2010/05/07

結構「ハード」な一冊


『「みんなの意見」は案外正しい』ジェームズ・スロウィッキー
[3/68]BK1
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★

タイトルだけをみると「軽い」感じがしたけれども中身は「濃い」。ばらばらの個人の意見もあるが、それが寄せ集まった「集団」の意見・評価も捨てたもんじゃない。いや、むしろそれの方が正しいということもある、という内容。この結論がまずありきで、あとはそれをニクヅケる事例が並ぶ。「認知」「調整」「協調」ならなにやら難しい論調になってしまって、途中でなにがなんだか分からなくなってくる。最近克服できた、と思っていた「ヨウモノ嫌い」がまたアタマをもたげつつあるような...
民主主義、税金などの「公」の事例、それから企業、渋滞などの比較的近い事例、それによって「読める」「読めない」が変わってきた。政治パートになるといまひとつ理解しずらい(アメリカをベースにしているから?)ところもあってけれども、「なんとなく」で読みすごしてしまったような...でも全体を通してみれば「こういう視点もあるのね」という点で面白く読めた。「みんなの意見」がそれなりに重要視すべきだ、という視点にたてば、この本でも繰り返し言われているような、「多様性」「独立性」「分散性」「集約性」が大事。まずは「多様性」を満たすためにも、「多様な」意見がでなくてはならない。基本的なことだけど「小さな集団」ではまずここが肝だったりする。これがでなかったら先に進めないから。
「科学」というところが一番おもしろかった。この分野は、誰かが論文を発表するとそれを元に別の誰かがニクヅケをしたり、それをベースに違う視点から見たり、結果その「みんなの意見」の集約=科学的論拠の価値が向上する。それは「個人」では不可能な点であり、多様性・独立性をもった「みんなの意見」の集約で成り立っている。これは明快なところだった。
あと、個人がそのひとりひとり、という視点に立てばそんなに(こちらが思うほど)理論的には動かない、結果「集団」としての動きがある程度「理論的」(に見える)だけ、という点も改めて感じた(そういう記述はないけど)。通販の仕事で「顧客分析」なんぞをみているときに思うこと。個々人の「動き」にもちろん一貫性はないけれども、ある程度の「集団」になると大きな動きって見えることがある。そういうことを言っているんだなあって(勝手に)思いながら読み進めた。

最後まで読んで最後の最後「解説」のところにあった、
「集合知」はそれが正しいとしても、その結論にいたった根拠、またそこから改善の余地、これらが見えない、もしくは存在しない、というのは胸のつかえがすーっとするものであった。本書の主論点をある意味否定することではあるけど。

これまで「通販は(事業者として)心理学であり、統計学だ」と思っていたけれども、もしかしたら「科学」なんじゃないかって思い始めた。統計学で判断してはリスクがある場合もある。終わりのない「科学」。まさに集合知の結集であるところの科学。そう思うと納得できるところがあったり。これによって具体的に何をどうする、ってのは難しいけれども、「考えかた」の新しい視点(そんなに難しいことではないけれどもこれまで気がついていなかった、という意味で)の入り口には立てたかもしれない。そういう意味で貴重。

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