- のぼうの城
- 発売日: 2007/11/28
『のぼうの城』和田竜②
[12/109]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆
天下取り目前の秀吉が、落とせなかった武州・忍城。この城を舞台にした半史実・半小説。タイトルの「のぼう」という意味がわからず読み始めたが、忍城の城代・成田長親が農民などから呼ばれている通称であり、そもそもの意味は「でくのぼう」だという。この「のぼう様」が、数的に圧倒的に劣勢でありながらも、石田三成軍を寄せつかなかった戦。その戦の始まる背景から終結まで、「人間」を中心にストーリーは展開されます。
個人的には、この時代の歴史ものが最も面白い。本書では「脇役」であるが、秀吉のキャラ、秀吉に従った者たちの個性、それに対抗する少数勢力が、それぞれ光を放っているように思えるからだ。それほどこの手の歴史モノを数多く読んでいるわけではないけれど、忍城という、歴史の教科書では出てこない、それなりの小説でも一部触れられているようなところにスポットを当てるその発想からしてユニーク。そして「のぼう様」が、剣の達人であるわけでも、戦略戦術に長けているわけでもなく、そんな「主人公」が、どのような魅力で、武士、農民をまとめているのか...
次第に、「のぼう様」のキャラがわかってきますが、残念ながらその魅力を存分に感じる、というレベルまでは至りませんでした。脇を固める武士の卓越した技量にむしろ「かっこよさ」を感じながら、戦のダイナミック感、人心のうつろいやすさ、それから石田三成の残念な性格(...)を読んできます。三成に関する史実では、この忍城の一件は確かに汚点(最初の)だったようです。本書では主人公との対比で描かれているので、より彼の「欠点」が明らかになっているようでした。
秀吉は本書ではホントに脇役で、「特別出演」くらいの扱い。確かに、全ての戦の現場で秀吉が存在したわけではないし、本書に描かれた支城での戦いなど、もはや目にする機会がないことの方が多いのだろうと思う。
歴史モノにそれほど強くない自分でも、「小説」としてエキサイティングに読めるものです。逆に史実に明るい読者は物足りないのかもしれない。個人的には、楽しめたものの、もうしょっとは「有名人」の出演場面もあってよかったかなあ、と思う。「知っている名前」を見つけると結構うれしかったりするから...
【ことば】「この忍城の者どもは、士分も領民も一つになっておる...所詮は、利で繋がった我らが勝てる相手ではなかったのさ」
三成はわかっているのだ。これをその後に活かさなかったのはイタイけれど...自ら敗軍の将に声をかけるなど、三成のどこかに「人間的」なものがあったのは彼を語るエピソードの中では、ちょっとだけ光があたる「いい」部分。
のぼうの城
>> 本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<
こんなことを思いながら
おでこめがねで読書レビュー
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