2012/03/28

痛快!子を持つ親は読む価値「大」。

人生に関する72章 (新潮文庫)
人生に関する72章 (新潮文庫)
  • 発売日: 2009/01/28

『人生に関する72章』藤原正彦③
[16/52]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

数学者である著者が、(著者自身も驚きをもって受け止めた)「人生相談」の連載をまとめたもの。読売新聞で連載されたいた。著者は数学の先生であるのだけれど、その著作の軽快さ、ズバっと両断する言い回しは、まさに「痛快」である。どの本にも共通して言えること。勝手な偏見で「数学者」というと「偏っている」イメージがあるが(おそらく著者自身もそんなイメージを受け入れている)、非常に「人間っぽい」側面が見えるのだ。
本書でも、「子どもに対する親」という点で、「小さい頃は有無を言わせず世の中のなんたるかを教え込む」姿勢が表れている。子供の「通常ではない」振る舞いについての質問に対しては、この姿勢をベースに、「そんな子に育てた親の責任」と、バッサリ切るのだ。質問者からすれば多少耳が痛いことかもしれないけれど、妙に納得できるところがある。
一方で、子どもがある程度の年齢になった時点で「おとな」として接する態度を主張している。「子離れ」ということ。相談する問題点の内容もこの二つ(親としての教育、子離れ)に集約されるのかもしれない。
年代別に分かれている構成で、10代からはじまって60代以上までの質問と回答。 性格が明るくできなくて友達が少ない、という悩みには「個性」を尊重し、年代が上がってくれば、親も子も「人間として」生きることを説く。年代別なので若い質問は無関係と思っていたが、自分の環境(40代の親であり、10代、そしてこれから20代になっていく子を持つ)を考えてみると、どれも真剣に読む価値がある。
回答は迷いなく「一刀両断」というものが多いが、本業の傍ら連載をしている著者の「真剣さ」が伝わってくる。けして「片手間」ではない思いが通じてくるのだ。当然に相談者は真剣。その真剣さに呼応する真剣さがある。だから、多少きつくても、心が通じた回答になっている。
それぞれの年代で、それぞれの悩みがある。作りものではなくて、まさに「生きている」人たちの悩みがここにある。新聞の人生相談に投げかければそれで解決する問題ばかりではないかもしれないけれど、そこにあるのは「効いてもらう」価値だったり、誰かに「言ってもらう」価値だったりする。これをきっかけに相談者の中で「何か」が変わり始める感じがするのだ。
人生いくつになっても「悩み」は尽きない。だからこそ人生であり、人間である。「自由を履き違えてはいけない」と著者は繰り返す。完全な自由ではない人生だからこそ、それを感じる瞬間がうれしいのかもしれない。

【ことば】地球上の思春期以降のほとんどの男性は、エッチな絵が好きか、大好きかのどちらかなのです。

夫がエッチな本を見ているのが許せない、という妻からの相談。人生相談の回答に、淡々とユーモアを混ぜる回答者。こういった「心がなごむ」言葉や、「そうはいっても人間ってこうなんだよ」という内容が随所にみられる。「専門家」でない分、実社会の私たちに非常に近い、距離が近い感じがするのだ。不謹慎かもしれないけれど、本書の相談と回答を読むと、面白いのはそこ。


人生に関する72章 (新潮文庫)


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jim1~8
よっし~の読書感想文?!


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