2012/06/29

確かに刺激をいただきました。が...


『一瞬で自分を変える法』アンソニー・ロビンズ
[18/115]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

今の自分に満足していない。もっと自分にできること、自分のあるべき姿を追い求めたい。そんな気持ちは誰にもいつでも湧き上がるものだと思います。その時に分岐点になるのは「信念」と「行動」であると。思い立ったらすぐ行動する、思っていたような結果が出なくても信念をもってやり続ける。それが「成功」に近付くひとつのヒントであると、多くの本などで目にすることです。

タイトルに表されているように、また原題の”Unlimited Power”が示すように、本書の内容も基本的にはその二つの重要性を説き、コミュニケーションやモチベーション維持の手法も解説してくれます。かくゆう自分も現状を打破するための何がしかのヒントを見出さんと手に取った次第で、信念、行動という重要なファクターについては、目新しいことではないとはいえ、改めて、「どうすべきか」ということを考え、実行していくきっかけにはなった。

しかしながら、この手の翻訳本、そして本田さんの翻訳本に多いんだけど、読み始めの勢いが途中でフッと抜けてしまうことがあるんですよね...前半読んで、 「後半読むよりもむしろ行動せねばっ」となっているので、それこそ本の影響だとは思うんだけど、どうも後半がアタマに入ってこない。この経験は同カテゴリーの本でいつか実感したような...

前述したように、本書は「メンタル」的なものと「テクニック」的なものとが配分されているので、少しでも刺激を受けた箇所は、「行動」に移しやすいものだと思います。自分も、ここに書かれていた、「感覚タイプ」というコミュニケーションテクニックを今日から使ってみようと思っていたりします。
著者が繰り返し書かれているように、行動に移さねば本書を読んだ価値が半減以下となる。これをきっかけに少しでも行動を起こす、すぐに。これがポイントですね。

翻訳の難しさもあると思うし、すんなりとアタマに入ってこないような箇所も正直見受けられます。ただ、この本については、内容を理解することよりも、行動のきっかけとなるかどうか、そこが肝だと思うので、細かい点は気にせず、読み終えちゃうのも一手ですね。読み終えてからどうするか、で本書を読んだ価値が変わってきますから。

なので「一瞬で」変わらないかもしれないが、「一瞬」でなくとも、変われば、よくなればいいのだ。


【ことば】...この世に失敗はないことを理解してほしい。あるのは結果だけだ。行動には必ず結果が伴う。万一、自分が望んでいた結果を得られなかったとしても、方法を変えて、また別の結果を出せばいいだけのことだ。

「失敗」について、成功者の多くが、「恐れるに足らず」という。失敗の数が成功への道であるという。わかっちゃいるけれど、行動を伴えないこともあった。この言葉のように「結果」であると認識することは、意識的にかなりプラスになるのではないかと、直感的に感じる。

一瞬で自分を変える法―世界No.1カリスマコーチが教える


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息子よ!この本を読め!
本読みサラリーマン




2012/06/27

二つの世界を繋ぐもの...求めるべきものは

マボロシの鳥
マボロシの鳥
  • 発売日: 2010/10/29

『マボロシの鳥』太田光
[17/114]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★★☆

爆笑問題・太田光の小説。癖のある芸人がどんなものを書くのか...文学批評ができるレベルではないので、個人的な感想になるけれど、かなり「良」であります。本書は表題作を始め全9編の短編集。連作ではなく個々の短編が独立していますが、それらを貫くものは確かにあったかと思われます。

各編に見られたのは、二つ以上の平行するストーリーがあって、それがどこかで「繋がる」ということ。自分が今いる世界は、過去の、或いは別の世界に影響を及ぼし、また影響を受けているということ。意識する意識しないは別にして、俯瞰してみると「繋がり」が見えてくるのです。


貫くもの、それは「繋がり」。過去の出来事と今目の前で起きていること。「宿命」は今起こっているのではなく始めから予定されていたこと。 自分が大事にしていたことを時が経ってから見つけること。一人で生きているようで、実は他の人と繋がっていること。子供たち世代に伝えるべきこと。
 
震災以降、「繋がり」という言葉がややインフレを起こし、その本質が傾いていた時期が確かにあったと思う。ようやく、本当の意味での「繋がり」が生き残ってきた。質の低いものが淘汰されてきたのだ。
繋がり、絆。 この世に生をうけて、見つけるべき意味はこれなのかもしれない。
全篇通して読んだときに、そんな気持ちになった。そんなメッセージが伝わってきた。

芸人としての著者の「こだわり」も垣間見える。表題作「マボロシの鳥」の中で、落ちぶれた芸人がいうセリフ。
「芸人が、なぜ、自分の芸をお客に見せたいと思うか...お客を喜ばせたいとか、楽しませたい、なんて言うのは、後から付けた理屈だよ。一番の理由は、この客には、今、自分が必要なんだって、確認したいからだ。」
どんな世界でもそう。他人を喜ばせたいと思う気持ちは、これは嘘ではないけれども、他人を喜ばせることで自分が幸せになれるからだ。自分が必要だ、と感じることができることが行動の原動力であるのだ。そして他人に喜んでもらうには、自分が幸せである必要がある。こうして、「幸せ」が広がっていくんだろう。

ところどころ、「爆笑問題の太田」が登場する。本筋にチャチャを入れる役目として。そこが小説的ではない、という見方もあるだろうけれど、そこは「個性的」で自分としては好ましく思った。各編のストーリーや構成を云々言うよりは、最後まで読み切って全体感を味わう方が、よいかも。


【ことば】それまで、未来など自分とは関係ないと思っていたのに。自分と、自分がいなくなった後の未来など、何の繋がりもないと思っていたのに。...この子は、私が未来へと託す、タイムカプセルだ。

自らの人生体験から厭世的になっていたポールが、自分の子が誕生すると知った時の感覚。生命の誕生は、そう、エネルギーを生み出す。自分の子だけではなく、世界の子どもの誕生も、同じエネルギーだ。

マボロシの鳥


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横丁カフェ
身勝手な書評たち


2012/06/26

梅棹先生のことばは、断片では物足りない

梅棹忠夫のことば
梅棹忠夫のことば
  • 発売日: 2011/03/16

『梅棹忠夫のことば』小長谷有紀
[16/113]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

梅棹忠夫さんの、『知的生産の技術』を読んで、その先見性に驚き、その考えの深さに尊敬の念のもち、その勉強法に感銘を受けた。30年40年前から、「情報社会」の到来を見抜き、「グローバリゼーション」の感覚を持っていた。まだ2冊しか読んでいないけれど、その圧倒的な「知的生産」への取り組みに高く尊敬しております。

その梅棹先生の「ことば」と、現代から見ての解説を付して構成されています。著述や講演でお話された内容を見ても、師の奥深さが胸に沁み入る感覚が持てる。むしろ「現代の解説」がおまけのように感じられるほど、その「ことば」は深いものがあるのです。

いくつかテーマ分けされており、右ページに梅棹先生の「ことば」、左ページに「解説」なのですが、1ページに収まるように、師のことばが選ばれているので、少々「断片的」に感じられるのが残念なところ。その深みは、やはり1冊の先生ご自身の著を以て、より深く感じられるものがあるので、1ページ分の「ことば」だけ抜いて解説するにはやはり無理があるような。

知識を得るための方法(有名な「カード」です)、「思想は論じるものではなく使うもの」と断言する歯切れ良さ( 1950年代の発言ですよ)、「現代は情報産業の時代」とする先見の眼(1960年代に、です)、日本の蓄積された情報、文化は、もっと「輸出」されるべき、とする国際性。いずれも、「今」21世紀の世を梅棹先生の言葉は鋭く指摘され、そしてわかっていながらまだ十分機能できていない社会がここにある。

おそらく50年代60年代にこのような考えを発表された当時は、なかなか受け入れられなかった事情もあろうと思う。「そんな時代によくも未来を捉えられたなあ」という驚きのみならず、今この時代における発言としても、十分刺激的であり、今を生きる人間の指針になり得るものばかりである。

2010年に逝去されたことに伴って開催された「ウメサオタダオ展」に沿うカタチでの本書の構成なのだろうと思う。師の軌跡をざっと振り返るにはいいのかもしれないけれど、表面的に理解するのではやはりもったいない。改めて梅棹忠夫自身の著作を読んでみようと思う。それはけして「古い」ものでない、スタンダードであるのだから。

【ことば】...連続してなにかある究極の目的につながるものである必要はまったくないのだ。そのときそのときに、全身全霊をあげてあそぶだけのことである。

有用性や有益性、効率を考えるだけでなく、「あそぶ」ように真剣になれるものをやる。合理的な説明はいらない。真剣であれば、きっと何かにつながるのだ。生きていくのに無駄なことなんて何もない。

梅棹忠夫のことば


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ORYZA喫茶室
「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!
 

引き込まれたのは、原作のよさとアレンジの妙

新釈 走れメロス 他四篇
新釈 走れメロス 他四篇
  • 発売日: 2007/03/13

『【新釈】走れメロス 他四篇』森見登美彦
[15/112]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

表題をはじめ、5つの名作古典をベースに、現代風に大胆にアレンジされた短編集。その5つがビミョウにつながっている、という設計も見事ですが、その作品が書かれた当時の時代背景と、現代の社会が見事なマッチングで描かれています。

以前に、「パスティーシュ」という作風が取り上げられたこともあったが、それとも異なる。古典の展開、テイストを本質的な部分を崩さずに、微細な「脇役」を現代に置き換えた感じ。昔の楽曲を自分の色をつけてカバーしたアルバム、そんなイメージです。


森見さんの作品を読むのは初めて。そして恥ずかしながら、ここに掲げられた「原作」をどれも読んでいないことに気づいた。『走れメロス』は読んだ気になっていたが、太宰の他の作品だったか。もちろん「原作」を読んでいる人には、とても刺激的な内容だと思う。もしかしたら賛否両論あるかもしれないが、大きな構えで読めばきっと新たな発見もあるのではないかと。
そして、(私のように)まったく読んでいない場合でも、十分に楽しめる。著者が「あとがき」で触れているように、原典を読んでみようか...というきっかけにもなった。

5篇の中で、特に引きつけられたのは(やはり)「走れメロス」である。そのスピード感、著者(太宰)の筆も早かったのではないか、楽しんで書いているのではないか、と思われる、その空気が伝わってくるような。やはり原典を早々に読まねばっ、と。
京都を舞台に、一風変わった学生たちが躍動します。全篇が別々のようで小さなつながりがあり、そのテクニックに唸らされました。

曲解されるとよろしくないけれど、古典はこのようなカタチでも受け継がれていくもの、という感覚を改めて思います。よいものは時間を経てもいつまでもよいものであり。その意味で、この本に巡り合ったのは自分にとってもいいきっかけになります。...といってすぐに原典を読まなくては意味が半減してしまいますね。

【ことば】男は自分が確かに掴んでいたはずの世界がどこかへ消えてしまったことを考えました。それを何とか取り戻そうと思っても、男にはもうしの在処がわからないのでした。

「桜の森の満開の下」より。自分ではない者のペースで「見た目の」成功を収めても、そこにいるのは自分なのか、迷う時が来る。自分が本当にあるべきは...答えはないし、答えは変わるのだけれど、それを追っかけるのが、すなわち生きることなのかもしれない。

新釈 走れメロス 他四篇

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思いつくまま気の向くまま
そして今日も砂を積み上げるような本の感想



2012/06/24

古代のロマン...知的好奇心を刺激します


『ツタンカーメンと古代エジプト王朝』近藤二郎
[14/111]
Amazon ★★☆☆☆
K-amazon ★★★☆☆

ピラミッド、スフィンクス、ロゼッタストーンに壁画。紀元前の時代に、3000年も続いたエジプト王朝の実態に迫ります。なにせその圧倒的な歴史の重さと、キリスト誕生後現在までの時間よりも長い古代エジプト王朝時代。ケタはずれのスケールに圧倒されまくります。

エジプト王朝に関する知識が乏しくても知っているのが「ツタンカーメン」「クレオパトラ」という名前でしょう。本書も「ツタンカーメン」という王名がタイトルに含まれます。が、本書を読む限りは、それほどツタンカーメンの記述が多くはありません。他の王と同等で数コラムの登場に過ぎず。若干マーケティング的な要素なのか...そのあたりが少々残念な。

とにかく紀元前の話しです。不明な点や、まだまだ発見されていないものがたくさんあるのでしょう。当時のエジプトの人たちの生活、というのがある程度記述されているのですが、どこまで真実か、というのは別として、それだけ古代エジプトの魅力に取りつかれて調査を進めている学者、研究者が多い、ということだと思われます。

王様が存在する、ってことは階級があるということ。階級があるということは富があるということ。当時日本では「縄文時代」であったことを考えると、既に比較にならないほど進んだ社会があったようです。もちろん「ナイルのたまもの」という言葉に表されるように、土地自体の環境が恵まれた部分はあったにしても、まるで近代社会のような仕組み(階級、支配)が既に組みたてられていたことに驚きを隠せません。

さらには、名前だけは知っている英雄「アレキサンダー大王」が、広い世界を制圧、支配した、ってことは知っていたけれど、エジプト王として君臨したというのは知らなかった、とかピラミッドの種類や場所から推測される、その建設のホントの理由、どれも魅力的な項目です。
 
スケールが異なりますが、王の世襲や次のポストを狙うための内部闘争、領土拡大のための争い、そしてピラミッドが王の墓である、という説が正しいとすれば、日本の古墳との考えと近いような感覚、わが国日本と、紀元前の古代エジプトに似た点があるというのも、なんだかエキサイティング。エジプト史はあまりに長いのとあまりに古いので、表面的、教科書的な書き方になってしまうのではしょうがないんだが...もう少しドラマチックの方が読みやすいよなあ。

【ことば】ほとんど未発掘のまま3500年も保持されていたとなると、まさに奇跡としかいいようがない。ツタンカーメン王墓には、どのような仕掛けがあったというのか。

王としての実績はそれほどでみない、と言われるツタンカーメンだが、その王墓がほとんど未盗掘であるというのは奇跡的だという。実はその盗まれない仕組みが施されているわけではなく、王墓を発掘しようとした関係者が謎の死と遂げる「ファラオの呪い」など、非科学的な言われが、魅力をさらに増しているのだろう。

知れば知るほど面白い ツタンカーメンと古代エジプト王朝 (じっぴコンパクト新書)


2012/06/21

知らされていない日本の問題点

金色のゆりかご
金色のゆりかご
  • 発売日: 2008/06/20

『金色のゆりかご』佐川光晴
[13/110]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★★☆

2000年デビュー以来、芥川賞候補5回も!という著者。自分にとっては初読みです。本書は「望まない妊娠」をした女子高生を中心に、それを取り巻く社会環境を突くストーリー。「社会派」っていうんでしょうか、男性でしかも若者ではない自分にとっては、縁遠い話題でしたが、子を持つ親としては深く考えさせられる内容でした。

鬱病でしばらく休養を余儀なくされた研修医と、望まない妊娠をしている女子高生。その二人を中心に話は展開していきます。女子高生の家庭環境、母親の考え方、生まれてくる命に対する大人たちの対応など、「生まれてきても育てる環境にない」現実と、「中絶可能な時期を過ぎて生まれてくるのを待つ」迫る時間との間で、「大人」たちは、現実的な選択をしていきます。
ただひとり、実際に「母」になる女子高生は、生まれてくる新たな生命の尊さを、愛を高めていきます。その主人公に協力する医師たちが表れ、ストーリーは大きく転換していきます。

前半はそのような「実際に起こっている現実」を、そのある意味ショッキングな出来事が繰り広げられますが、後半は、日本の、国としての「養子」に対する取り組みの不備、裏社会の現実、が中心になります。通じて、けして軽くない話題が中心にあるため、正直「重い」のですが、でもこんな問題が(自分の目に触れないだけで)存在していることを、初めて知ることになりました。

 ヒトゴトのように語るのは無責任ではありますが、生まれてくる命は、たとえ母の胎内にいても、一人の人間であり、その命の重さはなんら変わらないものと考えます。「親」となるべき大人たちの都合で決められてしまうことに、大きな違和感を感じます。宗教的ではないですが、親たちからみれば「授かりもの」であって、新しい命からみれば「人の世に生まれるべくして」生まれるものだと思うので。

この「重さ」を本当の意味で認識できるかどうか、「望まない妊娠」の問題はそこにあるような気がします。自分にも子どもがいますが、その誕生の瞬間の、これ以上ない喜びは忘れることができないほど、自分の人生の最大の出来事。男親なので、ちょっと距離感はあるかもしれませんが、それでも子どもを愛してやまないのは、「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちが、自分の根底にあるからです。

現実問題として、表にはあまり出てきていないようですが(自分の感知力が乏しいのかもしれない)、生命の問題は、この世に生をうけた人間として、真剣に考えるべきものだと確信します。国際社会の中でも、この問題については日本はかなり遅れている、という記述があります。なんらかできることがあれば、考えてみたい。

 ストーリーとして、最後にどうなるか...というドキドキ感が続きます。残りページが薄くなっていくにつれ、「どうなってしまうんだろう...」と思いつづけながら読みました。「続編」を待ちたい、読後はどこかにないかが挟まっているような違和感が残っていますので...

【ことば】どんなに可能性が少なくても、どんなに苦しくても諦めるわけにはいかない。そのために一生を費やすことになるかもしれないが、それとて望むところだ。

社会的な立場、金銭、生きていくために必要なことはたくさん、ある。けれど何よりも大事なのは、命だ。それはオトナとかコドモとか、赤ちゃんとか、あるいは人間以外も、同等に、平等に、大切なもの。

金色のゆりかご


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PAPERONIの記憶の本棚
ハッチのライブラリーⅡ




2012/06/20

こーゆー歴史モノもわるくはないが...

のぼうの城
のぼうの城
  • 発売日: 2007/11/28

『のぼうの城』和田竜②
[12/109]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

天下取り目前の秀吉が、落とせなかった武州・忍城。この城を舞台にした半史実・半小説。タイトルの「のぼう」という意味がわからず読み始めたが、忍城の城代・成田長親が農民などから呼ばれている通称であり、そもそもの意味は「でくのぼう」だという。この「のぼう様」が、数的に圧倒的に劣勢でありながらも、石田三成軍を寄せつかなかった戦。その戦の始まる背景から終結まで、「人間」を中心にストーリーは展開されます。

個人的には、この時代の歴史ものが最も面白い。本書では「脇役」であるが、秀吉のキャラ、秀吉に従った者たちの個性、それに対抗する少数勢力が、それぞれ光を放っているように思えるからだ。それほどこの手の歴史モノを数多く読んでいるわけではないけれど、忍城という、歴史の教科書では出てこない、それなりの小説でも一部触れられているようなところにスポットを当てるその発想からしてユニーク。そして「のぼう様」が、剣の達人であるわけでも、戦略戦術に長けているわけでもなく、そんな「主人公」が、どのような魅力で、武士、農民をまとめているのか...

次第に、「のぼう様」のキャラがわかってきますが、残念ながらその魅力を存分に感じる、というレベルまでは至りませんでした。脇を固める武士の卓越した技量にむしろ「かっこよさ」を感じながら、戦のダイナミック感、人心のうつろいやすさ、それから石田三成の残念な性格(...)を読んできます。三成に関する史実では、この忍城の一件は確かに汚点(最初の)だったようです。本書では主人公との対比で描かれているので、より彼の「欠点」が明らかになっているようでした。
秀吉は本書ではホントに脇役で、「特別出演」くらいの扱い。確かに、全ての戦の現場で秀吉が存在したわけではないし、本書に描かれた支城での戦いなど、もはや目にする機会がないことの方が多いのだろうと思う。

歴史モノにそれほど強くない自分でも、「小説」としてエキサイティングに読めるものです。逆に史実に明るい読者は物足りないのかもしれない。個人的には、楽しめたものの、もうしょっとは「有名人」の出演場面もあってよかったかなあ、と思う。「知っている名前」を見つけると結構うれしかったりするから...

【ことば】「この忍城の者どもは、士分も領民も一つになっておる...所詮は、利で繋がった我らが勝てる相手ではなかったのさ」

三成はわかっているのだ。これをその後に活かさなかったのはイタイけれど...自ら敗軍の将に声をかけるなど、三成のどこかに「人間的」なものがあったのは彼を語るエピソードの中では、ちょっとだけ光があたる「いい」部分。

のぼうの城


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こんなことを思いながら
おでこめがねで読書レビュー




2012/06/18

小説のテーマとしてあげる着眼点に脱帽

神去なあなあ日常
神去なあなあ日常
  • 発売日: 2009/05/15

『神去なあなあ日常』三浦しをん⑦
[11/108]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

就職が危ぶまれた若者が、送り込まれた「職場」は...神去村という山奥。携帯電話すら通じない(ホントに通じないかどうかは...)山の中での「林業」という職業。横浜育ちの主人公にはもちろんかなり異次元な世界。実際に何度か「脱走」を試みるも、逃げることすらできない環境の中で、次第にその自然、そして人間関係の「中」に入っていく姿がなんとも味のあるストーリーで描かれます。

しをんさんの世界は、変わらず「人間」は中心になっていて、林業という効きなれない世界においても、やはり中心は人間です。クセのあるキャラクターが躍動し、最初はとっつきにくかった(主人公にとっても、そして読者にとっても)人たちが、気がつけば味のある「いいやつ」に変わっていました。

そして本作でいうと、林業、山という日常の暮らしでは触れることがあまりない世界の、魅力とそして苦悩が、感じられます。まるで著者自身がそこにいるような、そして山の世界における「男衆」であるような微に入り際にいる描写。「プロフェッショナル」を感じずにはいられません。自分の周りとはまったく異なる世界を垣間見れるのが、しをんさんの小説の、魅力のひとつだと言い切れます。

なんの知識も、もちろん経験もなく放り込まれた神去村で、主人公はひとつひとつ「山」を学んでいきます。そこには一所懸命な若者に対する村の人たちの温かい協力があります。実際の仕事だけではなく、花見、祭りといった村人総出のイベント、このイベントになんらかのカタチで参加して、参加するごとに「村」の中の人になっていく若者。ちょっとした「恋愛」スパイスもあったりしてストーリーの色づけとなっています。

そして本書のタイトル。最初にタイトルだけ見ると意味不明ですが、口に出して何度か読んでみると、不思議な魅力があることに気づきます。「なあなあ」=ゆっくり行こう、まあ落ち着け、っていう神去の言葉ですが、これが本書の中一貫して「なあなあ」で貫かれているのです。いい感じの温かい言葉であることが自然に体感できるのです。

山という大自然が舞台ですが、古くから伝わる「伝統」と、職業としての「林業」を誇りを持って大事にする村人たち。その魅力に、本人も気づかないうちに惹かれていく都会育ちの若者。そこで生きる人間を中心に描かれたしをんワールドに、またたくまに引き込まれる本書です。


 【ことば】まだまだ神去村のこと、ここに住むひとたちのこと。山のことを、知りたいって思うんだ。たしかなのは、神去村はいままでもこれからも、変わらずにここにあるってことだ。

最後の方にでてくる主人公の科白。つまりこの場所が自分の居る場所である、って気がついたんだろう。それまでは脱走を企てても、結局それに気づいた彼は、幸せなのかもね。


神去なあなあ日常


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本読みな暮らし
ポコアポコヤ

2012/06/15

正しい道案内を「ありがとう」。


『「ありがとう」が人と会社を幸せにする』野口吉昭
[10/107]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

出だし「プロローグ」から、本質的なことが書いてあります。日本企業が「資本主義」ならむ「人本主義」だと言われた時代を失って、「ヒト」を「コスト」と見るようになったこと。目先の利益を追求するが故に、「利益が目的」(本質的には「結果」である)となっていること。
モノアマリ時代、情報社会に突入して、利益、効率「だけ」を追い求める姿勢に疑問が出てきています。「利益がでれば何をしても」という企業スタイルがよろしくない、という声が大きくなってきている感じはします。ですが、現実の「会社内」は、やっぱり利益追求のようです。人件費削減、という手段もフツーのことになってしまってます。

本書にあるように、「結果、利益がでてる」というスタイルの企業が、これからの新しい求めるべきスタイルなのでしょう。「お客様の声」を優先して、ある部分に特化して、集中的に徹底的に実行すること。ボランティアとは異なります。企業の継続性、サービスを安全に継続して提供していくためには企業側の「利益」が大前提です。適切な利益、そして利益の使い方、そこにポイントがあるのでしょう。
仕事、働く、ということを考えたとき、「利益最優先」型の旧タイプ企業の中にいれば、違和感を覚えます。その場所に自分が居る必要性、必然性を考える。自分の可能性、進むべき道を考えるようになるでしょう。「ありがとう」と言われる仕事、は人として生きていく上で、最も幸福なスタイルだと思います。その「夢」を実現するために行動を起こす場面もあるでしょう。

一方で、「ありがとう」を求めて、利益は結果である、という信念を貫いて、でも継続できない企業も少なくないと思われます。信念が弱いことが要因かもしれませんが、それだけではなく、「現実」もあると思われます。結果がでるまで頑張る、ことは最も重要な大前提ではありますが、最低限の「利益」つまり「生きていく」のに必要な「お金」も当然あるわけです。
 これらの「バランス」なのだと思います。「ありがとう」と言われることも、これが目標であってはいけない。「ありがとう」と言われることも、「ヒトのため、ヒトを幸せにした結果」なのだから。そのためには自分も「幸せ」になる必要があるのです。仙人にはなれません。自分で「幸せ」を感じなければ、ヒトに幸せをもたらすことはできないと、(現実的に)思います。

「ありがとう」と言われ、「結果」業績を伸ばしている企業、起業家の実例がたくさん載っています。彼らに共通することは、行動力と集中力。つまり、「すぐやる、徹底的にやる」これです。「すぐ、徹底的に」やれば全て上手くいくわけではありませんが、「すぐ、徹底的に」やらなければ「夢」には近づくことができません。


【ことば】最初は誰もきづいてくれないかもしれないし、評価されないかもしれません。けれど、決して諦めずに継続していけば、やがて大輪の花を咲かせる可能性はあります。

たったひと言、たった一人の行動が変化をもたらす。それを実現するには、まず自分から一歩を踏み出さなくては。そして「ひと言、一人の行動」が重さを持つには、そこに心からの「想い」を込めなければ。

「ありがとう」が人と会社を幸せにする ~笑顔で働く20のルール


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書籍レビューコラム『ヲタクは語る』
広告会社~バーチャルとリアルの狭間で

2012/06/14

最後の最後まで「緊張感」

四龍海城
四龍海城
  • 発売日: 2011/07

『四龍海城』乾ルカ③
[9/106]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★★★

地図に載っていない塔、不気味な城が海の先に存在する。インターネットの「噂」では、一度訪れたものは二度と帰れないという...中学生の主人公は憂鬱な時間をその城が向こうに見える海で過ごしていた。何かに導かれるように「城」に近付いた彼を待っていたものは...
そこは日本でありながら日本ではなく、そこにいる人は日本人でありながらも「城人」と呼ばれる無気力無感情人間であった。自ら、あるいは「さらわれて」この城に来た日本人は、やがて帰ることが不可能であるとあきらめ、無気力無感情な「城人」になって、この地で過ごすことになる。
ここを出るには「出場料」が必要だという。ただ、その出場料が何であるのか、カネなのかモノなのか、それすら探る手がかりがない。主人公はそれを探し出すために、城で巡り合った友人と必死になるのだが...
序盤早い段階から、この不可思議なミステリアスな世界に迷い込みます。情景描写もよくイメージできないほどに空想的なのですが、「出られない」環境にあるものが、「出る」ためのチケットを探すために奔走する...中学生の主人公、絡む大学生、城滞在が長くなっている看護婦や教授。限られた登場人物も個性的で、徐々に「答え」に迫っていく感じが読むスピードを速めます。
なんとなく途中で見えてくるものはあるものの、最後まで、最後の一行まで緊張感が続く感じです。気がつけば残りページ数が少なくなってきて、「これはこんなハッピーエンドか?」と思わせるものの、最後の最後まで、ロスなく読み切ることができる。結末が気になって電車に乗り続けたのは久しぶりの体験でした。
四龍海城という場面が「裏社会」的なダークに包まれていますが、登場人物のアクティビティがそのダークさを越え、けして「暗い」だけの読み物にはなっていません。拙いながらも大学生の力も借りて、出るための答えを見つけていく中学生の思い、その過程で得られた大切なもの、つかみきれない環境の中で、確かに掴んだものが、全ての答えだったのです。読後の「整理」しちゃったりするとそれほどでもない気がしますが、読んでいる時の引き込まれ感覚は尋常ではありません。完全に入り込んでしまった自分がいました。

【ことば】「本当にきれいなのは、建物じゃなくて...そういうのと一緒に、もう二度と戻らない時間を見ている気がする。きれいに思うのはきっとそのせいです」

写真好きの少年が持っていたのは、蔦の絡まる家の写真。なぜその写真を撮ったのかという問いに「きれいだから」と答える。大人びた中学生の言葉だけれど、ぐっとくるものが、ある。

四龍海城


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PEPERONIの記憶の本棚
ミステリ読書録

2012/06/13

将軍も人間。歴史書では見えないキャラ全開。


『TOKUGAWA15』堀口茉純
[8/105]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

江戸文化歴史検定1級最年少合格者の「歴女」が語る徳川将軍。教科書などどこかで見たことのある史実、それよりも将軍一人ひとりのキャラクター、エピソード、そして次期将軍をめぐる駆け引きなどに焦点を当てている、「珍しい」歴史の本です。
徳川将軍が15代だったことを知っていても、名前がでてくるのは3,4人だったりする。知らないことが多いんですね。試験に出ないから知らなくても良かったんだけれど、10歳に満たない将軍とか、身体に障害を持っていた将軍とか、「徳川」の系譜を眺めるだけでは見えてこない裏側を知ることは、とても興味深いことです。これまで知らなくて損していた感じすらしてきます。
今の首相と比べて(比較するものではないけれど)各将軍の在任期間はかなり長いのだが、今と同じなのは、「次期ポスト」獲得に暗躍する「戦略家」たち。原則は直系の長男が継ぐものなのだけれど、それが叶わない場合のために作られた「御三家」、ポスト争いは激化していきます。後継者とめされていた者が若くして死亡するなど、現代では感覚がわからない流れも少なくなかったようだが、もしかしたら暗殺のようなこともあったのかもしれない。徳川中期あたりからは力を持った側近、実質的なトップに君臨する徳川家以外の者がその後継争いにも力を貸したり、政略結婚などは特に珍しいものではなかったようだ。
それだけ将軍職が「お家」の都合としては重要だったわけだが、俯瞰してみれば、そこに力を注げるくらいに、江戸時代が「平和」だったのかもしれない。もちろん、庶民の苦しさはあったのだろうけれど、将軍家のいざこざなど無関係で日々過ごしていたのだろう。「政治」はつまり、庶民が関与する幅が大きい方がよいのではなく、政治に関心がなくなるくらいに「平和」な方が、庶民にとってはいい政治なのかもしれない。
本書は「現役世代」にも読みやすい構成で、イラスト、4コママンガなど、幅広く興味関心を持てる。歴史嫌いでも入りやすいと思う。ただ、徳川将軍を15代、順々に追っていくので(歴史の本は、あたりまえだけど時間列だ)一気に読み切る、というよりは、区切り区切り、となってしまった。頑張って読む、というよりは、興味のある将軍から一人ひとり、という読み方でもよいかと思う。有名無名に限らず(失礼か...)それぞれ個性的なキャラ、楽しめます。

【ことば】"徳川○代将軍"というと、なんだか非常に縁遠い世界の人たちのように感じられてしまいますが...じつに個性的で...愛すべき普通の人間だったんだということがわかりました。
 
まさに、「記号」としか思えていなかった「歴代将軍」が、人間のカタチを持って登場してきます。当たり前だけれど、能力のある人もない人も、トップの立場としての苦労や、逆に慢心もあった、ということがイキイキと感じられます。「愛すべき」かどうかは不明ですが...

TOKUGAWA 15(フィフティーン) 徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本


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Book experience, 3 reasons.
akamac book review

2012/06/10

続編が本編を上回った!

なかよし小鳩組 (集英社文庫)
なかよし小鳩組 (集英社文庫)
  • 発売日: 2003/03/20

『なかよし小鳩組』荻原浩③
[7/104]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

『オロロ畑でつかまえて』の続編。倒産寸前の広告代理店がいよいよ窮地に!追い込まれた場面に持ち込まれた案件は...なんとヤクザのCI(コーポレート・アイデンティティ)=企業イメージ統合戦略の仕事。背に腹変えられない環境、嵌められた契約書、やむなく受けたその仕事の結末は...
設定されたのが、「組」だったりするので、コワイ内容かと思いきや、かなりかなりユーモア満載のストーリー。「小鳩組」という名称も、実は「いい人」であることがわかってくる組員、今風(?)の頭脳派の組員など、ユーモアといっても「おふざけ」でなく、なんとなく主人公や登場人物が「人間味」を帯びているところが秀逸なわけです。
挫折の多い人生を背負っている主人公、小心者でトラブルメーカーでありながら意外な魅力を持つ広告代理店社長、強面ながらも家庭を大事に考える小鳩組宣伝部長、クール、クレバーで信用できないキャラの小鳩組事業本部長、主人公の「元」家族...登場人物は皆個性を持ち、ストーリーの中で重要な意味を持っている。それぞれがストーリーの中で輝いているのだ。

 そしてこのストーリーの大きな魅力は、広告代理店とクライアント=小鳩組、という想定外の設定とそもに進行されるもうひとつの流れ。主人公・杉山の家庭、子ども、人生だ。これで一気に杉山が「人間臭い」ものになる。環境は違えど、読者である自分との距離感が縮まるのだ。「仕事」が非現実的な分、その反動の「私生活」が極めて現実的で、そのコントラストが物語をパラレルで彩る。
そしてその間をつなぐカタチで存在するのが...「走る」ことである。これだけ距離感のあるストーリーが別々に存在するとテーマがぼやけてくることがあるけれど、最後には見事に「つながる」感じがします。よく読めば、各章につけられている名称、これが深い意味を持っている、そして伏線がどこかに見つけられる。最終章の名称に後で気付いた時には、正直、ちょっとメガシラが...感動しました。
『オロロ畑~』 もかなり笑えましたが、こっちの作品の方がパワーアップしてます。笑うツボも増えているし、ストーリー展開も面白い。登場人物のキャラクターがわかる分、魅力を既に感じている分、感情移入が早いので、前作を読んでいる方がベターだと思うけれど、本書から読み始めてもその魅力が失われることはないです。
広告代理店の仕事についても専門的で、CI、PR、テレビCMなどの専門分野も手抜きなく書かれている細かさもあるし、かゆい所に手が届く構成も味わい深い。かなり「高品質」な小説だといえる著者の作品は、これからも読んでいきたい。読んでいて「楽しい」からね。

【ことば】俺はいつもそうだ。終わってからじゃないと、何も気づかない。用のなくなった時になってから、ようやく探し物を見つけるのだ。

何度こういう思いをしただろう。普段は何も感じないことが、終わってから「貴重」だと思ったことが。逆にいえば、簡単に終わりにしてはいけない、ということかも。続けている日常に、見えなくなっている大切なものを感じることができるようにしないと。

なかよし小鳩組 (集英社文庫)


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読書時雨
本を読む女。

2012/06/07

「復刻版」...いやいや「今」通用する教科書です


『新版 小予算で優良顧客をつかむ方法』神田昌典②
[6/103]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

マーケッター神田さんの原点との言える本書。1998年に出された物として読むとかなり衝撃的です。現在ではある程度は「セオリー」と言われていることが書かれていますが、これを14年前に書かれていた、というのはかなり驚く。
商売の本質、広告代理店の「事情」、顧客との接点で使う「ことば」。特にその時点では「ブランド(イメージ)広告」しか存在しなかった時代に、「ダイレクトレスポンス」を提唱していたのです。ここに提唱される「ツーステップ」広告とか、広告の効果測定、プランドゥシーのサイクル、などなど、ここ数年ではマーケティング担当者には随分浸透しています。その浸透のきっかけが14年前のこの本だと思って読むと、著者の「クリエイティビティ」に完全に惹かれてしまいますね。心酔する人が多いのもうなづけます。
全般を通じて読むと、テクニック的な要素と、心理的な要素が絡み合って、少々「矛盾?」と思える箇所もなくはない。ただそこは著者本人が感じていることでもあり「マーケターのジレンマ」という言葉で表現されている。つまり「煽りたてるような言葉を使った刹那的な広告」=短期的な現実的な利益訴求=と、「想いのこもったメッセージ広告」=長期的な将来的な利益訴求=との間に揺れる、ということ。現場はいつもこの間を揺れているといってもいい。短期的なものを求められるのが現実だが、そればかりだと疲弊してしまうこともある。先を見越した活動に時間が割けなくなる危険もある。
特に通信販売事業に関しては、この本に書かれているような活動は他の業界に比べて比較的に実行してきていると思われる(それはこの業界に神田さんに導かれた担当者が少なくないからであろう)。そして「今、そしてこれから」を考えると「テクニック<コミュニケーション」という流れが見える。著者自身も最近の著書で言っているが、マーケティングも「新しい」フェーズに入っていく(既に?)のは間違いないと思われる。
そんなときに、この本は14年前の本は役立つのか?役立ちます、確実に。まず、商売の本質を見ること。当たり前だけどできていないことあります。「今月の数値」だけ追っていることも少なくないはず。そしてになによりも、この本に書かれたことを今までやってきたかどうか、の確認です。「これからのマーケティングは今までとは違うから」これは正しいように聞こえますが、「今まで」を正しく愚直にやってきた人だけが言える言葉なのです。見直してみると、抜けている部分、あるかもしれません。
この本を読んで、この通りに実行して、必ず成功するとはいえません。でも、この通りにやってみないと成功には近づけないんです。14年前だから...と言う前に、14年分を追いつくためにもまずここからやってみなければ、実にそう思った本でした。通信販売、直販をやっている、やろうとしている人は必読です。

【ことば】結果を上げることを重視すれば、理想を完全に忘れるし、目標が達成できれば、うまくいった現実に耽溺する。そして大失敗してはまり込んだ泥沼の中で、再び理想を抱く。

現実を棚にあげて理想を追うのは正しくない。現実に向き合うことで、そこでもがくことで理想はカタチをなしてくるのだと思う。現実の(苦しい)中から理想がおぼろげに見えてきたら、そこにむかって現実と戦う。そして理想=夢に一歩一歩近づいていく。


新版 小予算で優良顧客をつかむ方法 マーケティング常識11のウソ

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きゅーすけ日記。
ライトニング95のほぼ365日○○が好き!


エロ→アル中→...最後に、愛。

ばかもの
ばかもの
  • 発売日: 2008/09

『ばかもの』絲山秋子
[5/102]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

のっけからエロ場面。主人公ヒデは、年上の女にハマり、やっと見つけた就職も、今度は酒に狂う。その場限りの快楽にうつつを抜かす、まさに「ばかもの」がそこにいる。場面場面では「反省」する意思を持ちつつも、結局「弱さ」をさらけ出す結果になる。そこにあるのは、「逃げ」であり「甘え」であるのだ。そんな放蕩ものであるが、数々の「事件」を経て、ようやく境地にたどりついて...
「ばかもの」の要素は、実は誰にでもあるのかもしれない。自分にだってそんなものが体内にあることを感じる場面もあるのだ。こうしなければいけない、ということを思いつつも、「明日から」と逃げてしまう。「今回が最後」と甘えてしまう。この繰り返しは人生の貴重な時間を奪っていく。むしろ、「ばかもの」を貫いた方が楽なんじゃないか、って思うくらいに、自分の行動を厭世的に反省することもある。が、また同じことが...
主人公ヒデも、落ちるところまで落ちる。落ちていく場面の印象が強いせいか、「社会復帰」する過程があまり記憶に残らない。が、とにかくヒデは「回復」するのだ。アルコール依存症も、自らの意思でアルコールを断つ、といった行動をする。一度ハマった女とも、違った再会を果たす。
救いようのない奴が、もがいてもがきぬいて再生する、といったサクセスストーリーではない。イメージで残るのはタイトルにある「ばかもの」の姿が強い。人間の弱さ、未熟さ、社会的に存在価値がないように思える自己嫌悪、そこから抜け出すために必要なのは何であろうか。
時間の経過なのか、数々の経験なのか。交わることしかなかった二人が、空白期間を経て、その空白期間にそれぞれが経験したものを以て、再開した後は、お互いの存在を認め合うような関係になっていく。何が自分に必要なもので、何が相手に必要なものなのか、それを追い求めていくような関係を作っていく。
その日のその場面のことしかアタマにない頃、やがて先のことや相手のことを考えるようになる時期、それは年齢を重ねることによってなのか、イタイ目にあった経験が自分に何かを気付かせてくれるのか。
最初っから「ばかもの」の話しで、どこまで沈むのか、正直読んでいて楽しくなかったけれど、後半はその分を補ってあまりある展開で(そのギャップがさらに増幅させるのかもしれないが)、ユニークな妙なストーリー、読後感は悪くない。

【ことば】社会というのは下車前途無効の切符なのか。俺は途中下車してしまったのか。もう二度と特急には乗れないだろう。鈍行なら乗せてくれるだろうか。俺はまだ廃駅にはなっていない、俺の前にきっと電車は止まる。

ふとこのような気持ちになる時もくるだろう。「前を向いて」という言葉がむなしくアタマを通り過ぎていく瞬間が。このときに「耐える」力を持つことが、「次」につながる。「前」でなくて「次」でもいいのだ。特急に乗る必要はない。でも電車に乗ることは絶対に必要だ。

ばかもの


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みくうのもこもこ日記。
ひねもすのたり、読書かな

 

2012/06/05

なかなか「キレる」芸人を見つけた。

とはいえ、便所は宇宙である
とはいえ、便所は宇宙である
  • 発売日: 2012/05/14

『とはいえ、便所は宇宙である』千原ジュニア
[4/101]
Amazon
K-amazon ★★★★☆

千原ジュニアが、週刊誌SPA!の連載が決まった時、その元となる「便所メモ」(ネタになりそうなものを便所で書くメモ)をベースにしよう、となって、さらに1冊の本になった、という経緯。その2冊目。
千原ジュニア、千原兄弟について、特別な思い入れがあるわけではない。お笑いはヒトナミに見るけれど、特別面白いと感じたことは少ないし、どちらかといえば「大阪」が強くて距離感もある感じだった。
本書を読むと、基本的に「芸人」ではあるけれど、その観察眼の広さや、本業以外の趣味、知識の広さ、これを感じる。基本的には「便所メモ」をベースにした1~3ページ程度の「ネタ帳」なのだけれど、幅広い「お題」を、自分の経験値、他の人のエピソード、これを絡めて「料理」していく感じが読みとれるのだ。もちろん「笑い」もちりばめて。どちらかといえば、狙った面白さ、というよりも、深みのある面白さ、というか。
そう、「安心感」なのですね。これは芸人の経験と、人間としての経験の両面がその厚みを増しているのだと思う。ありがちな「苦労話」というのはほぼ見られないが、芸人として、というよりも人間としての著者が垣間見れる気がする。「笑い」の質としてはやっぱり「安心感」だろう。うわっすべりな感じがしないのだ。もう「若手」の部類ではないのだから当然といえば当然だが...
正直「千原兄弟」のネタってほとんど見たことはないんだけど、かなりのボリュームで「せいじ」の話しがでてくる。兄ですよね。兄弟でコンビ、ってどんな感じかわからないけれど、少なくとも「弟」はそれなりに「兄」を大事にしている様子です。尊敬、とまではいかないけれど、自分になくて兄が持っている長所、そこをちゃんと認めている。その様子は何度も登場します。
人を笑わせる、って大変な「仕事」だと思う。よく言われているけれど、こんなに難しいことはないのでは、と思う。著者自身もその困難さは理解しているようですが、笑いを取る前提としての自分自身の向上、という点で、「こうなりたい」というモデルが存在するようだ。この意識は、「お笑い」でなくとも同じように持つことはできるはずだ。
本人が言うように、「アマガミ」というレベルで、軽く読めます。ひとつのコラムの短いので、次から次へネタが変わるスピード感も。ゆるーく、かるーく読んじゃうのがいいのかもしれません。ただ、これらのネタの基を便所でメモする、という点は、隠れてしまいがちですが大事なことかと。普段常に「考える」ことをしているからこそ、「その瞬間」にメモが生まれてくるんだとは思います。それを書きとめる、という行為、その継続が、芸人の、そして人間の幅を広げているんだなあ、と深読み。

【ことば】 全然笑ってない街の人たちを少しでも笑わせるように頑張っていきたいと思いますね。

以前に、ロケバスの中から街中を眺めて、笑っている人がいたら、なぜ笑っていたか聞いてみる、という企画をやった。実際にやってみると、笑っている人はほとんど街にいない、ということに気づく。 意味なく笑うことは不要だけれども、すくなくとも下を向いていないか...意識。

とはいえ、便所は宇宙である

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「サッカーのしわざなのだ。」


2012/06/04

「特別な」世界観を堪能...できてないかも

わたしたちに許された特別な時間の終わり
わたしたちに許された特別な時間の終わり
  • 発売日: 2007/02/24

『わたしたちに許された特別な時間の終わり』岡田利規
[3/100]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

ひとつの文章が何行も続く、誰の発言(思い)だか分かりにくい...これが「純文学」だ、といえばそうなのでしょうが、最後まで読み切るのにエネルギーを必要としました。そもそもが、渋谷のラブホテルで、その日に出会った二人が5日間過ごす、という設定自体が空想的で現実感に乏しい。世代の違いなのかもしれないけれど、設定が「小説的」であるのと、そこに登場する人物が果たしてどこにいくのか、何をしたいのか、見つけるのがとても困難なのです。
ですが...途中で投げ出そうとは思わないのが不思議。ある程度、分からないなりに、ストーリーに引き込まれている自分もいます。タイトルにあるような「時間」というテーマが、掲載された二つの物語をつなぐテーマなのでしょう。これもはっきりわかりません。タイトルが詩的で引きつけられるものであるため、読者である自分がそれに結びつけたがっているのかもしれません。それだけのことかもしれない。
いつ始まって、いつ終わるかもわからない物語。展開される場所は「わたしたち」の周りにあるものの、時間と同じく、非日常感が漂う。けして「心地よい」ものではないけれど、なぜか惹かれる理由はなんだろうか。
「前衛的」という表現がいいのかもしれないが、とにかく「普通の小説」或いは「詩的な展開」と思って読み始めるとイタイメにあうかもしれない。こーゆー世界観がある、という日常の自分を越える必要が読者側にもあるような。
「非日常」を感じるような「時間」って、誰にでもあるのかもしれない。極めて感覚的なものだけれど、科学的ではないけれど、誰にでも訪れるその「時間」の感覚が、この本に引きつけられる理由かもしれません。大江健三郎賞受賞作。大江作品たくさん読んでいるわけではないけれど、なんとなく納得です。
 著者は演劇に携わる方のようですが、おそらくその「演劇」も、見たとしたならば同じような感覚をもつのではないかなあ、と漠然と思います。

【ことば】そろそろ起き上がってみようとわたしは思った。このまま横になっているよりもそのほうが体がむしろ楽なような気が、ふいにしたのだった。

全てこの感覚でストーリー展開されていきます。自分をもちょっと俯瞰してみているような感覚。不思議な世界観ですが、拒絶するものではない。多分それは自分も(無意識に)そう感じているときがあるから(?)

わたしたちに許された特別な時間の終わり


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オリーブの林をぬけて。
読書百”篇”


2012/06/01

対象作品が輝きを増す「番外編」

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
  • 発売日: 2005/04/06

『世にも美しい数学入門』藤原正彦⑤、小川洋子③
[2/99]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

読みました『博士が愛した数式』、博士=数学者と家政婦のやりとりが、非日常で面白かった記憶が。その後ご自身の著者の中で度々藤原氏がこの作品に触れているのを目にしているので、まだ記憶も鮮明です。小川氏が書いたこの作品、そのきっかけが数学者たる藤原氏であることから、お二人の「対談」が設定されて、本書はその「対談集」です。もちろんその作品にスポットがあてられるのと、数学者の「ヒトトナリ」に関する藤原氏の自論の展開、もちろん「美しい数学」がメインであります。
これまで藤原氏の本を4冊読んでいるけれど、『国家の品格』のように、どちらかといえば数学「以外」がメインテーマであるものばかり。もちろん作家としてのサラブレッドであるし、その歯切れのよい口調(文調)が自分の感覚とマッチして、どれも興味深い内容だった。それらに比較するわけではないが、当然に「数学者」でもあることは認識していたものの、本書で繰り広げられる「数学への熱い思い」は想像を超える「高熱」レベルであった。
数学に対して「美しさ」を求め、そこに「美」を見出す感覚。これはその魅力に取りつかれた人しかわからないのかもしれないが、なんとなく(数学が苦手な)自分にも、その「感覚」だけはわからなくもないのだ。「どんな三角形でも内角の和は変わらない。過去も未来も場所も関係なく同じである」なんというかスケールの違いというか、普遍性というか、「美しさ」を感じる、魅力に取りつかれる気持ちは、わかるんです。自分がそうなるとは思えないのだけれど、文学や美術、それらに惹かれる思いと似ているのかもしれない、と自分なりに思う。
あまり得意ではない「対談形式」の内容であるが、藤原氏の「熱さ」と、小川氏の数学の専門家ではないけれども少しその「美しさ」を感じているレベル、この二人が絶妙のコンビネーションで、数学の「美しさ」を奏でる。読んでいる方も、「美しさ」(の一部)を感じることができます。このお二人の著作、まだまだ読んでみたい、数学に限らずに。小川氏も「熱さ」は表面に出さないまでも、当然に相当の興味を持って書いたはずだから。それも「熱い」ことには変わらない。そんな人が書く本は面白いに決まっている。
ちなみに。「入門」とタイトルにはあるが、『博士の愛した数式』を読んで、その面白さに少しでも気がついた人の「入門」と捉えます。既に数学を愛している二人の対談なので、「超初心者」には向いていないかもしれません。

【ことば】人間には感激したいという深い欲求があり、それを満たしてくれるのは、美しい自然は別格として、数学や文学をはじめとする文化や芸術以外にあまりないですからね。

数学は「役に立たない」と断言する藤原先生。しかし「価値はある」とも。すぐに役に立つ、効率のよいもの、ことばかりだと、どんな世の中になっちゃうんだろう。それを追い求めてきた結果(経過?)が現代であるのならば、この先は(現代の言葉でいう)「無駄」に価値を認めてもいいのではないかな。っていうか、そういう時代に入っていく感じもする。

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)


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月のブログ
ハムリンの読書


そこにあるのは「人間」「生きる」ことでした。

トライアウト
トライアウト
  • 発売日: 2012/01/18

『トライアウト』藤岡陽子
[1/98]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

タイトルから想像できるように、「プロ野球」で戦力外通告を受けた選手の最後のテストである「トライアウト」がその意味。「まだできる」と思い、現役を続けるための場に全力を注ぐ選手。それを取材する記者。それぞれがそれぞれの「過去」を捨てきれない思いをもったまま、ストーリーは展開していきます。
いわゆるスポーツもの、だと想像していましたが、さにあらず、人間模様であります。過去の栄光を持ちつつも、戦力外という「今」の事実にどう立ち向かうのか。過去に「傷」を持つ記者が、それを越えられる何かをどのように体得していくのか。環境、立場が違うように見える主人公二人が、「過去や現在」をどう受け入れるのか、という人間の根幹的なドラマを描いています。
環境が自分を追い込むという場面もあるでしょう。自分ひとりでは何もできない、という局面もあります。それに対して自分としては「乗り越えた」と思っていることが、はたして本当の意味でそれを脱しているのか分からない。外敵に屈することなく、前を向いて歩く人にも、少なからず引きずってしまっているものがあるのかもしれません。
主人公の女性記者の持つ「暗闇」は、なかなか明かされることなくミステリアスのまま、話は展開していきます。一方でトライアウトに臨んだ「過去のヒーロー」は、あくまでも前向きの姿勢を見せてはいますが...ひとりの人間の人生、アップダウンは当然にめぐってきます。誰しもが程度の差はあれ経験することなのかもしれません。そしてその「程度」を決めているのは、他ならぬ自分だったりします。
男である自分は、戦力外通告を受け、トライアウトに参加し、それでも現役にこだわる姿勢を貫く選手に同調してしまいました。実は「前向き」な姿勢も、単に自信家であったり楽観主義であったりするわけではなく、自身の状況を受け入れてはいるけれども、「敢えて」強がっている部分も垣間見えたりします。一方の女性記者は、シングルマザーという環境の中、「仕事」を優先しますが、仕事優先の姿勢を崩さないのは「自分への正当性」を維持し続けるためだったりします。何が正解、とかはありません。「強い」自分を見せているんだけれども、「弱い」部分もその中にはある。そんな人間クササがにじみ出ます。
おそらく読者によって共感を感じる人、場面、さまざまだと思います。自分のように、タイトルから「野球もの」だと勝手に勘違いして読む人も含めて、この「人間クササ」には、カラダが熱くなるもの、あります。特に人生経験がある程度長くなってきた人、自分の中で大きな変革期を迎えている(経験している)人には、しみじみと没頭できる、ストーリー。

【ことば】...店長に言われたことを大事にしてました。何やるにも本気でやれって。自分に言い訳できないくらい本気でやれって。

本気でやって、見えてくるものがある。必ずしも「成功」だけではないけれど、本気であることで見つかるものがある。投げ出すのはいつでもできる。本気でやるのは今しかない。本気でやらなかったら、つまらないよね。

トライアウト


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ナナメモ
穏やかな時間(とき)の中で




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