2011/08/15

「ひねり」がうれしい。「ういっと」がきいてる名文集。

名文どろぼう (文春新書)
名文どろぼう (文春新書)
  • 発売日: 2010/03

『名文どろぼう』竹内政明
[9/149]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

落語家から政治家まで、広く残された「名言」。記者という職業からか、著者の「選択基準」の幅は広い。掲載された「名言」を貫いているもの、それは「ユーモア」。日本語でどう表現すればいいのかわからないけれど、「とんちがきいてる」くらいでしょうか。
生きるってツライこともあるけれども、みんな頑張ってるよ、だから肩の力を抜いて気楽に、でも一所懸命いこうよ。
っていう感じが全編にわたって感じられる。気のきいた「アメリカンジョーク」とはまた一味違う、「市井の出来事」がベースになっていて、悲しい中にもちょっとだけ笑いがあるような、温かい気持ちが少しわいてくるような、読んでいても楽しくなるものが多い。落語家はもちろん、政治家も、考えてみれば「言葉」を操ることが大事だよね。発する言葉で、(言葉だけではなくタイミングも重要ですが)勢いが増すこともあれば、失速することも多い。最近は「失速」のほうのリスクにかなり偏重して、「おもしろい」ものが少ないような気もします。表面的に「失言」をあげつらう傾向が強まる中、おもしろくもなんともない「無難」な言葉が選ばれるんでしょうね。変に「統制」されたものですらあるような...
ちょっと前に読んだ『日本人の叡智』も「名文」ですが、どちらかといえば、「こんな時代から本質的な言葉を発していた日本人がいたんだ!すごい!」といったものであるのに対して、本書は、庶民的な観点から「おー、うまいなー」というものが集まっています。著者が軽快に「はさむ」言葉もエンターテイメント。さすが記者、ここが本書の「おもしろさ」を増幅させていることは間違いありません。
ここから何か感銘を受けるとか、使ってみようか、とか、そういうことは正直ありません。その言葉をママ使ったところで、環境が違います。普段からモノを考えている人、彼らが発したその場の当意即妙の言葉であるからこそ、どこかに知性を感じる「軽い」けど重い言葉になっています。
読み物として楽しめます。あとはそういう言葉を残してきた方々のバックボーンを想像しながら、「こーゆー時にこーゆー表現ができるって素晴らしい」と素直に感激するような読み方が、一番適しているかと思われます。もちろん、それを敏感に感じ取れる著者の幅の広さ、その幅の広さをなし得た活動フィールドの広さを尊敬しながら。

【ことば】多くの人は運を貯蓄していって、どこかで消費型の男が現れて花を咲かせる。...我々は三代か五代後の子孫のために、こつこつうんを貯め込むことになるか。

色川武大さんの言葉。この境地に立てることが「ひととして」重要かと思う。自分の子供に対してはなんら問題はない。よろこんで運を渡したい。そして自分の子供以外、出会った魅力的な人たちに...こちらはまだまだ要努力。


名文どろぼう (文春新書)

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