、けれども力強いきっかけを与えてくれる本です。
「希望学」という学問としての「希望」を研究されている著者であるが、冒頭にあるように「希望にあふれるべき若者」向け、という書き方からか、研究者、学者さんの書く文体であるにもかかわらず、非常に分かりやすい、読みやすい、理解しやすい。あたたかい。やさしい。気持ちが伝わる。まず、この文体からうれしい。読んでいる過程でも気持ちいい。これがまず大事なんだよね。しかも内容が「希望」について、である。読み進めるうちに「希望」が湧き出てくるわけではないけれども、希望を持てるような心境になってくる。それは保障します。「大丈夫」とか「がんばれ」の使い方を説いている箇所はあるものの、いわゆる「テクニック」的な説明、コンサル視点の見方はない。それよりも、「希望を持つ人が少なくなっている」現実に向かいながらも、ではどうゆう世の中になったらいいのか、その実現のためには、個々人がどうあるべきなのか、それらが個人レベルでの実現可能範囲で十分可能なことが書かれている。だから現実的で、勇気がでる。
さらには、(直接にはかかれていないけれども)「ウィークタイズ」(ゆるやかなつながり)という表現で、希望を持つための環境について書かれている。これって、Twitterなどのツールを利用した「つながり」によく表現されるフレーズだよね。これもやっぱり「ツール」の域を出ないのか、あくまで目標に対する手段的な位置づけとして「利用」するのか。それを考えれば自ずとコタエはでる。
「希望」という言葉。若干古臭いイメージもあるし、口に出すのが少々恥ずかしいこともあるかも。でも、言葉に出さなくても(出したほうがいいんだろうが)、強く持ち続け、そして実現のために行動すること、これを継続することにより、何か得るものはあるあろうし、自分が変わってくるはずだ。「実現するかどうか」ではない。あくまでも、希望を「持つこと」そして、実現のために「行動すること」。これだ。これだよね。
自分にも、言葉にはださないけれど「希望」がある。これを実現するために、直接、間接行動すること。これのために生きていく。そんな「希望」を持っている。だから頑張れる。

希望のつくり方 (岩波新書)

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