2012/03/17

理屈ではない人間の行動。自分のことを考えれば、わかるよね。


『ビジネスマンのための「行動観察」入門』松波晴人
[8/44]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆ 

「迷ったら現場へ行け」「行き詰ったらお客様に聞け」わりと耳にするフレーズである。企業が誰に対してモノやサービスを売っているのか、それに見合う対価をうけているのか、を考えたら、「次の手」を考える際に、一番しらなければならないのは、あきらかに「お客様」であるのだ。
だから、企業はアンケートを実施する。そのアンケート結果の分析、解析をして、お客様を「知る」という狙いで。けれど、自分お経験則からしても、これはなかなか困難である、といえる。アンケートに答えていただく環境、たとえばインセンティブの有無(回答者には○○をプレゼント!)とか、アンケート方法(記述式/自由回答など)とか、諸々の条件、フィルター、環境を考慮すると、出てきた「答え」の有用性に疑問がついたりして、「じゃあなんでアンケートやったん?」ってことにもなりかねない。そんなもやもやした経験をしたことがある人は少なくないんじゃないか。
本書で紹介されている「人間観察」はこのようなアンケートの類とは異なる。人の行動を人間工学、心理学、表情分析などの知見を通じて観察・分析することで、問題解決に役立てようとする手法であり、日本でのその分野の第一人者である著者が、事例をふんだんに使って紹介してくれる内容が本書である。
人間の行動を追っかける、しかもかなり深部にわたって。その一見不可解と思われる行動についても、著者の知見による心理学的なアプローチで、その因果関係を探る。そして行動の本質、本人も気づいていない行動の「理由」を導き出す。
行動観察はあくまでも「仮説」を生み出すためのフィールドワークであり、そこで得られた仮設を今度はアンケート等を利用して確認していくステージに入っていく。つまり我々が「お客さまを知る」ためにやろうとするアンケートは、実は第2ステージであり、前段階のステップを飛ばしてしまっているのかもしれない。前のステージによる仮説がないので、アタマの中だけで考えた仮説をもとに進めることになる。それが仮説として成り立っている場合もあれば、不完全な場合も当然にあるわけだ。
言われれば、「お客様の行動、考え、本音」といったところを探るマーケティングは当然の企業活動であるし、既にやっているという企業もあるだろう。けれど、本書に紹介されたような「人間工学、心理学」ベースに基づいた「行動観察」というアプローチは、結構斬新な切り口だと思う。そこまで考えて実行しているケースはそうそうないと思う。
本書は事例中心なので、読み物としても面白いし、著者のフィールドである「行動観察」については関心を持ったのも事実で、惹かれるものは多い。すぐに直接的に役立つかどうかは不明だが、その「考え方」=行動観察は科学である、という点は面白い。科学であるかどうかは、実はここ最近、考えていたこと。ヒントを得た思いだ。

【ことば】行動観察で様々な気付きを得るためには、自分の価値観をいったん横において、フィールドを観察することが求められる...行動観察においては、人間に関する知見が重要な意味を持つ。

どうやったら「行動観察」ができるようになるか、その条件を2つあげている。前者に関していえば、まだ完全ではないが、なんとなく「こういうことかな」って感じる瞬間がある。ただ、後者に関しては、今の自分では心もとない。もっと「勉強」せなば、なるまいね 



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