2011/08/11

素晴らしい!思いつつも「近さ」がない..


『チェンジメーカー』渡邊奈々
[7/147]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

ソーシャルベンチャー=社会的企業家。この文字だけを見てもピンときませんが、世界的な規模で、「弱者」を救うために立ちあがった民間の方々の話です。ボランティア活動と違い、「ビジネス」という側面も持ち合わせているケースが大半。ビジネスであれば当然に「利潤」という話がでてきますが、一般の営利企業とまったく異なるのは「順序」「優先順位」です。彼らは、社会的活動をするための資金としてビジネスをからませる、つまり儲けは手段になっています。昨今のCSRなるお題目はどちらかといえば、(最終的な)「利益」を得るための手段であり、目的はあくまでも儲け、であるように思えます(営利企業である以上、必要なことですが)。
社会のため、自分以外の弱者のために働いている方々の姿は、圧倒的に魅力があります。著者が写真家であるので、各人の紹介の冒頭にその方のポートレイトが掲載されていますが、その時点でもみなさん非常に魅力的な笑顔を見せてくれます。おそらくは、実際に見る、という行為を通すと、写真からでは得られないオーラのようなものが感じられるのでしょう。
表題にあるのは、つまり「社会を変える」「世界を変える」ために行動を起こした人々、という意味。それぞれの活動を通じて、少しずつでも一部からだけでも「変える」ことを実行している方々のインタビューが並びます。正確にいえば、「変える」というよりは「正しい道に直す」ということなのかもしれません。何をもって「正しい」かというのは正解はないかもしれませんが、あくまでも「人としてあるべき姿」を取り戻すための環境作り、支援、といったところ。
前日のように、以前の「ボランティア活動」と異なるところは、その活動が表面的ではなくて、本質的である、ということでしょうか。募金などのボランティア活動を否定するものではけしてありませんが、ここで紹介されている方々は、少なくとも「その現場」に赴いて、同じ空気を吸って、その中から課題に「気づき」、それに対するソリューションを見つけ出そうとしています。その解決策に達する過程ではじめて「ビジネス」が発生する、そんな流れです。
本書の中にもありましたが、当然かもしれませんが、名だたる「営利」企業で勤める場合とは、自らの金銭的な身入りは少ないと思われます。それでも「その差額を上回る達成感、充実感」が得られる、という、これまたこの世に生をうけた人間としての本質的な動機づけによって彼らは活動を続けます。...おもっちゃいるけれどもできない自分のような人間にとっては、現実感が感じられないくらい...情けないですが、「今日のお金」のほうに比重があるのは事実かもしれない。「できることから」って言ってる人が実は何もしていない、ということもあります。言葉よりも先に「思ったら(小さくても)動く」ことが大事なんでしょうね...
著者の活動拠点の関係から、ベースをアメリカに置く方々の活動記録ですので、もちろんこの志に国境はないし、たとえ起点がニューヨークであってもその活動フィールドは「世界」ですから、そんな問題はないのですが、日本人の、かなりドメスティックな日本人の自分としては「遠い世界」の話のようなイメージも持ってしまいまして...この時点で「資格なし」かもしれませんが...ただ、1点。本書に紹介されている方々の多くは70年代生まれであることに刺激を受けてます。年齢だけは「上」の自分としては、なんらか動かねばならない、という刺激を。

【ことば】文部省...を見渡してもどこにも子供の姿が感じられないことに違和感を覚えた...教育にうちて。机上の空論が観念の上でくりかえされているようにしか見えなかった。

「教育」という分野で活動されてる方の言葉。文部省への入省を考えたときの感想です。これでは...ということで自ら立ち上がって行動されています。この省に限ったことではありませんが、これが日本の官僚の現実かもしれません。「現場」を知る、最低限知ろうとする姿勢があるかどうか。


チェンジメーカー~社会起業家が世の中を変える

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