2010/05/20

これが「マーケティング」。


『男が知らない「おひとりさま」マーケット』牛窪恵
[11/76]Library
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★

その存在をしらなかった「おひとりさまマーケット」。必ずしも「独身女性」だけを指す言葉ではない、ということだが、いずれにしても「女性のお客様」をメインに商売をしている自分としては非常に興味深く読み始めた。
内容としてはその「生態」(失礼!)を、細部にわたり描写している。「知らない」男である私からはある程度想像していた世界ではあるが、ある意味、こういう本で表現されると「リアル感」が増すことは間違いない。
・「自分磨き」にお金をかける一方、節約するところは節約する
・「ホッとスポット」としての不動産の購入。その裏には親に対する気持ち(独立心)も
・頑張った自分へのごほうびは、モノよりも思い出
・健康志向ではあるが、あくまで「美容」がベース
・自分の価値を向上させる、という価値観
等々。どれも「男である自分が「女性」とひとくくりにして見ていたことは誤りなんだな、やっぱり」と思わせるエピソードが続く。冒頭に、「この本はいわゆるマーケティングの本ではない」というフレーズがあったが、これがまさに「マーケティング」だと思う。確かに、マーケティング「学」ではないだろう。最終的に「マーケット」の動向をひとつに集約していく、という流れのある「学問」ではなく、あくまで「おひとりさま」は「個」であって、それを集約することに意味があるのか?という意識も芽生える。ちょっと前に『みんなの意見は案外正しい』という本を読んで、「集合知って捨てたもんじゃない」という考えを読んだが、その集合知はあくまでも「個」の集まりである、ってことを忘れてはいけない、ってことなんだろう。マーケティングってなんなんだろう?もしかしたら、マーケティング「担当者」の自己満足か?今取り組んでいる通販事業だって、「平均40歳の仕事をしている女性に向けて」という「平均値」で絞り込んでいく手法(マーケティング「学」によるもの)は正確には正しくはない。究極はひとりひとり「個」に向けてのコミュニケーションなんだろう。たとえそれが効率を求めるECであっても。
まあ、とにかく「おひとりさま」は元気である。裏面に「さみしさ」を持ち、それが見え隠れすることもあるだろうけれども、自分を高める、という姿勢は、素直に尊敬に値するし、そこに実は男女差はないわけで、突き詰めれば「おひとりさま」=女性と定義することもあやしくなってくるかもしれない。こういう本ができること自体が、女性を特定していることにはなる。けれども現在の、あるいはこれまで積み上げてきた「制度」の問題もある。「も」というよりもこれが最も大きいのだろう。
いろいろと考えさせられることも多かったが、素直に「読んでいておもしろかった」というのが率直な感想。ただ、(自分の「体調」も一因だが)ちょっとボリュームが多くて、後半は多少読むスピードが落ちた...結構内容的に全体としての抑揚がなくて、後半にもうひと盛り上がりあるとよかったかな...

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