2012/06/10

続編が本編を上回った!

なかよし小鳩組 (集英社文庫)
なかよし小鳩組 (集英社文庫)
  • 発売日: 2003/03/20

『なかよし小鳩組』荻原浩③
[7/104]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

『オロロ畑でつかまえて』の続編。倒産寸前の広告代理店がいよいよ窮地に!追い込まれた場面に持ち込まれた案件は...なんとヤクザのCI(コーポレート・アイデンティティ)=企業イメージ統合戦略の仕事。背に腹変えられない環境、嵌められた契約書、やむなく受けたその仕事の結末は...
設定されたのが、「組」だったりするので、コワイ内容かと思いきや、かなりかなりユーモア満載のストーリー。「小鳩組」という名称も、実は「いい人」であることがわかってくる組員、今風(?)の頭脳派の組員など、ユーモアといっても「おふざけ」でなく、なんとなく主人公や登場人物が「人間味」を帯びているところが秀逸なわけです。
挫折の多い人生を背負っている主人公、小心者でトラブルメーカーでありながら意外な魅力を持つ広告代理店社長、強面ながらも家庭を大事に考える小鳩組宣伝部長、クール、クレバーで信用できないキャラの小鳩組事業本部長、主人公の「元」家族...登場人物は皆個性を持ち、ストーリーの中で重要な意味を持っている。それぞれがストーリーの中で輝いているのだ。

 そしてこのストーリーの大きな魅力は、広告代理店とクライアント=小鳩組、という想定外の設定とそもに進行されるもうひとつの流れ。主人公・杉山の家庭、子ども、人生だ。これで一気に杉山が「人間臭い」ものになる。環境は違えど、読者である自分との距離感が縮まるのだ。「仕事」が非現実的な分、その反動の「私生活」が極めて現実的で、そのコントラストが物語をパラレルで彩る。
そしてその間をつなぐカタチで存在するのが...「走る」ことである。これだけ距離感のあるストーリーが別々に存在するとテーマがぼやけてくることがあるけれど、最後には見事に「つながる」感じがします。よく読めば、各章につけられている名称、これが深い意味を持っている、そして伏線がどこかに見つけられる。最終章の名称に後で気付いた時には、正直、ちょっとメガシラが...感動しました。
『オロロ畑~』 もかなり笑えましたが、こっちの作品の方がパワーアップしてます。笑うツボも増えているし、ストーリー展開も面白い。登場人物のキャラクターがわかる分、魅力を既に感じている分、感情移入が早いので、前作を読んでいる方がベターだと思うけれど、本書から読み始めてもその魅力が失われることはないです。
広告代理店の仕事についても専門的で、CI、PR、テレビCMなどの専門分野も手抜きなく書かれている細かさもあるし、かゆい所に手が届く構成も味わい深い。かなり「高品質」な小説だといえる著者の作品は、これからも読んでいきたい。読んでいて「楽しい」からね。

【ことば】俺はいつもそうだ。終わってからじゃないと、何も気づかない。用のなくなった時になってから、ようやく探し物を見つけるのだ。

何度こういう思いをしただろう。普段は何も感じないことが、終わってから「貴重」だと思ったことが。逆にいえば、簡単に終わりにしてはいけない、ということかも。続けている日常に、見えなくなっている大切なものを感じることができるようにしないと。

なかよし小鳩組 (集英社文庫)


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読書時雨
本を読む女。

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