2011/06/29

仕事に必要なもの...それは「本気」。

『キヤノンの仕事術』酒巻久②
[19/122]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆


「ノンキャリア」から、日本有数の企業のトップに上り詰めた著者の「仕事術」。「術」といってもテクニック的なものよりも、取り組み方、姿勢、考え方の指南書。どちらかというと管理職へのメッセージが多いようにも感じるが、(その言葉は使われていないが)リーダシップのみならず、「フォロワーシップ」についても触れている。
著者自身が言うように、類稀なる指導者に恵まれた環境もあっただろうが、その方々に触発されたのか、著者自身の「本気度」はかなり高い。新しいことには短期的に集中的に勉強に取り組む、本を始め周辺の事物に関しても含め情報を積極的に取り組む、あらゆる時において仕事をアタマの中心に据える。それは「上」に上がっても変わっていないようで、ここが尊敬できるところ。常に自分を高める努力をされているようだ。もっともそれを「努力=苦痛」と感じないところに、「好奇心」という著者の資質を感じるとともに、努力が努力と感じないレベルまで努力された(ややこしいな)経歴を垣間見ることもできる。
本書が他の「成功本」と異なるところは、前述の「勉強、努力」という点とともに、ある程度の「処世術も必要」というポイントが挙げられているところだろう。「敵を作らない」「上が駄目(な人物)だと判断したら、無駄な抗いをするよりは、将来のために自分を高めることに重点を置く」等々。現実的な面もあります。確かに努力だけではどうにもならない時もあるのが、社会。ヒト=相手あっての社会、生き方だからね。そういう面も必要、ということは実感としてわかります。
前に読んだ本も、もちろん同じスタンスだったけれど、知識を高め、正しい道を進み、ヒトとの付き合いの中で、掲げた目標に向かってまい進する。このスタンスは「当たり前」のようで、この「当たり前」ができるかどうか、できるように力を注いでいるかどうか、これがポイントであることは十分に伝わってくる。
「会議」がテーマの箇所で、会議は何のためにあるのか=経営者や上司が思いつかないような新しい考え方、試みを部下から引き出すため、と説く。とかく「上」の自己満足や、情報共有にしか使われていない会議って、実際には多いと思う。これほど端的にその「目的」を表したものはないんでないかなあ、って思う。もちろん、部下が現場で十分に考えて、活動して、という前提ではあるけれど、そこから上がってくる言葉に、真摯に耳を傾けなければいけない、という、これも「当たり前」かもしれないけれど、改めて自分を見直すきっかけにしたい。
「上司のいうことは絶対」、「商談も商売も「戦い」である」といった、少々自分の考えと異なるところがあるものの、 少ないながらも「部下」を持つ立場として参考になるところは多い。何よりも「本気」で「執念」を持つことだね。部下(あるいは上司)の何倍も持っていなければ。

【ことば】究極まで整理整頓、合理化されたところに人を感動させるものづくりの根本がある...

設計者らしい表現ではあるが、設計や工場、職場だけではなく、「仕事」全般に言えること。「感動する」側から考えれば当然かもしれないね。大事なことだけど妥協しがちな弱いところも少なからず...これ「美学」ですね。

キヤノンの仕事術―「執念」が人と仕事を動かす

2011/06/28

映画のようでした。あ、映画になったの?

天国はまだ遠く (新潮文庫)
天国はまだ遠く (新潮文庫)
  • 発売日: 2006/10
『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ④
[18/121]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

自ら命を絶つ場所として選んだ場所で、その大自然、その土地の人と触れることによって、自分の「居場所」を見つける。23歳の女性が主人公の話です。自殺を思い立った動機は「ストレス」なのか、その場所を選んだのも特に意味はなく。が、未遂を犯すも命は取り留めた日から、その場所で主人公は「自分」を見つめ直していきます。
瀬尾さんの小説によく出てくる題材は「死」。これだけ見ると殺伐とした冷たいイメージですが、軽快な話の展開、主人公や登場人物の発する言葉の「洗練」によって、悲観的なイメージはありません。むしろ、「死」という究極の場面に立つ人物が、そこから改めて「生きる」ということを見つけていく、そんなストーリーが多い。引き込まれます。その話の組み立て、重すぎない、かといって軽すぎない文体は見事に自分にはまっている感じがします。
結果的に、「自分の居場所」を自ら見つける、見つける意思を強く持ち行動する、という結末を迎えます。これを見ると、ハラハラする展開がない平坦なもののように思えますが、読んでいる最中は結構ハラハラしてました。どんな展開になるんだろう...前にあったあの事件は何かの複線なのではないか...など、自分勝手に想像を膨らませて読んでいましたね。そういう読み方ができる(させる)小説は、エンターテイメントですね。文才が乏しい自分にはうらやましいけど、そんな世界を「体験」することができたことに素直に感謝。
決意をした夜に泊った民宿で出会った人物は、マイペースながら人間味あふれるキャラクター。そんな主人公を責めるでもなく、結果的に訪れた別れを悲しむでもなく、淡々としているけれども、確実に「居場所」を持っている人物。それに刺激を受けたのか、死の直前までいった主人公は、一回り大きくなって、自分の居場所に戻っていく。これは偶然にそんな人物との出会いがあったのではなくて、「必然」なんだろう。そんな意味がタイトルから見えたりもします。
最後のあとがきで、主人公を優しく包んだ土地が、著者自身が体験した地がベースになっていることを見て、リアル感、というか小説の中の人物、出来事との距離が縮まった気がしました。まるで現実のように感じられます(もちろん、著者が自殺のために彼の地にいたわけではないけれど)。ビジネス書で「現実」ばかりを読んでいると、こういう世界もいいなあ、って思っちゃいますね。たまには。

【ことば】「そりゃ、悲しい。あんたやなかっても、人が来て去っていくのは悲しいもんやろ」

主人公との別れ際、民宿の主人が言った言葉。民宿をやっている人間がどうよ、って思うけれど、去っていく主人公に対しての思いがこもった言葉だと思う。きっと、「他の人が去っていくよりも悲しい」というのが隠れている。でも、それぞれの居場所。それぞれの人生。別れの後にはまた、新しい出会いがある。

天国はまだ遠く (新潮文庫)

2011/06/27

感動、感情移入まではもうひとつ...

「また、必ず会おう」と誰もが言った。
「また、必ず会おう」と誰もが言った。
  • 発売日: 2010/11/18
『「また、必ず会おう」と誰もが言った』喜多川泰
[17/120]rakutenb
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

自らついたひとつの「うそ」から、それをカバーしようと、ひとり東京に出たものの帰りの飛行機に乗り遅れた高校生。所持金もなく、途方に暮れている少年が体験する様々な出会い。そしてその出会いによって成長する少年の姿...これですべてのストーリーはカバーできているかと。
表面的にはこれだけ、ですが、ぎりぎりのところで出会う人々の温かさや、そこから自分に置き換えて「何か」をつかんでいく少年の考え方の変化。もちろんそこから、少年と旅、これらを超えるものを自分でつかみ取ることはできます。どんな成功者だって、自分一人で成功したわけではない。もっと言えば、自分一人で生きていくことなんてできないのが人間である。様々な背景を持つ人たちとの出会い、会話。そこから見えてくる、自らの生活、人生の「問題点」。端的には、あたりまえだと思って疑いすら持たなかった親への感謝だったり、学生生活だったり。これって高校生だけに当てはまることでは、もちろんありませんよね。仕事だって、人生だって、出会いと感謝、これによってさせられているんです。普段は気がつきません。「気がつかない」方が多分幸せなのかもしれない。でも「気がついていなかった」ということに気がつく(ややこしいな...)のが、ものすごく大事なことですよね。
親であり、また部下を抱えるビジネスマンとしての自分は、子どもに、そしてスタッフに「無償の愛」を捧げます。そこに「見返り」は期待しません。見返りを期待した時点で「愛」ではなくなりますよね。だけど...だけど、そこで愛を受けた人がそれに気づいた時、それは何物にも代えがたい喜びになります。人の喜ぶ姿を見ることが自分の喜びである...キレイごとに見えますが、どんな人間にもできることなんです。自分の子どもに対して、だけではなくてね。それこそ「出会」った、愛すべき人たちにも同じ感情を持てるんですね。自分もそんなふうになれるとは考えてもいませんでしたが、40代も半ばになるとそういう気持ちが素直に持てるようになります。
ひとりの少年を通して、その「出会い」と「感謝」をつづった本書は、多少は「物語すぎる」ところは感じられるものの、受け入れやすい文章で最後まで一気に読むことができます。ひねくれた自分のようなタイプには、「できすぎ」を感じて、涙を潤ます場面は少なかった、のですが、もちろん悪い印象はありません。「こんなに泣ける本はない」的な広告が邪魔をしてしまったようで、どうも読む前に「広告」されると、そのようにならなければ(=泣かなくては...)という気負いが先に立ってしまう。素直でなくなってしまいますね。これは「偏った」自分のようなタイプ、だけでしょうけれど。
フラットな気分で、「感動するために読む」というスタンスが強すぎなければ、十分に感じることはできます。

【ことば】...居心地のいい場所は、まわりの人があなたに何をしてくれるかによってじゃなくて、あなたがまわりの人のために何をするかによって決まる...

この物語のキーになるところです。縁あって近くにいる人に対しての「愛」。近くにいなくても。自ら何かをしてあげることによってその人が喜ぶ姿に、喜びを感じる。出会いは偶然ではなく必然。人間だもの、「出会い」によって愛を広げることに幸せを感じる、素直に喜ぶ、自然体でいきましょう。

「また、必ず会おう」と誰もが言った。

2011/06/26

今、必要なことがあります。夢に向けて、できることから。



『スティーブ・ジョブズ 脅威のイノベーション』カーマイン・ガロ
[16/119]
Amazon
K-amazon ★★★★★

つい最近、憧れのT先生の講演を聞いてきました。「販促のコンサル」の方なんですが、「売る」ということに対しての考え方を変えてくれる方です。その講演の中でのキーワードをあげてみると、
・企業の顔が見えるメッセージを出す(「誰が」という部分)
・通販企業であろうとも、「お客様との関係性」が求められる
・「共感・共鳴」が大事。これがあって初めて「販売」が成り立つ。
・その製品を使ってどうなるか、買うのはその製品であるべき理由を伝える
等々...深ーく、感動したものです。そりゃあ、感激しました。セミナーという「多対一」という場面では珍しく、感動のあまり泣きそうになるほど。講師の方が発する言葉もそうなんですけれど、熱意とか、表情とか、すべてがこちらに向いていて、テクニックやスペックなど、表面的なものがそこには一切ないことに心を動かされたのかなあ、って感じています。
セミナーでそんな話を聞き、そんな記憶がまだ十分に残っている状態でこの本を読み始めました。偶然かわかりません。が、そこには日米の違いや、事例として挙げられている企業の規模の違いこそあれ、本質的には同じことが書かれているのです。
本書では、「あの」今やユニークさのみならず数字的な規模も知名度も何もかも世界的となったアっプルCEO、スティーブジョブズの考え方、のみならず同じような考え方をもって、イノベーションを成し遂げた事例が並びます。そこに共通していることは...
・メッセージ、ストーリーを正しく伝えることの重要性
・製品ではなく、夢を売ること
・情熱が大事。これは今直面している仕事という範疇だけに限らない。
個人的には、iPhoneやiPadを使っていない。MACユーザーでもない(一時期だけ使用)のだが、やっぱり気になる存在であることは確か。「機能性」という点でiPhoneではない(後発の)スマートフォンを使っているが、これだってiPhoneの存在があったからこそ、スマートフォンに変えようという動機付けがあったわけで...やはりその存在は衝撃的ですよね。確かに世の中が変わっている感じがするよね。全員が全員、自分のようにiPhoneにしたわけじゃないけれど、その登場によって確かに「変化」が、しかも大きな「変化」が生じていることは確かです。
これから先は、この「変化」をどうつかんで、その流れに合ったことを考える必要がある。ジョブズのいう、
『パーソナルコンピュータが買えればいいという時代は終わった。今はコンピュータで何ができるのかを知りたいんです』
これです。これに対して的確なソリューションを的確なタイミングで提供、提案すること、これですね。この感覚を以って、伝えるテクニックについては、それこそアップルの広告展開に見られるテクニックだと思いますが、まずはイノベーションと呼ばれる考え方を徹底することだと思う。テクニックはあくまでも「考え方」というベースの上に載るもの。「それだけ」では成り立たないもの、なんだよ。
さて、「イノベーション」ですが、これはまさにテクニックや教科書で到達できるものではなく。常にアンテナを張りめぐらせ、興味の範囲を広げて、好奇心を持つこと。そして焦点がしぼれたら、そこに対して一心不乱に集中すること、だろうと思います。「イノベーション」を成し遂げた経験が自分にはありませんので、なんともいえませんが、ジョブズやこの本にでてくる事例を読んでも、尊敬する自分の周りの先生に接しても、これらの「熱さ」「真剣さ」は伝わってきます。
以前誰かから、「イノベーション=ふたつの相反する課題を同時に達成すること」と聞きました。そりゃあ簡単なことではないですよね。でもだからこそチャレンジする価値もある。本と講演と、ダブルで叩き込まれました。「熱い」気持ちで取り組む。なんらかのアウトプットをする。小さなことから、できることからはじめていこう。どんなイノベーションだって最初はそんな「小さな」ことだったのだろうしね。


【ことば】イノベーションが目的とするのはクールな製品や...技術をつくることではなく、人々を幸せにすることだ...

iPhoneの開発も、iPadも、ザッポスも、すべてこの考え方が根底にあるんだろうね。そして「誰かを笑顔にする」目標を目標を持って作る、って、すべての人(製品を作る人も)を幸せにする。それを読んだだけの人だって幸せになれる。これだね。これに向けて真剣に取り組むこと。

スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則

2011/06/24

小宮さんは「いつもの」がいいですねー

成功する上司
成功する上司
  • 発売日: 2006/03/30
『成功する上司』小宮一慶⑩
[15/118]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

小宮さんの本も10冊目。確か著者ご本人が「100冊」の執筆を目標にされていたかと思うので、1割は読んでいる、ということですねー。経営コンサルタントをされていて、コンサルタント故の「距離感」は感じることもあるんだけど、ビジネスにおける一番大事なことは「お客様」であって、正しいことをしていればお金(収益、利益)は後からついてくる、っていう考えをお持ちの方(だと信じる)なので、その姿勢が貫かれている著作は、結構面白い、というのがイメージです。その軸がぶれないので、テクニック教えます的なテーマでも、他の同様の本よりも印象に残ります。
さて、本書ですが、もちろんその「軸」はぶれていないのですが、「物語」という構成になっています。買収先の事業部長に着任した40歳の「できるタイプ」が、本籍である企業との「風土の違い」に苦しみながら、少しずつ、社員を社風を変えていく、というストーリー。 要所要所に「解説」も入っています。が...
おもしろくない。読みものとしておもしろくないんだよなあ。「あの」小宮さんが、なぜこのような形態の本をお書きになったのかもわからない。よほど、従来の「ビジネス書」のタイプのほうが読みやすいです。入りやすいし、残りやすい。テーマはチームビルディングであったり、仕事に対する姿勢であったり、モチベーションであったり、と自分にも近しいものなのですが、「主人公」が悩み、相談し、失敗しながら、時に起こる事件も乗り越えて...という話なのですが、「入って」きません。なんでなんだろう?著者は「誰に」向けてこの本をお書きになったのか、そこが不明瞭なのかも。ありえないと思いますが、「もしドラ」的な発想だとしたら...万が一そうだったら方向違いですね。
小宮さんの本に期待するのはそこではありません。よく言われているような時間管理だったり、リーダー論だったりも、小宮さんが「お客様第一」で自らの言葉で語られるから、読んでいる自分に入ってくるんですよね。そして自分に「置き換え」てみようという気持ちになれる。残念ですが、物語の主人公を介してしまうと、主人公に対して「置き換え」という気持ちにはなれませんでした。
すでに(良くも悪くも)「形」ができている組織に、それも「上」から入っていくのは、かなりのエネルギー。そしてそこを「変える」ためには、相当のパワーが必要です。本書のテーマにあるような、自分を認めてくれない、考えを浸透させたい、部下が自発的に動かない、等々、非常に身近なテーマとして、自分もつい最近に経験したことです。本書の結論の一部でもありますけれど、これには「自分が真摯に実行する、継続する」ことが一番大切ですね。上司として認められたい、とか本質からずれたものを見据えると失敗するんでしょうね。中で紹介されたいた『独裁すれども独断せず』=衆知を集めて情報を得て決断し(独断せず)、決断した後は徹底して実行する(独裁)、これ、大事ですねえ。

【ことば】...『情報』という言葉は『情けに報いる』と書く...

営業の心得という点で出てきた言葉ですが、お客様の信頼を得てお客様の情報を得る。それに基づいてお客様に良い情報を提供する、という内容です。つまり、信頼をベースにしていただいた「情け」に「報いる」ことが重要。逆の流れもありますね。「情報」は一方通行ではダメなのです。

成功する上司

2011/06/22

もやもや感が抜けない...

『遠足型消費の時代』中沢明子、古市憲寿
[14/117]Libary
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

日常生活から地続きの「非日常」へ、世間に対する意識から限られたコミュニティへの意識へ。そんな意識の変化、それに伴う消費行動の変化を、「海外旅行型」に対して、「遠足型」と称している。その中で、コストコやルクエの成功例を引き合いに、「キラキラ」をキーワードに、デフレ時代のマーケティングを語る...というのが本書の内容。
出だしの、「これをしらない方は『お父さん』と呼びます」で、今(?)流行の商品、サービスを10個あげているが、自分は2つしか知らなかった...一応仕事では「マーケティング」を意識しているつもりでしたが、見ているはずなのに「見ていない」ものがたくさんあるんですね...まあ、意識のどこかでは、「ディーン&デルーカ」なんて知らなくても別にいいやっ、って思ってしまっているんですけれど(←これが、「お父さん」である証明ですかね)。
著者自身の優しさから、「今はわからなくてもいいんですよ。最後まで読めばわかりますから」って繰り返し説明いただいた「きらきら」ですが、これが現代の消費、というか「売れている」大きな要因であるということです。これが何か?っていうのは、なんとなくはつかめるんだけど、前から意識はあったんだけど、読み終わっても「もやもや」は残ったままです、残念ながら...それを持っていることの優位性?それが自分もものであることの優越感?それを知っていることの特異性?どれもあてはなるようで正解がわかりません。確かに、価格でも、費用対効果でも、デザインだけでもない、「何か」が、売れているものに共通する何かがあるようです。精神的なものを持ち出すのは(マーケティングに携わる者としては)反則かもしれませんが、その商品、サービスを世に送り出す関係者全員の「思い」なような気がします...(「全員」というところが自分なりのこだわりです)それを言っては...ってありますけれどね。
「デフレ時代だから売れない」というのは、売れない理由を「外」に置換しているだけで、そこから発展するきっかけがない、というのは著者に同意です。売れているものは現実にあるし、景気で売れるんだったら、自分たちの存在の意味がありません。「共感」というキーワードも、なんとなくは同意ですが、これは深い言葉で、また誰もが理解しているが形にするには...という点が苦労しているポイントかと思います。これを越えられないと、だよねえ。
それらの共感できるキーワードは読みとれたんですが、というか、これまでもアタマの中には入っていた。これを整理しなきゃいけないし、整理した後は形にしていくことが必要なんだけど、本書は、その「整理」のきっかけ、というよりは、「マーケットはこうなんだよ」っていう段階のものであるようです。一応わかってはいるつもりのことでした。そこから先、なんだよねー、ヒントが欲しいのは。って、本の中でそれを求めても無理があるんでしょうなあ。

【ことば】「共感マーケティング」というと...すべての人の「共感」を尊重するイメージを思い浮かべてしまいますが、それは違います。...重要なのは、いかに「感度の良い人」を囲い込めるかという点...

これは「やられた」感です。「共感」キーワードを意識すると結果「最大公約数」になって、結局焦点が絞り込めない。なんど同じことをしたことか....一部の「感度の良い人」の情報に、そのフォロワーが後追いで共感する。これは盲点だったかも。

遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか? (朝日新書)

2011/06/21

異性のことはハードルが高い...

「女性を活かす」会社の法則
「女性を活かす」会社の法則
  • 発売日: 2007/06
『「女性を活かす」会社の法則』植田寿乃
[13/116]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

幸か不幸か、これまで就業した職場において、いわゆる「男女格差」を感じたことはない。男性である自分が感じていないだけかもしれないけれども、比較的女性が多い職場が多いので(半々くらい)、特にそういう意識もしていなかった。世間には、「古い」企業が代表されるように(かもしれないが)いわゆる「男社会」がまかり通っているような...正直、その「体質」を前提に書かれた本書の内容に対して、個人的には、「まだこんなことを言っている本があるんだ...」くらいの感覚。
著者は、性差を理由にした差別をなくすために、会社の風土も含めて、トップ、管理職、そして女性社員自信も意識を変えなくてはならない、という。一度そのような風土になってしまったら、変えるのは大変なんだろうなあ。じゃあ、自分がこれまで働いてきた職場はなぜそのような風土がなかったんだろう...先鋭的なトップだったから?違うなあ、特にそんな気はしない。少人数の会社が多かったせいかもしれないけれど、社会の流れに沿って自然にそうなった、あるいは、それを超える(無視する)ような強権的な主導者が存在しなかったから、なのかもしれない。でも、それでいいんだと思う。
多少なりとも、「男は会社、女は家庭」という意識は自分にもある。それは自分がそういう家に生まれて育ったことに大きな要因があるかと思う。でも、そんな自分でも、仕事ができる人は、男女の差を意識して「すごい」と思ったことはない。「女性にしてはできるね」なんて意識はないんだよね。結局は、性別よりも「人として」どうか、って考えるから。きっとそうなんだよね。そういう意識って「昔の人」にはなかったんだろうかね。
制度がどうとか、メンターあるいはロールモデルが必要だとか、少々「女性を活かす」とは別の視点があって、自分が求めているものとは違う方向だった。男女の区別なく仕事ができる人はできる、仕事をしたい人はする、という「王道」を説きながら、「でも男性の部下と同じように扱ってはならぬ」ということろで、ちょっと引いてしまいました。もちろん、結婚、出産によって多くの役割を担う女性という立場はあるけれども、男性だって、結婚、子ども、という局面は同じ。そりゃあ、「力仕事」という点では異なるだろうけれども、少なくとも職場で仕事をするにあたっての「責任」という点では男女を区別するようなリーダーにはなりたいと思わない。女性に言ってはならないことは、男性にだって同じ。
そのあたりが、「あー、この人も女性だしなあ」って思ってしまう、という悪循環。でも男性が女性を語っても、今度は女性側から「わかってないなあ」って思われるだろうしね。この手の本は難しいね。単に「チームビルディング」の意識で、男女隔てなく接する、これが一番いいのかもしれない。

【ことば】...女性を活かす組織で成功している...女性を活かすといった取り組みを意識する必要もなくなり、当たり前のごとく女性も男性も活き活き働き続ける職場になったときこそ...

まさしくその通りだと思います。せっかく冒頭でこんなにいい言葉を発してくれているだけに、本文を読み進めていく中で、「女性は特別」的な内容が散見されたのが、どうにも....

「女性を活かす」会社の法則

2011/06/20

「教育」の本質ですね。真似してみたい。




『親と子の「よのなか」科』藤原和博②三宅一也
[12/115]BookOff
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K-amazon ★★★★★

学校教育の「ありかた」に一石を投じた藤原さんの主宰する「よのなかnet」に現れた「ミムラー」なる人物。彼が(金融のビジネスマンらしい)家庭において、小学生のお子様と食卓でなされている「会話」で成り立っています。
これが面白い!お子さんたちの「するどい」質問、それらに対応する、あるいはそれらを引き出すミムラーさん。何が話題かといえば、
「ユニクロはなぜ安いのか」とか
「大江戸線はなぜ小さいのか」とか
「日本で農業に従事する人がいなくなったらどうなるか」とか。
学校での授業ではなく、あるいはそこで「学習」した内容について、現実の社会における「なぜ」「どうしたら」という会話がある。学校の授業、すなわち「 記憶」だけではなく、それを実のあるものにする、そんな「家庭学習」である。社会で生きる父親として、学校の授業でならうことが、社会でどういった意味をなすものなのか、そんな「本質」をつく会話が並ぶ。何が素晴らしいかって、父親が子供に真摯に対峙していること。上から下への「勉強せいっ」って感じでもなく、子どもが本当は知りたがっている「社会」を真剣に教育している感じだ。受験勉強にはただ単なる「記憶」が役立つかもしれないが、「教育」ってこういうことをいうんじゃないか、って心底考えた。
ミムラーさんは「子どもたちと一緒に考える」と書いている。これって大事だよなあ。できていないよなあ。「勉強」ってこういうことなんだよね。もちろん、ベースとしての基礎知識は学校で学ぶことを「記憶」することで養われる部分はある。これも大事。だけどそれを使う場面がないと、意味がない、というか、もったいない。何のために勉強するのか、ってことだよね。いい学校に入るため、ではない、そうだよね。
この本を読み終わる前に、前半で紹介されていた会話を、もう我が家の食卓で実行してみました。「新聞が安い理由」を。さらに後半で記載されていたものも来週末、使わせてもらおうかと。自分にもプラスになるよね、絶対。小学生のお子様がいるお父様には絶対にお勧めです。こっそり使わしてもらうことをお勧めします。これが「教育」だから。
「なぜそうなるのか」「どうしたらよいか」「どうしてそうしたらよいと考えるか」子どもだけではないことに気がついた。職場でもそうかもしれないね。「なぜ」トヨタみたいだけど、これが本質かもしれない。自分が今(やっと)気づいたことを、将来のある人に伝えていこう。子どもも、社会で出会った仲間も、自分にとって大事な人たちだからね。

【ことば】...乗せる側が乗ってないと相手も乗ってこないってこと。子供との会話も同じ...

子どもと会話するときは「真剣勝負」でなければならない、ってこと。投げかけるこちらの目がキラキラ輝いてないと、引き込まれません。真摯に対峙すること。これが最も大事なポイントですね。

親と子の[よのなか]科 ちくま新書

2011/06/17

「今」の王さんの優しい言葉が詰まってます

野球にときめいて―王貞治、半生を語る
野球にときめいて―王貞治、半生を語る
  • 発売日: 2011/03
『野球ときめいて』王貞治
[11/114]bk1
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K-amazon ★★★★☆

いろいろあって今は違うけれど、子供のころは当然のように巨人ファンだった。約40年前には、今では考えにくいほど、「巨人」の情報しかなかったんですね。マスメディアも「巨人かそれに付随するもの」しか情報発信しなかったしね。こと野球に関しては、父親の影響を受けやすいんだけど、我が家にも、「王貞治物語」的な本がありました。読みました。子供ごころにも偉大な人だなあって思っていたけれども、そんな王さんが「王選手」から「王監督」になって、ある意味批判の対象になってしまった。巨人ブランドはすでに落日のものとなりつつあったけれども、それでも福岡への「転出」は、それなりの衝撃だった。本書にも記載があるけれども、ホークスが負け続けて心ない一部のファンから卵が投げつけられたりとか、選手時代の「雲の上」の存在だった時代を知る人間には、信じられない事態もあった。
世代的に、長嶋さんの選手時代の記憶が薄く、「ON」よりは「OH」、むしろ、「赤ヘル」時代に少年期を過ごしてきたわけだが、高校の先輩でもあり、球団の、というよりも王さん個人に対する思い入れが大きい。それは今でも変わらない。ホームランの世界記録更新や、国民栄誉賞など記録に対することもあるが、いちばん記憶に残るのは、王選手が怪我による欠場あけにホームランを打ったのをTBSラジオで聞いていたこと。「ここで打ったらすごいよなあ」と思っていた瞬間にラジオアナの絶叫が響いたことを鮮明に思い出す。
本書の中でご自身でも触れているが、長嶋さんとはタイプが異なる。どちらがどう、ということはないよね。王さんはとことんまで準備、練習をして、結果を出す人。長嶋さんももちろん見えないところでの努力があり「天性」だけではないはずだけれど、王さんは、さらに努力を重ねて重ねて...というタイプと思える。
本書では、王さんはその「努力」については触れられていないけれど、想像を絶するものがあるはず。それを乗り越えて、且つ結果も出してきた人間だからこそ、一見淡々と語っている文章にも重みがある。「プロ」は、そんな自分が重ねてきた努力を全面に出したりしないもの。特にプロ野球選手であることもあって、結果でそれを実証するしかない世界だからね。
野球を始めた少年時代から選手として「一本足打法」で開眼し、巨人の監督、ホークスの監督、WBC、そして勇退、それを今の王さんの言葉でつづられています。語られている場面を思い出すことができます。私たち野球ファンにとっての思い出場面集みたいなつくりで、王さんは多くを語っていません。が、その裏の深みを感じ取ることができますね。同じ時代を生きることができたこと、とても幸せなことだと思います。
王さんに関する言葉。 
「野球界に尊敬できる人はほとんどいない、王さんはそのほとんどいないウチの一人。本当にすごい人なんだ」監督勇退に際して。イチロー。
「 報われない努力があるとするならば、それはまだ努力とはいえない」
怪我が続いた小久保に王監督がかけた言葉。
かっこいい!
【ことば】...感謝の気持ちで生きなくてはいけない、自分を支えてくれた大勢の人たちのことを忘れてはいけない...
王さんがお母様から言われ続け、そしてご自身で実践し続けている言葉です。実際に偉大な記録保持者にして、人として尊敬できる王さんは、その精神を持ち続けていることが大きな要因なのでしょう。肝に銘じます。


野球にときめいて―王貞治、半生を語る

2011/06/16

「人」を知ること、から(改めて)始めましょう

仕事ができる人に変わる41の習慣 朝イチでメールは読むな! (朝日新書)
仕事ができる人に変わる41の習慣 朝イチでメールは読むな! (朝日新書)
  • 発売日: 2010/03/12
  • 売上ランキング: 11800
『朝イチでメールは読むな』酒巻久
[10/113]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

副題(本題?)に、『仕事ができる人に変わる41の習慣』とあります。伝達手段としてのメールをどう使うか、っていうのは本筋の一部であって、内容は「変わる41の習慣」について、です。キヤノン、キヤノン電子で経営に携わっている著者の仕事術。(拙い)経験値から「~するな」系のタイトルが付いている本はつならないことが多いのだけれど、この本は違いましたね。
キヤノンという機械系の会社ではありますけれど(それゆえ、なのかも)、「仕事は『人を知ること』」を主軸に置きます。効率改善も、取引先との関係(交渉)も、すべて基本が「人」というところにあるので、技術、テクニックでどうこう、という話ではなくて、「人との関係性」を改善することに主眼を置きます。なので、全編にわたり軸が貫かれていて、ぶれることなく、読みやすい。アタマに入りやすいですね。
多少は、「処世術」的なテーマもありますが、「困っている人は助ける、人を裏切らない、手柄を独り占めにしない」という基本がベースにありますので、安心します。「この人は結局何を言いたいのだろう」ということがありません。
そして、この世代(の成功者)に多いことですが、「ワークライフバランス」否定派です。これは自分も同意するところなのですが、特に職責があがるにつれて、「仕事」の度合いを増やすべし、すなわち「ワークライフアンバランス」を推奨しています。現実的にはそうだと思う。バランスを取っている若い人にも違和感を感じるし、(自分の)バランスを重視する上司にも良いイメージは結ばない。これが日本人として生まれ持った感覚なのかもしれないけれど、それはそれで悪いことではないと思うよ。具体的には、「上司は一番早く来て一番遅く帰る」など、高いハードルはありますけれどね...
あと、読書の大事さ、という点ももちろん同意です。付け加えるとすれば、読書も「漢方」のように継続することでジワジワ効いてくる、っていうのが自分の実感ですけれどね。著者が成長のための一番の要素として挙げている「素直さ」について、要は、今の自分に満足しない、という感覚を持てば、読書を始め、いろいろなアンテナを常に尖らせておくことで、有益な情報が得られ、その「有益さ」に気づく力も養われるものだと思う。そういう意味での「読書」ですね。好奇心や、人とのつながり、これも「素直さ」がポイントになってくる。ここから「人を知る」ことでビジネスにも「漢方的に」効いてくるんだろうなあ。
実現できるかわからないけれども、職場でトライしてみたいヒントも得られました。ご勤務されている企業から、多少「古い」組織論の記述も見られますが、「できる人に変わる」ヒントは見つけれらるはずです。何より大切なのは、「人」ですね。これが揺るがない根本。

【ことば】一番の理想は「権力(ポスト)ではなく権威(実力)で仕事ができる人」になることであり...

自分は「権力」に依存してはいないが(つもりはないが)、努力しないとけして手に入らない「実力」をつけない限り、部下だって上司だって、お客様だって、ついてきてくれません。精進。

仕事ができる人に変わる41の習慣 朝イチでメールは読むな! (朝日新書)

2011/06/14

科学っておもしろいね。科学者もおもしろい。

『働かないアリに意義がある』長谷川英祐
[9/112]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

話題になっていたけれどもなかなか入手できなかった本。タイトルから(勝手に)創造して、「働かない」=効率を求めない働き方の意義、というビジネス寄りなものを期待しつつ...内容は、ほぼ「そのまんま」、アリの生態についての科学読み物でした。けれど、おもしろい。アリ=働き者のイメージがあるけれども(幼少時の刷り込みって恐ろしい)、実は働かない働きアリが存在するという。表面的な知識で、「そのような種は絶滅に至るのでは」と考えてしまうが、さにあらず。科学者は「反応閾値」という言葉を使っているが、刺激に対して反応する段階が異なる種が混在するコロニーは長く継続するそうである。つまり幼虫の世話など、すぐに対応しなければいけない行動を起こす者、それには刺激を感じずにコロニーの補修に行動を起こす者、それぞれが反応する場面が異なる、そしてそれゆえに、普段は「働かない」アリがいざという時の「リリーフ」として存在する。ハチが蜜を見つけた時に、そのターゲットの容量によって、動員する集団数が変わってくる。これにも「働かない」意義が見いだせる。獲物が少ない時は少ない集団で(その時は「働かない」部隊が存在する)、大量にあるときや、先鋭部隊が疲労している時は、「リリーフ」が投入される...一見「働かない」非効率がクローズアップされそうだが、この仕組みにより、「全体効率」が保たれるわけだね。すごいねー。生物学っておもしろい。
一時期著者たちの研究に対して、「この人たちってひまだよね」的なコメントがあったらしい。著者はそれを見て「笑ってしまった」ということだが、ひまそうに見えて、その実、結構大事なことをしているのかもしれないよ。「働かない」とは言わないけれど、「今」は無駄に思えるようなことでも、どこかで何かにつながっている可能性はある、というか少なくないんじゃないかな。つまりは「無駄なことはひとつもない」ということだよね。
意識的に行動しているわけでもないし、女王は存在しても、階層社会ではないアリ、ハチが、「社会」を構成して、そして維持し続けている、というのは、何かそこにあるんだと思う。人間のように「個」の意味合いは強くないのかもしれないけれど、コロニーあるいは種全体の最適化がなされてきているんだろう。「進化」しているわけだよね。生殖についても「遺伝子を次世代に残す」という原始的な(人間の見方ですけれど)意味合いが強く反映されているけれども、速度は別として、彼らも「強い」種を残そうとし、そのシステムが続いているわけなので、いつか遠い未来に、アリが進化しているのかもしれないね。
当初の目論見「ビジネスに活かす」は、読んでいくうちにどうでもよくなりました。生物学を真剣に熱く極めようとしている著者が、ある意味うらやましい。学者さんなのでもちろん文書は「先生」っぽいですけれど、少年のように「熱い」です。熱さを感じました。

【ことば】...人間が動物と異なる点は無駄に意味を見出し、それを楽しめるところにあるのではないでしょうか。

「ひまな人たち」とコメントされた科学者が言うことだけに重みがあります。無駄ってなんだろう。効率ってなんだろう。あまりにも「効率」重視の歩き方って、つかれるよね。余力のある進み方、これがポイントなんだろうと思う。

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

2011/06/13

重い...けれど考える点がたくさんあります

あきらめない (集英社文庫)
あきらめない (集英社文庫)
  • 発売日: 2006/05/19
『あきらめない』鎌田實
[8/111]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

余命わずか、と宣告された方々が「あきらめない」姿勢で、「生」を全うする姿、そのご本人のみならず、周りでサポートする方々の姿勢、医療の本質を追究する著者率いる病院の先生方...けして軽い話題ではありません。自分にとっても、自分自身がその「対象年齢」に入りつつあることや、自分の両親に対して、「そうなったら」どうするか、ということが、現実感を伴ってきています。そんな中、非常に考えさせられる内容でした。
もちろんタイトルにあるように「あきらめない」姿勢は必要だと思います。が、 治療を施す医者側と、頼るしかない患者側での圧倒的な情報、知識の差もあります。これまでは「苦しむくらいなら...」という考えも少なからず持ってはいましたが、この考え方は結構「ヒトゴト」です。自分が、あるいは自分の周りにそういう事態が発生した時に、はたしてその「考え方」を貫けるのか。そもそも貫く必要はあるのか。必ず迎える「死」に対して、どのような姿勢を持ってくべきなのか。答えの出ない質問がアタマの中を埋めます。幸いにも、今のところそういう事態は周りにはありません。が、時間をおいて会う両親に対しては、毎日会う新しい命=子供たちのそれとはまったく違う流れがあることは避けようのない事実です。子供たちに対しては親として、両親に対しては息子として、自分がどのようにあるべきか、ホントに考えます。
いつまでも今のままではない。そんなことはわかっているけれど、いつまでも今のままで「あってほしい」気持ちに負けている自分がいます。時間はそれをいつまでも許しているわけではない、ということが、40を過ぎたあたりから切実に感じる機会が多くなってきました。
ひとつできることは、「今」を大事に生きること。後悔したくないし、後悔させたくない。この本に紹介されているような「あきらめない」姿勢をとれる方々は、それまでの間に、後悔しない生き方をされてきた、あるいはそれに挑戦し続けてきたのでしょう。そのためには、自分一人で生きているわけではないし、周りでサポートしていただける人たちと共に、楽しく、前向きに生きる、このことではないかと思います。そして、大事なことは「後で」ではなくて今行動すること。感謝の気持ちは、やはり「その時」に伝えないといけない、とつくづく...両親に対してもそうですよね。勇気は要るのですが、「言葉で言わなくても」という考え方は、少し脇においておくことにして、伝えたいことは伝えようと思います。
病気とあきらめずに闘う皆さんに共通するのは「愛」かもしれません。著者も「愛」を貫いて、治療にあたっていらっしゃる姿が感じられます。この世に生を受けたイキモノとして、人間としてあるべき姿、それを感じることが大切ですね。

【ことば】...八十歳ぐらいの老ライダーと路上ですれ違った...「まるで少年のようだ」と...声をかけた。老ライダーは答えた。「少年になるまでに八十年もかかってしまった」

めちゃ、かっこいいです。自分の中に「少年」はいるのか?限りなく小さくなってしまっていないか。バイクの趣味はないけれど、八十の時にこんなセリフを言える、そんな人生を送りたい。

あきらめない (集英社文庫)

2011/06/10

AMAZONレビューほどは...

チェンジメーカー
チェンジメーカー
  • 発売日: 2010/02/09
『チェンジメーカー』勝間和代⑩
[7/110]Library
Amazon ★☆☆☆☆
K-amazon ★★★☆☆

勝間さんの本がとうとう10冊目になりました。自分にとっては「あたりはずれ」がある著者なのですが、今度は...?ひとつ言えるのは「読みやすい」という点です。これに関しては「はずれ」は少ない(「無い」わけではないけれど)。
多分メインと思われる主張は、「今の、そしてこれからの社会は、自分で自分を守ることが必要」「社会を少しでもよいものに変えていくのは、政治でも国でもなく、市民ひとりひとりの力」ということ。もはや多くの人が感じていることだけれども、国や政治、制度が市民を守ってくれることは可能性が低いですね。会社もしかり。これは以前の社会から変化=チェンジしたことの大きなポイントだと思われます。それゆえ、自分を高めて自分を守っていかなければいけない。守るには自分を高めることが近道です。これは確か。この主張は同意です。が、その「変えていかなければいけない社会」については意見が異なります。少子化対策や女性の地位向上のために著者が主張する、「サポートすべきは高齢者ではなくて和若い世代」という点や、「総労働時間規制」というのは、疑問符です。自分が「高齢者」に近づいているせいもあるかもしれませんが、そもそもの「高齢者」という定義(60歳は高齢者じゃないよね)の見直し、とか高齢者の生きる場面を充実させることはやっぱり必要で、優先順位がけして低いものではないと思いますよ。あと、労働時間ですが、「長時間労働が少子化の原因のひとつ」という著者の主張もあながち間違いではないと思います。が、自分の経験からしても若い世代は、長時間働いてもよい、というか、長時間はたらくべきだと思っています。「量から質」ということを実感として信じている自分としては、長時間働いていた経験が、あらゆる場面で役に立っています。技術や仕事術だけではなく、考え方、とかも。もちろん著者は「長時間=悪」ということではなく、選択できる環境を、という主旨で説いているのだと思いますけれどね。
一番不自然だったのは、このように「自分」や「社会」を変える、という、前向きなテーマの間に、「婚活必勝法」なるものが挟まっていること。勝間さんがたまに文章にする「女」というテーマはあまり好きではないなあ。特にこの本のこの内容の中には「必勝法」は不要でした。それは自分が男だから、ではないと思うよ。
全体としては、誰に向けた本なのかなあ、って、なんだか「薄い」感じがする内容でしたが、著者の本のポイントである「読みやすさ」はさすがですね。AMAZONの★はあまりに極端すぎ。そんなにひどくはありません。多少、「子ども手当は私が主張したからだよ」的なところが多いのが気になりましたが...あと、勝間さんの本は、ほぼ必ずご自身の他の著作の引用、紹介があるんだけど、この本にはあまり出てこなかった...と思っていたら、「あとがき」で登場しました。
さすが「クロスセル」を狙いますね。通販企業に勤める身として参考にします。

【ことば】自分だけが楽になればいいとは考えず、利他の精神を持って、「チーム化」「見える化」を進めましょう。

仕事におけるチームビルディングのコツですね。自分がやった方が早い、という考えは捨てなさい、というのは、その通りだと思います。利他の精神、これですね。

チェンジメーカー

2011/06/09

よく見かけるリーダー論でした...

『「依存する人」を「変化を起こす人」にどう育てるか』内田和俊
[6/109]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

幸いなことに今、周りに「依存する人」はいないけれども、人の上に立つ、という立場になると、悩むのがこのタイトルにあるような課題。自分がかつてはどうであったかを棚にあげて(上げないと語れない)、「なんでできないのか」って思うことは少なからず誰にでもあることですね。
本書では、まずタイプ別に分類して、それぞれのカテゴリーに属する人に対してのアプローチ手法を展開します。その中のひとつ「自分でやった方が早い」タイプはまさに自分でしたね。ほんの数年前がそんな感じでした。それゆえにイライラを自分の中に積み込んだり、という経験も。でも今はほぼゼロ。その変化のきっかけはなんだったのだろう?改めて思い返してみると、「自分の次」のリーダーを育てようと思って、その人に「自分でやった方が...」という考え方を改めなさい、という指示をしていた頃から、のように思います。つまりは、他人が「変わろう」とする姿を見て自分が教えられた、というか...自分がやってしまっては(出せたとしても)短期的な成果しかない。これを中長期で考えたら...という高尚な(あるいは、「自分ならできる」という過信に基づいたうぬぼれ)思想は、「あとづけ」ですね。この考えのために行動した、ってことはありません。
自分はそれなりに本を読むほうだと思います。自己啓発やチームビルディングなどもよく読みますが、「変化」へのインパクトは、やっぱり「現場」なんですね。だからこの手の本は、「事後」のほうが、ビビッドに響きます。おそらくこの手の課題に直面しているその時は、「うわべ」だけのモノマネになってしまうことが多い。
なので、この本はとてもベーシックな、そして 本質的なことが書かれてはいますが、(今の)自分にとっては、新しい発見、というよりは「再確認」というレベルでございました。「ゴールを設定する」とか「話の聞き方」とか、大事なことなんだけど、本はあくまできっかけにすぎず、本質的なことを現場で「体感」しない限り、長続きはしません。コミュニケーションって、テクニックの対局にあるもの、ですよね。
...ってわかっていても、その実「わかっているつもり」であることも多くて、やはりこの種の本に手が伸びてしまう自分もいます。どこかで「課題解決」してない部分があるんでしょうね...でも、「解決」はそう簡単ではないし、未来永劫の解決策なんてありえない。日々「変化」するわけですもんね。
この本から得た一番教訓は、「考えるより決める」ということ。「考える」が先に来ると、できない言い訳を考えてしまうことにもなりかねない。「決める」ことから初めて、それに対して「考える」。できているようで、「考える」ことから始めてしまいがちです。気をつけないと、ホントにそうですよね。考えたって何も(その場では)出てこない、ってこと、結構あります。

【ことば】優れたリーダーに共通していることは、当たり前のことを当たり前につづけて、それを習慣化していること...

最近特に意識している「継続」に関する言葉です。「始める」こともエネルギーが必要なことですけど、「続ける」ことはさらに大事なこと。別の側面から見れば「続けている」人、施策には、やはり「理由」があるってことですね。これからも大事にしたい言葉です。

「依存する人」を「変化を起こす人」にどう育てるか

2011/06/07

この本が「記憶に残」りません...

『すべては記憶に残るサービスのために』金井豊
[5/108]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

数年前から気になっていた本で、「ほしいものリスト」に入れてから随分と時間が経ってしまった。仕事としてももちろん、消費者としても「美容業界」って接点(も興味も)ないんだけど、タイトルがふるってるじゃないですか!通信販売といえど、「サービス」が差別化要因になっている時代(サービス「だけ」、という時代も迫っている)に、ヒントになることは必ずあるはず。異業種であっても第一人者の話に触れるのは貴重な体験だもんね。
ヘアサロン「RITZ」を営む著者の理念は、「技術」「センス」そして、「対人関係能力」。特にこの最後の「条件」を付け加えたのが眼力です。確かに言われてみれば、「技術」「センス」を持った者が、「接客」をする世界、あまり他にないかもしれない。受付の対応や、技術向上のための社内での勉強会、技術だけではなくヒトとして一回り大きくなるための知識の増強、お客様との「1対1対応」。どれも学ぶところは多いです。そしてその、一見短期的な利益には結びつかないかもしれないことをじっくりと、チームのみんなにジワジワと浸透させていったリーダーシップ。書かれていない努力や我慢もされたことと思います。素敵です。かっこいいですねー。
ただ...美容業界では珍しい(かった?)のだとは思いますが、これらは「誇りにしたい会社」では、結構やっている話であったりする。業種は違えど、真剣にお客様に向き合っている会社、経営者、スタッフがいることにすでに感動してしまっている自分には、それ以上のものは見いだせなかった。この手の本にありがちだけど、どうしても著者自身のプロフィール、お店の紹介にも見えてしまう部分はある(これはどちらかといえば読み手の問題かも、だけど)し、業界の特性上、「技術」「センス」の比重が大木のかなあって感じも否めない。
自分のところを棚に上げて、言うのも恥ずかしいのだけれど、「お客さまへ視点が向いている『正しい』会社」のひとつ、という印象にすぎませんでした。7年前の本なので、この時点からこの精神を続けていらっしゃれば、さらに素敵な場所になっていることと存じます。確かに「ブランディング」=価値を伝え続ける、って大事だよね。それを「再確認」させてもらいました。

【ことば】...これからのリッツがより一層アウトプットしていくものは、お客様の「目に見えないもの」だ。

「目に見えないもの」=サービスをする側の、夢、目的、思想、ライフスタイル(?)ってこと。この意識って大事かもしれない。お客様との位置関係が「上下」から「左右」になっている今、必要なことはこちら側の「正直な」姿、なのかも。


すべては記憶に残るサービスのために―最先端ヘアサロン「RITZ」がなにをやっているか

2011/06/06

「行儀よく」すべきは...私たち、大人です。

行儀よくしろ。 (ちくま新書)
行儀よくしろ。 (ちくま新書)
  • 発売日: 2003/07
『行儀よくしろ。』清水義範②
[4/107]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

いわゆる「教育論」であるが、巷にあふれている内容ではない。「教育論」としてありがちなのは、「ゆとり教育」への批判であるとか、教師の「質の低下」とか、専門家の方々が口を合わせて批判している場面によく出くわすけれど、著者のいう、「本当にゆとり教育が原因ですか?」とか「教育を学校に投げっぱなしではないですか?」というテーマは、学校に行く世代の子供を持つ親としても、非常にしっくりくる話である。国の教育方針が...とか言われても、だからどうする、っていう議論がほとんど見られず、専門家が持論を展開するだけ(教育の分野だけではなく、「専門家」はこうあるべし、みたいな全体的な風潮は、ある。悲しいけれど)。本来自分の子を「育てる」のは学校に依存するものではない、家庭での教育(学問だけではない)は学校でのそれよりも上位概念ですらある、という気持ちも持っている。
前半は、「こどもを育てる」ということに対する本質的なところを説き、後半は、より上位概念である「社会、文化が子供を育てる」と広がっていく。範囲が広くなるにつれ、抽象的なイメージになってしまうけれども、「社会、文化」という重要性は、読んでいてそれに気付かされたところも多い。そしてそれら=社会、文化を「美しく」していくのは、そう、「大人」の責任である。本を読まない親が、子供が本を読まないことに悩む、という事例に象徴されるように、子供は大人たちが作った社会の中で育っていく。大人が本気で、真剣に取り組んでいる姿にこそ、教育の本質があるわけだ。
これはマスメディアによる情報露出だけにとどまらない。もちろん、政治家の無責任な言動や、凶悪犯罪といった「よろしくない」姿が露出されることはマイナスであるけれども、メディアの報道姿勢も問われるわけだよね。そして何より一番近くで接する大人である、親、学校の先生。自分たちの姿勢が、子供たちに大きな、深い影響を及ぼすことを改めて自覚する必要はある。
なによりも、子供たちにどうなって欲しいのか。愛情をもって接すること。彼らのことを真剣に考えること。それにあたっては自分たちの行動に責任と自信を持つこと。あたりまえだけど、できていないこと、あるんだなあ...
著者の「読ませる」文章は、見事にハマりました。ビンビンと伝わってきます。ちょうど読んでいるタイミングと学校の運動会が重なりましたが、子供たちの真剣なまなざしを近くで感じて、「大人」として何をすべきか、どう行動すべきか、考える機会となりました。何歳であろうと子供がいる家庭の方、一読をお勧めします。

【ことば】教育とは、次世代に文化を伝えることだと思う...伝えるべき我々の文化について...ちゃんと守れているのだろうか...

敬語の使い方、とか電車内での振る舞いとか...これも「文化」です。先人達が作り上げてきた文化、その文化の本質(なぜ大切にすべきなのか)を取らまえて、変えてはならないところ、変えるべきところを見極めたい。大事な「次世代」だから。

行儀よくしろ。 (ちくま新書)

2011/06/03

シンプルで...いまひとつシックリきません...

「原因」と「結果」の法則
「原因」と「結果」の法則
  • 発売日: 2003/04
『原因と結果の法則』ジェームス・アレン
[3/106]RakutenB
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

1902年に書かれ、その後のすべての自己啓発書の原典とも言われる書。バイブルとしてとらえている読者も相当いるような...自分にとってはそれがつかみきれませんでした。本書で語られていることは、
「すべての自分に起きている事項は(環境も含めて)自分の内側からの『思い』に起因するものである。正しい思いがあれば、環境もそれに引き寄せられる」
ということで、それをいろいろな事柄-「成功」とか「健康」とか「幸せ」とか-に当てはめて、成功するには、健康になるためには、幸せになるためには、清く正しい自分でいましょー、ということです。うーん、確かに「原典」っぽい感じではありますね。古い書であることもあるかもしれないけれど、とても読みにくいんですね。オリジナルに忠実に訳していただいているから、であると思うのですが、「通勤読み」ではアタマに入ってこないんですね。あ、人のせいにしては「幸せ」は引き寄せられないんでしたか...
「穏やかな心」これが必要です。一時的な成功を手にしても、不幸せである人間はたくさんいます。彼らは「穏やかな心」をもって行動していないから。邪悪な心が入ってしまった時点で、「そういう」結果が導かれます。これは当然のことです。だから、清らかな心を持ちましょう...文字で書いてしまうとちょっと怖い。言われていることは確かにそうなんです。でも、同じようなことを、「邪悪な心を隠して」言う人たちがたくさんいるから。彼ら本人が不幸な結果を導くのは一向に構いませんが...
ちょっと自分の心が未熟なようで、そういううがった見方をどうしてもしてしまいました。それではいけない、ということが書いてあるんですけれどね。その域を乗り越えていかねばならないのでしょう、きっと。40年以上も生きていると、なんとなく「環境」を引き寄せている、と感じる場面に遭遇することは、あります。その時に、「やっぱり、清い心でいたからさ!」って浮かれてはいけないんですよね。「幸せ」を考える、考え続けることかなあ、ってシンプルに、自分なりにまとめてみました。
レビューに書かれているような「開眼」には至りませんでした。これも多く書かれているようですが、時間が経ってから読み返すと「味」が出てくるんでしょうかね。今の時点ではそれに期待をしておきます。

【ことば】私たちの思いは、目標と勇敢に結びついたとき、創造のパワーになります。

目標を達成するには、「自分はそれを達成できる」という信念が必要。その前提として、思いと目標を結びつけることが必要です...よく目にするフレーズですが、事物的なものにせよ精神的なものにせよ、「夢」を持つことが大事ですね。揺るがない「夢」を。

「原因」と「結果」の法則

2011/06/02

自分の周りにいる「IT系」とは違うねー

ちょいデキ! (文春新書)
ちょいデキ! (文春新書)
  • 発売日: 2007/09
『ちょいデキ!』青野慶久
[2/105]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

読み始めるまで知らなかったけど、グループウェア「サイボーズ」の創業者。「デキるビジネスマンにー」なんていう始まり方だったので、「グループウェアを使って云々」という話かと思ったが、さにあらず。堅苦しい話はなく、まさに「ちょっと」工夫することによって、できることがある、というTIP集です。
著者ご本人が、大手企業から独立され、「新しいもの」を探して生きてきたようなので、もともとの素養もあるのだと思うけれど、「視点」がすぐれているなあ、という感想。確かに言われてみれば「そりゃそう」というのもあるんだけど、そもそも「工夫をしてみよう」という発想がなければ生まれてこない。そして次に「やってみよう」ということ。その両者を持ち合わせている人って、いるようでいないんだよね。これって意識してできることじゃないかもしれないけれど、シンプルにいえば「あきらめない」ことなのかもしれないね。
「(できないのが)アタリマエ」と思っていると前に進めない。「○○をしなきゃいけない!」は本当にしなければいけないことなのか。とか、当然と思えることを、ちょっとだけ視点を変えることも必要なのかもしれない。それくらいなら(素養がなくったって)できるかもしれない。面倒くさがりやなので、楽をしようと思い...って著者がいうのは完全な謙遜だと思う。さらり、とこの本で紹介されていることは、おそらく考え抜いた結果見出したことも含まれているだろうし、結果が出せなかったものもあると思いますね。
東証一部上場企業の社長が、しかも若くして上り詰められた方が、けして肩肘をはらず、偉ぶらず、嫌味なく、「ヒント」を紹介してくれる本。著者(あるいは著者の会社)のいう「マーケティング7カ条」のうちのひとつ、「顧客に教えてもらえ」の中で言われている、『(リサーチなどよりも)お客さまの喜ばせ方は、お客さまから教えてもらえばよい』なんてのは秀逸ですね。リサーチを元に、価格や付加価値、売り方を仮定するよりも、ずっと近道だわ。確かに。
この本は、そのタイトルどおり、「ちょい」読みするだけで深読みする必要はないかもですね。正直なところ、サイボーズ自体はあまり好きになれないんだけど(人間味がなくて)、それと著者のキャラクターは別だもんね。この本も「ちょい...」レベルで軽く読み始めてもいいと思います。ただ、ここからヒントを得て、自分なりに工夫して、実行すること、これだけ。

【ことば】モノを作って売ることではなく、モノを作って便利になってもらうのが仕事です。

若い社員への教育姿勢だそうです。本質。これからの企業、そので働く人間に最も必要なことですね。それを「伝える」ことと共に、重要なポイント。

ちょいデキ! (文春新書)

2011/06/01

「学門」的視点から見るとこうなるのね...

『つながり進化論』小川克彦
[1/104]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

ブログ、mixi、Twitter...確かに「時代が変わった」感がある。数年前とは、「インターネット」の位置づけが確実に変わっている。mixi、facebookはキビシイのだが、ブログ、twitterを(ほぼ)毎日自分がやることになろうとは...これらの「ツール」の普及によって、人間関係がどう変わってきたのか、というのが本書のテーマ。タイトルから見て結構面白そう、というか、アップデートな話題、これを違う切り口で切り込んでくれるものと期待。
前半は、電話から始まって通信手段、コミュニケーション手段の「仕組み」の説明なので、これは非常に退屈です。メールがどのような仕組みで送られるか、なんて、一般に「使う」立場からするとあまり有益な情報ではないので...これらはあくまでもツール、ですからね。エンジニアではないので、その仕組みは特段必要はないです。
後半やっと、それらの「一般化」と、コミュニケーションの在り方、というテーマに。「リアル」の世界がベースで後からバーチャルが付加された世代と、生まれた時点からバーチャルが存在する世代の、圧倒的な価値観の相違、これは確かにあるね。自分もTwitterを使うけれど、たとえば「これから乾杯です!」とか、実況中継しているようなつぶやきは全く理解できない。その場を楽しめよっ、って思ってしまうし、なんだかつぶやくためにイベントに参加しているようで、本末転倒のような印象がぬぐえない。これは確かにブログが広まってきた初期にも感じたこと。イベントに参加してもブログにアップするための写真ばかり取っていたりする人がいたりとか...これが「世代ギャップ」なんだろうかね...って年齢を感じてしまうねえ。
そういった事例とか実態を、学生たちの行動集計を元に語っていただいています。...が、正直、それを知って、「で?」という感じ。彼らの「生態」を知ることはマイナスではないけれど、自分の考え方を変えるつもりはないし...「ネットあたりまえ」世代を対象にした商売をしているのなら有効かもね。でも個人ベースで考えたら、やっぱり「で?」という域をでませんねー。
「鳴り物入り」で登場したセカンドライフや、昔から「未来」の象徴でもあった、テレビ電話など、イマイチ普及速度が遅い(あるいは消えていった)ツールが、なぜそういう運命をたどったか、という分析は面白いです。携帯電話の(携帯デバイスとしての)急速な普及、コミュニティの普及、などなどその要因と考えられるものの分析は、さすが「大学教授」です。
「つながり」というテーマではありますが、技術者先生らしくツール、デバイスのほうに偏りすぎで、肝心の「人」という視点が少ないです。むしろ「人」だけに焦点があたっている方が、このタイトルに適していますし、読むほうも参考にできる範囲が広い。「若者」x「ツール」の話だけでは、やっぱり、「で?」です。

【ことば】肝心なことは人と人とがつながることだ。

その通りですね。ツールに「使われて」しまっては意味がない。若者はどうかわかりませんが、あくまで「リアル」を補完するものがツールである、と信じます。

つながり進化論―ネット世代はなぜリア充を求めるのか (中公新書)

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