- キヤノンの仕事術―「執念」が人と仕事を動かす
- 発売日: 2006/09
[19/122]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆
「ノンキャリア」から、日本有数の企業のトップに上り詰めた著者の「仕事術」。「術」といってもテクニック的なものよりも、取り組み方、姿勢、考え方の指南書。どちらかというと管理職へのメッセージが多いようにも感じるが、(その言葉は使われていないが)リーダシップのみならず、「フォロワーシップ」についても触れている。
著者自身が言うように、類稀なる指導者に恵まれた環境もあっただろうが、その方々に触発されたのか、著者自身の「本気度」はかなり高い。新しいことには短期的に集中的に勉強に取り組む、本を始め周辺の事物に関しても含め情報を積極的に取り組む、あらゆる時において仕事をアタマの中心に据える。それは「上」に上がっても変わっていないようで、ここが尊敬できるところ。常に自分を高める努力をされているようだ。もっともそれを「努力=苦痛」と感じないところに、「好奇心」という著者の資質を感じるとともに、努力が努力と感じないレベルまで努力された(ややこしいな)経歴を垣間見ることもできる。
本書が他の「成功本」と異なるところは、前述の「勉強、努力」という点とともに、ある程度の「処世術も必要」というポイントが挙げられているところだろう。「敵を作らない」「上が駄目(な人物)だと判断したら、無駄な抗いをするよりは、将来のために自分を高めることに重点を置く」等々。現実的な面もあります。確かに努力だけではどうにもならない時もあるのが、社会。ヒト=相手あっての社会、生き方だからね。そういう面も必要、ということは実感としてわかります。
前に読んだ本も、もちろん同じスタンスだったけれど、知識を高め、正しい道を進み、ヒトとの付き合いの中で、掲げた目標に向かってまい進する。このスタンスは「当たり前」のようで、この「当たり前」ができるかどうか、できるように力を注いでいるかどうか、これがポイントであることは十分に伝わってくる。
「会議」がテーマの箇所で、会議は何のためにあるのか=経営者や上司が思いつかないような新しい考え方、試みを部下から引き出すため、と説く。とかく「上」の自己満足や、情報共有にしか使われていない会議って、実際には多いと思う。これほど端的にその「目的」を表したものはないんでないかなあ、って思う。もちろん、部下が現場で十分に考えて、活動して、という前提ではあるけれど、そこから上がってくる言葉に、真摯に耳を傾けなければいけない、という、これも「当たり前」かもしれないけれど、改めて自分を見直すきっかけにしたい。
「上司のいうことは絶対」、「商談も商売も「戦い」である」といった、少々自分の考えと異なるところがあるものの、 少ないながらも「部下」を持つ立場として参考になるところは多い。何よりも「本気」で「執念」を持つことだね。部下(あるいは上司)の何倍も持っていなければ。
【ことば】究極まで整理整頓、合理化されたところに人を感動させるものづくりの根本がある...
設計者らしい表現ではあるが、設計や工場、職場だけではなく、「仕事」全般に言えること。「感動する」側から考えれば当然かもしれないね。大事なことだけど妥協しがちな弱いところも少なからず...これ「美学」ですね。
キヤノンの仕事術―「執念」が人と仕事を動かす