- 日本人の叡智 (新潮新書)
- 発売日: 2011/04
『日本人の叡智』磯田道史
[6/146]BookOff
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K-amazon ★★★★☆
戦国時代から現代まで、どちらかといえば名を知られていない偉人の言葉を紹介。戦国から江戸、明治維新、昭和の戦争期、今の時代から鑑みれば到底想像すらつかない時代背景の中、「本質」を見抜いて、言葉として残した方々が、こんなにいることに、日本人として自信を持てるような内容です。
特に昭和戦争期には、(これこそ考えられないレベルの)「統制」があったものと思われますが、その中でも「正しい」ことを発信していた人はいるんですね。勝手に想像するに、「思っている」人はいても「言葉に出す」人は、少なかったのではないかと。流れの中でそのような「表面的な」時代の流れと相反するものは、歴史上も「伝わらない」ことが多いのでしょう。実際に、教科書はもちろん、公的な書物であっても見たことのない名前、言葉が多くでてきました。
「歴史」というだけである程度の「重み」を感じてしまう、ということもありますが、どの時代にも「傑物」はいたのだなあ、と思います。そして(敢えてそのような選択をしているのでしょうが)どの言葉も、今現在の世の中に通用します。通用する、というよりも、今のこの時代のために存在している、今のこの時代への提言のような気さえしてくる。時代は変わっても、人々の心や、為政者の振る舞い、などは変わっていない部分もある、ということなのでしょうか...
たいていの場合、「名言集」というものは断片的で「(読み物として)面白くない」ものが多い。それはその言葉が発せられた背景が知り得ないから、というのも一つの理由でしょう。本書は、ひとつひとつの言葉の解説は2ページ見開き完結、と短いながらも、その時代の環境がなんとなく感じられるものになっているので、ひとつひとつの言葉の「重み」を感じながら読み進めることができます。これを支えているのは、著者の「思い」の強さだと思う。歴史の中で埋もれていた言葉を見つけ出し、その背景とともに公開する、タイトルにもあるような「叡智」を感じることができるのは、確かに著者のそんな「思い」があるからだと。ひとつひとつについて多くを語るよりも、短く簡潔に伝えるほうがよほど難しいはず。
これらの言葉を得たことで何が変わるかは、今後の自分次第。ひとつ言えるのは、こういう機会を与えてくれた本書との出会いに感謝したい、ということ。自分の言葉が、もしかしたら後世に残るのかも....ないか。
【ことば】欠点の指摘は...発展や繁栄策とはならない...どうすれば...よくなるか...を言い当ててこそ尊い真の批評で、この批評こそ創作につながる。
1900年代前半の近代漆芸の名工、松田権六の言葉。います、「批判」をして「批評」と考える人が。テレビの中にも身の回りにも。それで何が(次に)生まれるか、ってことを考えてない、自己満足ですね。「受ける」立場からで感じたそのことを、「発信する」立場にも映さねばならないね。
日本人の叡智 (新潮新書)
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