2011/06/17

「今」の王さんの優しい言葉が詰まってます

野球にときめいて―王貞治、半生を語る
野球にときめいて―王貞治、半生を語る
  • 発売日: 2011/03
『野球ときめいて』王貞治
[11/114]bk1
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K-amazon ★★★★☆

いろいろあって今は違うけれど、子供のころは当然のように巨人ファンだった。約40年前には、今では考えにくいほど、「巨人」の情報しかなかったんですね。マスメディアも「巨人かそれに付随するもの」しか情報発信しなかったしね。こと野球に関しては、父親の影響を受けやすいんだけど、我が家にも、「王貞治物語」的な本がありました。読みました。子供ごころにも偉大な人だなあって思っていたけれども、そんな王さんが「王選手」から「王監督」になって、ある意味批判の対象になってしまった。巨人ブランドはすでに落日のものとなりつつあったけれども、それでも福岡への「転出」は、それなりの衝撃だった。本書にも記載があるけれども、ホークスが負け続けて心ない一部のファンから卵が投げつけられたりとか、選手時代の「雲の上」の存在だった時代を知る人間には、信じられない事態もあった。
世代的に、長嶋さんの選手時代の記憶が薄く、「ON」よりは「OH」、むしろ、「赤ヘル」時代に少年期を過ごしてきたわけだが、高校の先輩でもあり、球団の、というよりも王さん個人に対する思い入れが大きい。それは今でも変わらない。ホームランの世界記録更新や、国民栄誉賞など記録に対することもあるが、いちばん記憶に残るのは、王選手が怪我による欠場あけにホームランを打ったのをTBSラジオで聞いていたこと。「ここで打ったらすごいよなあ」と思っていた瞬間にラジオアナの絶叫が響いたことを鮮明に思い出す。
本書の中でご自身でも触れているが、長嶋さんとはタイプが異なる。どちらがどう、ということはないよね。王さんはとことんまで準備、練習をして、結果を出す人。長嶋さんももちろん見えないところでの努力があり「天性」だけではないはずだけれど、王さんは、さらに努力を重ねて重ねて...というタイプと思える。
本書では、王さんはその「努力」については触れられていないけれど、想像を絶するものがあるはず。それを乗り越えて、且つ結果も出してきた人間だからこそ、一見淡々と語っている文章にも重みがある。「プロ」は、そんな自分が重ねてきた努力を全面に出したりしないもの。特にプロ野球選手であることもあって、結果でそれを実証するしかない世界だからね。
野球を始めた少年時代から選手として「一本足打法」で開眼し、巨人の監督、ホークスの監督、WBC、そして勇退、それを今の王さんの言葉でつづられています。語られている場面を思い出すことができます。私たち野球ファンにとっての思い出場面集みたいなつくりで、王さんは多くを語っていません。が、その裏の深みを感じ取ることができますね。同じ時代を生きることができたこと、とても幸せなことだと思います。
王さんに関する言葉。 
「野球界に尊敬できる人はほとんどいない、王さんはそのほとんどいないウチの一人。本当にすごい人なんだ」監督勇退に際して。イチロー。
「 報われない努力があるとするならば、それはまだ努力とはいえない」
怪我が続いた小久保に王監督がかけた言葉。
かっこいい!
【ことば】...感謝の気持ちで生きなくてはいけない、自分を支えてくれた大勢の人たちのことを忘れてはいけない...
王さんがお母様から言われ続け、そしてご自身で実践し続けている言葉です。実際に偉大な記録保持者にして、人として尊敬できる王さんは、その精神を持ち続けていることが大きな要因なのでしょう。肝に銘じます。


野球にときめいて―王貞治、半生を語る

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